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第11話の副題は「ふたり~補いあえる仲間は尊い!」。互いのネームを読み合った二人が、相手の長所をそのまま自分の欠けた場所として見つける。「こんな綺麗な構成ができたらな」と「こんな勢いがあったらな」が、同じ形で向かい合わせに置かれる。手島先生の答えは「補い合える仲間がいれば」で、その先は言われない。そして社の前では、届かなくなった呼びかけが静かに残される。




副題「ふたり~補いあえる仲間は尊い!」と、公式のあらすじ
あらすじは「思い出を静かに振り返るのだった」で終わる
第11話の副題は「ふたり~補いあえる仲間は尊い!」。公式のあらすじは「次の目標である冬のコミティアに向けて、準備を始める安海たち」から始まり、「安海と藤森は、互いにオリジナルの漫画を制作することに決め」と続く。締めは「手島先生は、かつて連載していた小学館の前で、様々な思い出を静かに振り返るのだった」だ。生徒たちが前へ進む回のあらすじが、先生が過去を見る場面で閉じられている。
副題が「ふたり」で始まる回だった
この作品の副題は、これまで一語で言い切る形が多かった。そこに今回は「ふたり」が入り、「補いあえる仲間は尊い!」と説明が付く。誰と誰のふたりなのかは、本編を見れば迷わない。副題そのものが、この回で何が起きるかを先に言ってしまっている。
「それぞれオリジナル」から始まって、合作で終わる
あらすじは「それぞれの作風で制作を進めるが、各々が足りない部分を痛感していた」と書く。別々に描き始めた二人が、足りないものを知って、結果として一緒に作る。離れて描いたからこそ、組む理由が見つかっている。
帰りは飛行機、前々日からの東京入り
「そろそろ次回のコミティアの準備を始めましょう」
冒頭は手島先生の一言から始まる。「そろそろ次回のコミティアの準備を始めましょう」と告げ、自分については「また一人で出ます」と続ける。今回は事情がある。「その日のうちに島に戻れるよう」「帰りは飛行機です」で、飛行機と聞いた部員たちが色めき立つ。準備の号令と同時に、先生が最後までいられないことが告げられている。
「コミティアは最後まで参加できません」
先生は続けて「コミティアは最後まで参加できません」と言う。そのかわりに出てくるのが前倒しの案だ。「なので前々日から東京入りをして」「一日 見聞を広める場を作ります」と組み立てる。抜ける分を、先に足すことで埋めようとしている。
「漫画作りにはあらゆる経験が役立ちます」
理由の説明も、この先生らしい。「漫画作りにはあらゆる経験が役立ちます」と前置きし、「この機会に触れてみたい文化的施設があれば教えてください」と希望を募る。出てくるのは「大きい本屋さん」と「美術館に行ってみたいです」で、どちらにも「いいですね」「きっと勉強になるでしょう」と返る。行き先を決めるのではなく、行きたい場所を言わせている。
「ネズミの国の遊園地」は「共に却下です」
もちろん全部が通るわけではない。パンケーキの店と「ネズミの国の遊園地」が挙がったところで、返事は「共に却下です」の一言だった。基準は学びがあるかどうかで、そこだけは動かない。何でも許す先生ではない、という線が一度だけ引かれている。
「二人でそれぞれオリジナル作ってみない?」
「今回も趣味の範囲で創作を進めてください」
準備に入る前、手島先生はいつもの言葉を置いていく。「今回も趣味の範囲で創作を進めてください」だ。プロを目指すなとも、本気を出すなとも言わない。ただ範囲を示す。前へ行こうとする生徒に、毎回この一言が先に渡されている。
誘うのは安海のほうだった
切り出したのは安海相だ。「藤森さんがよかったらなんだけど」と遠回しに始め、「二人でそれぞれオリジナル作ってみない?」と続ける。藤森心の返しは「私のオリジナル?」で、自分が描く側になる発想そのものがなかったと分かる。誘われて初めて、描かない理由がなくなっている。
「前のコミティアで私のだけ散々だったから」
誘った側の動機は、きれいごとではない。「前のコミティアで私のだけ散々だったから」「リベンジを」と口にする。悔しさが出発点で、そこに「藤森さんのオリジナルも気になって」が足される。負けた記憶が、次の本を作る燃料になっている。
「手島先生に擬音褒められたよな」
藤森の側には、まだ手がかりがない。そこへ赤福想が「手島先生に擬音褒められたよな」と前の話を持ち出す。藤森は「それメインに考えたら面白いかも」と受け、描く場所が決まる。本人が忘れていた褒め言葉を、横にいた人間が覚えている。
読み合って、足りないものが見えた
「そこから逆算してどう始めたらいいか考える」
藤森の手順は徹底している。先に見せたい一枚を決め、「そこから逆算してどう始めたらいいか考える」と説明する。行き当たりばったりの余地を残さない作り方だ。描き出す前に、終わりの絵がもう見えている。
「勢いで描いてたら詰まっちゃった」
一方の安海は、途中で止まる。「勢いで描いてたら詰まっちゃった」「この先どうしよう」と抱えたところに、藤森の助言が入る。「結末を決めると考えやすい」だ。ただし赤福は「決めないほうが 安海には合ってるよな」と別の見方を出す。同じ詰まり方に、正反対の処方箋が二つ並んでいる。
「伏線を前半に入れて」「前半はおとなしくすればいいの?」
助言を受けた安海は、その場で組み替え始める。「伏線を前半に入れて」と言い、「最後が一番盛り上がるようにしたいから」「前半はおとなしくすればいいの?」と確かめる。そして「ようやく描き出せる」と机に向かう。止まっていた原因が、描く順番の問題だったと分かる。
「整合性は取れてるって思うけど」「パンチが足りない」
出来上がった二本を、互いに読み合う。藤森の作へ向けられるのは「整合性は取れてるって思うけど」「パンチが足りない」で、安海の作へ向けられるのは「くだらねえ」「相変わらず勢いだけでめちゃくちゃだ」だ。褒め合いではなく、欠けている側から先に言葉が出ている。
「こんな綺麗な構成ができたらな」「こんな勢いがあったらな」
「私にないもの」と、二人が同時に思う
読み終えた二人の内心が、そのまま重なる。藤森が見ているのは「自由奔放な」発想と「元気の良さ」で、「私に足りなかったもの」と続く。安海が見ているのは「整然とした絵作り」と「読んだ後の腑に落ちる感じ」だ。相手の長所を、二人とも自分の欠けた場所として見ている。
「こんな綺麗な構成ができたらな」「こんな勢いがあったらな」
そして二つの願いが、向かい合わせで置かれる。「こんな綺麗な構成ができたらな」と「こんな勢いがあったらな」だ。同じ形の文で、中身だけが入れ替わっている。続く「じゃあ こうすれば」で、二人は同時に同じ結論へ届く。足りないものが逆だったから、足せば埋まると気づいている。
「今までのめちゃくちゃが伏線になって お話が収束していってる」
完成したネームを、手島先生が読む。「安海さんらしい勢いのある出だしですね」と入り、「安海さんの悪い癖が」「話が大きくなりすぎてく」と欠点も見る。そのうえで「今までのめちゃくちゃが伏線になって」「お話が収束していってる」と言い、「今までより構成が複雑で楽しかったです」「どうやって作りましたか」と尋ねる。先生のほうが、作り方を聞く側に回っている。
「補い合える仲間がいれば」という答え
「前半ワクワク」「後半綺麗にまとまって」
尋ねられた安海が明かすのは、役割を分けた作り方だ。「前半ワクワク」「後半綺麗にまとまって」と並べ、「アイちゃんとココロちゃんのいいところが出るんじゃない」という提案が元になっていたと話す。手島先生の評は「とても良いバランスだと思います」だった。思いつきの出どころまで、本人が正直に明かしている。
「自由で破壊的な発想」「秩序ある整然とした構成」
ここで先生の話が、二人から作家一般へ広がる。「自由で破壊的な発想」「秩序ある整然とした構成」を挙げ、「優れた作家は」「その相反する二つの性質を併せ持っている」と言う。普通はどうするかも添える。「通常は長い時間をかけて」獲得するものだ、と。両方持っている人がいる、という事実がまず示されている。
「補い合える仲間がいれば」で、言葉が切れる
そして副題そのものが口にされる。「補い合える仲間がいれば」だ。その先は言われない。時間をかけて一人で身につける道と、仲間と補い合う道が並び、後者を選んだ二人が目の前にいる。言い切らなかった部分を、二人の姿が引き受けている。
「いつの間にかココロちゃんって」と、ポコ太の「そろそろ…」
「そしたらココロちゃんと本当の合作になるね」
話は次の段階へ進む。藤森が絵を任される流れになり、「そしたらココロちゃんと本当の合作になるね」という言葉が出る。「オリジナルはいいんですか」と聞かれても、迷いはない。それぞれの本を作るはずだった話が、一冊を一緒に作る話に変わっている。
「私 藤森さんのこと いつの間にかココロちゃんって」
気づいたのは、言ったあとだった。「私 藤森さんのこと いつの間にかココロちゃんって」と安海が止まり、藤森も同じことに気づく。前は苗字で呼び合っていた二人が、いつからか下の名前になっている。関係が変わった瞬間を、二人とも思い出せない。
ポコ太の「そろそろ…」
その裏側で、静かな場面が挟まる。人のいない社の前に、ポコ太がひとりでいる。言うのは「そろそろ…」の一言だけだ。誰に向けたのかも、何がそろそろなのかも説明されない。役目の話を、本人だけが先に知っている。
神保町の夜と、空になったマグマ
「今日はこちらに宿を取りました」
東京に着いた一行は、まず街に驚く。「冬の街はどこもこんなだよ」と言われても「東京すっげえ」が出てしまう。宿の説明も先生がする。「明日は一日」「書店巡りなどをして見聞を広げるため」「今日はこちらに宿を取りました」だ。観光ではなく、本を見るための一日として組まれている。
「でも先生の本どこにもないな」
本屋を回るうちに、部員の一人が気づく。「でも先生の本どこにもないな」だ。やがて「向こうに 手島先生の漫画 売ってたよ」という報告が入り、古書のほうで見つかる。そこから「先生の本 出してた会社だ」という話になり、「あんなにいっぱいの本は」「こういうところで作ってるんだね」と建物を見上げる。先生の過去が、本人の説明ではなく街の中から出てくる。
「たった2回の連載で 私のマグマは空になってしまったのに」
同じ場所で、先生の内心が流れる。「たった2回の連載で」「私のマグマは空になってしまったのに」だ。そして「ここにいる漫画家すべてが」毎週それを続けていると続く。かつての担当らしき人物との会話では「2話も素晴らしかったです」「受賞作の頃から好きなのって」と言われ、返すのは「まだ まだね」の一言だった。枯れたと自分で言う人が、その建物の前に立っている。
「落としちゃって ごめんね」と、大御所の記憶
回想には、当時の先生たちも出てくる。「トンデ・ミノル先生です」と紹介され、「落としちゃって ごめんね」と笑う大御所がいる。刷り上がった本を前に「商業で出すってすごいことですよね」と言われ、「先生の本もそんだけ刷ればいいのに」と部員に返される場面もある。過去の話に出てくる人たちが、みな現役として描かれている。
完売と、「こんな時 漫画の主人公なら」
「図書券500億円」の夢
コミティア前夜、先生は「明日はコミティアですよ」「早く寝なさい」と部員を寝かせる。そのあと安海が見るのは、自分が漫画大賞を取る夢だ。「図書券500億円」という現実にない金額が出てきて、目を覚ます。「どうかしたのか」と聞かれ、「ちょっと夢見ちゃって」と返す。大きすぎる夢を見た直後に、当日の朝が来る。
「忙しいから アイちゃん 売り子手伝って」
当日、光から頼みが入る。「ねえ 今回 早めに上がるでしょ?」「忙しいから アイちゃん 売り子手伝って」だ。「こんな直前で?」と驚きつつ引き受ける。赤福は「こっちは任せろ」と自分の持ち場を引き受け、「11時になりました」「ただいまよりコミティアを開会いたします」の放送で会場が動き出す。それぞれの持ち場が、開会前に決まっている。
「売れてよかったけど」「私たちの実力も知りたかったな」
本は売り切れる。ただし手放しでは喜べない。「ヒカルちゃんがSNSで宣伝してくれたみたいで」と分かり、「ひょっとして お礼って これ?」と結びつく。「私たちのSNS見て来てくれた人も」いたが「買ってくれませんでしたけど」だ。出てくるのは「売れてよかったけど」「私たちの実力も知りたかったな」という言葉だった。完売した日に、完売の理由を疑っている。
勝ち負けの言葉を持ち込む相手
会場には、前に顔を合わせた相手もいる。売り切れた机を目の当たりにして、勝った気になるなと言い残していく人物がいて、そこで初めて勝ち負けの言葉が持ち込まれる。こちらは張り合うつもりがない。勝敗の話をしているのは、いつも向こう側だ。
まとめと考察
呼びかけは届かず、同じ言葉を本人が言う
終盤、「やすみ こんなとき 漫画の主人公なら…」という呼びかけが届く。続けて「聞こえてっか?」と重ねても、返事はない。そのあと安海は「ココロちゃん」と名を呼び、「こんな時 漫画の主人公なら」と自分で口にする。これまで受け取ってきた言葉を、初めて自分から出している。
出張編集部への持ち込みと、「いいの」
向かった先は出張漫画編集部だ。前に「アイツにリベンジすっか?」「怖いよ」とためらった場所でもある。原稿を差し出す段になって「持ち込みは 僕が」と割って入る声があがるが、返るのは「いいの」の一言で、最後に「拝見します」が置かれる。怖いと言った相手の前に、自分の足で立っている。
この回でいちばん動いたのは、呼び方だった
事件らしい事件は起きていない。起きたのは、呼び方が変わったことと、一人で作っていた本が二人の本になったことだ。「アイちゃん」「ココロちゃん」と呼び合う二人は、もう分担ではなく合作の話をしている。関係の変化が、そのまま作品の作り方の変化になっている。
先生が過去を見て、生徒が先へ行く
同じ回の中で、手島先生は空になったマグマの話をしている。生徒たちは補い合う相手を見つけ、持ち込みにまで進む。あらすじが「静かに振り返るのだった」で終わるのは、そちらが止まっているからだ。進む側と振り返る側が、同じ街の同じ日に並んでいる。
「そろそろ…」が残していったもの
そして社の前の「そろそろ…」が残る。呼びかけても届かなくなった声と、自分から同じ言葉を言えるようになった人物が、同じ回の中に置かれている。支えが要らなくなることと、支えを失うことは、外から見れば同じ形をしている。成長の場面が、そのまま別れの場面として描かれている。




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