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『BLEACH 千年血戦篇-禍進譚-』第48話の副題は「THE END TWO WORLD」。前回の「THE END 2」の数字が英語になり、そこにWORLDがついた。未来で折られた一護の剣は、「そうならなかった過去」を挟むことで元に戻る。そして「すべて見えている」と言うユーハバッハの未来視には、藍染惣右介の鏡花水月が干渉していた。未来を書き換える王に、過去と目で挑んだ回である。




「THE END」「THE END 2」、そして「THE END TWO WORLD」
第48話の副題は「THE END TWO WORLD」。第46話が「THE END」、第47話が「THE END 2」だったので、終わりを意味する語が三話続けて副題に入ったことになる。前回の数字の2は今回、英語のTWOに置き換わり、そのうしろにWORLDがついた。
二つの世界を掲げた回で、敵は世界を一つにすると言う
TWO WORLDは二つの世界という意味だ。ところがこの回の終盤、ユーハバッハは現世と尸魂界の名を挙げたうえで、「我が力の前に形を失い」「一つになる」と言い切る。副題が二つの世界を掲げた回で、敵の目標は世界を一つにすることだと、本人の口から出てくる。
公式サイトのあらすじによれば、この時点のユーハバッハは「全ての聖文字を取り戻し『全知全能』の力を昇華させた」ところで、「最後の余興に瀞霊廷を滅ぼすと言い残し」て姿を消している。余興という軽い言葉と、世界を一つにするという目標の大きさの差が、この回の敵の構えをよく表している。
脚本は第44話以来の単独、総作画監督は三話おきの小松原聖
各話スタッフは、脚本が平松正樹、総作画監督が小松原聖。最終クールの脚本は、第41話から第43話までが平松正樹と田口智久の連名、第44話が平松正樹の単独で、第45話から第47話までは田口智久が続けて担当してきた。平松正樹が一人で脚本を書くのは、第44話以来になる。
総作画監督は、第42話と第45話に続いて小松原聖である。高柳久美子も第41話、第44話、第47話と三話おきに名前が出ていて、担当が一定の周期で回っているのが分かる。作画監督は5人で、そのうち近藤いずみと滝川和男は、同じく小松原聖が総作画監督だった第42話にも名前がある。
未来で折られた剣を、「そうならなかった過去」で戻す
冒頭は手当ての場面から始まる。「治療を急ぐのだ」「まずは一護と恋次を」。倒れた者から順に立て直していく流れで、ここまでは戦いのあとの後始末に見える。
傷は手当てできても、未来で折られた剣は戻らない
ところが一護の剣だけは、この手順に乗らない。「ユーハバッハの力は」「あらゆる未来の可能性を見通し」「望むままに選び」。だから「ここから先の未来すべてで折られたものを」「拒絶で元に戻すことはできぬ」「ということなのだろう」。傷は今の側から手当てできても、未来の側で折られたものは今の側から戻せない、という理屈である。
公式サイトの用語集は全知全能を「未来のすべてを見通す事が可能」と説明し、「そこに『理解』と『対策』の介在する余地はない」と書いている。「手の打ちようがないではないか」という声が出るのも無理はない。そこへ「ごめんね」「これじゃもう」「戦えないね」と、謝る声が重なる。
阿散井恋次だけは、それでも追うと言う。「待て、どうするつもりだ」と止められて返すのは、「決まってんだろう」「あいつを追うんだよ」。「せめて何か策を練ってから挑むべきだ」と言われても、「あんな化け物相手に」「策なんか浮かぶのかよ」と引かない。そこへ「もう無理なんだ」という声まで出る。
味方をしに来たのではなく、義理を返しに来た
公式サイトのあらすじは、この場面を「消えかけた勇気の灯」と書き、その前に現れたのは「かつて剣を交えた、あの男たちだった」と続けている。
現れた男は、何のつもりだと問われて「なんの真似かって?」「そんなの僕に聞かれてもね」と返す。「君の味方しろって言うから」「仕方なくしてるだけなのに」。するともう一人が口をはさむ。「味方しろとは言ってねえだろ」「俺はお前に義理を返せって言ったんだ」。助けに来た理由が、友情でも正義でもなく義理だと、わざわざ言い直している。
用が済んだあとの一言も「さて これで義理は返したってことでいいかな」。貸し借りの勘定がきれいに閉じたところで引き上げていく、さっぱりした手つきである。
書き換えられた未来に、折られなかった過去を挟む
肝心の一手はこうだ。まず井上織姫に、剣にもう一度術をかけるよう頼む。そのうえで「君の力で拒絶できないほど」「強大な力で書き換えられた未来でも」「そうならなかった過去さえあれば」「そこまでは拒絶できるはずだ」。そして「挟んでおいたよ」「君の剣は」「折られなかった」。
ユーハバッハは第46話で一護の卍解を「未来で折っておいた」と言い、第47話では雨竜が「折れなかった未来と置き換えた」とやり返した。今回は未来ではなく過去の側に、折られなかったという一枚を挟み込んで、そこまで戻す。未来を書き換える力に、過去へ書き足す力で答えた格好だ。視聴者の投稿に「月島さん、本当にありがとう」という礼が並んだのも、この一手があったからだろう。
二人の父親が運んできた、撃つべき矢尻
次に現れるのは二人の父親だ。「竜弦」「黒崎のお父さん」「どうして二人がここに」。公式サイトのキャラクター紹介で、石田竜弦は「雨竜の父」と書かれている。もう一人は、呼び名のとおり一護の父である。
聖別で死んだ滅却師の銀から作った矢尻
渡されるのは矢尻だ。聖別を受けた滅却師はみな「心臓に銀の血栓ができて死ぬ」。「その銀を集めて作った矢尻だ」「お前が撃つべき矢尻だ」。
公式サイトの用語集は聖別を「ユーハバッハが行う滅却師の選別とその力の略奪」と説明し、「九年前の『聖別』では石田雨竜の母・叶絵や黒崎一護の母・真咲が滅却師の力を奪われた結果、命を落とすこととなった」と書いている。キャラクター紹介によれば、竜弦は叶絵と結婚し、一護の父は真咲を妻に迎えている。聖別で妻を亡くした二人が、聖別で死んだ者の銀から作った矢尻を届けに来る、という組み合わせになっている。
第42話で「仮初めの父親」と呼ばれた人
ユーハバッハは第42話で、一護の父を「あれは仮初めの父親にすぎぬ」と切り捨てていた。一護は「俺の親はあんたじゃねえよ」と返している。第46話では一護を「我が息子よ」と呼び、「絶望した息子を殺すことほど、親にとってつらいものはないのだから」とまで言った。親を名乗る敵の前に、本物の父親たちが道具を持って現れる。
公式のキャラクター紹介には、一護の父について「石田雨竜の父、石田竜弦とはその頃からの知り合いである」とも書かれている。古くからの知り合い二人がそろって同じ場所に来ているのも、この場面の見どころだ。
「その距離を元に戻してくれたのはお前だ」
一護と恋次は、ユーハバッハを追って進む。「大丈夫か一護」「悪い」「大丈夫だ」「ほら立て」と、足元もおぼつかないままのやり取りが続く。
残れと言われて、残らない理由
一護は恋次に「よかったのか」と切り出す。「そんな傷で」「お前もルキアと一緒に」「残ってよかったんだぞ」。気づかいのつもりの一言に、恋次はここで長く答える。「今ここにてめえしかいねえから言うぜ」。
「もうずっと何十年も」「俺とルキアはすれ違えもしねえぐらい遠く離れちまってた」「その距離を元に戻してくれたのはお前だ」。公式サイトのキャラクター紹介は、恋次と朽木ルキアを「流魂街時代からの幼馴染で家族同然の関係だった」と書き、ルキアの処刑が決まったときは「一護と協力関係を築いて、共にルキア救出を目指した」と続けている。恋次がここで持ち出したのは、その救出から続いている借りである。
だから「お前が進めなくなったときは」「俺がしょってでも進んでやるってな」、それも「お前が死ぬまでずっとだ」。締めは「分かったら二度と俺に残れなんて言うな」「俺も今のセリフは二度と言わねえからよ」。
「元に戻す」が、この回は三度出てくる
恋次の言葉には「元に戻してくれた」が入っている。冒頭では「拒絶で元に戻すことはできぬ」と、戻せないものの話だった。現れた男たちの一手で剣は戻り、恋次は何十年もの距離が戻ったと一護に言う。そしてあとで、ユーハバッハは「その剣が元に戻っていることも」見えていたと口にする。戻せないはずのものが戻り、その戻ったことを敵が先に見ている、という三段の並びである。
藍染惣右介は「利ではないよ」と言う
ユーハバッハの行く先で待っていたのは、藍染惣右介である。公式サイトのキャラクター紹介は藍染について、かつて三界を巻き込む反乱を起こし「無間」に幽閉されていたが、「京楽により一時的に外界に連行されている」と書いている。
一護に手こずった王と、一護に敗れた元隊長
先に皮肉を言うのは藍染の側だ。「てっきり上で勝負をつけるものだと思っていたが」「どうやら予想以上に」「黒崎一護に手こずったと見える」。ユーハバッハの返しは「自分の苦悩を私に投影するのはよせ」「黒崎一護に敗北したのはお前だ」。
公式サイトの用語集には、藍染が「死神代行・黒崎一護に敗れた」とある。一護に手こずった王と、一護に敗れた元隊長が、互いの負けを言い合っている。どちらも一護のせいで予定が狂った側で、その二人が向き合っているのがこの場面のおかしみだ。
礼は言うが、理由は利でもない
藍染は「あの忌まわしい椅子を壊してくれたことには礼を言おう」「おかげでこうしてあなたを阻止できる」と続ける。ユーハバッハが「私と戦うか」「尸魂界のために」「それでお前に利があるとは思えんな」と問うと、返ってくるのは「利ではないよ」「私は常に私を支配しようとするものを」「打ち砕くためにのみ動く」。
前の場面で現れた男たちは、義理を理由に来た。藍染は礼を口にしながら、理由は利でもないと言う。支配されることを嫌うという一点だけで、敵の敵として立っている。視聴者の感想には「藍染の卍解、結局出ないんかい」という声もあり、力の出し惜しみまで含めて、この人らしい立ち方である。
「すべて見えている」王が、見せられていた
一護と恋次が追いつくと、ユーハバッハは「随分と早い到着だ」と迎える。そして「見えていたぞ」「お前たちが来ることも」「その剣が元に戻っていることも」「そして」「それが再び折れていることも」。続けて「きれいに折ったつもりだったのだがな」「なんともいまいましい幸運だ」。
来た理由まで、先回りして言い当てる
ユーハバッハは、一護が「井上織姫に傷を治させてから来なかった」理由まで並べてみせる。「奴自身も瀕死だったからか」「それとも治してから追ったのでは」「間に合わぬと思ったか」。そして「お前が来たところで」「変えられるものなど何一つないというのに」。相手の選択の理由まで先回りして言い当てるのが、この王の見せ方である。
卍解はすべて、未来ですでに砕かれている
恋次が卍解を発動しても、答えは「卍解など役には立たん」「すべての卍解は未来においてすでに砕かれている」。用語集の「理解」と「対策」の余地はない、という説明を本人の言葉にすると、こうなる。今この場で出す技が、出す前から未来の側で片づいているという宣言だ。
共闘は、敗者の習性
藍染が恋次をかばうと、ユーハバッハは「お前が阿散井恋次をかばうか」「面白い」「共通の敵を前に団結するのは」「お前の忌み嫌う敗者の習性だろ」とあざける。さらに「お前の鏡花水月もすでに折れているぞ」「それも見えているぞ」。
一護に対しては「戦況を見て瞬時に」「藍染惣右介との共闘に転じたことは上出来だ」と評価しながら、「鏡花水月も我が力には及ばぬ」と続け、見えている未来を読み上げる。「衝撃で我が力に吹き飛ばされたのが」「阿散井恋次」「次に私に腕をもがれたのが」「貴様だ一護」。そして「すべて見えている」。「見えている」という言葉を、この王はこの回だけで何度も繰り返している。
解放を見せられていなかった一人
ところが、ここで話がひっくり返る。藍染が一護に向けて言うのは「よく私の鏡花水月に」「瞬時に対応できたな」。一護は「こっちに来る途中から」「違和感を感じてた」「あんたがみんなを鏡花水月に」「かけた時の感覚だ」と答える。
藍染の説明はこうだ。「私は君たちがここへ着く前に」「鏡花水月を解放し」「奴のジ・オールマイティの未来視に」「鏡花水月で干渉できることを確信した」。「あとは」「鏡花水月の通用しない君だ」「君に鏡花水月の解放を見せぬままでいたことが」「こんな形で役に立つとはな」。
公式サイトの用語集は鏡花水月の能力を『完全催眠』と呼び、「五感全てを支配し、一つの対象の姿・形・質量・感触・匂いに至るまで全てを敵に誤認させる」と説明している。「すべて見えている」と言った王の未来視に、誤認させる力が入り込んでいた。そしてその中で動けたのは、解放を一度も見せられていなかった一護だった。ユーハバッハに「敗者の習性」とあざけられた共闘が、そのまま決め手になっている。
世界を一つにすると言う王の前に、石田が来る
それでもユーハバッハは「なあ一護」「あんなもので私に死を与えられたと思ったか」と言う。「私の力は未来を改変する」「私が死した未来さえ」「書き換えてやろう」。
自分が死ぬ未来さえ書き換える
第47話の締めでも、ユーハバッハは「だが、私の作る未来が変わることはない」と言っていた。今回はその先まで踏み込んでいる。未来を書き換える力が、自分が死ぬ未来にまで向けられる。一護の剣を未来で折った力が、今度は自分の死を未来から消しにかかる。
そして「無駄だ」と続け、現世と尸魂界の名を挙げたうえで「我が力の前に形を失い」「一つになる」。副題が二つの世界を掲げたこの回で、敵が口にするのは二つを一つにすることである。
誰一人欠けることなく
終盤、「いいかい?」「僕たちはこの世界を守って生きて帰るんだ」「誰一人欠けることなくね」「欠ける奴がいれば」「それこそ死罪だよ」と号令がかかる。続いて「我らの世界を二度も蹂躙できると思うな」「虚圏は絶対に守ってみせるぜ」という声も上がる。世界を一つにすると言う敵に対して、それぞれが自分の世界を守ると言い返している。
最後に並ぶのは、一護と石田
そして最後に「石田」と呼ぶ声がして、返ってくるのは「待たせたな、黒崎」。「もったいぶりやがって」「行くぜ」「うん」と短く続いて、二人が並ぶ。視聴者の投稿にも「ここで石田との共闘か」「ラスボス戦が一護と石田の共闘なの」という声が並んだ。見えている王の前に、次に並ぶのは一護と石田雨竜の二人である。
まとめと考察
未来を書き換える王に、過去と目で挑んだ回
第48話は、未来を書き換える力にどう答えるかを、三つのやり方で見せた回だった。未来で折られた剣には、「そうならなかった過去」を挟んで戻す。すべてを見通す未来視には、見る側に誤認させる鏡花水月で干渉する。そして自分の死さえ書き換えると言う王には、「誰一人欠けることなく」生きて帰るという号令で答える。未来の側で決められたことを、過去と目と人数で崩しにかかった回である。
助けに来る理由がばらばらなのも面白い。現れた男たちは義理を返しに来て、恋次は何十年もの距離を戻してもらった借りを返すと言い、藍染は利ではないと言う。二人の父親は、聖別で妻を亡くした者どうしで矢尻を運んでくる。理由がばらばらなまま同じ側に立つところに、ユーハバッハが「敗者の習性」と呼んだ共闘の中身が見える。
「TWO WORLD」の二つとは何か
副題のTWO WORLDは、ユーハバッハが一つにしようとする現世と尸魂界のことだと、まずは読める。ただこの回を通して見ると、未来と過去、見えている未来と見せられた未来、という二つも重なって見える。一つの未来しか認めない王に、二つ目の世界を差し出し続けた回と言ってよさそうだ。
「すべて見えている」と言い切った王が、見せられていた。第46話の「THE END」から続く三話は、終わりに向かいながらも、敵の見ている結末をひとつずつ崩していく流れになっている。




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