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第18話のサブタイトルは「サイキ」。前回の代償が大きすぎて、勝ったはずなのに誰も喜べないところから始まる回だった。答えを探して凱がナスティのもとを訪ねると、決戦の前に紫音がここへ来ていたと告げられる。そこで語られていたのは、紫音自身が選ばれし者ではなかったという話と、龍成を呼び戻すという結論だった。




勝ったはずなのに、誰も喜べない
「四人で戦う」と言い出した仲間たち
公式のあらすじは、前半のほとんどが前回の締めくくりで埋まっている。インメイを滅ぼすために龍成の代わりに命をなげうった紫音、その想いを受け継いで再び閃光の鎧を纏った龍成、発動した覇皇帝が覇者の勾玉の力を跳ね返してインメイの撃退に成功したこと。そして「その代償はあまりにも大きく、勝利を喜ぶ者は誰もいなかった」。第18話は、その翌日の空気から始まる。
最初に持ち出されるのは、抜けた穴を誰が埋めるのかという実務的な話だ。「普通に考えれば、紫音が抜けた穴を埋めるのはあいつしかいねえ」。あいつ、とは龍成のことで、実力だけを見れば答えは出ている。それでも「みんなが納得していない」と言葉が続き、「大和なんか四人で戦うとか言い出して」と現状が明かされる。
四人で戦う、という案が出てくる時点で、これは戦力の話ではなく気持ちの話だとはっきりする。つい昨日まで敵として斬り合った相手を、抜けた仲間の席に座らせられるかという問いなので、正しい答えがあっても飲み込めないのが自然だった。
凱がナスティのもとを訪ねる
その話を持ってナスティを訪ねたのが凱だった。「あんたは紫音や龍成と昔からの付き合いなんだろ」「なんかいい方法はねえのかよ」と、半ば投げ出すような聞き方をする。答えを持っている人に会いに行ったというより、答えを持っていそうな人に押しつけに行った、という言い方のほうが近い。
返ってきたのは方法ではなく、事実だった。「少し前に、紫音がここに来たの」。続けて「今思うと、こうなることを分かっていたのかも」と付け加えられる。訪ねてきた用件は「龍成が生きていることを伝えに来てくれて」というもので、決戦の前に、紫音のほうから先に足を運んでいた。
ここで回が一段深くなる。遺言も手紙も残っていないのに、話だけが先に置かれていた形で、しかもそれを預かっていたのが戦いの現場にいない人だったのがうまい。凱が愚痴をこぼしに行った先が、たまたま答えの置き場所だった。
紫音がナスティに遺していた言葉
「俺は選ばれし者じゃなかった」
回想で語り出しになるのが、「俺は選ばれし者じゃなかった」という一言だ。覇皇帝は炎、空、水、大地、そして光の五つの属性を持つ者が思いを一つにすることで発動する、という前提がまず示される。
そのうえで種明かしが来る。「でも、真の覇皇帝を生み出すには、それぞれの属性の純度が高くないといけないんです」。純度とは「どれだけその属性を集められるか」で、武装ギアの研究の過程で分かったことだという。紫音自身はもともと万能型で、どんな属性にも対応できる。「だから龍成の代わりに閃光の鎧を受け継ぐことができた」。そして「けど、ユーティリティープレイヤーの宿命か、俺の光の力は純度が基準値に達していなかった」と続く。
開発者本人が、自分の鎧の適性を数字で否定してみせる場面だった。誰よりも仕組みを知っている人が、その仕組みに照らして自分は違うと結論を出しているので、反論のしようがない。
「今度は俺が助ける番です」
「じゃあ、どうすれば」と聞かれて返るのが「龍成に復帰してもらうんですよ」。「元を正せば、あいつはオリジナルのメンバーだったんだから」「その方が収まりもいい」と、話しぶりはどこまでも軽い。「まさに、最後のピースがかちっとはまったわけです」とまで言ってのける。
重いのはその次だった。「あなたはそれでいいの」と確かめられて、「もちろん。龍成にはいろいろ借りもある。今度は俺が助ける番です」、そして「この命に代えてでも」。前回のあの退場は、その場の勢いでも自己犠牲の発作でもなく、決戦の前にもう決めてあったことになる。
順番が逆さまなのがつらいところで、視聴者は結果を見たあとで、決意の場面を見せられている。軽口で押し通した会話ほど後から効くという作りで、「収まりもいい」という言い方の無責任さが、本人なりの照れ隠しだったと分かってしまう。
龍成の帰還と、満場一致の答え
「大事なのはお前がどうしたいかだ」
ナスティが凱に渡す言葉は、「紫音は自分の命を犠牲にして、サムライトルーパーを守った」「あの子の思いを無駄にしないで」という形にまとめられる。誰を入れろとも、どうしろとも言っていない。判断そのものは若い側に残されたままだった。
一方の龍成は真田のもとにいる。「真田さん、すみません。ここに戻ってくるまでに、だいぶ時間がかかってしまって」と切り出すと、「迷ってる。お前の顔を見れば分かるさ」と先回りされる。続く助言が「大事なのは、お前がどうしたいかだ」「自分がやりたいことは何なのか。それが答えだよ」。
教官らしい言い方だが、突き放してもいる。許可を出す立場の人が、許可ではなく意思を出せと言っているので、龍成のほうから頭を下げるしかなくなる。この一往復があるおかげで、次の場面の気まずさが生きた。
「戦いたいじゃねえ、戦ってもらうんだよ」
そして龍成が仲間の前に立つ。「俺をサムライトルーパーに入れてくれないか」、「虫が良すぎることは分かってる」「でも俺は、サムライトルーパーとして戦いたい」。敵側にいた時間の長さを思えば、断られても文句は言えない申し出だった。
返ってきたのが「ふざけんな。戦いたいじゃねえ、戦ってもらうんだよ」「やらなきゃ困るんだよ」。「今、みんなでその話をしてたんです」「で、満場一致の答えが」と引き継がれて、「俺たちは仲間だろ」「おかえりなさい」「また一緒に戦いましょう」と並ぶ。決め手も明かされる。「凱に言われたんだ。紫音はきっと、こうなることを望んでるって」。
つまり四人で戦うと言い張っていた側を動かしたのは、説得ではなく、伝言だった。紫音が置いていった話を凱が持ち帰り、それが全員に回っている。サブタイトルの再起が、個人の立ち直りではなく五人そろえ直す作業として描かれているのが今回の骨格だった。
天導界という場所と、そこへ渡る道
竜に変えられた破壊の神と、三種の神器
感傷に浸っている暇はない、いつまた攻めてくるか分からない、という一言で空気が切り替わり、「天導界のことを、俺たちに詳しく教えてくれませんか」と説明が始まる。まずは、かつてこの星にいたという破壊の神の話からだった。
その神は世界を掌握できると言われる最強の鎧、つまり覇皇帝を手に入れ、暴走を誰も止められなかった。見かねた他の大陸の神々が隙を見て襲いかかり、その姿を竜に変えて記憶を消し、この小さな島国に閉じ込めた。そのうえで神の使者であるサグメを目付け役に置き、三種の神器に覇皇帝の力を封印した、というのが始まりだという。
封印の話がここで出てくることで、これまで小道具でしかなかった勾玉が、いきなり神話の本体に格上げされる。サグメの名前が世界の成り立ちの側から出てきたのも大きい。上司として偉そうにしていた人が、実は見張り役として置かれた側だった、という組み替えが起きている。
天の架け橋と、四つの関所
狙いのほうも整理される。天導界の狙いは真の覇皇帝ではないかという見立てが凱の中にいる親父から出ていて、だったら先にこちらが完成させて叩き潰す、という方針になる。「そんな、うまくいくのかよ」という当然の突っ込みも入るが、真の覇皇帝に必要な覇業の盾は「まだ親父が隠した場所に眠っているはず」だという。
道順も明かされる。人間が天導界へ行くには、日の出と同時に一時だけ出現する天の架け橋を渡ればいい。人間界と天導界をつなぐこの道は四つの関所に分かれていて、それぞれに四獣士が待ち構えている。インメイは初めて霊獣になった段階でまだ力の半分も出していなかったが、ガイメイは猪、シメイは蛇、そしてリーダーのゴメイは馬の化身で、その力は普段の姿より何倍も強くなるという。
「だったら天導界に行っても、やられるのがオチじゃねえか」に対する答えが「今のままならな。だから俺たちも次の段階に進む」。残り話数を考えると、四つの関所という区切り方はそのまま日程表に見える。誰がどこを抜けるのかを想像させてから次の話に入るのが、うまい引きだった。
十勇士に託された役割と、奥義の条件
覇業の盾にも五人が要る
次の段階として呼び出されたのが十勇士だった。「おい、なんだよ。こんなところに呼び出して」から始まり、「あれ、もう仲直りしちゃったの」「別に喧嘩なんかしてねえし」と、もう完全に身内のじゃれ合いになっているのがおかしい。口喧嘩の中身が「紫音が抜けて、すぐに代わりを迎えられるか」だったのも、彼らなりに気にしていた証拠だった。
本題は重い。「真の覇皇帝に必要な覇業の盾にも、別の五人が必要らしい」、「お前たちには、その役割を担ってもらいたい」。求められたのは「鎧の力を引き出す奥義を極めてくれ」で、「我々が」「できるか」と念を押されて、「やるしかねえんだろ」「どうせ俺たちに帰る場所もねえからよ」と返る。
帰る場所がないから引き受ける、という言い方が彼ららしかった。頼まれ方も断り方も知らない者たちが、初めて役割を与えられて、面倒くさそうに受け取っている。この照れ方が、そのまま次の場面の課題につながっていく。
首筋に文字が浮かばない者たち
条件が説明される。奥義を習得する前に、それぞれの正義を誓う証として、首筋に自身を表す文字が浮かび上がる。まずはそこからだ、と言われて「俺たちの正義、ウケる」と笑い飛ばそうとするが、「奥義は、誰かを守るためにって気持ちを持たないと使えないよ」と釘を刺される。要するに身も心も人間になれ、という無茶な注文だった。
訓練は難航する。「くそ、首に文字すら出てこねえし」「何なんだよ、正義って」とこぼす相手に、「誰かのために自分を犠牲にして戦う、そういう奴らが周りにいたから」「お前にもきっとできる」と返る場面があった。続けて「なんか変わったな。あんたは誰のために戦ってるんだ」と聞かれ、答えが「そうだな。今はファンのためかな」。
喜怒哀楽を存分に感じてこそ人間だ、という乱暴な講義もあって、ネットの反応では、龍成のゲテモノ舌や、風呂の中でさえお面を外さない者、サスケの新しい私服といった細かい場面が話題になっていた。重い回に日常を差し込んだというより、人間らしさを覚える訓練そのものが日常の形をしている、という並べ方だと思う。
送り出す側の顔ぶれ
「東京の防衛に全力を尽くします」
出発の前に、人間界側の守りが固められる。「皆さん、ようこそおいでくださいました」と迎えられたのは、久しぶりに顔をそろえた初代の面々だった。その中の一人が、「期待に応えられるか分かりませんが、東京の防衛に全力を尽くします」と頭を下げる。凱たちは明朝、日の出とともに天導界へ向かい、それまでは仮想空間で訓練を積む、という段取りだった。
時間切れの合図とともに、「十勇士はもう少し訓練を積ませてから合流させる」と方針が示される。「こっちは、俺たちがいなくて大丈夫なのか」という心配には「心配ない。人間界は何があっても俺たちが守る。だからしっかり天導界で暴れてこい」。そのあとに「でも、年も年だから早く帰ってきてくれよ」「何言ってんだ。まだまだ若い者には負けないっていう気概を持たないと」「張り合おうとするな。主役は彼らなんだぞ」と軽口が続いた。
この短い掛け合いが今回いちばん効いていた。先に走った人たちが、後ろを引き受けると言い切ったうえで、自分たちは主役ではないと確認し合っている。作品の年齢そのものを味方につけた場面で、ここだけ空気が明るいのも狙い通りだと思う。
「紫音がくれた命ですから」
見送りの場所には、避難していない人たちが残っていた。「みんな、避難しなかったんですか」と驚く側に、「あなたたちが戦っているのに、そんなことできないわよ」と返る。その中から「龍成、お久しぶりです」「よかった、生きていてくれて」と声がかかるのが大きい。裏切り者として扱われていた時間を、街のほうが先に取り消してくれた形だった。
龍成の返事が「次も必ず帰ってきます」「紫音がくれた命ですから」。そして「時が来たぞ」「サムライトルーパーを天導界へ導き給え」と祈りが上がり、「この世界を頼んだよ」と送り出される。残された側にかけられた「良ければ、一緒に彼らを見守りませんか」という誘いで、戦わない人たちの居場所まで用意されていた。
帰ってくると約束させる話ではなく、帰ってくると本人に言わせる話にしてあるのがいい。ネットの反応でも、この出発の見せ方に思わず声が出た人が何人もいたようで、重い前回からの立て直しとしては十分すぎる盛り上げ方だった。
「サイキ」まとめと考察
「俺はサムライトルーパーのファンですから」
渡った先で待っていたのが最初の関所だった。「わざわざそちらから出向いてくれるとはな」と迎えられ、「お前らの野望は、俺たちが打ち砕く」「威勢がいいな。お手並み拝見といこうか」と始まる。ところが鎧ギアを呼び出せない者が出てしまう。「心に迷いがあるのか」「まだどっかで紫音さんのことを」と指摘され、化け物じみた相手を前に足が止まる。
そこで効いてくるのが、また紫音の言葉だった。「あいつらのことが好きなんですよ」と前置きして、悲しみも痛みも、人間になって背負わなければいけないものをタフに受け止めて成長した凱、一匹狼だったのにいつしかまとめ役を引き受けた魁人、たくさんの悲しみを隠して周りを笑顔にする大和、誰よりも怖がりなのに誰よりも先に手を差し伸べる武蔵、そしてそんな奴らをずっと信じてきた龍成、と一人ずつ挙げていく。締めが「きっとあいつらなら、この世界を救ってくれると信じています」「だって俺は、サムライトルーパーのファンですから」。
これに「お前だってサムライトルーパーじゃねえか」と返る一言が置かれ、「そんな話を聞いたら、弱音なんか吐けないね」と立ち上がる。「こんなところで終わってたまるかよ」「あいつの分も戦うんだ」「やっとその気になったか」「俺たちは前を向く」と続き、相手が「なら次は、俺が相手だ」と構えたところで幕になった。訓練の場で出た「今はファンのためかな」という答えと、紫音の「俺はファンですから」がきれいに揃うので、今回は誰かの応援が戦う理由になる回として設計されていたのだと思う。
天導界の内側で動いていたもの
並行して、敵側でも足元が崩れていた。ガイメイがインメイに詰め寄る「貴様、どういうつもりだ」に対し、「猪が鼻息を荒くして、何の用かな」と返される。そこへ「我々はガイメイの証言で龍成が裏切り者だと信じた。だがガイメイは暗示をかけられていたようだ」と割って入る声があり、「暗示。誰がそんなことを」と当のガイメイが取り乱す。自分がかけられていたことを、本人だけが知らされていなかった。
そして今回いちばん不穏なのが、サグメとの一対一だった。覇者の勾玉を前にインメイが「三種の神器の一つとされているが、これこそが全ての源といっても過言ではない」と切り出し、「どこで知ったのですか」と問われて「言ったはずです。私は全てを知っていると」。内訳として挙げたのが「この天導界における真理」「覇皇帝と我ら四獣士の関係」「そしてあなたの体のこと」で、最後に「この勾玉の持ち主は、私の方がふさわしい」「サグメ様なら、その意味をご存じのはず」と迫る。
前回ぼかされたままだった全てを知った、の中身が少しだけ形になった回でもある。神話の側では、破壊の神を見張るために置かれたのがサグメだった。そこへ体のことを持ち出されているのだから、見張り役の正体が次の爆弾になるのはほぼ確実だと思う。紫音を失った側が五人を揃え直し、十勇士が新しい役割を引き受け、四獣士は内側から割れ始めた。サブタイトルの一語がそのまま、立て直しの回であることと、これから四つの関所を抜けていく後半戦の始まりであることを両方指している構成で、重い前回の直後に置く回としては、これ以上ない仕上がりだった。




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