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『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』第10話の副題は「スーパーの裏で光るふたり」。クリスマスの夜、佐々木の足元に転がってきたみかんから、青果部門の小畑との一服が始まる。佐々木はとっさに、自分は店に来る営業だと嘘をついてしまう。そして山田本人に向かって、一緒に一服したいのは田山さんだけだと言い切る。後半では、弱い部分を知る人は誰もいないはずの店長が、小畑にだけ打ち明け話をする。




副題「スーパーの裏で光るふたり」は、崩れた型が二つとも戻った題だ
公式サイトのSTORYでは、第10話は10本目「スーパーの裏で光るふたり」と出ている。第8話と第9話で少しずつ崩れていた副題の型が、この回で元に戻る。
助詞は「で」、末尾は「ふたり」
これまでの副題は、裏でヤニ吸うふたり、添えるふたり、贈るふたり、学ぶひとり、かけるふたり、裏に残る匂い、裏と夏の終わり、裏から見つけるふたり、裏で触れるひとり、と並んできた。10本目は、助詞が「で」、末尾が「ふたり」という、第1話と同じ形に戻っている。第8話で助詞が外れ、第9話で人数が「ひとり」に落ちたあとの、二つそろった戻り方だ。
光るふたりは、佐々木と田山とは限らない
本編で一緒に吸う組み合わせは、前半が佐々木と小畑、後半が店長の後藤と小畑になる。この回で「ふたり」として並ぶのは、ほとんどの時間、いつもの佐々木と田山ではない。題の「ふたり」を誰と読むかで、回の見え方が変わる。
絵コンテは、偶数回の森あおいに戻った
公式サイトのスタッフ欄では、脚本が森江美咲、絵コンテが森あおい、演出が遠藤良柄、総作画監督が大滝那佳と佐藤惠美になっている。絵コンテは第1話から第7話まで、鈴木理人が奇数回、森あおいが偶数回を交互に担当し、第8話と第9話で別の人に代わっていた。10本目で、偶数回を担当してきた森あおいが絵コンテに戻っている。演出の遠藤良柄は、この作品では初めての名前だ。
光の話は、画面づくりの側からも出ている
制作側のアカウントは、十分だろ、お前で、の場面について、ライティングによる陰影を撮影で処理したと紹介している。副題の「光る」は、画面づくりのうえでも、この回の見どころとして扱われている。夜と室内の場面ばかりなのに、濃淡や光がきれいだという感想も出ていた。
みかんを拾ったら、佐々木は営業になっていた
前半は、クリスマスの街から始まる。日帰り出張と年末の挨拶回りに追われていた佐々木は、気づけば世の中から取り残されていた、とこぼしながらスーパーへ向かう。
取り残された二人が、みかんで出会う
足元に転がってきたみかんを追うと、みんなウキウキクリスマスで帰ってるのに、と嘆きながらみかんを拾う店員がいる。冒頭で佐々木がこぼした「取り残された」と同じ気分を、相手も口にしている。佐々木は、このみかん、そこの段ボールに入れたらいいですかね、と手を貸す。
いつもお仕事お疲れ様です
拾い終えて恐縮する店員に、佐々木は、顔上げて、こんなの大したことないから、と返し、冬はたくさんみかん売れて大変だね、いつもお仕事お疲れ様です、と続ける。客として店に通ってきた人の、店員へのねぎらいがそのまま出ている。この一言が、あとで相手の身の上話を引き出すきっかけになる。
見知らぬ店員は、二度目だ
今日は吸っていかないんですか、と声をかけられて、佐々木は、この気まずさ、店長と初めて遭遇した時以来だ、と思う。第3話で、裏を訪ねた佐々木が店長に不審者扱いされた場面が、ここで引き合いに出される。公式のあらすじも、また見知らぬ店員、と書いている。
勢いの嘘が、身分をひとつ増やす
相手は佐々木を、何かの商品の営業だと思い込んでいた。佐々木は、そうです俺は営業です、と話を合わせ、というか勢いで嘘をついてしまった、と頭を抱える。山田と田山という二つの顔を持つ人の話に、今度は佐々木のほうが、営業という別の身分を持ち込んだ。田山さんごめん、どうしよう、という心の声も入る。
翌日も、呼び名は「営業さん」のまま
翌日、小畑は山田に、山田はさ、営業さんと普段どんな話してんの、と聞く。山田の答えは、主に私がからかって遊んでる、だった。勢いでついた嘘は一晩たっても解けず、店の中では佐々木が「営業さん」として話題になっている。
小畑の悩みは、迷惑をかけた人に得をさせたい、だった
みかんを拾っていた店員は、青果部門のチーフの小畑だった。自己紹介のあと、話はみかんの売り方から、小畑自身の悩みへ移っていく。
若いのに立派だね
小畑さんチーフなんだ、若いのに立派だね、と感心する佐々木に、小畑は、ある程度勤務歴あったから勝手に出世しただけで、と謙遜する。褒められても、自分の手柄とは受け取らない人として紹介されている。
皮を拭いて、袋に詰めて売る
みかんは、皮についてる汚れを拭いてっすね、袋に詰めて売るんです、と説明される。店で手詰めするぶん安く売れる、他のスーパーよりうまくて安い自信ありますね、と話す小畑に、佐々木は、そういうのかっこいいね、と返す。小畑の返事は、こだわりというより、取り戻さなきゃって感じなんで、だった。
迷惑ばかりかけてきた人
取り戻す理由として、小畑は、俺よく接客でクレームくるんすよね、無駄にでかくて人見知りで、それでどの店に配属されても迷惑ばっかかけてて、と打ち明ける。売り場へのこだわりは、接客で失ったぶんを売り上げで埋め合わせるための工夫だった。
他にできることがあるんだから
支えになっているのは、この店で俺がすごく尊敬している人の言葉だった。どんだけ俺に迷惑かけられても、他にできることがあるんだから、そこを頑張ればいいって、と言ってくれる人がいる。小畑の望みは、こいつには面倒かけられたけど得したなって思ってほしい、というものだった。
その人きっと嬉しいよ
売り上げ取れるかも分かんないのに、とうつむく小畑に、佐々木は、小畑さんならできるよ、それに君がそれだけ頑張ってくれてる時点で、その人きっと嬉しいよ、と返す。結果が出る前の頑張りを、もう相手に届いているものとして受け止めている。小畑は泣き出し、俺なんかとお話してくれてありがとうございました、と頭を下げる。
できることしっかりやれてるな
翌日の報告では、店長が、果物の売り上げは全店一位だったぞ、と小畑を名指しで褒める。続く言葉は、できることしっかりやれてるな、だった。小畑を支えてきた「他にできることがあるんだから」が、ほぼ同じ言葉のまま、ほめ言葉になって返ってくる。だが残業は程々にするように、という一言も添えられる。
「一緒に一服したいのは田山さんだけです」を、山田本人が聞いていた
小畑が去ったあとの喫煙所に、山田が姿を見せる。ここからは、いつもの二人の、いつものすれ違いになる。
仲が良さそうでしたね
山田は、二人とも仲が良さそうでしたね、佐々木さんは人がいいですから、と切り出し、そのうちこのお店の喫煙者全員と仲良くなりそうですね、田山ちゃん以外でも吸えちゃうんでしょうね、と続ける。褒め言葉の形を取りながら、中身は明らかなやきもちになっている。
一緒に一服したいのは田山さんだけです
佐々木の返事は、山田さん、俺が一緒に一服したいのは田山さんだけです、だった。田山について語った一番まっすぐな言葉が、田山本人である山田に向けて言われている。佐々木は、二人が同じ人だとは今も気づいていない。
田山さんが俺に人権を与えてくれている
理由として佐々木が思い出すのは、初めてこの喫煙所に誘われたときの、吸いなよおじさん、田山さんが許しちゃる、という一言だった。本来ここは客のおっさんが使っていい場所じゃない、田山さんが俺に人権を与えてくれているんだ、と続く。店員でもない自分がここにいられるのは田山のおかげだ、という理屈で、ほかの誰とも違うと説明している。
小畑君とも店長とも違う
田山ちゃんじゃなきゃダメなんですね、小畑君とも店長とも違うわけですか、と確かめられて、佐々木は二度とも、はい、と答える。やきもちから始まった質問が、最後は念押しの確認になっている。汗すごいですよ、と言われて、更年期です、とごまかすのも佐々木らしい。
本当に本当に本当
山田の心の中では、流されやすくてお人よしで鈍すぎでドジで社畜で更年期で、と佐々木への文句が並び、おかきばっか食ってでかくて私のファンで、と続いたあと、本当に本当に本当、で途切れる。悪口を並べるほど、最後に言いかけた一言のほうが大きく残る。佐々木の側は、なんて恵まれたクリスマスなんだ、と浮かれている。
完璧鉄人の店長には、弱い部分を知る人がいない
後半は、店長の後藤の話になる。語り手を務めるのは、後藤を尊敬する部下の一人、小畑だ。
経歴は、ほとんど伝説として語られる
大卒入社からわずか一年でレジ部門のチーフとなり、店が暇だからという理由でイベントを企画し、店舗売り上げを3倍にした結果、3年目にして本社の店舗企画部へ、と経歴が読み上げられる。7年後には、自分が入った方が早いという理由で現場に戻り、いまは店長をしている。完璧鉄人後藤を知らない社員はいない、と語りは言い切る。
弱い部分を知る人は、誰もいない
ぶっきらぼうで表情の変化が少ないが、部下への面倒見がよく、たくさんの人から尊敬されている、と紹介は続き、かく言う俺もその一人だ、と小畑が加わる。仕事でミスするところも、欠勤したところも、見たことがないという声が並ぶ。締めは、店長の弱い部分を知る人は誰もいない、の一行だった。
泣いているところを見てしまった
月報を出しに行った小畑は、店長室で後藤が泣いているらしい姿を見てしまう。山田に話そうとして、店長はみんなに愛されてんだぞ、もし山田にそれを共有したら、悲しみが伝播して店が回らなくなるんじゃねえのか、と思いとどまる。秘密を抱えた小畑の様子は、今までありがとうな、と言い出して、今日死ぬ、と聞き返されるほどおかしくなっている。
俺らも店長を見ている
小畑は、お世話になってる俺が店長をねぎらうんだ、店長の心を軽くする、と決めて声をかける。何か悩み事があったりしますか、と聞き、店長がいつも俺らを見てくれているように、俺らも店長を見ているってことっすかね、と続ける。見てくれている人を、見返す側に回ろうとしている。後藤は、こんな気遣いのできる部下が私にいたとは、店長感激だぞ、と受け取る。
泣いていた理由は漫画で、机に座っていられない人だった
小畑の気遣いは、落とした月報からあっさり崩れる。そこから後藤は、自分から、誰にも話していなかった話を始める。
見てませんから、で全部ばれる
後藤は、この月報は完成ということでいいんだよな、店長室前に落ちてたぞ、と切り出す。あわてた小畑は、俺店長が泣いてるとこ見てませんから、と口走る。隠そうとした一言で、見ていたことが全部伝わってしまう。
休憩中に漫画を読んで泣いていた
後藤は、とりあえず一服するか、そして私の話を聞け、と誘う。種明かしは、休憩中漫画読んで泣いてるのをお前に見られていたとはな、だった。殺してください、と縮こまる小畑に、私は面白い奴は殺さない主義だ、と返すところまで、店長は一貫して楽しんでいる。
上司がメソついていたら、誰に頼る
後藤は、私も部下にがっかりされずに済んでよかったよ、そりゃ上司がメソついてると思ったらお前、誰に頼るんだという話だろ、と言う。小畑は、俺でよかったらたまには頼ってほしい、と返し、よく考えなくても余計なお世話っすよね、と引っ込める。頼られる側でいようとする上司と、頼ってほしい部下の言い分が、ここで正面からぶつかる。
漫画家になりたかった
後藤が明かしたのは、実は私は本当は漫画家になりたかったんだがな、という話だった。諦めた理由は、私には一日中机にかじりつく行為が耐えられなかったんだ、だった。弱い部分を誰も知らないはずの人が、自分の口から、叶わなかった夢の話をしている。
現場に戻った理由も、同じだった
続けて後藤は、自分が店に入った方が早い、という噂の中身にも触れる。それもな、デスクにずーっと座っているのが我慢できなかっただけ、大袈裟なんだどいつもこいつも、と言う。伝説として語られていた現場復帰の理由と、漫画家を諦めた理由は、どちらも机に座っていられないことだった。
十分だろ、お前で
なぜそんな超重要機密を俺なんかに、と戸惑う小畑に、後藤は、お前の心配は余計な世話でないと言いたかったんだがなー、と笑う。もしまた私が奇妙な素振りを見せたときは、オチが何にせよ頼らせてやってくれよ、と続け、いいんですか、と聞き返す小畑に、十分だろ、お前で、と返す。頼ってほしいと言った部下に、弱いところを先に渡してから、頼る相手として認めている。
その時を、少し心待ちにしている
語りは、店長のその時が来るのを少し、心待ちにしている、で結ばれる。尊敬する人が弱る日を待つという言い方が、頼られる日を待つという意味で使われている。最後に後藤は、泣いていた漫画におすすめポイントまで付けて渡し、その漫画巻数多いから頑張んなよ、と送り出す。
裏の喫煙所は、別の顔を見せる場所だった
最後に、この回で並んだものをまとめておく。表では見せない顔が、どれも喫煙所で出てきている。
田山の顔、店長の顔、営業の顔
山田は、喫煙所では田山として佐々木と話す。後藤は、喫煙所で小畑に、伝説の裏にあった本当の理由を話した。佐々木だけが、この回では逆に、喫煙所で営業という本当ではない顔をかぶってしまった。
今夜のふたりは、小畑と後藤でもあった
客の佐々木と店員の田山が裏で一緒に吸うようになったのと同じように、部下の小畑と店長の後藤も、裏で一服しながら話す関係になった。副題の「光るふたり」は、いつもの二人と、今夜の二人の両方に掛かっていると読める。
まだ思い出しきれない昔の話
みかんの一件のあと、佐々木は、好きだなあ、ああいう仕事と職場にまっすぐな子、とつぶやき、そういや昔にも、そういやあのスーパー、と何かを思い出しかける。その先はこの回では語られず、話は山田の登場で打ち切られる。第8話で田山が話した、吸っている姿がずっと頭にある男の人の話と、つながるのかどうかは、まだ分からない。




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