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『二十世紀電氣目録-ユーレカ・エヴリカ-』最終回、第13話の副題は「望む未来へ」。暴走する電氣頭脳から洋輔を助け出すため、喜八と稲子は電氣の飛行機で空へ飛び立つ。疑り深かった喜八は稲子に「信じてるからな」と告げ、清六の姿をした電氣頭脳は「俺はお前たち二人を信じてる」と言い残す。最後は富士山の見える朝、喜八が電氣の時代を必ず見せると約束する。三人の夢に、それぞれの答えが出る最終回だった。




最終回の副題は「望む未来へ」
第13話(最終回)の副題は「望む未来へ」(出典: TVアニメ『二十世紀電氣目録-ユーレカ・エヴリカ-』公式サイト 第拾參話ページ)。公式あらすじは「稲子たちに助けられ、正気を取り戻す喜八」と始まり、「暴走する電氣頭脳から洋輔を助け出すため、喜八と稲子は電氣の発明で乗り込むことを決意する」と続く(出典: 同)。脚本は浦畑達彦、絵コンテは山村卓也、演出は石立太一と吉田愛夢舞、作画監督は成松健吾。
三つの夢の行き先
あらすじは最後に「喜八の夢、稲子の夢、そして洋輔の夢」と三人の夢を並べ、「譲れない夢の先で、どんな未来を望むのか」と結んでいる(出典: 同)。最終回の題が「望む未来」になっているのは、三人がそれぞれの夢にどう決着をつけるかが、この回の本題だからだ。電氣の時代を作る夢、母のような酒を造る夢、そして清六ともう一度夢を追う夢。どれも簡単には譲れないものだった。
電氣頭脳の中から喜八を連れ戻す
冒頭、洋輔は電氣頭脳を完成させようとしている。「これでやっと全部揃った」「僕たちの夢を再生できる」。
「喜八さん 起きてください」
そこへ稲子が乗り込んでくる。「喜八さんを返してください」「そこにいるんでしょ」。洋輔は「二人の魂が融合しようとしている」「大事なところなんだ」と止めようとするが、稲子は引かない。「喜八さん 起きてください」「電氣の時代を作るんでしょ」「こんな所にいちゃいけません」。
そして、喜八の作る「電氣の時代を見たいんです」「うちの作ったお酒もまだ飲んでないんですから」。信じることが取り柄の稲子が、ここでは喜八の夢そのものを信じて、呼び戻しに来ている。電氣頭脳に取り込まれかけていた喜八を引き戻したのは、機械の理屈ではなく、稲子のまっすぐな言葉だった。
「やっと会えた」
喜八が正気を取り戻したあと、崩れかけた地下で洋輔は電氣頭脳のもとに残る。「やっと会えた」「大変だったか」「ほんと」「全部君のせいだよ」。洋輔にとって電氣頭脳は、失った清六ともう一度会うための場所だった。崩落が迫る中でも、洋輔はそこを離れようとしない。
電氣で空を飛ぶ
地上に戻った喜八たちは、洋輔が取り残されていることを知る。
「空から行く」
地下に工場が張り巡らされていたせいで、大きな地盤沈下が起きていた。「人なんかとても立ち入れない」。そこで喜八が出した答えが「空から行く」「それで洋輔を電氣頭脳から助け出す」だった。周りからは「まだ想像できないな」「電氣で空を飛ぶなんて」という声も上がる。
準備の途中で、喜八は稲子に「ごめん 稲子」「俺 夢中になっちまって」「ずっと電氣頭脳にばっかり気を持っていかれてた」と謝る。稲子の返事は「うちがどれだけ心配したか」「反省してください」。夢に夢中になりすぎて大事な人を心配させたことを、喜八がきちんと認めて謝っている。二人の関係の近さが、このやりとりに表れていた。
「うちが乗ります」
飛行機には二人しか乗れない。弥治郎は「無理 高いところ無理」と尻込みし、ほかの者が名乗り出ても「二人じゃ重すぎて飛べないんだよ」。そこで稲子が「うちが乗ります」と言う。「喜八さんが本当に作りたい電氣の時代のためです」。
送り出す姉は「必ず帰ってくるのよ」と声をかけ、稲子は「もちろんだよお姉ちゃん」と応える。飛び立った機体の上で、喜八は稲子に「信じてるからな」と告げる。疑り深いことが持ち味だった喜八が、最後の飛行で「信じてる」と口にする。第1話からの二人の関係が、この一言にぎゅっと詰まっている。
電氣で空を飛ぶという発想は、第1話から喜八が思い描いてきた電氣の時代の象徴でもある。兄と一緒に描いた夢の一つを、兄のいない今、稲子を乗せて実現してみせたことになる。洋輔を助けるという差し迫った目的のために、夢の発明が初めて本当に役に立った瞬間だった。
電氣頭脳との別れ
地下の奥にいたのは、清六の姿をした電氣頭脳だった。
「いつかちゃんとまた作ってやるからな」
喜八は「これは電氣頭脳だ」「でも よく似せられてるよ」「すごい執念だよな」と洋輔の執念に驚く。そして電氣頭脳に向かって「悪いな 電氣頭脳」「いつかちゃんとまた作ってやるからな」と声をかけ、電氣頭脳は「はい 構いません」と応える。
電氣頭脳は洋輔について「特に君の弟くんには」「ほとほと手を焼かされたんだ」と語り、喜八は「俺の弟だからな」と返す。清六を模した電氣頭脳が、最後は清六らしい言葉で弟を見送っている。
「俺はお前たち二人を信じてる」
洋輔は「また僕と電氣の時代を目指そうよ」「二人で」と呼びかける。けれど電氣頭脳の答えは「これからは俺がいなくても大丈夫だ」「洋輔の思い出でいいから」「俺はお前たち二人を信じてる」だった。
洋輔が求めた「二人」は自分と清六だったが、返ってきた「二人」は喜八と洋輔のことだった。清六の夢を継ぐのは、清六そのものではなく、残された二人なのだという答えが、ここではっきりと示されている。
洋輔が電氣頭脳に求めていたのは、清六そのものだった。けれど、清六の姿で返ってきたのは、自分を思い出にして前へ進めという言葉だった。喜八が「いつかちゃんとまた作ってやるからな」と約束したのも、清六の代わりを作るためではなく、電氣の時代を作る仕事を続けるという意思表示に聞こえる。電氣頭脳との別れは、清六との二度目の別れであり、同時に清六の夢を受け継ぐための儀式でもあった。
「君なんて嫌いだ」
電氣頭脳の制御がなくなると、今度は蒸気工場そのものが暴走し始める。
「電氣の時代を作るには 俺は 洋輔の力が必要なんだ」
それでも洋輔は動こうとしない。「僕には必要なんだ」「清六だけなんだ」。喜八は「兄ちゃんはもういない」「兄ちゃんの夢は」「電氣の時代は」「今の俺たちで作るんだ」と訴え、「電氣頭脳を同じ思いで作ってただろ」と続ける。
そして「電氣の時代を作るには 俺は 洋輔の力が必要なんだ」。洋輔は「君に 僕の思いがわかるわけないだろ」「僕にどうしろと言うんだ」と叫び返す。清六だけを求める洋輔に、喜八は清六の弟としてではなく、同じ夢を追う仲間として手を伸ばしている。
喜八と稲子は、上昇気流に乗って洋輔を連れ出す。落ちてくる瓦礫にぶつかりながらも、洋輔は命をつないだ。放送後には、その奇跡のような助かり方に驚く声も多かった。
「清六 お前の弟はすごいな」
助け出された洋輔は、秘書に「おけがはございませんか」と気づかわれながら、「君なんて」「嫌いだ」とこぼす。最後まで素直に礼は言えないが、この「嫌いだ」には、もう突き放すだけの冷たさはない。洋輔らしい、ひねくれた降参の言葉に聞こえた。
無事に戻った稲子は「おかえりなさい」と迎えられる。そして空を見上げながら「清六 お前の弟はすごいな」という言葉がこぼれる。清六が夢見た電氣の時代の空を、弟の喜八が本当に飛んでみせたのだ。
電氣錦と、富士山の見える朝
騒動のあと、物語は穏やかな日々へと移る。
「とても革新的なお酒だわ」
咲からの連絡で、伊勢で「電氣錦の初絞り」を奉納することになる。姉と健吾の祝言も近いという。咲は電氣錦を口にして「お月様みたいに優しい丸み」「それからこのキレはまるで電氣ね」「とても革新的なお酒だわ」と絶賛する。母のような酒を造りたいという稲子の夢が、ここで一つの形になっている。
稲子が洋輔の様子を尋ねると、咲は「あの子は案外めげてないみたいだったわ」「もう次の目標を見つけて」「あちこち飛び回ってるみたいだもの」と答える。清六を失った痛みを抱えたまま、洋輔もまた次の夢へ歩き出していた。
「うちは何年だって 喜八さんを信じて待ちます」
夜明け前、稲子は喜八を起こして海辺へ連れ出す。見えたのは「富士山です」。子供の頃、母が「この辺りからでも富士山が見られるから」「今度一緒に見に行こうって」言っていたこと、でも母は来られなかったことを、稲子は語る。
喜八は「稲子と出会ったおかげで」「目録のこととか兄ちゃんのことを知ることができた」「それに電氣の時代を作ることが」「俺自身の夢にもなった」「ありがとうな」と礼を言う。稲子も「うちだって喜八さんのおかげで」「お母さんのお酒が作れました」と返す。そして喜八は「稲子には電氣の時代を絶対に見せたいんだ」「何年かかるか分かんないけど 必ず見せるから 待っててくれよ」。稲子の答えは「うちは何年だって 喜八さんを信じて待ちます」だった。
信じないと言い張っていた喜八が約束をし、「信じます」が口ぐせの稲子がそれを信じて待つ。最後は照れた喜八が走り出し、「信じるのが取り柄なんだろ」「喜八さんと会ってから疑り深くなっちゃったんです」と言い合いながら追いかけっこになる。二人の関係がちょうど入れ替わったような、ほほえましい幕切れだった。
まとめと考察
第13話は、三人の夢にそれぞれの答えを出して、物語を締めくくった最終回だった。
信じない少年と、信じる少女
公式の人物紹介で、喜八は「疑り深い少年」、稲子は「他人を信じることには長けている」少女と書かれている。最終回では、その喜八が「信じてるからな」と言い、稲子が「疑り深くなっちゃった」と言う。正反対の二人が互いに影響し合い、少しずつ相手に近づいていった十三話分の変化が、この言葉の入れ替わりに表れていた。
清六の夢を、残された二人で
電氣頭脳は、清六の姿で「俺はお前たち二人を信じてる」と言い残した。清六の夢は、清六を取り戻すことではなく、喜八と洋輔がそれぞれの道で追い続けることで生き続けていく。洋輔が次の目標を見つけたという知らせは、その始まりにも聞こえる。
望む未来は、まだ先に
喜八が約束した電氣の時代は、まだ来ていない。それでも稲子は「何年だって」待つと言った。最終回は夢が叶う瞬間ではなく、夢を信じて待つ約束で幕を下ろした。二人が見た富士山の朝焼けのように、望む未来はまだこれから明けていくところなのだと思う。




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