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第6話のサブタイトルは「パルプ・フィクション」。ミーティアが猫になるのは事故ではなく、動物になるなら何がいいかと聞かれて自分で猫と答えた結果である。しかも変身は一度で終わらず、二度目は人魚姫で、今度は声が出せなくなる。後半はアース13から来た魔法少女が乗り込んでくるが、この回で本当に起きているのは戦闘ではなく、三重に積み上がった勘違いの解体だった。




公式サブタイトルは「パルプ・フィクション」。猫になったのは自分のせい
「動物になるとしたら何になりたい?」
入口が完全に不意打ちである。多岐川眠兎が「なあ、桃尻」「動物になるとしたら何になりたい?」と聞き、呼び方を訂正しながら答えた一言が「猫」だった。次の瞬間には呪文が飛んでいて、花織ミーティアは猫になっている。
種明かしはそのあとに来る。「新しい魔法を開発してたんだ」「より安全に仲間を変身させる魔法だな」「実験台だな」。つまり質問はアンケートではなく、変身先の指定だった。本人は「私って天才じゃね?」と得意げで、聞かれた側は答えた覚えしかない。
前回の締めで、ミーティアは流星に猫が好きかと確かめていた。懐いてくる可愛い猫がいたら嬉しいか、というところまで聞いて、嬉しいと言えと詰め寄っていた。あの前振りが一話またいで回収されているので、開始一分で笑ってしまった。
効果時間は二時間、解除魔法もあるのに
条件はきちんと示される。効果時間を聞かれた眠兎の答えが「だいたい2時間ぐらいかな」で、しかも解除魔法をかけようとまでしている。それを「まあまあ、いっか」で流してしまうのが本人だった。
つまり戻ろうと思えばいつでも戻れた。それでも戻らないので、このあと起きる面倒ごとは全部、本人が自分で選び取ったものになる。
この作品はこういう組み方が本当にうまい。事故で猫にされた話ではなく、猫でいることを選んだ話にしておくと、膝の上に乗る場面が全部本人の責任になる。甘えている姿を見せられても、言い訳が一つも残らない。
猫のまま夜の学校を見回る
猫好きに絡まれるのがいちばん気まずい
猫の姿でいちばん困るのは戦闘ではなく人間関係だった。猫好きに見つかれば当然かまわれるし、相手は中身を知らない。正体を明かせないまま、知り合いに撫でられ続けるという状況が発生する。
猫好きとして名前が挙がっているのは、学級委員長の永守茉莉花である。効果時間が二時間だという情報が、ここで効いてくる。戻ったあとに全部覚えているので、かまわれている間ずっと、あとで顔を合わせる相手の顔を見ていることになる。
猫回というと可愛いだけになりがちなのに、きちんと気まずさを回収しているのが良かった。かまう側にはまったく非がないぶん、逃げ道もないという作りである。
元魔王が語る、初めての心霊体験
夜の学校の見回りに、猫のまま肩に乗ってついていく。そこで鳴神流星が言い出すのが「夜の学校ってなんでこんな不気味なんだよ」で、怖がりの理由まで自分から話し始める。
中身がちゃんとした怪談だった。子供の頃に肝試しで街外れの墓地へ行き、帰ってから友達二人の体調が次々に悪くなる。そして「ある日、俺が寝ている時、何かが現れ俺の首を絞めたんだ」「真っ白な姿の女性だった」。原因は友達が墓地から持ち帰った乾いた指のようなもので、街から聖職者を呼んで大掛かりな除霊をしてもらったという。締めが「それが俺の初めての心霊体験だ」である。
元魔王が幽霊を怖がるという一点だけで十分おかしいのに、そのあと「でも、お前は守るよ」と続ける。死者の軍勢を率いていた男が、幽霊が怖いまま猫を肩に乗せて夜の校舎を歩いている。この作品の魔王像がよく出ている場面だった。
二度目の変身は人魚姫。今度は声が出せない
「正解は、勇者チョップ」
同じ手口がもう一度来る。「白雪姫と人魚姫、どっちが好き?」と聞かれて答えた瞬間、また呪文が飛ぶ。「また?」「お、覚えてるんだ」で、二度目なのにまた引っかかっている。
人魚姫なので声が出せない。そこから身振りだけで伝えようとする時間が始まり、流星の当て推量が全部外れる。「お腹空いたのか?」「向こうに誰かいたのか?」「そんなに嬉しかったのか?」と並べたあげく、返ってくるのが「正解は、勇者チョップ」だった。
選ばせた対象が白雪姫と人魚姫というのも周到である。どちらを選んでも面倒なことになる二択で、眠兎は毎回、答えさせてから撃っている。悪意がないぶんたちが悪い。
「リキャストタイムが長いから、手を離さないでね」
解決策が魔法で出てくる。精霊魔法を使うと、「接触してる相手にだけ、超至近距離で囁ける」。声が出せないぶん、耳元でしか話せない状態になる。
そして条件が付く。「リキャストタイムが長いから、手を離さないでね」。つまり話している間ずっと手を繋いでいなければならない。「ちょ、ちょっと近いぞ!」と慌てているのに、離せない。
設定で照れる理由を作ってから、逃げ道だけ塞ぐという書き方である。魔法の仕様なので二人とも文句を言えないし、文句を言えないぶん長く続く。猫の鳴き声から囁き声まで、この回はとにかく声の使い方で押してきた。
セクシーアマゾネスの正体
「お願いが」「死んでください」
学校に魔物が出たという知らせが入る。目撃情報が「セクシーアマゾネスって感じの化け物だそうだ」で、この時点ですでに相手を取り違えている。知らせを受けた倉石摩那と眠兎はゾンビドラマの話で盛り上がっていて、聖職者はパーティーに必須だという結論しか出していない。そして手紙をきっかけに、流星は二年三組の朝比奈絵理子のところへ行く。
呼び出しの中身がひどい。「お願いが」と切り出しておいて、次に来るのが「死んでください」だった。理由は「あなたから闇の魔力を強く感じるわ」「次元の亀裂はあなたの仕業だね」である。
「待ってくれ、誤解だ!」と言いながら、同時に「次元の亀裂のことも知っているのか」「そして、俺の力も」とうっかり手札を確認してしまうのがおかしい。否定しながら情報を渡しているので、相手からすればますます怪しい。
誤解が三重に積み上がる
止めに入った側も巻き込まれる。「あなたも、男の先生と付き合ってる女になったのは」「風紀を乱していると噂よ」「あなたはその邪悪な男に騙されているんだよ!」と言われて、「え、確かに」と一瞬うなずいてしまう。流星の「そこはフォローしろよ」が入る。
極めつけが「その男の先生にメスにされちまったんだぞ!」で、さらに二人まとめてサキュバスだと決めつけられる。整理すると、流星は次元の亀裂の首謀者、ミーティアは堕とされた魔法少女、二人ともサキュバス。三つとも外れている。
否定の並べ方が良かった。「私はこの世界に転生した勇者」「私はメスにされてなんかいないし、魔法少女でもないわ」「俺だって次元の亀裂の首謀者じゃないからな」「私たちサキュバスじゃないわよ」。最後に出るのが「うん、全部勘違いじゃないか」「一体何が本当なんだ?」である。戦闘回だと思って見ていたら、勘違いの解体作業だった。
アース13から来た魔法少女
「じゃあ、まずは自己紹介からね」
仕切り直しの一言が「じゃあ、まずは自己紹介からね」である。流星は「俺は異世界から転生してきた元魔王で、次元の亀裂の調査に少しだけ協力しているが、基本的にこの世界のいざこざにはノータッチだ」と名乗る。
ミーティアの側は「私は勇者。魔王が転生したことを知って追いかけてきたの」「私が見張るから、魔王には悪いことはさせないわ」。聞いた相手は「ああ、そういうことね」で一発で納得し、「さっきは誤解して攻撃してすまなかったわ」と頭を下げる。
敵として出てきた相手が、話を聞いた瞬間に謝って終わる。この作品はずっとこの調子で、殴り合いより先に事情説明が入る。殺し合いにならない世界観が、今回もきっちり守られていた。
「宇宙にはパラレルワールドが複数存在しているわ」
名乗りが返ってくる。「私は魔法少女アサヒ」「ここではない次元、アース13と呼ばれる世界から来たの」。そして「宇宙にはパラレルワールドが複数存在しているわ」「私はこの世界の私とは違うバージョンの朝比奈絵理子で、次元の裂け目に飲み込まれてこの世界に迷い込んでしまったの」と続く。
流星の理解が「マルチバースってやつか」で、そこから世界の現状が更新される。「この世界はいくつもの次元の亀裂に満ちているのか?」「とても不安定になっているわ」「魔物たちの発生が増えているのも」。つまり魔物が増えている理由が、亀裂の増加として説明された。
向こうの世界の説明も濃い。「私の学校はトカゲ人間とメカと…の学校だよ!」と言われ、男女逆転の世界、動物の世界、メカの世界と例を並べられて「嘘つけ!」で終わる。この世界がいくつもあるうちの一つでしかないという話が、最後は雑談の形で置かれるのが良かった。
「パルプ・フィクション」まとめと考察
「魔法少女って、私もなれる?」
話の途中で指摘が入る。「そういえば花織さん、魔法少女じゃないって言ってたけど、あなたから精霊の力を感じるわよ」。返事は「それは私が勇者で、光の精霊の加護をもらったからね」だった。
そこから当然の質問が出る。「ねえねえ、魔法少女って私もなれる?」「精霊の加護があるからなれると思うよ」「あの格好になるの?」「たぶん」。勇者が魔法少女になれる道が、雑談の中で開いてしまった。
次回以降にこれをやらない手はないと思う。元勇者で、聖剣を格納した指輪を持っていて、そのうえ魔法少女にもなれる。肩書きが増えるほど本人が調子に乗るのは目に見えているので、そこも含めて楽しみである。
世界が複数あるなら、探している人にも道がつく
この回でいちばん大きいのは、猫でも魔法少女でもなく、世界が一つではないと確定したことだと思う。流星はずっと、かつて仕えた姫の魂を探している。この世界のどこにもいないなら諦めるしかなかったが、行き先の候補が一気に増えたことになる。
締めは予告の枠で、千里眼を名乗る人物が「来週、花織ミーティアがお前たちにすごい迷惑をかける」「気を付けろ」と告げ、「それは毎回だ」「千里眼はなくてもわかる」と返される。第2話から続いているミニコーナーの系譜で、今回もきっちり落としてきた。
エンドカードは今回大活躍だった眠兎の絵で、描いたのは眠兎を演じている稗田寧々だった。演じている本人が、その回でいちばん暴れたキャラを描いている。猫にされ、声を奪われ、勘違いで斬りかかられた側からすればたまったものではないが、見ている側としては最高に楽しい一本だった。




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