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『盗掘王』第9話の副題は「遺物を統べる者」。遼河は将軍の地図遺物を壊してしまうのだが、この回で一度も殴っていない。使った材料は、相手から借りたペン、他人の遺物から出たインク、仲間に描かせた絵、そして道中で覚えた名前だけである。どれも自前ではなく、その場でもらったものばかりだった。公式サイトの担当者欄に脚本の欄が一つも無い理由も、この記事で確かめている。




副題「遺物を統べる者」と、脚本の欄が無い担当者表
副題は公式サイトと公式アカウントの両方で読める
第9話の副題は「遺物を統べる者」。公式サイトのストーリー欄と、放送当日の公式アカウントの告知に同じ表記が出ている。
あらすじも公式に載っている。遼河はキイラを出し抜き、地図遺物「鄭船長の海洋船航海図」を手に入れた、から始まり、その偽物を孝太郎に作らせてキイラに渡し、それを足がかりに彼女が持つ他の地図遺物も壊してやろうと目論む、と続く。この回でやることが、あらすじの時点で全部書かれている。
話数ごとの欄に、脚本が一つも無い
公式サイトのストーリー欄には、話数ごとに担当者が並んでいる。ところが並んでいるのは絵コンテ・演出・総作画監督・作画監督の四つだけだった。
第1話から第9話まで、脚本の欄は一度も出てこない。代わりにスタッフ欄のほうに、日本語吹き替え版という項目が立っていて、翻訳と編集と音響制作が別に並んでいる。日本で脚本を書いた作品ではなく、出来上がった本編に日本語をあてた作品だという作りが、欄の形にそのまま出ている。
監督とシリーズ構成が同じ人で、絵コンテにも入り続けている
スタッフ欄を見ると、監督とシリーズ構成がどちらも Woo Seung Wook になっている。
そのうえで話数ごとの絵コンテ欄を並べると、この名前が入っていないのは第2話だけで、残りの八話すべてに入っている。脚本の欄が無いのは、書く役目と絵コンテの役目が同じ人のところでつながっているからだと読める。
総作画監督は二人だけで回している
総作画監督の欄に出てくるのは Lee Hyun Joung と Heo Hyung Jun の二人しかいない。第6話と第8話だけが後者で、ほかの七話は前者である。
しかも Lee Hyun Joung はキャラクターデザインも兼ねていて、第2話では絵コンテ・演出・総作画監督の三つを一人で担当している。第9話は総作画監督が Lee Hyun Joung、絵コンテが三人、作画監督が四人だった。
第6話と第9話は、絵コンテの三人が同じ
絵コンテの顔ぶれを並べると、三人で組んでいる回が三つある。第6話と第8話と第9話だ。
そのうち、第6話と第9話は三人の名前が完全に一致している。Jo Young Dae が絵コンテに入るのはこの二話だけである。作画監督の四人も第6話・第8話・第9話で同じ顔ぶれになっていて、終盤は同じ班が続けて担当している形になる。
冒頭でもう一度、遺物の要求を断る
出された条件が具体的だった
冒頭は墓の中から始まる。銀の斧を投げつけて相手を吹き飛ばし、本来の姿を見せろ、と命じると、海賊の剣が現れる。
その先で出てくるのが、遺物のほうの条件だった。よくぞ我を見つけたな人間、貴様の能力を認めよう。そのうえで、この力が欲しくば、神聖な祈りを捧げ、我を満足させてみよと言う。遺物のほうから作法を指定してくる形は、これまでの回と同じである。
断り方が二行しかない
返事が短い。笑わせるな、である。
続くのが、俺はな、遺物なんかと仲良くする気はないんだよ。第2話の池に投げ入れる作法も、第3話の生き血を吸わせろという要求も同じ形で蹴っている。この作品の主人公は、遺物が出す条件を三度とも聞いていない。
断ったうえで、そのまま持っていく
作法を拒んだあとの手つきも変わらない。じゃあな、これは俺が使ってやるよ、と言って剣を取り上げる。
持ち主が、俺の遺物を返しやがれ、と叫んでも、あとはよろしくなで終わる。ここで手に入れたのが、あらすじにある地図遺物のほうだった。冒頭の三分で、この回の元手が揃っている。
事故のほうを、取引の入口に変える
消えたのは遺物だけではなかった
偽物を渡された仲介商人が怒鳴り込んでくる。地図を使用している最中に突然消えた、というのが向こうの言い分だった。
ところが被害の中身が想定を超えている。遺物が消えたこともだが、その時近くにいた者たちまで一緒に消えてしまった。しかもその中にイギリスの首相が入っていて、将軍と密かに会っていたらしい、と話が広がる。このままでは戦争が起きるかもしれん、というところまで来る。
それを聞いた第一声が「チャンスじゃないか」
仲間が、どうします団長、と聞く。返ってきたのが、いいぞ、チャンスじゃないか、だった。
続けて出てくるのが、俺にキイラを説得させてくれないかである。自分が起こした事故を、相手に会うための紹介状として使っている。逃げるべき場面で、逆に会いに行く側へ回っている。
電話の売り込みが、遺物の常識をひっくり返す
電話口では、遺物に何をした、死にたくないなら正直に言え、と詰められる。返しは、私は何もしていません、から入る。
そこから売り込みに変わる。遺物は決まった能力しか持たないと思われていますが、そうではないんです。私は遺物の能力を最大限引き出すことができ、さらにはもともとなかった能力さえも生み出す方法を知っている、と続く。将軍が、本当に可能なのか、と食いついたところで、いいだろう、が出る。
勝ちに使った材料が、全部もらいものだった
最初に借りるのがペン一本
将軍の部屋で最初に頼むのが、ペンを一本お借りしてもいいですか、だった。妙なことに使うんじゃないだろうな、と警戒されても、これは能力を引き出すために必要な作業なんですよ、で通す。
許可の言い方まで残っている。好きにさせろ、許可してやるが、必ず成果を見せろ。このあと起きることは全部この許可の内側で行われる。
書いた文字と、書いた道具が別のものだった
地図に書き込んだのは遺物の言語だった。呪文を書いたのでさらなる能力を発揮するでしょう、と説明される。
ところが種は道具のほうにあった。キイラに借りたペンと、見た目を同じにしたシェイクスピアのペンをすり替えたんだ。借りた道具を返す前に入れ替えているので、相手は自分の許可した作業だけを見ていたことになる。
インクも絵も、自分のものではない
脱出に使ったのは、床に描いた噴水だった。爆発の直後に孝太郎が隙を突き、インクを使って描いている。
そのインクの出どころが、大河原の弁護士が持っていた遺物である。使い方が面倒だったが、絵が上手い奴がいて助かった、という感想まで付く。第7話で仲間にした復元師の腕が、そのまま脱出路になっている。
名前も、ホテルで拾ったものだった
到着の場面に、意味の分からないやり取りが一つ挟まっている。声をかけてきた相手に、ご親切にどうも、と名前を呼んで返す場面である。相手が驚くと、ああ、そのネームプレートに、と自分で説明する。
その名前が後で効く。指令の中には、ここまでに出会った人物の名前を組み込んで、遺物の言語で地図に書き込んでおいた。名札を一度見ただけの相手が、指令の宛先になっている。
種明かしは、全部終わってから来る
起きたことの説明は、逃げ切ったあとでまとめて入る。地図にはテロを支持する指令を書いた、というのが本体だった。
結果が二つに分かれる。指令が発動すると、ホテルで名前を呼ばれた相手は極度のストレスによってテロを起こし、将軍の秘書は地図の中に恐ろしい悪霊を見てしまった。どちらも遼河が手を下していない。この回で彼が自分の手でやったのは、ペンを持ち替えたことだけである。
神話の筋を、そのまま手順として使う
侵入路も、奪ってきた遺物で開ける
トルコの墓はアメリカとトルコの部隊が固めていて、あんなに厳重に守られていたらアリ一匹通れませんね、と言われる。普段墓の周りは遺物のオーラで守られていて、入り口からしか入れない。
そこで出してくるのが、アメリカ発掘団のやつから奪ったものだという一品だった。さつまいもをどうやって使うんです、何の役にも立たないでしょうが、と呆れられるが、自爆させて爆音で守りを引き剥がし、横から入り込む。侵入路まで奪ってきた道具で開けている。
遺物の由来から入る
トルコの墓を前にして、遼河が話し始めるのが遺物の由来だった。この墓の遺物の由来はミダスの手だ、という一言から始まる。
相手の疑問がまっとうだった。触れたものが黄金に変わるっていうあの話、おかしいでしょ、不幸にしてるのが問題なのに。答えが、黄金の手は結局不幸の手に変わる、話の結末ではな、である。
使うのは、話の途中ではなく結末のほう
続けて語られるのが神話の後半だった。酒の神が黄金の手を贈ったが、触れた食べ物まで黄金に変わって王は餓死しそうになる。
そこで出てくるのが解決策である。手を元通りに戻したいなら、川で体を清めるようにと王に助言した。物語の教訓ではなく、物語に書かれた手順のほうを取り出して使っている。
地底湖を、その川に見立てる
実際に地下で見つかるのが湖だった。地底にこんな湖が、という驚きも出る。
そのうえでの説明が、ミダス王も黄金の手の能力を川で洗い流しました、あなたの遺物もそうできるんじゃないかとである。神話をなぞれば遺物も外れるはずだ、という一点だけで手順が組まれている。
それでも、解決しないところで終わる
見張りの理屈が用意されている
湖に入るあいだ、遼河は離れずに見ている。それを咎められると、理屈のほうを先に出す。
罠はないんでしょ、と言われて返すのが、万が一の事態に備えているんだ、体から離れた遺物が気まぐれを起こすこともあるからである。そのあとで、これはアイリーンさんを守るために見守ってるんだ、と自分に言い直している。理由づけが二段になっているぶん、逆に落ち着いていない。
兵士のほうは片付くのに、遺物は落ちない
途中で兵士たちが来るが、こちらはあっさり終わる。全員片付けた、雑魚どもばかりだったからな、で済む。
ところが本題は進まない。やっぱり、こんな単純な方法じゃダメなのかしらという一言のあとに、おい、これはなんだ、と場が動く。神話の手順どおりにやっても、遺物は外れないまま別のことが起きている。
復元師が、両方の陣営につながっている
場面が変わって、キイラのほうにも同じ悩みが出ている。私の遺物が損傷した、すぐに地図の復元を頼めるか、と連絡する相手が復元師のジャン・リチャードだった。
そこで出るのが、最近依頼が増えてますね、TKBMからも復元依頼が入ったところですよである。将軍が、私のところに来た奴がTKBMの遺物にも関与している、と気づく。第7話で遼河が復元師を仲間にした一方で、敵側の復元師は三つの依頼を同時に握っている。
締めは、遺物を取り上げる仕組みの話
将軍の心配に対して、復元師のほうは落ち着いている。あまりご心配なさらずに、と返す。
そのうえで置かれるのが、これからは一般人が遺物を使うことも所有することもできなくなりますという一言だった。新しい枠組みがまもなく作られる、という話である。個人の勝ち負けで進んできた話に、制度のほうが降りてくる。




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