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第7話「開幕!裏超闘球大会!」は、前半が遊園地でのプチ総集編、後半が地下での殺し合いという極端な作りをしている。だがこの回でいちばん重い情報は、強敵の登場でも必殺技でもない。「身の安全は一切保証しません」と言い切った主催者が、乱闘だけはきっちり止めに入る。その理由が「高額な会費」と「莫大な賭け金」だった。つまりこの回が明かしたのは、大会のルールではなく大会の商売である。以下、前半を総集編にした狙いと、ブラックアーマーズが説明抜きで成立している理由を、前作から25年という補助線で読んでいく。




結論:明かされたのは大会のルールではなく、大会の「商売」である
入口で示される条件は、たったの二つ
地下へ降りる前、案内係が突きつける条件は二つだけである。「ここから先の出来事は他言無用です」「そして我々はあなたがたの身の安全は一切保証しません」。そのうえで「それでどうぞ」と促す。ここまでなら、無法地帯で強さだけがものを言う大会、という理解でいい。
命は保証しないのに、乱闘だけは止めに入る
ところが実際に無法が始まると、主催者のほうが止めに入る。ブラックアーマーズが挨拶代わりに客席へ無差別攻撃を放ち、珍子が反撃し、キャプテンの蘭が追撃をかけようとしたところで、主催側はこう言う。「この大会には、高額な会費を払って見ている視聴者様が世界中にいるのです!」「ちゃんと試合してもらわないと困りますよ!」「それと、莫大な賭け金も動いているのですから!」。
命の保証はしないが、興行は守る。この二つは矛盾していない。危険であること自体が売り物で、しかし危険なまま試合の形式が保たれていないと商品にならない、というだけの話だ。だから球川側の反応が「私たちの試合にお金が…」「もしかして、この大会めちゃくちゃヤバいんじゃ?」になる。彼女たちが本当の恐ろしさに気づくのは、強敵を見たときではなく、金の話を聞いたときである。敵が強いから怖いのではなく、自分たちが商品として値付けされているから怖い。この一点で、この回はこれまでの試合回と性質が違う。
何が起きたか(要点だけ)
前半と後半で別のアニメのようになるので、押さえるべき点だけ並べておく。
- 会場は東京デスデスランドというテーマパーク。前半は一行が遊園地で遊びながら、ここまでの経緯を振り返るプチ総集編
- 地下への案内で「他言無用」「身の安全は一切保証しません」の二条件が提示される
- 参加は4チーム。球川闘球部/USバッファローズ/土佐アタッカーズ/ブラックアーマーズ
- ブラックアーマーズが挨拶代わりに客席へ無差別攻撃。珍子が反撃し、強化合宿で羽仁衣と編み出した必殺技(ベルヌーイの定理で球に揚力を出す+相手の技のエッセンス)を初披露する
- 第1試合は土佐アタッカーズ対ブラックアーマーズ。追い込まれた側が一つ30キロ・合計270キロのプロテクターを外し、決着は次回へ持ち越し
ひとつ紛らわしい場面がある。キャプテンの蘭が「いけるな。こんな雑魚チーム、お前一人で十分だろ」と命じ、月が「もちろん」「あたし一人で全員ヒットだ!」と応じるくだりだ。蘭も月もブラックアーマーズ側で、掃討される相手は土佐アタッカーズのほうである。公式あらすじの一文だけを読むと逆に取りかねないので、念のため書いておく。なお公式表記は「月」だが、劇中の呼びかけは「ルナ」である。
前半をまるごと総集編にしたのは、失速ではなく助走である
遊園地は、7人を数え直すための場所として使われている
前半は東京デスデスランドで遊ぶ、ほぼ総集編である。廃部になっていた球川闘球部の経緯、江袋の超柔らかボディ、羽仁衣の「我の力じゃなくてドローンのおかげだけど」、入部テストの「これで7人揃ったな」まで、既出の情報が並べ直される。大会編に入る直前に、誰が何をできるのかをもう一度読者へ渡している。この直後に敵チームが3つ同時に出てくるのだから、味方の顔と手札を先に固めておかないと、後半の情報量を受け止めきれない。
実際、この判断がなければ後半は成立していない。珍子の反撃が「強化合宿でハニーちゃんと編み出した必殺技よ!」で通じるのは、直前に合宿の絵をもう一度見せているからだ。羽仁衣が理屈担当だということも、江袋が柔らかいということも、前半で全部おさらいが済んでいる。総集編に見える時間が、そのまま後半の説明台詞を削るための投資になっている。
回想の締めで、思い出話が予告に切り替わる
うまいのは終わり方だ。回想の最後に置かれるのは平子の「僕たちは永遠のライバル」で、そのまま「だが君の全力が裏スーパードッジ大会の怪物たちにどこまで通用するかな」と続く。ひとつながりの台詞のなかで、振り返りが前振りへ変わる。ここで前半が閉じ、地下への階段が始まる。総集編を挟んだのではなく、総集編を助走に使っている。
ついでに書いておくと、サブタイトルの表記は「裏超闘球大会」だが、劇中で誰もそう発音しない。音声は一貫して「裏スーパードッジ大会」である。「闘球」と書いて「ドッジ」と読ませるのは作品名からしてそうなっていて(『炎の闘球児 ドッジ弾平』『炎の闘球女 ドッジ弾子』)、表記と呼び名がずれていること自体がこの作品の作法にあたる。検索するときに引っかかりにくい原因でもあるので、両方の呼び名を覚えておくと話が早い。
ブラックアーマーズは説明されないまま強い。答えは25年前にある
紹介文は一行だけ。それでも登場した瞬間に場を支配する
初登場のブラックアーマーズに与えられる紹介文は、「闇を背負いし漆黒の闘球戦士」の一行だけである。どこの誰で、なぜ強いのかは語られない。それでいて登場した瞬間から場を支配し、挨拶代わりに客席へ球を投げ込んで珍子の眼鏡を飛ばす。
ブラックアーマーズは前作にもいた。いまのそれは「娘世代」である
これは説明の省略ではなく、説明の要らない相手だからである。本作は、1989年から1995年にかけて月刊コロコロコミックなどで連載された『炎の闘球児 ドッジ弾平』(こしたてつひろ・全18巻)の正統続編で、前作から25年後、主人公は弾平の娘である一撃弾子、という設定になっている(※1・※2)。そしてブラックアーマーズは前作にも登場した強豪チームで、チーム名のとおり黒い鎧状のユニフォームが特徴だと記されている(※1)。本作のブラックアーマーズは、その前作の選手たちの娘で構成されている(※2)。
つまり「漆黒」も「鎧」も、前作を通った読者にはそれだけで通じる看板なのである。そこへ今回、「プロテクターの重さは一つ30キロ、合計270キロだ」という種明かしが乗る。鎧という見た目が、そのまま重りという実装に翻訳されている。前作を知らない視聴者にも数字だけで機能し、知っている読者には二重に効く。初登場の敵に説明台詞をほとんど与えなかったのは、この二重構造があるからだと読める。ちなみに脱ぐ直前に実況席が「世界中に配信中なので、あまり刺激的なことは…」と慌てるのも、重りだと分かった瞬間に空振りになる仕掛けで、配信という言葉が主催者の商売の話とつながっている。
土佐アタッカーズも球川も、前作から持ち込まれた名前
同じことが土佐アタッカーズにも言える。土佐アタッカーズも前作に高知県代表として名前が出るチームで(※1)、本作ではバレーボールを応用した変則的な闘球を持ち味とするチームとして紹介されている(※2)。今回の「うちらの絆が生む究極技! ドッキングフォーメーション!」も、その延長にある。球川という名前も前作に出てくる(※1)。だからこそ、回想の「球川闘球部はずいぶん前に廃部になったんだって」という一行が効く。25年のあいだに、前作の舞台は一度消えていた。弾子たちがやっているのは新設ではなく再建で、「これで7人揃ったな」という入部テストの締めの重さも、そこに由来する。
制作側の情報も添えておく。原作の連載は2022年11月に週刊コロコロコミックで始まり、単行本は既刊8巻。アニメ版は制作がCUE、監督は博史池畠、シリーズ構成は兵頭一歩、キャラクターデザインは関川成人である(※2)。第7話ぶんの脚本・絵コンテ・演出のスタッフ表記は確認できなかったため、ここでは触れない。
「親の名前で子を測る」構図が、劇中でもそのまま起きている
相手側のデータ班のやりとりも、まったく同じ構図の上にある。珍子について「彼女のデータはありませんが」と前置きしたうえで、読み上げられるのは父親の戦績である。そのうえで「それに名前の付け方がひどいです」「気合いだけのハッタリだな」「でも所詮、サルマネです」と結論が出る。本人のデータが無いので、親で測るという判断だ。ところが珍子が返したのは「いいえ、これは強化合宿でハニーちゃんと編み出した必殺技よ!」で、親の真似でも自分の勘でもない、羽仁衣の理屈と自分の観察を合成した新しい技だった。相手は「そうか、珍子か」「少し舐めていたようだな」と言い直す。親の代で測るという構えを、その場で崩してみせた場面である。しかも崩された側が、まさに親の代を継いだ娘たちなのだから、この一往復だけでこの作品の主題を短く演じきっている。
もうひとつ、蘭の一言を落とさないでおきたい。珍子を吹き飛ばし、デスマッチ用のトゲの壁まで届かせたあの球について、本人の見立ては「10%ってところか」である。この回で見えたのはブラックアーマーズの上限ではなく下限だ、という宣言にほかならない。しかもその続きは主催者に止められて、最後まで出ないまま回が終わる。強さの提示を意図的に途中で切り上げた回でもある。
4チームのうち、USバッファローズだけが過去を持っていない
入場しただけで、一球も投げていない
開会式では4チームが並ぶが、この回での扱いはまったく平等ではない。
「アメリカチームの印象が今のところ薄い」というのは正確な観察で、実際USバッファローズはこの回で入場しただけ、一球も投げていない。紹介文も「スポーツ大国アメリカからの刺客」「超フィジカルモンスター集団」という属性の羅列にとどまり、個人名も一人も出てこない。
3チームは因縁を持ち込み、1チームだけが白紙で来ている
ただ、これは扱いが雑なのではなく、このチームだけ背負っているものが違うと考えたほうが筋が通る。球川・土佐アタッカーズ・ブラックアーマーズは、いずれも前作に名前を確認できる(※1)。対してUSバッファローズは、前作の登場チームとしては確認できない。4チーム中3つが25年ぶんの因縁を持ち込んでいるなかで、USバッファローズだけが白紙なのである。
白紙のチームは、後からいくらでも来歴を足せる。逆に言えば、この回で見せる必要がなかった。因縁のあるカードから先に切り、無い側は温存する。大会編の配分としては手堅い。印象が薄いのは手抜きではなく、まだ順番が来ていないだけだと読める。逆に、来歴を持たないチームには「フィジカルだけで前作の因縁を全部押し流す」という役回りも与えられる。温存されているぶん、出てきたときの振れ幅は大きい。
まとめ:次に決まるのは勝敗より、球川がどこと当たるか
決着は次回へ。まずはこの試合の続きから始まる(予想)
この回で結論が出たものは、ほとんどない。土佐アタッカーズ対ブラックアーマーズは、270キロを外したブラック側の攻勢に対し、土佐が「どんなピンチでも、チームワークで乗り切るのが土佐アタッカーズ!」と立て直したところで切れている。合同特訓を共にした側からの「僕の全力の球だって受け止めた!」「その強さを私たちは知っている!」という援護も、決着の前に置かれた。次回はまずこの試合の続きから始まるはずだ(放送済みの並びだけから立てた予想である)。
第1試合は、次の対戦カードを決める手続きでもある
そのうえで見どころとして挙げておきたいのは、この試合の結果が球川の初戦の相手を決めるという点だ。参加は4チームで、土佐とブラックが第1試合をやったのだから、残る球川とUSバッファローズが第2試合という並びになる公算が高い。そして土佐とは別れ際に「決勝で会えるといいな」と言い合っている。この一言が成立するには、両者が別のブロックにいる必要がある。第1試合は、次回の対戦カードを決める手続きでもあるという読み方ができる。これも放送済みの台詞から立てた予想であることは断っておく。
主人公を丸ごと待機させた回でもある
主人公の扱いにも触れておく。この回の弾子は、珍子が吹き飛ばされたときに「珍子! 絶対助ける!」と叫ぶだけで、投げても受けてもいない。表題を背負った人物を丸ごと待機させ、副将格と初登場の敵に一話を任せている。大会編の入口としては理にかなった配分で、珍子の「私は弾子ちゃんみたいに怒りが長続きしないの」という自己申告が、その代役を引き受ける理由にもなっている。怒りで燃える主人公を温存し、怒らない相棒に一話ぶんの反撃を任せたというのは、次に弾子が出てくるときの温度を上げるための手でもある。
珍子の名前ネタが、遊園地と地下を一本につないでいる
最後に、この回のいちばん軽い部分にも触れておきたい。珍子の名前をめぐるやりとりである。仲間の「珍子は固いな」に対する「ひらがなはやめてってば」、そして終盤、敵に「貴様、名は?」と問われての「珍子! 漢字で頼むわ!」。第6話で土佐弁に対して「ひらがな以外で頼むわ」と返したのと同じ型で、この回でいちばん危ない場面に、この回でいちばんふざけた台詞が置かれている。命の保証がない大会で、名前の表記にだけは最後までこだわり続ける。遊園地の前半と地下の後半を一本につないでいるのは、案外この繰り返しのほうかもしれない。
出典
※1 Wikipedia『炎の闘球児 ドッジ弾平』(前作の作者・掲載誌・連載期間・巻数/ブラックアーマーズ・土佐アタッカーズ・球川の記載)/ja.wikipedia.org
※2 Wikipedia『炎の闘球女 ドッジ弾子』(前作との関係=25年後・弾平の娘/原作の連載と既刊/アニメスタッフ/各チームの説明)/ja.wikipedia.org




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