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コロシアムの情報が暗部のどこからも手に入らず、足踏みを続ける麦野たち。最後の手段は、保険会社の中央サーバーから保険金の流れを追うことだった。外からがダメなら内側から。変装の専門家である華野が、常務になりすましてビルへ堂々と乗り込む。華野の変装、常務へのなりすまし、そしてアイテムのにぎやかな日常まで、第5話「潜入」をじっくり振り返る。




変装の専門家・華野
素材のコンディションはまずまず
『とある暗部の少女共棲(アイテム)』第5話は、華野の変装の腕が初めて本格的に描かれた回だった。冒頭から、華野は鏡の前でひとりの中年男性を作り上げていく。「年齢52歳男性」、髪質、肌質、瞳の色。さらに「お箸の持ち方が間違っている」、「質問に質問で返す傾向あり」、「下の立場の者は基本見下す」、「焦ると口呼吸になる」。外見だけでなく、癖や話し方まで丸ごと写し取ろうとする細かさに、まず驚かされた。
しかもその準備の過程で、華野の髪がウィッグだったことまで明らかになる。少女の姿から小太りの中年男性へと変わっていく流れは、見ていて思わず声が出るほどのインパクトだった。おどおどした普段の華野からは想像できない、まさに専門家の仕事ぶりだ。
外からがダメなら内側から
華野が変装していたのは、保険会社の常務だった。「出番よ 華野 あんたを使う案で行く」。後ろ暗い連中に聞き込みをしても、「コロシアム関係の情報は出てこない」。手がかりは「相も変わらず保険会社の常務だけ」。そこで麦野が考えたのが、保険会社本店の中央サーバーから、誰から誰へ高額の保険金が支払われているのかを探り出す作戦だった。
サーバーをハックする技なんて持っていないと慌てる華野に、返ってきた答えは明快だ。「外からハックできるような 代物じゃないのよ」、「だからこそ あんたってこと」、「常務に化けて 正面玄関から堂々と潜る」。外側からが無理なら内側から。暗部らしい大胆な発想に、華野の特技がぴたりとはまっていた。
精一杯の優しさアドバイス
作戦前の車内では、いつもの軽口も止まらない。いつもなら自分の役目だと言わんばかりのフレンダに、「でも変装の専門家が手に入ったんだから」、「そっち使った方がいいでしょ」。仕事を取られたと悔しがるフレンダに、「麦野は フレンダが心配なんだよ」、「ハニートラップみたいな 危険なことするのが」とフォローが入るのも微笑ましい。
一方の華野は、本物の常務のことを気にかける。「本物の常務さん不祥事扱いで捕まっちゃうと思いますけど」。けれど返ってきたのは「だったら何」という冷ややかな一言だった。人が死ぬと分かっていながら通報もせず、「我が身かわいさに自分の会社で不正をしているようなろくでもないやつよ」。家族がいるなら早めに別れておくよう伝えた方がいいという話まで出て、「これが精一杯の優しさアドバイスなんだから」。優しさの基準がずれているのが、いかにもこの4人らしい。
常務になりすました潜入作戦
私を誰だと思っているんだね
いよいよ潜入開始。重役出勤の時間帯を狙い、華野は常務として保険会社のビルへ入っていく。受付で疑われても、「私を誰だと思っているんだね」と堂々とした態度で押し切る。見た目だけでなく声や態度まで完璧になりきる姿は、まさに変装の専門家だった。無断欠勤が続いていた常務に疑いの目が向いても、下手に突けばまずい話が出てきかねないので、誰も正面からは問いただせない。そんな会社の空気まで読み切っているのが面白い。
ただ、モニター越しに見守るアイテムの面々は気楽なものだ。必死の華野は、見ているだけなら気楽なものだ、こっちは命や人生がかかっている、本当に困ったときは見捨てないでほしいと小声で訴える。その切実さとは裏腹に、仲間たちはどこまでものんきだ。マイクのそばでお菓子を食べる音まで聞こえてくる緊張感のなさに、華野の苦労がしのばれた。
パスワードが分からない
中央サーバー室にたどり着いた華野だったが、ここで思わぬ壁にぶつかる。「ドアのパスワードは毎週切り替わるみたいで」、1週間かけて調べ上げた常務の情報では、今週の正しいパスワードが分からないのだ。裏技はないのかと問われ、華野は「このビルが倒れるほどの大災害が起きたら」、人命優先で全部のドアロックが「強制的に開放される仕組みがあるみたいですけど」と答えてしまう。
その一言を聞いた麦野は、迷わずビルに能力を撃ち込んだ。「大災害が起きれば全てのロックが外れるんでしょ」。だから手っ取り早く大災害を起こしてしまえばいいという理屈だ。人の気配を滝壺に確かめてもらい、「誰もいないとこを削り取っただけだから」と涼しい顔。ビルにぽっかりと穴が開く光景には、さすがに笑うしかなかった。
中にいる華野からすれば、たまったものではない。「手厚いご支援ありがとうです」と言った直後に、思わず本音が口からこぼれてしまう。「最後のは多分心の声がうっかり出ちゃったやつだね」、「そして多分出ちゃったことに本人超気づいてないやつですね」。気弱に見えて、不満があると心の声がだだ漏れになる。華野の新しい一面が見えた場面だった。
使い捨ての選手を追う
引き出したデータについて、麦野の読みは冷静だった。「黒幕の大ボス様は厳重に守られている」、「けど使い捨ての選手たちはそうでもない」。死体でも犯人でもなく、「まだ生きてる高額生命保険対象者を漁るのよ」。「顔と名前が分かればあとは原始的に尾行するだけで」、「コロシアムの会場まで案内してくれるでしょ」。ここで初めて、コロシアムに近づくための具体的な道筋が見えてきた。守りの固い黒幕ではなく、守られていない末端から糸をたどる。その発想の切り替えの速さに、リーダーとしての麦野の頼もしさを感じた。
ショートカットで脱出
帰りはさらに大変だった。騒ぎでエレベーターは止まり、「階段で降りてこい いい運動になるだろ」。途中で警備チームに出くわしても、華野はすかさず警備員に変装して切り抜ける。「緊急モード用で警備チームの変装を用意しておいてよかったです」、「こういう時はやっぱり勢いが物を言いますね」。用意周到さと思い切りの良さの両方がそろっているのが頼もしい。
そして極めつけが、「楽してショートカットしたいなら 奥の壁にご注目ってわけよ」。壁の向こうから現れた絹旗は、華野を抱えて高層階から飛び降りる。「本当に困ってるときは 見捨てるなって言ったのが」、「超あなたじゃないですか」。たしかに見捨ててはいないけれど、あまりにも乱暴な助け方だ。「もう 暗部の人たちってやつは」という悲鳴に、心から同情してしまった。
アイテムのにぎやかな日常
車内のお着替えと普通のランチ
ようやく合流した車内でも、華野に休む暇はない。「この狭い車内で着替えるんですか」と戸惑う華野に、「見られて減るもんじゃないし」。さらに思わぬ憐れみの視線まで向けられて、華野が言い返す場面はテンポがよくて笑ってしまった。
お昼は、フレンダがネットで見つけた人気のお店へ。ビルの最上階にあるお店は、拍子抜けするほど普通の定食屋だった。「普通だ 普通すぎて フレンダを殴りたい」、「たまには 普通も悪くないってわけよ」。冷やし中華に餃子定食と、5人がそろってご飯を囲む姿は、暗部の仕事の合間とは思えないほど穏やかだった。
食事の後には、コロシアムの試合がたいてい夜8時ごろから始まることも分かる。「超ゴールデンの時間帯じゃないですか」。殺し合いを娯楽として家族の食事時に流しているのだとしたら、黒幕の悪趣味ぶりがますます際立つ。
フレンダからのごほうび
夕方までの空き時間、フレンダは華野に声をかける。「さっきの潜入は よくやってくれたわね 華野」。さらに、華野が加わった日の戦いで麦野が速攻を選んだのは、長期戦になれば新入りが危ないと考えたからだろうと明かす。「これ 麦野には内緒ね」。「だけど実際あんたは使い物になるって証明してくれた」、「直接の戦闘でも間接の潜入でもね」。華野がアイテムの一員として認められていく流れが、とても温かかった。
そのお礼にと、フレンダは「先輩が特別に 望み 叶えちゃうってわけよ」と申し出る。華野が頼んだのは、「マジか 結構 危ないものだけど」と言われるようなもの。「いざというときの 備えといいますか」。それが何なのかはまだ明かされないが、暗部の世界に足を踏み入れた華野なりの覚悟がのぞいていた。
着せ替えと笹の葉アイス
一方、絹旗は華野を着せ替え人形にしてしまう。「着せ替え地獄を超お見舞いされるのが」新入りの伝統だそうで、用意されたのは「七夕らしく 超ただのミニ浴衣です」。念願のお友達ができるのかと期待した華野の反応も含めて、なんともかわいらしい場面だった。
尾行に向かう前には、滝壺が「七夕限定の笹の葉アイスだって」とアイスを手にしている。「パンダの餌みたいなスイーツだな」と言いながら、横からそのアイスをなめてしまう麦野の姿には、思わず頬がゆるんだ。そしてついに、高額の保険金をかけられ、今夜コロシアムに出場する選手が姿を現す。にぎやかな日常から一転、物語は本題へと踏み込んでいく。
第5話のまとめ考察
華野がアイテムに加わった意味
第5話でいちばん心に残ったのは、華野がアイテムにとって欠かせない存在だと証明されたことだ。これまでの華野は、麦野たちの強さに振り回されてばかりだった。けれど今回は、外からは決して破れない中央サーバーへ、常務になりすまして正面から入り込んでみせた。戦う力とは違う形で、アイテムに新しい選択肢をもたらしたのは間違いなく華野だった。
フレンダの言葉どおり、華野がいなければ情報は手に入らず、作戦は手詰まりになっていたはずだ。ビルに穴を開けることが穏便な方だったと笑い合える世界で、華野が自分の居場所を少しずつ作っていく。その過程が、今回はとても丁寧に描かれていた。
にぎやかさと闇の間で
一方で、物語の根っこにあるコロシアムの闇は、より具体的な形を見せ始めた。保険金をかけられた学生たちが、使い捨ての選手として殺し合いの場に送り込まれている。にぎやかなランチや着せ替えの裏で、そんな現実が静かに進んでいるのが、この作品の怖さでもある。華野がフレンダに頼んだ備えも含めて、5人がこの闇にどう向き合っていくのか、続きが気になって仕方がない。




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