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『BLEACH 千年血戦篇-禍進譚-』第7話の副題は「THE END 2」。前回の「THE END」に、そのまま数字の2がついた。この回は最初から最後まで、預けた力と返せと言われる力の話でできている。浮竹十四郎は京楽春水に最後の命を預け、ユーハバッハは一護に与えた力を返せと言う。同じ「預ける」が、味方の側では贈り物になり、敵の側では回収になる。そして石田雨竜は、借りたままの力で、貸した相手をやり返す。




「THE END」に2がついた回で、死んだ人が命を預けに来る
第7話の副題は「THE END 2」。公式サイトの通し番号では第47話にあたる。前の回が「THE END」だったので、終わりという言葉にそのまま数字がついたことになる。最終クールの副題はここまで GOD OF THUNDER、SON OF DARKNESS、BLOOD FOR MY BONE、THE PERFECT CRIMSON、DEFEND YOU、THE END と並んできたので、同じ語が二回続くのはこれが初めてだ。そして中身のほうも、いちど終わったはずの人がもう一度出てくるところから始まる。
死んだ人ひとりの残り時間が、世界の猶予になっている
束の間の眠りから覚めた京楽春水が、浮竹十四郎と言葉を交わす。入りは軽い。「何をほうけているんだ」「それ以外誰に見えるって言うんだ」。ところが続けて出てくる中身は重い。「ユーハバッハは三界を消滅させるだろう」「かろうじて俺が霊王の右腕の力で崩壊の進行を制止しているが」「それも俺の命が尽きるのと同時に終わる」。
公式サイトの用語集はミミハギ様を「霊王の右手を祀ったとされ」、そして「浮竹の『神掛』により霊王の右腕そのものとなった」と説明している。この世界がまだ壊れきっていない理由が、すでに世を去った人の残り時間だと明かされるのがこの場面だ。京楽の返事は「そうなっちゃうね」だけで、驚きもしないし、止めもしない。
勝算を尋ねたら、低さの見本が返ってきた
浮竹が切り出すのは「だから俺は最後の命をお前に懸けようと思う」「この世界のために」。京楽はここで勝算を尋ねる。返ってきたのは、かつての隊長である卯ノ花烈と引き分けに持ち込むくらいの見込みだ、という言い方だった。要するに、ほとんど望みがないという意味の例えである。
ところが京楽は「全然あり得るってことじゃないか」と受け取ってしまう。同じ一つの見込みを、片方は低さの見本として差し出し、もう片方は可能性として拾い上げる。これから采配を任される人がどういう読み方をする人なのか、この短い応酬だけで分かるようになっている。
肩書きで押して、中身で支える
京楽は一度「まったく僕の柄じゃないんだけどな」と言う。断り文句のように聞こえるが、すぐ後ろから「だがやるしかないだろ」と押し返されるので、退路のほうが先に消える。柄ではないと自分で言い切ったうえで、それでも引き受けるのがこの人のいつもの受け取り方である。
押すほうの言い分も面白い。「なんせ今のお前は護廷十三隊総隊長なんだからな」。理屈ではなく肩書きを持ち出して、逃げ道のほうをふさいでいる。
総隊長は、ここで初めて指名される
そのうえで並べられるのは、資格の話ではなく中身の話だった。「今必要なのは」と前置きして挙がるのは二つだけである。みんなの思いを汲んだうえで采配を振る知略と、「それを背負う覚悟だ」。そして「大切なものを」「お前は誰よりも持っている」と続く。
京楽が総隊長の席に着いたのは、前任者が倒れたからだった。順番で回ってきた席である。ここで初めて、その席に座るべき理由を正面から名指しで言われている。しかも言っているのは、もうこの世にいない人だ。「行ってくるよ」「頼むぞ総隊長」で場面が終わり、のちに戦いへ入る直前、京楽は「見てるかい、浮竹」とつぶやく。預かったものは力ではなく、見ている人だったことになる。
脚本だけが続投して、画をつくる側は三度入れ替わった
公式サイトのスタッフ表記によると、この回の脚本は田口智久、絵コンテは四条京介、演出は松井信太郎、総作画監督は高柳久美子、作画監督は柴美波と堀越久美子である。
第5話は総監督の田口智久が脚本・絵コンテ・演出をひとりで持っていて、第6話は脚本だけが田口智久のまま、絵コンテと演出を長井惟杜子が兼任していた。今回はその絵コンテと演出まで別々の人に分かれている。脚本だけが三話続けて据え置かれ、画をつくる側は三話とも入れ替わっている。総作画監督も小松原聖、長谷川亨雄、高柳久美子と、三話続けて別の名前が並ぶ。
なお、この一連は視聴者のあいだで、原作には無い場面をアニメ側が足したものとして受け取られている。浮竹と京楽のやり取りだけでなく、後半の救出や敵の計画の説明まで含めてそう見る声が並んだ。
「返してもらうぞ」と言われる側にいる主人公
公式サイトのあらすじは、この回をこう書き出している。「一護の卍解ですら、ユーハバッハには届かない。どんな強敵にも決して諦めなかったその瞳に、初めて絶望の色が宿る」。作品の側から主人公の絶望を先に宣言してしまうのは、なかなか思い切った書き方だ。そして本編は、その絶望の中身を短い台詞ひとつで説明してみせる。
数えているのが、自分の力ではない
一護が口にするのは、自分が弱かったという話ではない。「井上の力も」「みんなの力も通じねぇ」。届かなかったものとして数えているのが、全部よその人の力なのだ。絶望の理由に他人の名前が並んでいるところが、この回の一護の特徴になっている。
第5話で「守るなど欺瞞だ」と言われ、第6話では井上織姫が消えずに済んだ理由まで敵の未来改変の結果だと明かされた。守るために借りてきたものが、三話かけて順番に無効化されている。今回はその最後の一枚がめくられた形だ。
「もう諦めたのか」と聞くのは敵のほう
ユーハバッハは「もう諦めたのか、一護」「お前らしくもない」と声をかける。この回で一護らしさを最後まで期待しているのが敵だという、ねじれた形になっている。
第6話で同じ相手が言っていたのは「絶望してくれるな一護」「絶望した息子を殺すことほど、親にとってつらいものはないのだから」だった。その願いは叶わなかったわけである。そして叶わないと分かった途端、扱いのほうが変わる。「これまでか、つまらぬ」「いや、楽しませてもらったと言うべきか」。
貸したものを返せ、という終わらせ方
続く一言がこの回の芯にあたる。「さあ、お前の最後の使命だ」「お前に与えた我が力、返してもらうぞ」。公式の用語集は聖別を「ユーハバッハが力を分け与えた滅却師からその能力を強制的に徴収し、自身や他の滅却師に再分配する能力である」と説明していて、この別れの手つきは、そこに書かれている手順とそのまま同じだ。
第6話でハッシュヴァルトが「お前が発動する直前、私と陛下の力は入れ替わった」と言っていたのも、同じ系統の話だった。与える、預ける、取り上げる。この作品の敵は最初からずっと、その一つの動作だけで戦っている。
別れの言葉が、称号のほうで終わる
締めは「別れの時だ、黒崎一護」「絶望に飲まれた死神よ」。名前で呼んでおいて、最後に呼び名を変えている。第6話では「我が息子よ」と呼んでいた相手が、ここでは死神という種族の名に戻された。
力を返せと言った直後に呼び方まで戻すのだから、貸していたのは呼び名のほうでもあったことになる。息子という呼び方も、力と同じで返却の対象だった。ここまで来ると、この敵が誰かに何かを与える場面は全部、先払いの回収予告だったように見えてくる。
守る側が、どこを捨てるかを決めている
京楽が浮竹から預かったのは「それを背負う覚悟」だった。その覚悟が最初に使われる場面が、この回にちゃんと用意されている。ただしそれは、誰かを助ける判断ではない。捨てる場所を決める判断のほうだ。
バランサーという言葉の使われ方
「私たち死神はバランサーだ、忘れんな」という念押しがあり、受ける側が「はい、わかりました」と答える。ここまでは教えの確認でしかない。ところが続く言葉が、「流魂街を捨てることが瀞霊廷を守る手段になる」だった。
公式の用語集は死神を「現世と尸魂界にある魂魄の量を均等に保つため調整を計る役目を担う」存在だと説明している。均衡を保つという言い方は、どこかを減らす判断とまったく同じ形をしている。役目の説明が、そのまま切り捨ての根拠として使われてしまうのだ。
「こういう時のため」という言い方の冷たさ
さらに「こういう時のための流魂街だったのかもね」と続く。ずっとそこで暮らしている人たちのことを、備えのように言っている。
この一言が冷たく響くのは、迷いがないからではなく、迷ったうえで先に答えのほうを出してしまっているからだ。誰が言ったのかは名指しされないが、采配という言葉に何が含まれているのかは、この短いやり取りだけで十分に伝わる。
落とすのはこの中央塔だけだ、と決める側
同じ回のもう一方では、逆の決め方をしている人がいる。石田雨竜の作戦は真世界城の中央塔を落とすというもので、そこには「落とすのはこの中央塔だけだ」という限定がついている。中央塔から伸びる五本の橋を爆破して切り離す、という手順まで説明される。
使うのは滅却師の秘術で作られた道具で、霊子を分解して拡散させるものらしい。本人の説明は「端的に言えば、爆弾だ」。そのうえで「余計な被害を出すつもりはない」と言い切る。片方は捨てる場所を決め、もう片方は捨てない場所を決めている。同じ回に並んで置かれているので、読み比べる形になる。
作戦に最初に引っかかるのは、人の心配だ
「ちょっと待ってください」「落とすって、今、霊王宮で戦っている人たちは」。作戦の穴ではなく、そこにいる人のほうから入っている。危ないと言っているのではなく、置き去りになる人がいると言っている。
少しあとで京楽が「七緒ちゃんの心配も分かるけど、大丈夫」と口にする。そして「なんとかなるんじゃない」という言い方のすぐ後ろに、「なんとかするんだ」という言い直しが続く。楽観の形をした言葉が、その場で意志の形に直されている。そのうえで「僕はちょっと、他にやることがあってね」と席を外すので、預かった覚悟の使い道は、ここでも段取りのほうに出ることになる。
誰かがやらねばならない、と手記のほうが先に言っている
歪みの部屋にたどり着いた雨竜は「先生が書いていた通りだ」とつぶやく。公式サイトの用語集は雨竜を、「祖父の手記に残された九年前の『聖別』の意味とユーハバッハによる真世界の秘密をすべて背負い、仲間を護るため最後の戦いに挑む」人物だと紹介している。この回で彼が背負っているものの中身は、放送よりも前に公式の紹介文へ書き出されていた。
手記の側の言葉も回ってくる。歪みの中心と滅びの種をぶつけて打ち消すほかないこと、その余波は想像を絶するものになること。そのうえで「それでも、この世界で生きるものとして、誰かがやらねばならないのだ」と結ばれる。渦そのものは「この世界すべてを犠牲にする渦」と呼ばれ、しかもユーハバッハがこの戦争を始めるより前から仕掛けていたものだと説明される。どこを捨てるかを決める話と、誰がやるかを決める話が、同じ回の中で二重になっている。
借りたままの力で、貸した相手をやり返す
雨竜のほうの筋は、第6話の続きとしてきれいにつながっている。前回ハッシュヴァルトは「お前は何者だ、石田雨竜」と問い、雨竜は「そんなもの答えられるもんか」と答えを拒んでいた。今回、その問いがもう一度、まったく別の口から飛んでくる。
同じ問いが、敵ではなく味方から来る
その歪みの部屋で、雨竜はティア・ハリベルとネルに出くわす。ハリベルが投げるのが「クインシーを名乗るなら答えろ」「貴様は誰のために、何を求めここにいる」だった。前回と言葉づかいまで似ている。
前回は敵が正体を問い、今回は共に戦う側が目的を問う。しかも今回の雨竜は、言葉で答えていない。答えの代わりに出てくるのが作戦の中身で、その作戦の作りがそのまま彼の答えになっている。
「お前一人の問題ではない」と言われる
作戦を聞いたハリベルの詰め方も容赦がない。「話は分かった」「だが、どうする」「ちゃんと考えているのか」「どうなんだ、石田雨竜」。城ごと落とすつもりかと確かめられ、雨竜は「元は霊子で構成されているんだ」「やってみせるさ」と返す。
そこに重なるのが「世界の崩壊は、お前一人の問題ではないと言っている」だった。単独でやるかどうかを、力が足りるかではなく、誰の問題かという話として詰めている。ネルの言い方はもっと直接的で、「回りくどいわ、ハリベル」「ここにいるのはあなた一人じゃない」「私たちが手伝う、そう言ってるの」と割って入る。
「命の保証はできないぞ」に返ってきた答え
雨竜が確認するのは危険のほうだ。「命の保証はできないぞ」。返ってきたのは「そんなものを求めたことはないな」。命の保証という考え方そのものが、答えた側にはもともと無い。断る理由になると思って差し出したものが、そのまま成立せずに落ちる。
ネルはさらに「あなたは一護の友達でしょ」と、参加する理由を一護のほうに置いてしまう。第6話で「僕らは、友達だからだ」と言い切ったのは雨竜本人だった。その同じ理由が、今度は他人の口から投げ返されている。そこへ「もちろん僕たちも協力させてもらうよ」という声まで加わって、断る材料のほうが先に尽きる。
折られた矢を、折れなかった未来と置き換える
打ち返し方が見事だった。ユーハバッハは「お前が放ったもう一つの希望の矢も、すでに折ってある」「お前がその未来を選ぶことは分かっていた」と告げる。第6話で天鎖斬月を「未来で折っておいた」と言ったのと、まったく同じ手だ。
これに対する雨竜の返しが「だが僕は、折れなかった未来と置き換えた」。未来を改変する力に、起きたことを逆転させる力で上書きし返している。聖文字Aの能力は、指定した二点の間にすでに起きた出来事を逆転させるというものだった。前回は互いの傷を入れ替えるのに使われた力が、今回は未来の一手そのものへ向けられている。
「それがお前の選ぶ希望か」への返し
攻防の途中でユーハバッハが投げるのが「それがお前の選ぶ希望か」だった。雨竜の返しは「まだ選んでいないさ」。選べ、秤にかけろと迫り続けたのは第6話のハッシュヴァルトのほうで、その相手を倒してきた人間が、まだ選ぶ前だと言い返している。
敵が希望という語を好んで使うのは、第6話からずっと変わらない。ただし前回は「希望を持ち続けろ、今まで通り」と、認めたうえで無効にする使い方だった。今回は選択のほうに話をずらしてきて、そこでも空振りしている。希望の中身ではなく、いつ決めるかを握られなかったわけだ。
「僕一人ではできなかった勝利」
ユーハバッハは「我が力を、よくぞそこまで磨いてくれた」と褒める。第6話で「敬意を表したのだ、お前の力に」と言ってから卍解を折った相手なので、この褒め方は警告と同じ意味を持つ。実際そのあとに「霊王宮は愚か、瀞霊廷も飲み込むぞ」と付け加えている。
雨竜の答えは「分かっているさ」、そして「だからこれは、僕一人ではできなかった勝利なんだ」。前回きっぱり否定された「友達だからだ」が、今回は勝利の説明としてそのまま採用されている。与えられた聖文字で、与えた相手の一手を返す。しかもその一手が通ったのは、借りた力を一人で使わなかったからだ。
それでもユーハバッハは倒れていない。「この戦争がようやく終わったということか」「お前の力しかと見せてもらった」と言ったうえで、「だが、私の作る未来が変わることはない」と付け加えている。勝ったのは一手であって、勝負そのものではない。副題は「THE END 2」だが、この回で終わったのは、ひとつの手口のほうだった。




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