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伝説の仮面職人ガストン・ルーの最後の弟子にして、世界中に散らばった師匠の仮面を壊して回るお尋ね者のペル。数か月前から恐怖政治に沈む王国リスブランで、彼は大事な荷物を盗んだ少女ソナと出会う。悪人を名乗る仮面屋と元王女の出会い、統治隊トトクとの仮面争奪戦、そしてペルが背負う過去と世界最強の戦士まで、第1話を場面ごとに一つずつ振り返る。




仮面屋ペルの登場
『朱色の仮面【第1クール】』第1話「仮面屋ペル」は、伝説の仮面職人ガストン・ルーの最後の弟子ペルが、師匠の仮面を壊す旅の途中で元王女のソナと出会い、王国リスブランの城に眠る仮面をめぐる戦いに挑む幕開けだった。軽妙な掛け合いから一転、凄惨な過去と圧倒的な強敵が姿を現す、密度の濃い一話だった。
笑顔の仮面
さあさあ寄ってらっしゃい、と街角で店を広げるペル。本日の目玉商品は笑顔の仮面で、つけると仮面が張りついて誰でも笑顔になってしまうという代物だ。けれど客の反応はいまひとつ。みんなうつむいてどんよりしている、こんなときこそ笑顔が必要だと思うんだ、とぼやくペルの姿から、この街を覆う重い空気が伝わってくる。
仮面屋に憧れているという子どもたちにサインをねだられ、まんざらでもない様子のペル。けれど話題がガストン・ルーに及んだ瞬間、表情が変わり、サインは今度な、と立ち去ってしまう。明るく振る舞いながらも、師匠の名前に触れられたくないペルの影が、さりげなく描かれていた。
盗まれた大事なもの
その隙に、ペルの大事な荷物が盗まれてしまう。盗んだのは帽子をかぶった少女ソナ。中身は厳重に封印された箱で、お宝の可能性高し、と目を輝かせるソナだったが、箱の中からは、すまんが開けてくれんかの、という声が聞こえてくる。しゃべるお宝なんて聞いたことがない、と驚きながらも、高く売れそう、と喜ぶソナがたくましい。
けれど、すぐにペルが追いついてくる。これは俺の超大事なものなんだ、盗むとはいい度胸してんな。こんな小さな子どもに手を出す気、最低、と言い返すソナに、俺は超ど級の悪人だ、と笑ってみせるペル。自らを悪人と名乗る主人公という立ち位置が、この作品の個性を印象づけていた。
統治隊のトトク
そこへ現れたのが、統治隊のトトクだった。丁寧な物腰で、この国リスブランでは仮面の路上販売は禁止です、とペルに同行を求める。けれどその言葉の裏には、まったく別の顔が隠されていた。
必要な犠牲
トトクはペルの正体を言い当てる。いくつもの国で指名手配を受けている犯罪者、ガストン・ルーの最後の弟子にして、世界中に散らばった彼の仮面を壊して回るお尋ね者。そして、ソナを助けようとした子どもたちに向かって、必要悪という言葉があるように必要な犠牲もあるのです、と言い放つ。
少年よ、あなたの苦しみが痛いほどわかります、これからあなたは友人を失う、しかしそれこそが人を強くするのです。慈愛に満ちた口調で残酷なことを語るトトクに、背筋が凍った。丁寧な言葉づかいと狂気が同居する敵の登場で、物語の空気が一気に張り詰める。
クモの仮面
あんたみたいのが上にいるんじゃ、街の連中もうつむくってもんだぜ。ペルはソナを背負い、クモの仮面の力で逃走する。数か月前にトップが変わって以来、この国は恐怖政治気味なのだとソナは説明する。逃げる二人の背後では、法を守らぬ国に未来はない、と統治隊に逆らった一人の男が、トトクの前に立ちはだかっていた。勇敢な人よ、私がお前の名を忘れることは生涯ないだろう、と告げるトトクの言葉には、敬意とも狂気ともつかない響きがあった。
安全な場所にたどり着くと、ペルは、ガストンの仮面を壊すためにこの国に来た、と明かし、仮面の場所を知っているというソナの申し出に耳を傾ける。
見返りにご飯をおごってほしい、とちゃっかり要求するソナ。そもそもなぜ城のことに詳しいのかと問われ、家出中なの私、今の王様が嫌い、あいつをギャフンと言わせたいんだ、と答える。ソナルエ、みんなからはソナって呼ばれてる。こうして二人は、翌日の仮面舞踏会に紛れて城へ潜入することになる。
一枚で小さな国が買える仮面
ソナは、城で見たという仮面の形を覚えていた。それはガストン・ルーの作品の一つ、エンリュウの仮面だった。ガストンって世界で三本の指に入る仮面屋の一人だよね、彼の仮面は全部がすごい能力を持っていて、一枚で小さな国が買える価値があると言われている。そう語るソナに、どうして壊しているのかと聞かれても、ペルは、教える義理はねえ、と答えるだけだった。
一方、城では、トトクが主にペルの存在を報告していた。部下に潜伏先を探らせているというトトクに、そやつの執念が本物であれば我が宝を狙ってここに来るはず、ペルという男を見極めよう、と答える声。ペルが来ることを待ち構えている城の主の存在が、これから始まる潜入に不穏な影を落としていた。
城での仮面争奪戦
年に一度の仮面舞踏会の夜。城の警備は厳重だが、ペルはカメレオンの仮面で姿を消し、警備の目をあっさりかいくぐる。それ盗めばよかったな、とつぶやくソナに、やらねえよ、と返すやりとりも軽快だ。そしてソナは、小さい頃によく使っていたという秘密の通路へとペルを案内する。仮面のある玉座のすぐそばまでたどり着いた二人を待っていたのは、またしてもトトクだった。
師匠の最後の作品
トトクはペルに取引を持ちかける。王国はガストンの仮面を2枚持っている。エンリュウの仮面と、勇気の仮面。そのうちの勇気の仮面は、ペルにとって師匠の最後の作品だった。返せ、と声を荒らげるペルに、どんな極悪人かと思っていましたが、その正体は愛する師の影を追いかける少年とは、とトトクは笑う。さらにトトクは、ペルが特に危険な一枚、武神の仮面を持ち歩いていることも見抜いていた。それを一人の弟子がかぶったことで惨劇が起こった、愛する師の死を奪った仮面への憎しみがあなたの原動力でしょうか、と。
我らの仲間になるならば、という誘いを、ペルはいらねえよ、と一蹴する。悪人は悪人らしく奪ってやるさ、二度と悲劇を起こさねえように、師匠の仮面は俺が全部ぶっ壊す。悪人を名乗りながら、誰よりも悲劇を憎んでいるペルの本心が、ここではっきりと示された。
猫の仮面
ペルが取り出したのは猫の仮面。猫は夜行性、この暗闇のなかで自分だけ動ける。俺の仮面のなかでも最速、という能力でトトクに挑むものの、トトクの力はその上を行っていた。目で追い切れないほどの攻撃にペルは深手を負い、生け捕りをオーダーされているというトトクの余裕が、両者の力の差を物語る。
逃げろと叫ぶペルの前で、トトクはソナに目を向け、これはこれは元王女様ではありませんか、と告げる。目的は復讐ですか、と問われたソナは、わからない、でもきっと父様も母様もそんなこと望まない、と答えた。ソナが王女の座を追われた少女だったという事実が、彼女の明るさの裏にある痛みを浮かび上がらせる。
ペルの過去
深手を負ったペルの脳裏によみがえったのは、師匠のもとで修行していた頃の記憶だった。出来が悪く、弟子のなかで唯一の半人前だったペル。工房に入れるのは一人前だけだと言われ、やり返す勇気がなかっただけだ、と自分を責めていた少年時代。不合格を告げられ、これで半人前はペルだけだ、と言われた日。仲間は、お前のそのやり返さない勇気こそ、と励ましてくれたが、ペルの答えは、やり返さなかったんじゃない、やり返す勇気がなかっただけだ、というものだった。
認められたかった
師匠の仮面を参考にしようと思っただけだった。ただ師匠に一人前だって認められたかった。でも、そんな日はもう来ない。その言葉の重さが、冒頭で描かれた凄惨な光景と重なり、胸が痛んだ。一人前になりたかった少年の願いが、取り返しのつかない悲劇を生んだことが、彼の旅の原点なのだとわかる。
俺の最高傑作
立ち上がったペルがかぶったのは、武神の仮面をモデルに自分で作ったという仮面だった。不出来な仮面でな、刀を具現できるのは数秒だけ。でも、俺の最高傑作だ。何も持っていないではありませんか、と笑うトトクに、居合で挑むペル。師匠の仮面ではなく、自分の作った仮面で戦う姿に、彼の覚悟がにじんでいた。
悪いけどカバン持っててくれ、とソナに荷物を託し、さっさと仮面をいただいて脱出するぞ、こいつらをギャフンと言わせるんだろ、と笑うペル。その言葉に、二人の間に生まれ始めた信頼が感じられた。
まとめと考察
『朱色の仮面【第1クール】』第1話は、ペルとソナの出会いから、城での仮面争奪戦、そしてペルの過去までを一気に描いた、濃密な幕開けだった。最後に、印象に残ったポイントを振り返っておきたい。
世界最強の戦士ゴウオン
最後に姿を現したのは、この国を制圧した世界最強の戦士ゴウオンだった。トトクとの戦いで深く傷ついたペルにとって、とても戦える相手ではない。能力を付与できる仮面屋は多くない、仲間にならぬか、とペルを誘うゴウオンは、このリスブランを制圧したのも通過点にすぎず、すべてをこの手に収める、世界統一を目指そう、と語る。1話にしてラスボスのような強敵が立ちはだかる展開に、息をのんだ。昔から駆けっこで負けたことがなくてな、と涼しい顔で語るその姿には、仮面の力をもってしても届かない底知れなさがあった。ペルがこの強敵とどう向き合っていくのか、今から気になって仕方がない。
開けてしまった箱
そして、ペルから荷物を託されていたソナは、あの箱を開けてしまう。開けてくれたのはそなただな、良い顔だ、気に入ったぞ、力を貸してやろう。箱の中の仮面がソナに語りかけ、制止する叫び声が響くなか、物語は最悪の形で次へと引き継がれていく。
ペルが封じ続けてきた仮面が、よりにもよってソナの手に渡ってしまった。仮面を壊す旅の物語は、第1話の終わりで早くも大きな試練を迎えることになる。復讐を問われて、父様も母様もそんなこと望まない、と答えたソナ。その気高さを持つ彼女が、危険な仮面の力とどう向き合っていくのかも、今後の大きな見どころになりそうだ。明るい掛け合いと容赦のない展開、その振れ幅の大きさが、この作品の最大の魅力なのだと思う。次の展開からも、ますます目が離せない。




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