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王都での公演を成功させたニア。だが舞台の幕が下りた後、彼女は2週間前に交わしたマフィアとの約束を果たすため、侍女の目を盗んで夜の街へ抜け出していく。待ち受けていたのは、ボスの護衛アンゼルだった。穏やかな表の顔と、強者を求める武人の裏の顔が、一日の中で鮮やかに交錯する。弱者の実力を受け止める戦い方、計38発の稽古、そして一番弟子の誕生まで、第3話を振り返る。




第3話「舞台の幕が下りた後」は、舞台の成功とアジトでの大暴れが描かれる回
『凶乱令嬢ニア・リストン』第3話「舞台の幕が下りた後」は、王都での公演を成功させたニアが、2週間前に路地裏でマフィアと交わした約束を果たしに、夜の街へ抜け出していく回だった。リストン家の娘として、また一人の役者として仕事をやり遂げた穏やかな表の顔と、強者を求めて自ら危険に飛び込んでいく武人としての裏の顔。舞台の幕が下りた後に始まったもう一つの舞台は、この作品の魅力がぎゅっと詰まった痛快なものだった。公演の様子を描いた特別なオープニングに驚いたという声も多く、演出面でも見どころの多い一話になっていた。
ボスの命令と、アンゼルの登場
物語は、マフィアのボスがアンゼルを呼び出す場面から始まる。座れと勧められても、自分はただの護衛だからと断るアンゼル。ボスが見せたのは、子飼いの連中がたった一人の子どもにやられたという話だった。そんな雑魚は組織にいらない、潰してこいと命じたボスは、さらにもう一人、その子どももついでに痛めつけてこいと付け加える。前回ニアが路地裏で叩きのめしたチンピラたちが、思わぬ形で組織の上の人間を動かしてしまったわけだ。
可愛らしいお嬢様の物語を見ているつもりが、いきなりマフィアの物騒な相談から始まるのだから驚かされる。けれど、狙われる側がニアである以上、心配すべきなのはむしろ相手の方だろう。この時点ですでに、どちらが痛い目を見るのかは見えているような気がして、思わず笑ってしまった。
リノキスの独り占め計画と、シャロの訪問
公演中はなかなかスキンシップが取れなかったけれど、すべてが終わった今、ようやくお嬢様を独り占めできる。そう意気込んでいたリノキスの前に現れたのは、劇場からそのままついてきたシャロだった。今日は私に構わずゆっくり休んでと言われ、部屋の外へ追い出されてしまうリノキスの姿には、気の毒ながらも笑ってしまう。いつものことだからと平然としているニアとの温度差も、この主従らしいやりとりだった。
シャロがやってきたのには理由があった。2週間後の夜に会いに行くとチンピラに告げたあの約束が、ちょうど明日に迫っていたからだ。私の強さの秘密、肉よとはぐらかし、ただの冗談だと言い張るニアに、シャロは嘘でしょ、絶対行くでしょと詰め寄る。メイドさんに言いつけていいかと切り返されると、行く、絶対に行くとあっさり認めてしまうのだから、もう隠す気もない。
武に生きる者は9割が愚か者
危ないことはやめないか、自分から危険に飛び込むのはあまり賢くないと心配するシャロに、ニアは「武に生きる者は9割が愚か者よ」と返す。そもそも賢い選択なんて似合わない存在なのだと。それに対してシャロも、賢く生きるための選択の話なら、自分だって将来の見えない役者なんてやっていないと応じる。生き方の違う二人が、どこか通じ合った瞬間だった。
死んで生き返ってもなお、武に生きたいと考えている。きっと前の自分もそうだったのだろう。そう心の中でつぶやくニアの言葉には、記憶を持たない武人の魂の本質がにじんでいた。私は行くわ、必要なことだからと告げるニアに、シャロは自分も連れて行ってほしいと頼む。ニアは負けないのだから、自分が一緒でもいいはずだと。現場には連れていけないけれど、遠くから様子を見ることは許す。それ以上の妥協点はないという線引きにも、ニアなりの気遣いが見えた。
公演の終わりと、夜の街への抜け出し
依頼の完了と、苦しい言い訳
翌日、公演の大成功に感謝の言葉が贈られる。シャロのお披露目もでき、これで依頼は完了。またいつか一緒に仕事ができたらうれしいという言葉に、ニアも丁寧に応える。さよなら、元気でねと別れを告げるシャロだが、また今夜会うんだけどねと小さく付け加えるあたりがおかしい。あの女がもう来ないと思うと清々するとこぼすリノキスは、まだ今夜の計画を知らない。
家族と合流する前に、ニアは忘れ物があると言い出す。財布、ハンカチと苦しい言い訳を重ねるも、もともと財布なんて持っていない、ハンカチは自分が持っているとリノキスにことごとく返され、最後は察しなさい、トイレよと押し切る。それでもお供しますと言われてしまい、だから嫌だったのとぼやくニアの姿は年相応で微笑ましい。もっとも、その隙に向かった先でチンピラから居場所を聞き出す時の顔は、まるで別人だった。
「グズグズするなら手荒になるわよ」と迫り、早く情報をよこさないと手と足の骨をもらうと脅すニアに、相手が逆らえるはずもない。その後、何事もなかったように家族のもとへ戻ると、アルトワール王国の第三王女がニアに直接会いたがっていたという話や、役者の仕事も増えるのではという期待の声が聞こえてくる。リストン家の娘として仕事を無事にやり遂げられてほっとしていると語るニアの、表の顔の完璧さが際立っていた。
夜の街と、侍女として護衛も兼ねる者
その夜、おやすみとリノキスに告げたニアは、シャロとともにマフィアのアジトへ向かう。かなり治安の悪い場所だと心配するシャロにここまでと告げ、物陰から見ているように言い聞かせて、ニアは一人で建物へ。本当に来ちゃったとつぶやくシャロの横に、いつの間にか現れたのはリノキスだった。メイドさんと呼ばれて、侍女ですと訂正するあたりに、彼女のこだわりがのぞく。
侍女として護衛も兼ねているから、目を離すことはできない。そう言い切るリノキスは、お嬢様の行動などとっくにお見通しだったのだ。昼間の言い訳も、夜の抜け出しも、すべて分かったうえで泳がせていたのだとしたら、このお世話係もなかなかの食わせ者だ。ニアを愛するがゆえの執念深さが、ここでは頼もしい方向に働いていた。
アンゼルとの一戦と、38発の稽古
弱者の実力を受け止める
アジトで待っていたのは、前回のチンピラたちと、ボスの護衛であるアンゼルだった。彼らの復讐に仕方なく付き合うつもりで来たのに、これはどういう状況なのかと首をかしげるニア。子ども一人にやられるような連中は自分たちの下にはいらないという話だと明かされ、本物のマフィアかと問えば、それに近いかなという答えが返ってくる。この状況でも落ち着いているニアを見て、強いね、こいつらが負けるのも無理はないと見抜くあたり、アンゼルもただ者ではない。
自分たちの面子を潰したけじめをどうつけるのか。そう迫られたニアは、腹が立つと漏らす。100人を相手に暴れるつもりで来たのに、当てが外れたのだ。彼らが払うはずだったつけを今すぐ払いなさい、全力でいじめてあげると言い放つニアに、アンゼルも本気で殺すと応じる。初手からためらいのない攻撃を受けてもなお、ニアは笑っていた。
殴っている側にはしっかり手応えがあるのに、なぜか相手は少しも動かない。おかしいだろと叫ぶアンゼルに、ニアはあなたが弱いからでしょと言い切り、「私は弱者の実力を受け止めてからねじ伏せるのが強者の務めだと思っているの」と続ける。攻撃をすべて受け止めたうえでねじ伏せるというのは、圧倒的な実力差があって初めて成り立つ戦い方だ。
ただの鉄の棒と、少しの稽古
アンゼルがついに取り出したのは、ボスの護衛の切り札のはずの武器だった。いわくつきの魔剣かと思ったけれど、「ただの鉄の棒なのね」と拍子抜けするニア。鉄パイプのような見た目には思わず笑ってしまった。俺って弱いのかと問うアンゼルに、それを私に聞くのかと返しつつ、正直よく分からない、自分が強いだけなのか、そのうえで相手が弱いのかと真面目に考え込むニアの姿がまたおかしい。
どちらにしても自分に負けるのは恥ではないと言い、少し稽古をつけてあげるからかかってきなさいと構えるニア。もはや戦いではなく、完全に指導の時間だ。引き際が分からなかったらどうしようかと思った、計38発、頑張った方ねと淡々と告げる言葉に、アンゼルの奮闘とニアの余裕の両方が表れていた。
このままで済むと思うなよという捨て台詞にも、王都に来たらこの酒場に顔を出すから、その時また遊びましょうと笑顔で約束してしまう。変わっているなとあきれるアンゼルに、しばらく酒場から出ない方がいいと言い残して去っていくあたり、ニアはこの後に何が起きるかもすでに見通していたのだろう。
もっと強い人をよこして
ニアが次に向かったのは、ボスたちの待つ場所だった。お待たせ、待ったかと現れたニアに、アンゼルはどうしたと動揺する男たち。滅法強い白い子どもだと震え上がる声も上がる。もうお話はいいでしょ、早く始めましょうと告げるや否や、ニアは集まった男たちを次々と蹴散らしていく。
止めなくていいのかと心配するシャロに、リノキスはあんなに楽しそうな顔をされてはなかなか止める気になれないと答える。この段になるともう止められない、自分よりよっぽど強いのだから、と。遠くから見守る二人の会話と、楽しげに暴れるニアの姿との落差が、なんとも愉快だった。
アンゼルはどうしたと問うボスに、そこの酒場で伸びていると答え、「私に刺客を向けるなら、もっと強い人をよこしてよ」と言い放つニア。最後は今夜はいい夜ねとご機嫌に、見逃してあげてもいいから、自分がここにいたことは内緒にしておいてと約束させてしまう。凶乱令嬢の名にふさわしい、圧倒的な夜だった。
その一部始終を見届けたリノキスは、先にホテルに戻るから自分は来なかったことにしてほしいとシャロに頼む。今後お嬢様の抜け出しが巧妙になって察知できなくなると困るからだという理由に、あなたも大変だねとシャロが同情するのも当然だ。まったくですと返すリノキスの苦労がしのばれる。
あの夜から一年と、一番弟子の誕生
紅茶のお土産と、一年の節目
長い夜が明け、王都での日々も終わりを迎える。お土産として手渡されたのは、すごくおいしいという紅茶だった。よかったら一緒に飲んでほしい、侍女さんもと添えられた言葉が温かい。公演の成功も、夜の大暴れも、すべてを終えた後に訪れた穏やかなひとときだった。
そしてリノキスは、もう一年になりますねと口にする。「お嬢様が死の淵をさまよったあの夜から」もう一年。長かった気もするし、あっという間だった気もする。病に伏せていたお嬢様が、今では舞台に立ち、マフィアまでねじ伏せるようになった。その一年をずっと間近で見てきたリノキスだからこその、しみじみとした言葉だった。
リノキスの願いと、一番弟子
お願いがあると切り出したリノキスに、一緒に寝ろとでも言うのだろうと先回りするニア。昨日今日会ったような相手とは同じベッドで寝られるのに、なぜ自分とは駄目なのかと抗議するリノキスの愛の重さは相変わらずだ。けれど、本当のお願いはそれではなかった。私に稽古をつけてくれませんか。戦うという意味の稽古だという。
今のままでは、お嬢様より弱すぎて護衛についている意味がない。このままではついていくことさえできなくなりそうだから。そんなリノキスの覚悟に、優しくしないわよと応じたニアは、「あなたはこれより私の一番弟子だから」と告げ、自分の恥にならない程度には強くなってほしいと求める。侍女が一番弟子になるという意外な展開に、二人の関係が新しい形へ踏み出したのを感じた。
1年後、学院へ
全身全霊で務めたいと答えたリノキスの言葉は、第2話でニアが稽古に向けて口にした決意とも重なって聞こえる。お世話をする側とされる側だった二人が、師匠と弟子という新しい絆で結ばれた瞬間だった。
そして物語は1年後へ。行きましょうかと声をかけるリノキスと並んで歩き出すニアの姿は、少しだけ大人びて見える。「いざ、学院生活です」という一言とともに、ニアの新しい舞台が幕を開けようとしていた。
公演、マフィアとの一戦、一番弟子の誕生、そして1年後の学院生活へ。これだけの出来事を一話で駆け抜けた展開の速さには驚かされた。置いていかれそうになりながらも、次々と新しい場面が開けていく爽快感があった。
侍女と一番弟子を兼ねることになったリノキスが、学院生活でどんな姿を見せるのかも気になるところだ。
第3話のまとめ考察
表の顔と裏の顔、二つの舞台
第3話は、副題の「舞台の幕が下りた後」が示すとおり、公演を終えたニアがもう一つの舞台に立つ回だった。リストン家の娘として、役者として仕事を完璧にこなす表の顔。武に生きる者として、強者を求めて夜の街へ飛び出していく裏の顔。その両方を同じ一日の中で見せるニアの姿は、この作品が描こうとしている凶乱令嬢そのものだった。
弱者の実力を受け止めてからねじ伏せるという戦い方は、ニアの強さだけでなく、武に対する独特の美学も物語っている。相手を一方的に打ち倒すのではなく、まず受け止め、そのうえで稽古をつけるように圧倒する。アンゼルに再会の約束までしてしまうあたりに、強い相手と戦いたいという武人の魂の本音が透けて見えた。
また、リノキスが一番弟子となったことで、主従の関係にも新しい意味が生まれた。愛の重さは相変わらずでも、お嬢様についていくために強くなりたいという願いはまっすぐだ。学院という新しい舞台で、ニアと一番弟子のリノキスがどんな物語を見せてくれるのか、これからの展開が楽しみでならない。




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