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第23話の副題は「シャルロッテの洗礼式」。ローゼマインは十日間の練習で祝福の量を抑えることを覚え、妹の洗礼式を無事にやりきる。「私もお姉様のようになりたいです」という一言で、努力は報われた。しかしその夜、黒ずくめの男たちにシャルロッテがさらわれる。アンゲリカの活躍で妹は取り戻したものの、一人になったローゼマインは捕らえられ、毒を飲まされてしまう。




副題「シャルロッテの洗礼式」と、公式のあらすじ
あらすじは祝福の成功から始まる
第23話の副題は「シャルロッテの洗礼式」。公式サイトのあらすじは「シャルロッテにおねだりされていた祝福を無事にやりきるローゼマイン」から始まり、「ホッとしたのも束の間、シャルロッテが黒ずくめの男達に誘拐された」と続く。そして妹を取り返すために騎獣・レッサーくんで飛び出したローゼマインも捕らわれ、「無理やり毒を飲まされて絶体絶命のピンチに」と書かれている。一話の中で、姉として一番うれしい瞬間と、一番危ない瞬間が続けて置かれている。
前回の決着と「早急にエーレンフェストの守りを固めたい」
冒頭は前回の整理から始まる。ヴィルフリートへの処遇が決まり、彼を陥れたのは旧ヴェローニカ派、今のゲオルギーネ派だったと語られる。そこで出てくるのが「早急にエーレンフェストの守りを固めたい」という言葉だ。ローゼマインは魔力圧縮の方法を広めるよりも、ユレーヴェ作りを先にしたいと答える。理由は「今のままでは何かあっても 走って逃げることもできません」「先に健康を手に入れたいです」だった。守りを固めたいという話の中で、ローゼマインが真っ先に挙げたのが、自分が走って逃げられないことだった。この一言が、後半の襲撃でそのまま重くなる。
神殿の隠し部屋で、素材を鍋に入れてかき混ぜる作業が続く。「神官長 腕がだるいです」とこぼすローゼマインに返ってくるのは「健康が欲しいのであろう 我慢しなさい」。「これで普通の女の子に」という期待とともに、ようやく「完成だ」の声が上がる。第21話でリュエルの実を取り直した努力が、ここで一つの形になった。
「程よい量」の祝福を身につけるまで
洗礼式まで残された時間で、ローゼマインは祝福の練習を始める。
「君の祝福は感情にかなり左右される」
「シャルロッテの洗礼式まであと10日」。妹から「洗礼式はお姉様が祝福を授けてくださるのですか」「楽しみにしておりますね」と言われ、姉は張り切る。ただし、練習で告げられたのは「君の祝福は感情にかなり左右される」という欠点だった。「シャルロッテと他の子供で 差が出てしまうのは困る」「程よい量の調節が できるようにしなさい」。多すぎても少なすぎてもいけないので、「小さすぎる もう一度」とやり直しが続く。魔力が足りない悩みではなく、多すぎて止められない悩みを抱えているところが、ローゼマインらしい。
「その一言が欲しいからだ」
練習の合間には、みんなに魔力圧縮の方法を教え、冬支度や印刷の手配も進める。本人の言葉を借りれば「めちゃくちゃ忙しかった」。それでも頑張れた理由は、妹の「お姉様 すごいです」という声が聞きたいからで、ローゼマインははっきり「その一言が欲しいからだ」と言う。領地を守る大きな仕事の動機が、妹にほめられたいという小さな願いになっているのが微笑ましい。
家族の姿を見つけた瞬間
儀式の場で、ローゼマインは「父さん 母さん トゥーリ」と下町の家族を見つける。「カミル もう歩けるんだ」「こんな寒い中来てくれるなんて」と胸がいっぱいになり、「きっと神様がものすごく頑張ったご褒美をくださったのだ」と「神に祈りを」捧げた途端、祝福はあふれ出してしまう。すぐに「この馬鹿者」と叱られ、「まだ感情に左右されているな」と指摘される。ローゼマインの返事は「無理ですよ あんなの見せられたら」だった。家族に会えた喜びがそのまま祝福の量になってしまう。だからこそ、洗礼式では気持ちを抑えなければならない。「シャルロッテの洗礼式では失敗は許されない」という念押しが、本番への緊張を高める。
冬の始まりに読み上げられた罰
冬の社交が始まる場で、狩猟大会の事件の結末が皆の前で明かされる。
「事件を公にし 出世の道を断つ」
「今年もまた 土の女神ゲドゥルリーヒは 命の神エーヴィリーベに隠された」「皆が共に春の訪れを祈らねばならぬ」という季節の言葉のあと、領主の口から狩猟大会の事件のあらましが語られる。ヴィルフリートについては「次期領主の座から外すとともに その記憶を探った」。関わった者には「減俸もしくは罰金を課す」とされ、名前も読み上げられる。そして「事件を公にし 出世の道を断つ」「これが彼らへの罰だ」と告げられる。罰金よりも、名前を皆の前で読み上げることのほうが重い罰として扱われているのが、貴族社会らしい。
シャルロッテの洗礼式
発表が終わると、いよいよ新しい領主の子を迎える儀式になる。
「でしたら わたくしの髪飾りを貸しましょう」
洗礼式の前、シャルロッテはローゼマインの髪飾りを見て「私も洗礼式につけてみたいと思っているのですが」と打ち明ける。ローゼマインは「でしたら わたくしの髪飾りを貸しましょう」と応じ、シャルロッテは「よろしいのですか」「ありがとう存じます お姉様」と喜ぶ。髪飾りをつけた妹に「うん よく似合ってる」と声をかけ、「頑張れ シャルロッテ」「私も頑張るからね」と自分にも言い聞かせる。自分の髪飾りを妹に貸す場面は、ローゼマインがもう一度「姉」になったことを分かりやすく見せている。
「程よい量 程よい量」
儀式では「我が娘として 神と皆に認められた シャルロッテに指輪を贈ろう」という言葉とともに指輪が贈られる。続いて「次は私の番」。ローゼマインは「程よい量 程よい量」と自分に言い聞かせてから、「シャルロッテに 土の女神 ゲドゥルリーヒの祝福を」と唱える。「育む大地のごとく」「数多の困難から守りたまえ」と祈りが続き、儀式は無事に終わる。十日間の練習がすべてこの一回のためにあったことを思うと、自分に言い聞かせる小声がとても切実に聞こえる。
「私もお姉様のようになりたいです」
昼食のあと、シャルロッテは「お姉様 とても素敵でした」「私もお姉様のようになりたいです」と言う。ローゼマインの心の声は「そう これが欲しかった」「私の努力は報われたよ」。忙しさの理由として語られていた一言が、ここで本当に届く。あらすじの言う「ホッとしたのも束の間」は、まさにこの満たされた時間のことだ。
初めての社交と、言い回しの意味
午後の社交で、ローゼマインは兄と妹を連れて貴族たちと言葉を交わす。
「出た ブラックリスト」
近づいてきた貴族を見て、ローゼマインは心の中で「出た ブラックリスト」とつぶやく。その貴族は「ヴィルフリート様は 白い塔へと柔らかな布が流れたのではないかと 案じておりましたが」と話しかける。ローゼマインは兄の代わりに「風の女神 シュツェーリアが 獅子のもとから飛び出さぬよう お守りくださいました」と返し、「ね ヴィルフリート兄様」と話を収める。心の中では「よかった お母様のリストをちゃんと覚えておいて」と安心している。剣を交えるのと同じくらいの緊張が、あいさつ一つの中に詰まっている。
「アウブ・エーレンフェストから離れるわけがないでしょ」
「今のはどういう意味だ」と聞くヴィルフリートに、ローゼマインは「白の塔にいるおばあ様とお会いしたことで」「おばあ様たちの派閥に兄様が入ったと思っていた」「という意味です」と説明する。シャルロッテの「お姉様は何と答えたのですか」には「アウブ・エーレンフェストから離れるわけがないでしょ」と。派閥の探りを、神話の言い回しで受け流すやり取りを、兄と妹は後から翻訳してもらっている。二人がまだこの世界の言葉に慣れていないことが、よく分かる場面だ。
「君が矢面に立ちなさい」
「そなた なぜそのような言い回しを」と問われ、ローゼマインが教わった言い回しだと分かる。続いて「ヴィルフリートには教育が足りず」「シャルロッテは初めての社交だ」「君が矢面に立ちなさい」という指示が出る。「私が不甲斐ないばかりにすまぬ」という謝罪に、ローゼマインは「いずれ覚えなければならないことですから」と答える。兄と妹の分まで矢面に立つ役目が、洗礼式を終えたばかりのローゼマインに回ってくる。
北の離れへ戻る途中の襲撃
「七の鐘の後は大人の時間」。子供たちは北の離れに下がることになる。
「あそこの窓が少し動いた気がしたのです」
途中で「お爺様 相変わらず怖い顔してる」と思いながら「ボニファティウス様 ごきげんよう」とあいさつし、シュラートラウムの祝福の言葉を受け取る。「明日は子供部屋でカルタだ」「私も練習しましたよ」と、次の日の話をしながら廊下を歩いていたとき、シャルロッテが「あそこの窓が少し動いた気がしたのです」と足を止める。「見ていきましょう」「気のせいです、きっと」と言い合いながら近づいた先で、「鍵が」という声が上がる。明日のカルタの話をしていた直後だからこそ、何気ない窓の違和感が怖い。
「ここは我々にお任せを」
黒ずくめの男たちが現れ、護衛騎士たちが「ここは我々にお任せを」と前に出る。ローゼマインは「兄様 大広間へ戻って 助けを呼んでください」と頼み、合図の「ロート」も上がる。シャルロッテは「お姉様 北の離れに あそこは結界がございます」と逃げ場を示すが、その直後に連れ去られてしまう。結界のある場所を知っていたシャルロッテが、そこへたどり着く前にさらわれる流れが、襲撃の周到さを感じさせる。
「わたくしの可愛い妹を」「許しません」
相手が騎獣に乗っているのを見たローゼマインは、敵が貴族であることに気づく。そして「わたくしの可愛い妹を」「許しません」と、自分も騎獣で飛び出す。アンゲリカが「私もお供します」と続き、「アンゲリカ 危ないですよ」と止められても「身体強化中につき 心配無用です」と返す。「早くしろ 逃げられるぞ」「飛ばします」「無茶をするな 二人とも」と声が重なる中、二人は犯人を追う。守られる側のはずの領主の養女が、真っ先に空へ飛び出していくところに、ローゼマインの妹への思いが表れている。
「翼もないのに 空を飛ぶだと」
「待ちなさい 卑怯者」と追いすがるローゼマインの耳に、「お姉様 助けて お姉様」という妹の声が届く。犯人は「騎獣なのか」「翼もないのに 空を飛ぶだと」と驚く。ローゼマインは「シャルロッテを 返しなさい」と叫ぶ。レッサーくんの見た目が、貴族の常識から外れているからこそ相手の意表を突いている。
アンゲリカの一撃
アンゲリカは犯人に斬りかかり、シャルロッテを取り戻す。「もう大丈夫です」の声に、ローゼマインは「アンゲリカ 素晴らしいです」とたたえる。「間に合わせろ」という声のあとには、「やった コルネリウス兄様 すごい」と喜ぶ声も上がる。身体強化で飛び込むアンゲリカの動きは、この回でいちばん気持ちのいい場面だった。
大広間の混乱と、祖父の出陣
同じころ、大広間にも襲撃の知らせが届く。
「なぜロートを上げないの」
「敵はシュタープを所持 至急救援を」という報告に、「なぜロートを上げないの」と問いが飛ぶ。返ってきたのは「上げましたが 応答がありませんでした」。「一班から四班は救援に向かえ」と指示が出され、「ここにおらぬ貴族には 疑いがかかると思え」と場が引き締められる。合図が届かなかったという一点が、この襲撃が内側から準備されていたことを示している。
「ローゼマインは私が必ず助ける」
知らせを受けたボニファティウスの場面には、「おじい様 ありがとう存じます 大好き」と抱きついてくる孫娘の姿が差し込まれる。そのうえで「ローゼマインは私が必ず助ける」と飛び出していく。怖い顔の祖父のゆるんだ表情のおかげで、緊迫した場面に少しだけ笑いが入る。
一人になったローゼマイン
妹を取り戻したあと、ローゼマインは城へ戻ろうとする。
「この声 さっきとは別の貴族だ」
「お城はあっちか」と方向を確かめ、「みんなに知らせなきゃ」と急ぐ途中で、ローゼマインは捕らえられる。「やっと捕まえた」「本当に手こずらせてくれたな」という声に、「この声 さっきとは別の貴族だ」「聞いたことがある」「誰だっけ」と考える。相手は「そなたがいれば」「あの方もきっとお喜びになる」と言う。シャルロッテを狙った襲撃のあとに、本当の狙いだったかのようにローゼマインが捕まる。
「祝福よりもこれを飲め」
ローゼマインが祝福で抵抗しようとすると、相手は「エーレンフェストの聖女は 祝福が使えるのでしたか」と言い、「祝福よりもこれを飲め」と薬を押しつける。「毒」と気づいても、「吐き出さずに飲み込むのだ」と許されない。「薬が効いてきた」「どうしよう まるで力が入らない」。洗礼式で妹を守る祈りを捧げたその日に、祝福そのものを封じられてしまうのが残酷だ。
「助けて ルッツ」
「厨房の外に紋章のついていない馬車が止めてある」「運んでおけ」という指示のあと、ローゼマインは「私 どうなるの」「死ぬの」とおびえる。大広間では「一人おらぬだと」と騒ぎになっている。「こんなところで 死にたくない」という思いの中で呼んだのは、「助けて ルッツ」「父さん」、そして「神官長」だった。追い詰められた最後に呼んだのが、下町の仲間と実の父と神官長だったところに、ローゼマインが誰を支えにしてきたかがそのまま出ている。
まとめと考察
第23話は、姉として報われた一日が、そのまま最大の危機へつながった回だった。
走って逃げられない体
冒頭でローゼマインは「今のままでは何かあっても 走って逃げることもできません」と言っていた。守りを固める話の中で、自分の体の弱さを真っ先に挙げていたのである。妹のためには空へ飛び出せても、自分一人になったときには逃げる力がない。冒頭の一言が、最後の場面の怖さを前もって用意していた。
祝福で始まり、祝福を封じられて終わる
前半は「程よい量」の祝福を身につける話で、洗礼式ではその練習がきちんと実を結んだ。ところが後半、相手はその祝福を知ったうえで「祝福よりもこれを飲め」と迫る。祝福が使える聖女として知られていることが、ここでは狙われる理由にも、封じられる理由にもなっている。祝福の量を感情で左右されないよう練習してきたローゼマインが、最後に感情のままに誰かの名前を呼ぶしかなかったという対比も印象に残る。
姉としての一日
髪飾りを貸し、社交では兄と妹の前に立ち、襲撃では真っ先に妹を追った。この一日を通して、ローゼマインは領主の養女である前に、シャルロッテの姉として動いていた。妹を取り戻したことが無駄になったわけではない。姉が命がけで守った妹は、ちゃんと味方のもとへ戻っている。その事実が、暗い幕切れの中で唯一の救いになっている。




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