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『転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す』第1話の副題は「大聖女の目覚め」。剣の才能がないと言われながら騎士を目指すフィーアは、成人の儀で黒竜に襲われ、瀕死の中で前世の記憶を取り戻す。300年前の大聖女セラフィーナの最期、黒竜王ザビリアとの契約、そして聖女であることをひた隠す決意まで、笑いと重さが同居する初回の第1話を振り返る。




第1話の副題は「大聖女の目覚め」
『転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す』第1話の副題は「大聖女の目覚め」。公式のあらすじは「剣の才能がない」と言われながらも騎士を目指す少女・フィーアが、試練の中で魔物に襲われ瀕死の傷を負うところから始まる。死の直前に思い出したのは、規格外の力を持つ大聖女としての300年前の前世だった。シリアスな過去と、思わず笑ってしまうフィーアの必死なごまかしが同居する、にぎやかな幕開けになっていた。
「私は騎士がいい」
物語は、ルード騎士家の次女フィーアが成人の儀を受けたいと切り出す場面から始まる。家族の反応は厳しい。「こいつには恐ろしく剣の才能がないし」「この間の模擬戦でも全敗した」。それでも「5割くらいの確率で生き残れるんじゃないか」と言われ、姉は「半分の確率で死ぬってことでしょ」と強く反対する。
騎士の家に生まれ、父は騎士団の副団長、兄や姉も騎士。家を継ぐ心配はないのだから、好きな道を選んでいい。そう言われたうえで、フィーアは「だったら」「私は騎士がいい」と答える。「誇りあるルード騎士家の一人として」「成人の儀を受けるわ」。言い間違えて「思いっきり啖呵を切ってしまったわ」と心の中で焦りつつも、騎士になるのは小さい頃からの夢だと、フィーアは引かなかった。
「回復薬は万能薬じゃない」
出発の前夜、姉のオリアがフィーアに渡したのは回復薬だった。「魔物にやられたらすぐにこれを飲みなさい」。けれど同時に「回復薬は万能薬じゃない」「深い傷は治せないし」「欠損には効かない」と念を押し、「だから一番良いのは怪我をしないこと」と言い聞かせる。成人の儀では魔物を狩って魔石を持ち帰るのが決まりだが、オリアは「弱い魔物を狩って小さくて軽い魔石を持ち帰りなさい」と、あくまで無事に帰ることを優先させる。
その夜、フィーアは「少しだけでいいから一緒に寝てもらえないかな」と姉に甘える。回復魔法を使える聖女は今ではほとんど生まれず、一人の聖女が一日で作れる回復薬もごくわずか。高価だったはずの薬を気にするフィーアに、オリアは「私はあんたが笑顔で帰ってこれるようにって思って手に入れたの」と返す。聖女がほとんどいない世界という設定が、この姉妹の会話の中でさりげなく示されているのがうまい。
黒い鳥の雛と前世の記憶
翌朝、森に入ったフィーアは、小さくて弱い一つ目ネズミを狙うつもりだった。
「この世界に黒い鳥なんて存在しない」
ところが森で見つけたのは、傷ついた黒い鳥の雛だった。姉にもらった回復薬を飲ませようとしたフィーアは、次の瞬間、その相手に襲われてしまう。「この世界に黒い鳥なんて存在しない」「黒い翼持ちの生物は」「伝説級の魔物黒竜だけ」。気づいたときには手遅れだった。
「15年の人生か」「ちょっと短いよね」。血を流しながら自分の人生を振り返るフィーアの頭に浮かんだのは、思い出のはずのない光景だった。死の間際に走馬灯のように蘇ったのが、まったく別の人生というのがこの作品の始まりになっている。
大聖女セラフィーナの最期
前世のフィーアは、大聖女セラフィーナと呼ばれていた。騎士たちとともに魔王城へ攻め込み、「ついにやった」「魔王を倒したぞ」と仲間が歓声を上げるほどの戦いを支えた存在だ。しかし、魔力切れで回復魔法を使えなくなったところで、セラフィーナは兄に見捨てられる。「お前は所詮使い捨てなんだよセラフィーナ」。
繰り返し浴びせられる「お前が聖女だからこんな目に遭うのだ」という言葉。公式のあらすじによれば、最後には魔王の右腕によって殺された300年前の過去だという。聖女であることそのものが、前世の彼女を追い詰めた。タイトルの「ひた隠す」が、ただのギャグではなく重い理由を背負っていることが、ここではっきりと示される。
黒竜王ザビリアとの契約
前世を思い出したフィーアは、記憶とともに力も取り戻していた。
「だから僕はお姉さんのものだよ」
目を覚ましたフィーアの前にいたのは、さっきまで自分を襲っていた魔物だった。「お姉さんが回復薬を飲ませてくれたのに」「攻撃と勘違いして噛みついてごめんなさい」「それなのに回復魔法で助けてくれてありがとう」。失ったはずの肩も、食べられたはずの脇腹も元に戻っている。無意識のうちに、フィーアは完全回復という上級魔法を使っていたのだ。
「命を救われたら」「その命を救った人に捧げるの」「だから僕はお姉さんのものだよ」。そして名前を尋ねられたフィーアが答えると、「我、黒竜王ザビリアは」「主、フィーア・ルードと契約す」「我の血と肉と魂をもって」「主に永遠なる忠誠を」と、黒竜は契約を結ぶ。瀕死の重傷から一転、伝説の黒竜を従魔にしてしまうという急展開に、思わず笑ってしまった。
「今のフィーアは間違いなく聖女だよ」
翌朝、一晩中そばにいてくれた黒竜は「ザビリアだよ」と名乗る。左手首には契約の証があり、離れていても呼べばすぐに駆けつけ、魔力も分けてくれるという。前世が聖女だった夢を見たと話すフィーアに、ザビリアは「前世がどうだったかは僕には分からないけれど」「今のフィーアは間違いなく聖女だよ」と答える。
「あの、私が聖女ってこと、黙っていてもらえる」と頼むフィーアに、ザビリアは「もちろん黙っているよ」と即答し、「僕はフィーアを全力で守るから」と付け加える。ところが周りには、聖女の血の匂いに引き寄せられて一晩中襲ってきた魔物の死体の山。「いや何匹いるの」「しかも強そうな魔物ばかり」。心強すぎる味方の登場だが、同時に隠しごとが一気に難しくなった瞬間でもあった。
「ザビリアと私は友達です」
フィーアはザビリアの背中に乗って、家族のもとへ帰ってくる。
「よし満点の答えだわ」
すごい速さで近づいてくる黒竜に、捜索の準備をしていた騎士たちは騒然となる。「まさか伝説の魔物」「黒竜王か」。その背中から降りてきたのがフィーアだと分かり、黒竜との関係を問われたフィーアは「ザビリアと私は友達です」と答える。心の中では「よし満点の答えだわ」と得意げだ。
しかし、魔物が名を教えるのは契約主だけで、許可を出した者以外がその名を呼ぶことは許されない、と指摘されてしまう。名前を呼んだ時点で、契約していることがほぼ明らかになっていたわけだ。「やばい」と慌てて話を変え、持ち帰った魔石を差し出すと、今度はその大きさに「なんだこのデタラメな大きさは」。ごまかせばごまかすほど、ボロが出ていくフィーアの姿が楽しい。
魔物はAランクからHランクまでに分かれ、その上にSランク、SSランクがある。ザビリアはSSランクで、「複数の騎士団長と精鋭の騎士300名で討伐できるかどうかの強さ」だという。慌てたフィーアの説明は「一見筋が通っているように聞こえるが穴だらけだ」と一蹴され、「やばい全然納得してくれない」と追い詰められていく。
「黒っぽい竜っぽい何か」
そこへ助け船を出したのがオリアだった。「つまり従魔が倒した魔物は」「フィーアが倒したものとみなせるわね」「はい成人の儀クリア」。強引に話をまとめ、その場を解散させてしまう。さらに、黒竜を従魔にしたと知られれば王家がフィーアを取り込むために婚姻を結びに来るだろうと話して、父の口を固くさせる。
「俺はそんな卑怯な手で騎士団長にはならん」と言い切った父は、ついに「あれは黒っぽい竜っぽい何かで決して黒竜ではない」と言い出す。真面目すぎる父の性格を逆手に取ったオリアの機転には笑った。一方で「王族も貴族もフィーアとは結婚しない」「あの方々がめとられるのは聖女様のみだ」という言葉が、この国で聖女がどれほど特別な存在なのかを物語っている。
聖女であることをひた隠す決意
ザビリアと別れたフィーアは、取り戻した力を一人で確かめる。
「攻撃力2倍 速度2倍」
「何かあったら僕を呼んで」「契約があるからどんなに遠くても聞こえるよ」と言い残してザビリアが去ったあと、フィーアは身体強化の魔法を試す。「攻撃力2倍 速度2倍」。木を切り倒すほどの力に「すごい今のが身体強化の魔法」「私本当に聖女の力が使えるわ」と目を輝かせる。剣の才能がないと言われてきた少女が、初めて自分の力を実感した場面だった。
以前の聖女はみな精霊と契約していて、魔物は精霊の残滓から聖女を探す。だから精霊と契約せず、魔力だけで回復魔法を使えば見つからないかもしれない。前世の知識をそのまま身を守るための作戦に変えていくところに、フィーアのしたたかさが見える。
「強い仲間ができるまでは」
それでも、前世の最期に告げられた言葉はフィーアの中に残っていた。「もし聖女として生まれ変わったら必ず見つけ出し」「また同じように殺す」。だからこそフィーアは決める。「よし決めた」「強い仲間ができるまでは」「絶対絶対絶対に」聖女であることをひた隠す、と。
第1話の時点で、すでに家族にはかなり怪しまれ、伝説の黒竜まで従えている。隠すと決めたその日から、隠しきれていないのがおかしいが、その裏にある恐怖は本物だ。明るい笑いと、命がけの秘密。その両方を抱えたまま、フィーアの騎士への道が始まる。
まとめと考察
第1話は、騎士を目指す少女フィーアが前世の記憶と力を取り戻し、聖女であることを隠して生きると決めるまでを描いた回だった。
「ひた隠す」理由の重さ
タイトルだけを見ると軽いコメディに思えるが、前世の場面はかなり重い。仲間のために戦った大聖女が、魔力が尽きた途端に見捨てられ、聖女であることを理由に命を奪われる。聖女だから狙われるという恐怖が、フィーアの「ひた隠す」という決意の根っこにある。だからこそ、隠そうとしてボロを出すフィーアの姿が、ただ笑えるだけでなく応援したくなるものになっている。
もう一つ印象的だったのは、今の家族の温かさだ。危険な成人の儀に反対しながらも、高価な回復薬を用意し、帰ってきたフィーアを守るために父まで巻き込んで話をまとめたオリア。前世では身内に裏切られたフィーアが、今世では家族に守られている。この対比が、物語の土台として効いている。
騎士団で隠し通せるのか
身体強化の魔法、完全回復、そして黒竜王ザビリアとの契約。第1話だけで、フィーアの規格外ぶりはもう十分に伝わってきた。騎士の道を歩み始めたフィーアが、周りに正体を知られずにいられるのか。隠しごとが苦手な主人公と、隠さなければならない秘密という組み合わせが、これからどんな騒動を生むのか楽しみだ。
剣の才能がないと言われた少女が、前世の大聖女の力を手に入れて騎士を目指す。ザビリアという心強い味方を得たフィーアが、強い仲間に出会えるまでどう秘密を守っていくのか。シリアスとコメディの切り替えが軽快で、続きを見たくなる第1話だった。




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