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『人付き合いが苦手な未亡人の雪女さんと呪いの指輪』第3話は、まずはお友達からという関係になったさとると雪乃さんが、誤配送された一つの荷物をきっかけに、二人きりで思いがけない時間を過ごすことになる回だった。注文した覚えのない荷物、一着だけならと応じた雪乃さん、そして誠実さとの間で揺れるさとるまで、短い第3話を場面ごとに振り返っていく。




第3話「荷物」
『人付き合いが苦手な未亡人の雪女さんと呪いの指輪』第3話「荷物」は、まずはお友達からという関係になったさとると雪乃さんが、一つの荷物をきっかけに思いがけない時間を過ごす回だった。注文した覚えのない荷物の正体、箱の中から出てきた意外な中身、そして雪乃さんの思いがけない一面。短い本編の中に詰まったドタバタを、場面ごとに振り返っていく。
連絡のない数日間
冒頭は、さとるのモノローグから始まる。「まずはお友達からということで」連絡先を交換して、数日が経った。ところが、最初のあいさつ以降、雪乃さんからの連絡はない。友達になろうと申し出たのはさとるの方だが、人付き合いが苦手な雪乃さんにとっては、何気ないメッセージを送ることさえ簡単ではないのだろう。
思えば、雪乃さんは二年前に夫を亡くしてから、夫以外の人とほとんど関わらずに暮らしてきた。誰かと連絡先を交換すること自体が、久しぶりの出来事だったのかもしれない。何を送ればいいのか、送って迷惑にならないか。そんなふうに迷っているうちに数日が過ぎてしまう姿は、想像するとどこか切なく、同時にとても雪乃さんらしい。連絡がないことは、気持ちがないことではない。そう思わせてくれる余白が、この冒頭にはあった。
第2話で、さとるは雪乃さんの人慣れに協力するために、まずは自分が友達になると申し出た。その関係は始まったばかりで、まだどちらも距離のつかみ方がわからない。連絡が来ないことにやきもきするさとるの姿には、管理人として、そして一人の男性として雪乃さんを気にかける気持ちがにじんでいた。
注文した覚えのない荷物
そんなある日、雪乃さんがさとるに声をかけてくる。「注文した覚えがない荷物が」届いているのだという。さっそく二人で様子を見に行くと、宛先は確かに503号室。けれど、よく見ると「建物名が違いますよ」。荷物は隣のマンションの503号室に届くはずのものだった。ただの配達間違いとわかって、ひとまず一安心だ。
おかしかったのは、荷物を前にした雪乃さんの距離感だ。どうしてそんな遠くにいるのかと思えば、爆発するかもしれないと思っていたらしい。それなのに、さとるが荷物に近づくのは止めなかった。「俺が近づくのは止めなかったのに」という心の声に、思わず笑ってしまう。人付き合いが苦手で慎重すぎる雪乃さんの性格が、こんな形でも表れていた。
連絡がつき、こちらに届いたものは処分して構わないということになる。せっかくだから開けてみようということになり、大手の通販サイトだから大丈夫だろうと箱を開けると、中から出てきたのは「コスプレ衣装」だった。ちょっとした誤配送が、思いもよらない展開の入り口になる。この作品らしい、軽やかな導入だった。
この場面で印象に残るのは、雪乃さんが荷物のことでさとるを頼ったことだ。第1話では管理人さんには関係のないことですと突き放し、第2話でもまだ少し怒っていると口にしていた雪乃さん。その彼女が、困ったときに真っ先にさとるに声をかけた。頼れる相手としてさとるを選んだという事実だけで、二人の関係が確かに前に進んでいることがわかる。管理人として住人の困りごとに向き合うさとるの姿も、頼もしく映った。誤配送に気づいてからの対応まで、てきぱきと動く姿は、雪乃さんの目にも心強く見えたのではないだろうか。
着てみませんか
一着だけなら
どうしよう、これは可燃ゴミで出せるのか。こんなものを出しているところをお隣に見られたらと慌てる声に、さとるは心の中でつぶやく。「もったいないな」、雪乃さんが着たら絶対かわいいのに。そしてつい口に出してしまう。「せっかくだから着てみませんか」。
当然、雪乃さんは全力で拒否する。「そんなの着たら死んじゃいます」。それでもさとるは、雪乃さんが着てくれたら想像以上に似合うと思う、少しだけでも見せてもらえたらうれしいと食い下がる。そのまっすぐな頼み方に押されたのか、雪乃さんはついに「一着だけなら」とうなずいてしまうのだった。
第1話から、雪乃さんは自分の殻に閉じこもり、夫以外の人との関わりを避けてきた女性として描かれてきた。その雪乃さんが、恥ずかしさをこらえながらも、さとるの頼みを聞き入れる。小さな一歩でも、雪乃さんが自分から誰かの願いに応えようとしたことは、二人の関係にとって大きな変化なのかもしれない。
想像以上の破壊力
そして現れた雪乃さんは、メイド服に身を包み、「お待たせいたしました」。「ご主人様」。その姿に、さとるは「想像以上の破壊力」と言葉を失う。「こんなに似合うだなんて」。恥じらいながらも役になりきろうとする雪乃さんの姿は、まさに破壊力抜群だった。
あまりの似合いぶりに、さとるの思考は一瞬どこか遠くへ飛んでいってしまう。「この部屋ちょっと暑くないですか」という声が聞こえたかと思えば、「俺は今何で妄想を」と我に返るさとる。どこからが妄想だったのか、見ている側も一瞬わからなくなるような演出だった。
それにしても、さとるの頼み方はどこまでもまっすぐだった。似合うと思う、少しだけでも見せてもらえたらうれしい。下心がまったくないとは言えないまでも、雪乃さんを素直にかわいいと思う気持ちが、そのまま言葉になっている。だからこそ雪乃さんも、恥ずかしさをこらえて応じることができたのだろう。無理強いではなく、お願いとして伝える。その距離の詰め方が、さとるという主人公の憎めなさにつながっている。妄想と現実の落差が、さとるの動揺ぶりをいっそうコミカルに見せていた。
今日見たことは忘れてください
我に返ったさとるは、もういいです、すみません、変なことをさせちゃってと平謝り。衣装は「俺が責任持って処分しますから」と引き取る。雪乃さんも、見苦しいものを見せちゃってすみませんと謝り、「今日見たことは忘れてください」と言い残して去っていく。お互いに謝り合う二人の姿が、なんともほほえましい。
ところが、一人になったさとるの心は揺れていた。「俺は変態じゃない」、変態じゃないけど、処分すると言ったとはいえ、雪乃さんが着た衣装を捨てるのは惜しすぎる。雪乃さんにばれなければ、と考えかけたところで、「ダメだぞそんな不誠実なこと」と自分を戒める。けれど、その後に続く「でも」の一言に、さとるの迷いがすべて表れていた。
このラストの独り言は、第3話の中でも特にさとるらしさが出た場面だった。変態じゃないと自分に言い聞かせながらも、惜しいという本音がどうしても顔を出してしまう。誠実でいたいという理性と、雪乃さんへの好意から来る未練。その綱引きが、たった数行のモノローグの中で目まぐるしく入れ替わる。理性と本音のせめぎ合いを、笑いに変えてしまうテンポの良さが、短い本編を最後まで楽しいものにしていた。衣装をどうするのか、答えを出さないまま終わる締めくくりも、見る側の想像をくすぐる。雪乃さんの前では誠実な管理人でいようとするさとるが、一人になった途端に見せるこの人間くささこそ、この作品を気楽に楽しめる理由の一つなのだろう。
第3話のまとめ考察
小さな出来事が近づける距離
第3話は、誤配送された一つの荷物から始まる、ささやかで愉快なエピソードだった。連絡のない数日間にやきもきしていたさとると、慎重すぎるほど慎重な雪乃さん。その二人が、思いがけない形で同じ時間を過ごすことになる。大きな事件ではなく、日常の小さな出来事が二人の距離を縮めていく描き方が、この作品の持ち味なのだと改めて感じた。
特に印象的だったのは、雪乃さんが最終的にさとるの頼みを聞き入れたことだ。死んじゃいますとまで言って拒んでいたのに、一着だけならと応じる。そこには、恥ずかしさ以上に、さとるの気持ちに応えたいという思いがあったのかもしれない。第2話で友達として協力すると申し出たさとるに対して、雪乃さんもまた少しずつ心を開き始めているように見えた。
誠実さとの葛藤
一方のさとるは、雪乃さんへの好意と、誠実でありたいという気持ちの間で揺れ続けている。第2話では、指輪の力に頼る関係ではなく、真剣に恋人として向き合いたいと気づいたさとる。今回も、衣装を前に不誠実なことはだめだと自分に言い聞かせる姿に、その葛藤がコミカルに描かれていた。欲望に流されそうになりながらも、踏みとどまろうとする。その人間らしさが、さとるという主人公の憎めないところだ。
雪女と人間の不器用な距離
雪女と人間という違いがありながら、二人のやりとりはどこにでもいる不器用な男女のそれに近い。連絡をためらい、荷物に怯え、恥ずかしさに戸惑う雪乃さん。好意を隠しきれず、つい口を滑らせ、後から自分を戒めるさとる。種族の違いよりも、人付き合いの不器用さこそが二人の壁になっているところに、この作品の親しみやすさがある。妖怪専用のマンションという舞台でありながら、描かれているのはごく身近な恋の始まりなのだ。
そして、今日見たことは忘れてくださいという雪乃さんの言葉も、どこか可笑しくて愛おしい。恥ずかしさのあまり口にした一言だが、さとるにとっては忘れられるはずのない一日になったはずだ。お互いに謝り合いながら別れた二人が、この出来事をきっかけにどんなふうに言葉を交わすようになるのか。誤配送された一つの荷物が、二人にとって忘れられない思い出の一つになったことは間違いない。
本編はわずかな時間ながら、二人の関係が少しずつ前に進んでいることがしっかり伝わる回だった。今日見たことは忘れてくださいと言った雪乃さんが、次にさとると顔を合わせたとき、どんな表情を見せるのか。友達から始まった二人の距離が、これからどう変わっていくのかを楽しみに見守りたい。短い本編の中に、二人の不器用さと優しさがぎゅっと詰め込まれた、何度でも見返したくなる一話だった。




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