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第6話「パルプ・フィクション」でミーティアが猫になるのは、事故ではない。動物になるなら何がいいかと聞かれて、自分で猫と答えた結果である。しかも効果時間は二時間で、解除魔法もある。それでも戻らないので、このあとの面倒ごとは全部この人の選択ということになる。二度目の変身は人魚姫で今度は声が出せず、後半はアース13から来た魔法少女が乗り込んでくるが、この回で実際に起きているのは戦闘ではなく、三重に積み上がった勘違いの解体だった。




結論:この回の変身は二度とも、本人が選んだ結果になっている
公式のあらすじは「眠兎の変身魔法で、ミーティアがまさかの「美少女猫」に変身!」と書いている(※1)。ところが本編を見ると、まさかと言えるのは一秒目だけである。変身先を選んだのはミーティア本人だし、戻ろうと思えばいつでも戻れる状態が最後まで続いている。事故で猫にされた話ではなく、猫でいることを選んだ話として組まれている。
「動物になるとしたら何になりたい?」は、質問ではなく指定だった
入口が完全な不意打ちである。眠兎が「なあ、桃尻」「動物になるとしたら何になりたい?」と聞き、ミーティアが「猫」と答えた瞬間に呪文が飛ぶ。種明かしはそのあとで、「新しい魔法を開発してたんだ」「より安全に仲間を変身させる魔法だな」「実験台だな」「私って天才じゃね?」と続く。つまりあの質問はアンケートではなく、変身先の指定だった。
効果時間は二時間、しかも解除魔法がある
条件はきちんと画面に出る。効果時間を聞かれた眠兎の答えが「だいたい2時間ぐらいかな」で、しかも眠兎は解除魔法をかけようとしている。それを「まあまあ、いっか」で流すのがミーティアである。この一言があるので、以後の面倒ごとは全部この人の選択になる。猫回にありがちな「元に戻れなくて大変」という筋を、開始三分で自分から捨てている。
二度目も同じ手口で、同じように乗ってしまう
後半でまったく同じ形がもう一度来る。「白雪姫と人魚姫、どっちが好き?」と聞かれて「人魚姫!」と答えた瞬間に呪文が飛び、ミーティアの反応が「また?」、眠兎の反応が「お、覚えてるんだ」。一度目を学習していないことを、作品の側が自覚して笑いにしている。前回の第5話が「流星、猫は好き?」「じゃあ懐いてくる可愛い猫がいたら嬉しい?」で終わっていたことも合わせると、この回は前回の締めをまるごと回収している。
第6話で起きたこと(要点だけ)
場面がめまぐるしく切り替わる回なので、先に事実だけ並べておく。
- ミーティアは猫になり、そのまま流星の膝の上と夜の校内見回りを過ごす。公式のあらすじも「ヘソ天状態」と書いている(※1)。
- 二度目の変身は人魚姫で、声が出せなくなる。
- 解決に使われるのが精霊魔法の囁きで、手を離すと切れるという条件がつく。
- 学校に出た魔物の正体は、別の並行世界アース13から来た魔法少女朝比奈絵理子。
- 襲撃の理由は三重の誤解で、自己紹介をした瞬間に全部解ける。
- パラレルワールドが複数あることが、この回ではっきり言葉にされる。
並べてみると、戦闘らしい戦闘は一度も成立していない。敵として出てきた相手は話を聞いて謝り、変身も自分で選び、困りごとは全部人間関係の側にある。それでいて作品全体の設定はこの回でいちばん大きく動いている。
猫の姿でいちばん困るのは、戦闘ではなく知り合い
猫になったミーティアが最初に直面するのは魔物ではない。猫好きの知り合いに見つかることである。
かまわれている姿を、あとで本人に見られる
猫の姿でかまわれれば当然もふもふされるし、効果時間が二時間だということは、そう遠くない未来に人間へ戻ったところを見られる危険があるということでもある。猫好きとして名前が挙がっているのが、学級委員長の永守茉莉花である。可愛いだけで終わらせず、あとに残る気まずさまで勘定に入れているのがこの作品らしい。
元魔王が語る、初めての心霊体験
夜の学校の見回りに、猫のまま肩に乗ってついていく。そこで流星が言い出すのが「夜の学校ってなんでこんな不気味なんだよ」で、そこから中身のしっかりした怪談が始まる。子供の頃に肝試しで街外れの墓地へ行き、帰ってから友達二人の体調が悪くなり、「ある日、俺が寝ている時、何かが現れ俺の首を絞めたんだ」「真っ白な姿の女性だった」。原因は友達が墓地から持ち帰った乾いた人の指のようなもので、街から聖職者を呼んで大掛かりな除霊をしたという。
この回はもう一つ、別の場面で同じ語を使っている。倉石摩那と眠兎がゾンビドラマを見ながら「聖職者は便利だな」「パーティーに必須だしな」と話している場面である。片方は実際に除霊を頼んだ思い出として、片方はゲームやドラマの職業名として出てくる。同じ回のなかで一つの言葉を二通りに使い分けていて、この作品が異世界を「向こう側の常識」と「こちらのオタク知識」の両方で扱っていることがよく見える。
怖がったまま、守ると言い切る
面白いのは、この話を元魔王がしていることである。世界を戦火に包んだ側の人物が幽霊は怖いと言い、そのうえで「でも、お前は守るよ」「俺の力は幽霊を克服するためにあるんだ」と続ける。怖くないから守れるのではなく、怖いままで守ると言っている。この回でいちばん静かな場面が、いちばん人物を説明している。
声を奪ってから、手を離せない魔法を出す
二度目の変身は人魚姫なので、代償として声が出せない。ここからの数分が、この回でいちばん設計されている。
「正解は、勇者チョップ」
声が出せないので、ミーティアは身振りだけで伝えようとする。流星の当て推量が「お腹空いたのか?」「向こうに誰かいたのか?」「そんなに嬉しかったのか?」と並び、どれも外れて、返ってくるのが「正解は、勇者チョップ」である。選ばせた二択が白雪姫と人魚姫だったのも周到で、どちらを選んでも面倒になる二択を出している。
「リキャストタイムが長いから、手を離さないでね」
解決策は魔法で出てくる。精霊魔法を使うと「接触してる相手にだけ、超至近距離で囁ける」。流星の「ちょ、ちょっと近いぞ!」が出たところに、条件が足される。「リキャストタイムが長いから、手を離さないでね」。つまり話している間ずっと手を繋いでいなければならない。
照れる理由を作ってから、逃げ道だけ塞ぐ
この組み立てが上手い。近づく理由も、手を離せない理由も、全部魔法の仕様として先に置かれている。だから二人とも文句が言えないし、照れているのに解消する手段がない。恋愛の場面を作るために都合よく事故を起こすのではなく、先に仕様を決めて、そこへ人物を追い込むという順番になっている。
振り返ってみると、前半の猫も同じ形だった。膝の上に乗るのも、肩に乗って見回りについていくのも、猫だからという理由が先にある。人魚姫の場面も同じで、声が出ないから耳元で囁くことになる。距離を詰める理由を、毎回人物の外側に用意しているので、どちらも自分から近づいたことにならない。その分だけ、二人の態度が一歩も進んでいないのも確かである。
襲撃の中身は、三重に積み上がった勘違い
学校に魔物が出たという知らせが入る。目撃情報が「セクシーアマゾネスって感じの化け物だそうだ」で、これが朝比奈絵理子の誤認である。
「お願いが」「死んでください」
呼び出しの切り出し方がひどい。「お願いが」と言っておいて、次に来るのが「死んでください」である。理由が「あなたから闇の魔力を強く感じるわ」「次元の亀裂はあなたの仕業だね」で、流星は「待ってくれ、誤解だ!」と言いながら「次元の亀裂のことも知っているのか」「そして、俺の力も」と続けてしまう。否定しながら手札を確認しているので、まったく否定になっていない。
止めに入った側まで巻き込まれる
ミーティアが止めに入ると、今度はそちらが誤解される。「あなたも、男の先生と付き合ってる女になったのは」「風紀を乱していると噂よ」に対して、ミーティアの返事が「え、確かに」で、流星の「そこはフォローしろよ」が刺さる。極めつけが「その男の先生にメスにされちまったんだぞ!」で、さらに二人まとめてサキュバスにされる。
否定の列挙が、そのまま自己紹介になる
否定の並べ方が良かった。「私はこの世界に転生した勇者」「私はメスにされてなんかいないし、魔法少女でもないわ」「俺だって次元の亀裂の首謀者じゃないからな」「私たちサキュバスじゃないわよ」と並べたところで、「うん、全部勘違いじゃないか」「一体何が本当なんだ?」に着地する。否定を四つ重ねた結果、それがそのまま身の上の説明になっているのが上手い。
並行世界が言葉になった回。副題も担当も、並びに規則がある
仕切り直しの一言が「じゃあ、まずは自己紹介からね」である。倒しに来た相手と名乗り合うところから、この作品でいちばん大きい設定が出てくる。
「宇宙にはパラレルワールドが複数存在しているわ」
名乗りは「ここではない次元、アース13と呼ばれる世界から来たの」で、続くのが「宇宙にはパラレルワールドが複数存在しているわ」「私はこの世界の私とは違うバージョンの朝比奈絵理子で、次元の裂け目に飲み込まれてこの世界に迷い込んでしまったの」。流星の理解が「マルチバースってやつか」で済むのも、この作品の速さである。さらに世界の現状が更新される。「とても不安定になっているわ」「魔物たちの発生が増えているのも」=魔物が増えている理由が、亀裂の増加として説明された。
公式のキャラクター紹介が、先に同じことを書いていた
公式サイトの人物紹介には、ミーティアの言葉として永守茉莉花が「メガネで金髪で褐色で委員長で男嫌いという属性の化け物」「キャラが濃いのでそのうち魔法少女に変身しても驚かないと思うわ」と書かれている(※2)。そして実際に現れた魔法少女の紹介文が「学校では真面目で律儀で規律をしっかり守る優等生」である。委員長が魔法少女になっても驚かないと言っていたところへ、別の世界の委員長気質の魔法少女が来たことになる。流星の側の紹介文が「そういえばこっちの世界の朝比奈は存在するのだろうか…?」で終わっているのも、公式が自分で問いを残している形である。
一次調査:脚本も絵コンテも全話同じ人で、替わるのは演出と総作画監督だけ
公式サイトは各話のあらすじの下に担当者を出している(※1)。これを第1話から並べると、はっきりした形が出る。脚本は全話がシリーズ構成の菅原雪絵、絵コンテは全話が監督の山本秀世で、回ごとに替わるのは演出と総作画監督だけである(※3)。しかも総作画監督は奥田陽介、松岡謙治、西尾淳之介の三人が順番どおりに回っており、第6話は西尾淳之介=第3話と同じ枠に当たる。演出だけは第1話から第7話まで全員が別人で、この回は中原れいである。回ごとの顔つきの差が、ほぼ演出の一枠で作られているということになる。
副題は全話が映画の題名
公式サイトの一覧を並べると、副題の付け方にも規則がある(※1)。第1話「恋人たちの予感」、第2話「オズの魔法使い」、第3話「ミッドナイトラン」、第4話「許されざる者」、第5話「から騒ぎ」、そして第6話「パルプ・フィクション」。全部が映画の題名から取られている。「パルプ・フィクション」は話が細かい断章に割れて進む映画なので、猫、人魚姫、怪談、誤解劇、設定開示と場面が次々に切り替わるこの回の作りとは、確かに噛み合っている。
まとめ:猫の回の裏で、いちばん大きい設定が動いている
この回で本当に大きいのは、猫でも魔法少女でもない。世界が一つではないと確定したことだと思う。
世界が複数あるなら、探している人にも道がつく
流星はかつて仕えた姫の魂を捜している(※2)。これまではこの世界のどこかにいるか、いないかという話だった。並行世界が複数あると分かった以上、探す範囲そのものが広がったことになる。猫の回として消費されそうな一本の裏で、作品の背骨が一段進んでいる。もう一つ、朝比奈絵理子の「あなたから精霊の力を感じるわよ」から「ねえねえ、魔法少女って私もなれる?」「精霊の加護があるからなれると思うよ」まで行っているので、ミーティア側にも新しい札が置かれた。なお、エンドカードを描いたのは眠兎を演じている稗田寧々だった。
毎回恒例の予告の枠も健在で、今回は千里眼を名乗る人物が「来週、花織ミーティアがお前たちにすごい迷惑をかける」「気を付けろ」と告げる。それに対する返しが「それは毎回だ」「千里眼はなくてもわかる」で、予告の役目を果たさずに終わる。この作品は本編と同じ速さで末尾までふざけてくる。
次回の予想
公式サイトの一覧では、次が第7話「セブン」である(※1)。あらすじは「「闇の指輪」を手にしたミーティアが闇堕ちしてしまう」「復讐者と名乗ったミーティアは流星に本気の決闘を挑もうとし、対する流星は罠と死霊魔術を駆使した魔王の本領発揮で迎え撃つ」と出ている。第6話が「変身を自分で選ぶ」回だったことを踏まえると、次は選んでいない変化のほうが来ることになる。担当は演出が監督の山本秀世本人、総作画監督は奥田陽介と出ている(※1)。原作は氷川へきる(講談社「モーニング・ツー」連載)、アニメーション制作はライデンフィルム、御剣女子高等学校の顔ぶれもそのまま続く(※3)。もっとも、ここから先はあくまで予想である。
出典
※1 テレビアニメ公式サイト ストーリー(第1話から第7話までの公式あらすじと、脚本・絵コンテ・演出・総作画監督)/hanaorisan-anime.com
※2 テレビアニメ公式サイト キャラクター(鳴神流星・花織ミーティア・永守茉莉花・朝比奈絵理子ほかの紹介)/hanaorisan-anime.com
※3 テレビアニメ公式サイト スタッフ・キャスト/hanaorisan-anime.com




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