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いよいよ最終回。クリスマスの雲海と雪の越後湯沢を舞台に、恋人になったぼたんは「友達を辞めて、一体何になったの?」と、二人のこれからに不安を募らせる。第2話から続くお揃いのピアスは売り切れ——しかし、いぶきは二人分のピアッサーをすでに用意していた。行為を一切描かずに愛を伝えきる、お酒が繋いだ優しい縁の、美しいハッピーエンドである。




クリスマス、雲海と梅酒
ロープウェイで、山頂へ
最終回は、まだ暗い早朝のロープウェイから。支柱を通過するたびグラグラ揺れる乗り物にアトラクション気分ではしゃぎながら、ぼたんといぶきは雲海を見に山頂を目指す。空と山が溶け合う、この季節この時間だけの特別な景色が二人を待っていた。
山頂の自販機にはお酒まで並び、土産物には「ロープウェイのロープ」まで売っている。オフショルダーで寒がるぼたんに、いぶきがそっと上着を貸し、手をつないで暖を取る。些細な仕草の一つ一つに、恋人になった二人の距離が表れていた。
非日常の絶景も、結局はお酒と手のぬくもりに落ち着く。大仰にならない幸福の描き方が、この作品の最後までぶれない魅力だ。
武甲の梅酒と、台湾のクリスマス
下で買った武甲の梅酒を分け合えば、冷えた体もぽかぽかと温まる。折しも季節はクリスマス。だがジンラン曰く、台湾のクリスマスは日本と「三百六十度違う」らしい。ケーキもプレゼント交換もないという文化の違いに、みんなで目を丸くする。
お酒を片手に、何気ない話でくすくす笑い合う。そんな穏やかな時間こそが、この物語がずっと大切にしてきたものだった。
かなでとジンランの、プレゼント交換
30分で選ぶ、本
一方、かなでとジンランは本屋でクリスマスを過ごしていた。「プレゼント交換をしよう」と提案し、30分で互いに一冊を選ぶことに。だがかなでは、本を選んでいるのか、ジンランのことを考えているのか、分からなくなっていく。
「喜んでくれるかな」と自意識に揺れながらも、その期待なしに贈り物は選べない。小林秀雄の言葉まで引きながら悩むかなでの生真面目さが、なんとも彼女らしい。
知ってほしい、知りたい
ジンランが贈ったのは、台湾現代史のアンソロジー。そしてかなでが選んだのは、好きな映画監督の撮った写真の絵はがき。「あなたのことを書いて、私に送ってほしい」——。
「私のそういうのを、奏に知ってほしい」とジンラン。知ってほしい、知りたいという願いが、そのまま愛情表現になる。傷ついたかなでが、もう一度誰かと向き合う姿は、静かで温かな祝福に満ちていた。
越後湯沢、日本酒天国へ
盆酒館の、聞き酒番所
いぶきのエスコートで、二人は雪の越後湯沢へ。新潟といえば米、米といえば日本酒。訪れたぽんしゅ館には、県内全酒造を利き酒できる番所や、日本酒をブレンドした酒風呂まで揃っていた。
コインを入れて次々と利き酒を楽しむぼたんは、すっかり夢中。「缶コーヒーを買うみたいに、お酒が飲めちゃう」と目を輝かせ、「いぶきと出会わなければ、こんな経験はできなかった」としみじみ噛みしめる。
あと何回、一緒に飲めるのかな
けれど、幸福の絶頂で、ぼたんの胸には影がさす。「その頃には、私たちはもう学生ではないかもしれない。あの寮に住んでいないかもしれない」。あと何回、いぶきと一緒にお酒が飲めるのだろう——と。
楽しいはずの旅先で、ふと未来への不安に飲み込まれてしまう。幸せだからこそ怖くなる、その繊細な心の揺れが、丁寧にすくい取られていた。
友達を辞めて、何になったの
準備ができてたのは、私だけ?
宿でも、ぼたんの不安は消えない。大浴場ではなく「二人だけがいい」と甘えつつ、その心には重い問いが渦巻いていた。「友達を辞めて、私たちは一体、何になったの」。
楽しみにしていたお揃いのピアス——第2話から温めてきたあの願いは、売り切れていた。落胆するぼたんは、こう思ってしまう。「二人の先へ進む準備ができていたのは、結局、私だけだったのか」と。
焦りに流されるように距離を詰めてきた自分を、ぼたんは持て余していた。その切実な不安が、最終回のクライマックスへと静かに張りつめていく。
二人分の、ピアッサー
そんなぼたんに、いぶきは差し出す。「私が買ってたの、少し前に」——用意されていたのは、二人分のピアッサー。「これで私に穴をあけて。私にも、して」。
「友達を辞めて何になったの」という問いへの、いぶきの答えは「一緒に、初めてのピアスを開けよう」だった。行為を一切描かずに愛を伝えきる、この作品の百合表現の一つの到達点。ぼたんが一気に詰めた距離を、今度はいぶきが自分のやり方で、そっと縮めていく。
拒んだ人などいなかった。ただ、進み方が少し違っただけ。ファーストピアスが馴染む六週間後も、また一緒に。そう約束する二人に、胸が熱くなる。
まとめ——お酒が繋いだ、優しい縁
酔っ払いの、ハッピーエンド
雲海を見ながらの梅酒、蔦屋の一角でのビール、そして新潟の日本酒天国。最終回は、小癪なオチまで添えた“酔っ払いのハッピーエンド”だった。他人との間に壁を作りがちだった序盤に比べ、いぶきの笑顔は見違えるほど増えている。
すれ違いも、不安も、焦りもあった。それでも、お酒が繋いだ縁は、どこまでも優しく美しい。その先にある二人の未来を、そっと想像させる余韻まで含めて、完璧な着地だった。
乾杯とともに、また会いましょう
郡上とジンランの絶妙な関係も含め、寮に集う面々それぞれの想いが、静かに、けれど確かに実を結んだ全12話。お酒の味を知り、人となりを知り、そして誰かを好きになっていく——その一連を、これほど繊細に描いた作品はそうない。
上伊那ぼたんの、酔へる姿は百合の花。一輪ずつ咲いたその花々を見届けられたことに、心から乾杯を。ぼたんたちのこれからの機微は、ぜひ原作で。素晴らしい物語をありがとうございました。




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