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こだまとうしおがいない週末、無口なうさとの気まずい時間をなんとかしたいと悩むみさき。そんな矢先、うさが鉄道旅行のプランを立ててくれて、後輩2人だけの横浜の旅が始まる。横浜シーサイドラインの先頭の席と、みさきが選んだ横浜市電保存館。旅の中で、2人は少しずつ本音を打ち明けていく。手作りの旅のしおり、すみっこの席から見た景色、そしてうさのあこがれまで、第5話を振り返る。




先輩のいない部室
第5話は、こだまとうしおがいない週末に、みさきとうさの後輩組が2人で鉄道旅に出かける回だった。部室で2人きりになると何を話せばいいのかわからない。そんな小さな気まずさを、お互いがお互いのために一歩ずつほどいていく。横浜シーサイドラインと横浜市電保存館をめぐる旅は、鉄道の楽しさと同じくらい、誰かと同じ景色を見ることのうれしさを教えてくれた。
静かな部室
「先輩たちがいないと ここってこんなに静かなんだ」。部室に一人でいるみさきは、こだまならどうするか、うしおならどうするかを思い浮かべてみる。時刻表の上で旅をするこだまの姿や、駅弁特集で盛り上がるうしおの姿を想像する場面は、2人の先輩の個性がよく出ていて楽しい。
みさきの悩みは、うさとの距離だった。「優しい人ではあるんだよ」、「仲良くなりたいんだけどな」。先輩たちに相談すると、「まずい まずいで!」と大慌て。責任感の強いうさに無理をさせたら「ドッカーン!」となるのではないかと心配する想像図がおかしい。それでも「ウサちゃん レトロマニアやで?」、「いつもは一人で写真撮りに行くって言うてたな」と、ちゃんとヒントをくれるのが先輩らしい。
横浜すみっこツアー
ところが、うさのほうも同じことを考えていた。疲れた顔で部室に来たうさが差し出したのは、手作りの旅のしおり。「横浜すみっこツアー?」。「もし週末バイトとかなかったら一緒に出かけないかなって」、「ミサキちゃんともっと仲良くなれたらいいなって思って」。徹夜で仕上げたらしいしおりには、乗る列車の解説までびっしり書き込まれていた。
「嬉しいです」、「週末うささんと一緒にこれ行きたいです」。みさきの即答に、うさがほっとする顔が目に浮かぶようだ。気まずいと思っていたのは自分だけではなかった。相手もまた、自分と仲良くなりたいと思ってくれていた。その気づきだけで、旅はもう半分成功しているようなものだった。言葉が少ないうさにとって、しおりは精一杯の気持ちの伝え方だったのだと思う。話すのが得意でなくても、相手を思う気持ちはこうして形にできる。しおりを読みながら「私も何かしてあげられないかなー」と考え始めるみさきの姿も、この回の温かさを予感させる。
横浜シーサイドラインの旅
思い出の切符
旅の始まりは切符から。「せっかくなら切符も思い出にしようと思って」と言うみさきに、うさは改札で回収されてしまうと心配する。そこで窓口で相談すると、「改札を通らず 窓口の者にお声掛けください」と丁寧に教えてもらえた。「楽しんでくださいね」という一言まで含めて、駅員さんの優しさが心地いい。
駅舎は2019年に新しくなっていて、遠足の記憶と違うのはそのせいかもしれないと、うさが説明してくれる。しおりを作るためにしっかり下調べしてきたことが、こういう細かな会話からも伝わってくる。
すみっこの席
そしてうさが案内したのは、先頭の席だった。「自動運転だから 一番前の大きい窓から景色が見やすいって聞いて」、「ミサキちゃん スミッコが好きだって言ってたから」。すみっこツアーの意味がわかった瞬間のみさきのうれしそうな顔が、とてもいい。
ゴムタイヤで走る車両、架線のない空、海の向こうに見える水族館の島。「めっちゃすごい 自分で運転してるみたい」、「上に電線もないから空も綺麗に見えるね」。鉄道の仕組みの解説と、2人の素直な感動が自然に混ざり合っていて、見ているこちらまで一緒に乗っているような気分になった。
同じ景色を見た思い出
途中で乗ってきた親子連れに、みさきは迷わず席を譲る。「同じ景色を見た思い出がある方が」、「きっと楽しいので」。毎週この電車に乗っているという男の子は、ちょっとした博士。「並木北駅だけ 地上駅なんだよ」と教えてくれたり、ポイントでの曲がり方をクイズにしてくれたりと、旅にもう一つの出会いを添えてくれる。
正解は「ちっちゃいタイヤを引っ掛けて 曲がるからでした」。「博士こそ いろいろ教えてくれて ありがとうね」と手を振って別れる場面まで、子どもとの交流がとにかくかわいらしかった。電車の中でたまたま隣り合った人と、同じ景色を見て笑い合う。それもまた鉄道旅の楽しさなのだと思う。みさきが自然に人と打ち解けていく様子は、うさから見ればきっとまぶしかったはずだ。
2人の本音
かっこいいね
終点の新杉田に着いたあと、うさがぽつりと言う。みさきはかっこいい、「そうやって いろんな人と すぐ仲良くなれて 羨ましい」。けれど、みさきにも悩みはあった。「私だけだと つまらなかったら どうしようって」、「いつも優しくしてくれるうささんに」、「どうしたら恩返しできるかって考えたり」。
思いがけない言葉に「優しい? 私が?」と驚くうさに、みさきは初めて会った日のことを話す。縮こまっていた自分に声をかけてくれたのはうさだった。お互いに相手を気遣うあまり、遠慮し合っていた2人。本音を口にしたことで、その距離が一気に縮まっていくのが見ていてうれしかった。相手をつまらなくさせていないかと不安になるのは、それだけ相手を大切に思っているからだ。2人とも同じ不安を抱えていたとわかったことが、何よりの収穫だったのかもしれない。
みさきのプラン
しおりに「当日ご相談」と書かれていた後半は、みさきのプランへ。向かったのは横浜市電保存館だった。「ここ 昔 横浜を走ってた電車が 実際に見られるんです」、「うささん こういうの 大好物かと思いまして」。先輩たちのアドバイスをもとに選んだと正直に打ち明けるみさきに、うさは「ありがとう すごくうれしい」と返す。
「さっきの自動運転とは 正反対のレトロ感!」。昔の車両の運転席に座って「出発 進行!」と声を上げるみさきを、うさがカメラに収める。交代して今度はみさきがカメラを構え、うまく撮れなかった写真を消そうとすると、うさが「それも思い出だから」と止める。そんなやり取りも、2人の距離が縮まった証のようだった。
うさのあこがれ
あの電車のお姉さん
保存館で見かけた青い列車を前に、うさは昔の思い出を語り始める。「小さい時 あの電車のお姉さんに助けてもらったんだ」。初めて一人で遠くへ出かけたものの、思い通りにいかずに落ち込んでいたとき、声をかけてくれた駅員のお姉さんがいた。「失敗して落ち込んでる私に」、「お姉さんがすごく優しくしてくれたの」。
「私もいつかあんな風になれたらいいなって思うんだけど」と言ううさに、みさきはまっすぐ「うささんだってかっこいいですよ」と返す。旅のしおりを作って、自分のために一日を考えてくれたうさは、みさきにとってはもう十分かっこいい先輩なのだ。うさがあこがれてきた優しさを、うさ自身がちゃんと誰かに渡していたことがわかる、すてきな場面だった。
おそろいの待ち受け
旅の終わりには、一緒に撮ったプリントシール。「待ち受けにしてもいい?」、「いつも猫ちゃんのだったのに」、「うん これがいい」、「じゃあ私もそれにします」。同じ写真を待ち受けにする2人の姿に、この旅で手に入れたものの大きさがにじむ。
後日の部室では、旅の行き先をめぐって「鉄道愛による譲れない戦いよ」と盛り上がる後輩2人。それを見た先輩たちが「あの二人 エラい仲良くなってんな」と目を細めるのもいい。最初の静かな部室とはまるで違うにぎやかさに、思わず笑顔になった。
松浦鉄道のありさ
最後は松浦鉄道のありさ。イベント列車の準備のため、松浦の魚市場を訪ねていた。「松浦魚市場に溶け込めるようにと思いまして」という格好もかわいらしい。「イベント列車で出してもらうアジフライも」、「ここから卸されたものになります」と、地元の味の出どころを自分の目で確かめていく。
競りの様子を見て「この景色 みんなに見てもらいたい」と目を輝かせ、「ここにまだ来たことのない人にも 私の話で想像してもらえるように」、「誰よりも詳しくなりたいんです」と頭を下げるありさ。地元を愛し、それを伝えようとする姿勢はいつ見てもまっすぐで、イベント列車の当日がますます楽しみになる。
後輩2人が横浜で同じ景色を見ていたころ、ありさもまた、まだ見ぬ乗客と同じ景色を分かち合うための準備を重ねていた。場所も立場も違うけれど、誰かに楽しんでほしいという気持ちは同じだ。本編の旅とこのCパートが、さりげなく響き合っているように感じた。
第5話のまとめ考察
思いやりが返ってくる世界
第5話でいちばん心に残ったのは、思いやりが思いやりで返ってくる関係の気持ちよさだった。みさきと仲良くなりたくてしおりを作ったうさ。うさに喜んでほしくて先輩に相談したみさき。2人とも相手のことを考えすぎて遠慮していたけれど、その気持ちが伝わった瞬間に、気まずさはあっという間に消えていった。
駅員さんの丁寧な案内、席を譲るみさき、クイズを出してくれる男の子、そしてうさを助けてくれた昔のお姉さん。今回の旅には、小さな優しさがいくつも重なっていた。鉄道は人と人をつなぐものでもあるのだと、改めて感じさせてくれる回だった。
同じ景色を見るということ
みさきが男の子の母親に席を譲るときに言った、同じ景色を見た思い出があるほうがきっと楽しいという言葉は、この回全体のテーマでもあったと思う。すみっこの席から見た海、レトロな運転席、おそろいの待ち受け。2人が一緒に見た景色は、これからの2人にとって大切な思い出になるはずだ。
先輩たちが卒業したあとも、この2人ならきっと大丈夫。そう思わせてくれる、やさしい旅の物語だった。部室で気まずさを抱えていた冒頭から、待ち受けをおそろいにする結末まで。たった一日の旅で変わった2人の関係が、見終わったあとも温かく残る。次に2人が出かけるとき、今度はどんなしおりができあがるのか。そんな想像まで楽しくなる、てつりょーらしい素敵な一話だった。




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