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かわいい絵柄で始まる第1話の副題は「FXって、なぁに?」。中学3年生のくるみは、母がFXで2000万円を失ったことを知り、父に知られる前に取り返そうと決意する。けれど疲れ果てた母は帰らぬ人となり、くるみは自分が頑張れば母は死なずに済んだと証明するため、5年後にFXの戦場へ立つ。最初の取引で味わったのは、母と同じ一瞬の歓喜と転落だった。




第1話の副題は「FXって、なぁに?」
第1話の副題は「FXって、なぁに?」。あらすじは「中学3年生の福賀くるみは、ある日、母の梢がFXで2000万円を失ったことを知る」と始まり、「自らFXを学び、母が失ったお金を取り返すと決意した」くるみが、大学生になって「ついにFXの戦場へと足を踏み入れる」までを描いている。かわいらしい絵柄とは裏腹に、第1話から重い展開が続く回だった。
「絶望の際に立っていることに」
物語は、取り返しのつかない瞬間から始まる。「なぜ人はその瞬間になるまで」「絶望の際に立っていることに気づけないのだろう」。この問いかけが、第1話全体を貫くテーマになっている。
時はさかのぼり、くるみが中学生だったころ。ニュースは「100年に一度の大不況」や「世界的金融危機」の話題ばかりだったが、「中学生だった私には意味がわからなかったし」「興味もなかった」。お金の世界とは無縁だった少女が、ある日突然その渦の中心に放り込まれる。冒頭の短い回想が、その落差をはっきりと見せていた。リーマンショックを思わせる時代背景も、物語に現実味を与えている。
忙しくなった母
学校での友達とのやり取りは、ごく普通の中学生の日常だ。お昼ごはんを買っている理由を聞かれ、くるみは「お母さん忙しいらしくて」「ちょっとした親孝行みたいな」と笑う。家に帰ればごみも出されておらず、「お母さん最近主婦業サボりすぎ」とぼやく。
この時点で、くるみはまだ母の異変の理由を知らない。何気ない日常の描写の中に、少しずつ不穏な影が差し込んでいく。見ている側だけが先に気づいてしまう作りが、じわじわと怖かった。友達に囲まれて勉強を教えるくるみの姿は、頭が良く面倒見のいい子として描かれている。その賢さが、のちに彼女をFXへと向かわせる理由にもなっていく。
母が失った2000万円
そしてくるみは、パソコンの前で叫ぶ母の姿を目にする。
「上がるって」「絶対に上がるって聞いたから」
画面に向かって「お願いよ」「ここ突破されたら終わるの」「最後に一回くらい勝たせなさいよ」と叫ぶ母。何をしているのか問うくるみに、母は「うんFX」と答え、いくら使ったのかと聞かれて「2000万」と告げる。
動揺した母は「違う」「私のせいじゃない」「絶対に上がるって聞いたから」と言い訳を重ね、「お父さんには内緒にしてて」と娘にすがる。大人であるはずの母が、中学生の娘に秘密を背負わせてしまう。くるみは「離婚で家族バラバラとか」「私が何とかしないと」と、一人で抱え込む決意をする。
この場面の母は、責任を取る大人としてではなく、追い詰められて取り乱す一人の人間として描かれている。だからこそ、くるみは母を責めるより先に、家族を守る方法を考えてしまう。中学生にそこまで背負わせてしまう状況そのものが、この物語の痛々しさの出発点になっていた。
「もう子供扱いして大人はいつもこれだ」
くるみは自分も働いてお金を返そうとするが、母は「子供はそんなこと考えなくていいの」「これは私の責任なんだから」と退ける。「くるみちゃんは賢いんだから今まで通りちゃんと勉強しときなさい」。くるみは心の中で「もう子供扱いして大人はいつもこれだ」と反発する。
くるみが母の部屋から持ち出したのは、FXの入門書だった。「簡単に2000万円を溶かすことのできる何か」なら、逆に「簡単に2000万円を稼げる何かとも言える」。頭の良いくるみらしい理屈だが、その理屈こそが母と同じ落とし穴の入り口に見えてしまう。「20歳まで勉強して」「2000万くらい簡単に取り返せるようになってやる」という誓いが、物語の出発点になる。
帰らなかった母
母は働きに出るようになり、帰りはどんどん遅くなっていった。
「もう正直に話そうよ」
疲れ切った母を見かねて、くるみは「もう正直に話そうよ」「離婚なんて私がさせないし」「私も一緒に謝るから」と持ちかける。お金も「私が絶対に取り返してみせるから」。けれど返ってきたのは、「くるみちゃん」「あなた舐めてるでしょ」「誰のせいでこんなことになってんだっけ」という言葉だった。
母はすぐに「そうね」「ごめんなさい」と謝り、「買い物行ってくるわ」と出ていく。追い詰められた人が、いちばん身近な相手に刃を向けてしまう。その一言を最後に、母は二度と帰ってこなかった。
「私が大人だったら」
母を失ったくるみは、「違う」「私は殺してない」と叫び、「最初から私を頼ってれば死なずに済んだんだよ」と怒りをぶつける。そして「私が子供じゃなかったら」「私が大人だったら」と、自分を責める。
頭に浮かぶのは、「くるみちゃん、お母さん算数苦手だから教えてね」と笑っていた母の姿だった。「どんなに願ってみても時間は巻き戻せなかった」。冒頭の時間を巻き戻してほしいという願いが、ここでもう一度、叶わないものとして突きつけられる。
「FXなんてするんじゃないぞ」
引っ越しの片付けの最中、父はくるみに「FXなんてするんじゃないぞ」と言う。「投資が悪いとは言わん」、けれど「十分幸せになれるんだからな」。くるみは「うん」と答えながら、心の中では別のことを考えていた。
「これは」「自己満足の戦いだ」「お母さんはもう帰ってこない」「でも私が頑張ればお母さんが死ぬことはなかった」「その証明がしたい」。お金を取り戻すためではなく、自分の正しさを証明するための戦い。父の言葉を聞いたうえでなお戦場へ向かうくるみの決意は、まっすぐであるほど危うく見える。
父は、母が何に追い詰められていたのかを知っているはずだ。そのうえで娘に向けた言葉は、怒りではなく、もう誰も失いたくないという願いに聞こえる。くるみもその気持ちは分かっている。それでも、母を救えなかった自分を許せないまま前に進むには、同じ場所で勝つしかないと思い込んでしまったのだろう。父と娘のすれ違いが、静かな会話の中にはっきりと表れていた。
5年後、戦場へ
「5年が経った」。大学生になったくるみは、ついにFXの世界へ足を踏み入れる。
「これが私のスタートラインだ」
父を安心させるため、自宅から通える大学に進学し、「特待生で学費の半分は免除」。残りの学費をバイトで払いながら、コツコツ貯めた軍資金は30万円。「これが私のスタートラインだ」「そして私の戦場」。
くるみは冷静に計画を立てていた。FXは「正確な予測は不可能だ」とし、「FXは長期的に勝ち続けることは難しい」と理解したうえで、あえて短期決戦に挑む。そして「最大の条件は」「FXをやめること」「つまり勝ち逃げだ」。勝ち逃げを最終目標に据えるあたり、母とは違う戦い方をしようとしているのがわかる。一方で、目標の2000万円に早く届くよう、あえてリスクの大きいやり方を選んでいる点も見逃せない。失敗しても傷の浅い序盤だからこそ攻める、という理屈は筋が通っているようで、どこか危うさも感じさせる。
たったの5分で
戦いの場はドル円相場。「ロウソク足は5分に設定」「大丈夫」「練習通りに」と自分に言い聞かせ、くるみは最初の注文を入れる。相場は狙いどおりに動き、「もう1日分のバイト代を稼いだ」。画面に表示された利益は「24000円」。
「バイト先の山口さんよりも」「会社員のお父さんよりも」「お金を稼げたんだ」。くるみは「何もできない子供じゃないんだよ」「お母さん」「私ならできる」と喜びをかみしめる。あれほど嫌っていた「子供扱い」から、ようやく抜け出せたと感じた瞬間だった。けれど、その喜びは長く続かない。わずか数分で1日分のバイト代を超える利益が出た経験は、くるみの判断を少しずつ狂わせていく。もう少し待てばもっと増える、という気持ちが決済の手を止めさせてしまうのは、母が画面の前で叫んでいた姿とまったく同じだった。
「人は誰しも同じである」
相場は急に向きを変え、くるみは「なんで急にこんな」と青ざめる。利益が出ていたうちに決済しておけば、という後悔が押し寄せ、「一生懸命貯めた」「私のお金が」と泣き叫ぶ。
そこに重なるのが、「それはくるみに限ったことではない」「人は誰しも同じである」という語りだ。冒頭の問いかけが、ここでくるみ自身の姿として回収される。母を追い詰めたのと同じ瞬間に、くるみもまた立たされていた。母を責めたくるみが、母と同じ顔で画面にすがる。その皮肉な構図で第1話を締めくくる演出は、あまりにも容赦がなかった。
まとめと考察
第1話は、かわいらしい絵柄でFXの怖さを容赦なく描いた導入回だった。
母と同じ道を歩むくるみ
くるみは母の失敗を「中学レベルの数学すらできない」せいだと責め、自分ならできると信じてFXを始めた。けれど最初の取引で味わったのは、母と同じ一瞬の歓喜と、そのあとの転落だった。知識や頭の良さだけでは避けられないものがある。第1話はそのことを、くるみ自身の体験として描いている。
この先の戦い
副題の「FXって、なぁに?」は軽い響きだが、その中身はあまりにも重かった。父の「FXなんてするんじゃないぞ」という言葉を振り切って戦場に立ったくるみが、この先どんな戦い方を見つけていくのか。勝ち逃げという目標にたどり着けるのか、見届けたい。
かわいさと怖さの落差
この作品のいちばんの特徴は、絵柄と中身の落差だと思う。ゆるふわな見た目の女の子が主人公なのに、描かれるのは借金、家族の崩壊、そして一瞬で消えていくお金の怖さだ。チャートを前に一喜一憂するくるみの表情は、喜びも絶望もどちらも極端に振り切れていて、見ている側の心まで揺さぶってくる。
第1話で母を失い、自分のお金まで失いかけたくるみが、ここからどう立ち直っていくのか。あらすじには、ほかにもクセの強いFX戦士たちが登場すると書かれている。くるみが一人ではなく、仲間やライバルとの出会いの中で何を学んでいくのかにも注目したい。




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