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『氷の城壁 第2期』第17話「本心」は、湊と桃香が付き合っていると知った小雪が、ようやく自分の気持ちと向き合う回。今のままがちょうどいいと言い訳してきた後悔、優希に連れ出された先で聞いた秋音の過去、そして友達の範囲を守ろうとする夏祭りの夜。湊に詰め寄る美姫の思いも重なる中、愚かすぎるという自責、好きだという本心、すごく苦しいという涙まで振り返っていく。




第17話は失ってから気づいた本心
『氷の城壁 第2期』第17話「本心」は、湊と桃香が付き合っていると知った小雪が、ようやく自分の気持ちに向き合う回だった。今のままの関係がちょうどいいと言い聞かせてきた自分への後悔、優希に連れ出された先で聞いた秋音の過去、そして友達の範囲を必死に守ろうとする夏祭りの夜。胸が締めつけられる場面の多い一話を、順に振り返っていく。
黒くて暗くて重たい朝
物語は、学校へ向かう小雪の重い足取りから始まる。足取りも気持ちも、黒くて、暗くて、重たい。それでも一人きりになるのではなく、誰かとしゃべったり作業に没頭したりしていたい。文化祭の準備に早めに顔を出した小雪は、月子に声をかけて手伝いを申し出る。
けれど、湊の名前を聞くだけで、声を聞くだけで、心は揺れてしまう。今まで通り友達の関係でいたいと望んだのは自分なのに、変化が怖くていろいろ考えた末に選んだのは「一番安全で平穏な選択肢だと思ってたのに」という道だった。湊に彼女ができるという想像を、なぜかほとんどしていなかった。そう気づいた小雪は、自分を「愚か」、「愚かすぎる」と責める。
自分を守るために選んだはずの距離が、いちばん自分を傷つける結果になってしまった。感情を表に出さない小雪だからこそ、心の中で繰り返されるこの言葉の重さが際立つ。何も選ばないこともまた一つの選択だったと、遅れて突きつけられる苦しさが冒頭からひしひしと伝わってきた。
美姫と湊のすれ違い
一方、湊が桃香と付き合ったことに納得できないのが美姫だった。意味が分からないと詰め寄る美姫に、湊は相手の気持ちをちゃんと理解して向き合えばいいと答える。美姫が問いただしたのは、湊自身の意思だった。桃香のことが好きだったのかと聞かれ、湊ははっきり言い切らないでよと返す。
美姫の「相手の気持ちに応えるばっかじゃ結局いつもと同じじゃん」という言葉に、湊は「だから気持ちを近づけるために付き合うんでしょ」と答える。最初からお互いがまったく同じ気持ちなのが理想だけれど、「そんな奇跡みたいなことそうないでしょ」、「付き合い始めって案外みんなそんなもんなんじゃないの」。湊の言葉には、彼なりの理屈と誠実さがある。
それでも美姫は、言いたいことをすべては口にできない。いつも相手のためのように言っているけれど、結局は自分に向けられた好意を手放せないだけではないか。そう思いながらも、それは小雪のための言葉ではなく、自分の選択を正当化するための言葉だと気づいてしまう。同じ気持ちでないまま付き合えば、ただ相手の気持ちをつなぎとめたいだけになってしまう。そんな思いも、美姫の胸の中にはあった。「感情の行き場がなくてもどかしい」という心の声に、美姫の不器用な優しさがにじんでいた。
髪についたペンキと好きだという気持ち
文化祭の準備中、小雪の髪にペンキがついていることに気づいたのは湊だった。とっさに手を伸ばし、危ない危ないと髪を中に入れてくれる湊。ありがとうと返しながら、こんなことあるのかと動揺する小雪。それでもふいに笑ってしまった湊の顔を見た瞬間、小雪の心に浮かんだのは「好きだ」という、まっすぐな一言だった。
選択肢があったときはいろいろ考えて逃げていたのに、可能性が断たれた途端、もっと素直になっていたら、逃げなかったら、だめでも気持ちを伝えていたらと、失った選択肢がどうしようもなく惜しくなる。そして小雪は「今さら自分の本心に気づいてしまった」。サブタイトルの「本心」という言葉が、ここで静かに意味を持つ。
言い訳を重ねて守ってきた心の城壁が、ペンキを拭うというささいな出来事で崩れてしまう。大きな事件ではなく、何気ない優しさに触れたときに本当の気持ちがあふれ出すという描き方が、この作品らしくて本当に切なかった。
優希に連れ出された先で
安曇くんと小雪の関係
そんな小雪の前に、突然現れたのが優希だった。ちょっと話したいことがあると言うなり、半ば強引に小雪を抱えて連れ出していく。湊にごめん、もらうねと告げて去っていくあたり、優希らしい勢いだ。もっとも、話があるのは優希ではなく、秋音が小雪と話したいのだという。
秋音の口から出た質問は、安曇くんは小雪さんのことが好きなんじゃないのか、というものだった。優希の答えはあっさりしていて、好きだけど「家族みたいなもんじゃん」、「妹的な」。結婚するようなことを言っていたのも、小雪が将来結婚したくないと言うから、「お互い最終的に一人だったら結婚しよう」と約束しただけなのだという。
優希と小雪は恋仲ではない。その事実に秋音は驚き、小雪は小雪で、変な誤解をされていたことや、ほかの人にまで知られていたことに「ツッコミどころが多すぎて頭に入ってこない」と混乱する。シリアスな流れの中に差し込まれるこのやり取りが、張りつめていた空気を少しだけゆるめてくれた。
推しの推しはチェックしておきたい
秋音が打ち明けたのは、小雪への謝罪だった。湊が一方的に小雪へ好意を向けていると思い込み、桃香が湊を狙っていることも知っていたから、湊の気持ちがそれてくれればと余計なことをしてしまった。優希が好きな人と幸せでいてくれたら、という秋音の思いに、小雪は「それは愛だね」と返す。
けれど秋音は、恋ではないと否定する。中学のころから一方的に憧れているだけで、優希は違う世界の人だから、付き合いたいとも考えていない。自分を好きになる優希なんて解釈違いで、ただ優希が小雪を好きなら「推しの推しはチェックしておきたい的な」気持ちだったのだと。小雪の「どうしよう知らない感情だ」という心の声には、思わず笑ってしまった。
憧れと恋愛の境目は、人によってまったく違う。秋音にとっての優希は、近づきたい相手ではなく、遠くで輝いていてほしい存在なのだろう。その距離感を大切にする姿は、少し前の小雪とどこか重なって見えた。
姉への軽蔑と優希への憧れ
なぜ優希をそこまで思うのか。秋音は、姉とは昔から反りが合わなかったと語り始める。人を下げることで自分の地位を上げるような人で、「私がこの世で最も軽蔑している人間です」とまで言い切る。機嫌しだいで暴力的になり、人前で話しかけるなと妹をののしる姉。秋音にとって、中学時代はずっと地獄だった。
そんな日々の中で出会ったのが優希だった。髪を切った秋音に、めっちゃいいじゃん、さっぱりしてと声をかけてくれた優希。誰かにこびるわけでもなく、昔の秋音をばかにすることもなく、「同じ態度で接してくれるんです」。裏表のない明るい人を見ていると「心が救われるんです」という言葉に、秋音が抱えてきた傷の深さが表れていた。
小雪は「それはもう恋愛の好きでいいんじゃないかな」と思いながらも、優希と自分の間には何もないから、これからも優希と仲良くしてあげてと伝える。「姉目線でのお願いです」という言い方が小雪らしい。そして別れ際、自分を卑下する秋音に「自分を傷つけるために言われた他人の言葉で」、「自分の評価下げちゃダメだよ」と声をかける。人と距離を置いてきた小雪が、誰かのためにこんな言葉をかけられるようになったことに、これまでの積み重ねを感じた。
夏祭りと友達の範囲
突然の夏イベント
秋音と別れたあと、小雪を待っていたのは優希だった。帰る約束もしていないのに、まあいいじゃん帰ろうぜと誘う優希。何の話だったのかと聞かれた小雪は、内緒と笑う。その後、文化祭の準備仲間から、あさっての祭りに一緒に行かないかと声がかかる。日野や美姫も誘って、湊にも声をかけることになった。
誘われた湊は、桃香に電話をかける。もし桃香が行きたいなら断ろうと思ったという湊に、桃香はその日は先に友達と約束していると答え、楽しんできてと送り出す。また今度別のところへ行こうかと約束する二人のやり取りは、恋人らしいようでいて、どこかぎこちなさも残っていた。
美姫に向けた言葉を思い返しながら、湊は桃香との関係をどう育てていくつもりなのか。気持ちを近づけるために付き合うという彼の答えが、本当に正しいのかどうかは、まだ誰にも分からない。
友達なら許される範囲
夏祭りの会場は、浴衣の人でいっぱいだった。屋台を回りながら、ラムネを買いに行く湊に小雪もついていく。このくらいならいいよね、友達ならと自分に言い聞かせる小雪。彼女がいる人に向ける自分の気持ちは迷惑でしかない、けれど存在してしまっているからどうしようもない。気持ちの消し方が分からないなら、ばれないように隠していればいい。「友達の範囲を超えなければ大丈夫」と。
人混みの中で、とっさに手をつないでしまった二人。ソースでべとべとだったでしょと謝る湊に、ついてないよと答えながら、小雪は心の中で思う。今のは友達なら許される範囲。けれど、自分だけがこんな気持ちで湊と接している時点で「全部言い訳でしかない」。横に並んで手が触れるだけで「私だけが一人でドキドキしてる」。普通にしなきゃと繰り返す姿が痛々しい。
ラムネを飲みながら、昔はビー玉を無理やり取り出して持ち帰っていたと話す湊に、小雪は「私の分あげようかビー玉」と返す。何気ない会話なのに、少しでも油断すると気持ちがあふれ出してしまいそうになる。ラムネの泡と小雪の感情が重なる演出が、とても印象的だった。
惨めで滑稽な自分
祭りが自分たちと一緒でよかったのか、桃香的にはどうなのかと尋ねる小雪。湊は、桃香も予定があると言っていたからと答える。その口から自然に出た名前が、小雪の胸に突き刺さる。ちょっとしたことで嬉しくなって、気持ちを隠すためにまったく応援していないくせに彼女に気をつかうそぶりをして、現実を知って勝手に傷つく。そんな自分のすべてが、惨めで滑稽に思えてしまう。
自分で自分を追い込んでいく小雪の心の声は、聞いていて本当につらかった。好きな気持ちを隠そうとするほど、自分を責める言葉が増えていく。湊に悪気がないことも分かっているからこそ、誰も責められない苦しさがあった。
第17話のまとめ考察
すごく苦しい
祭りの終わり、月子はずっと気になっていたと切り出す。湊と小雪は結構仲がいいのか、と。その問いをきっかけに、小雪の目から涙がこぼれる。月子ちゃん、「私どうしたらいいんだろう」、「すごく苦しい」。誰にも見せてこなかった本心を、初めて言葉にした瞬間だった。
第17話は、小雪が自分の気持ちから逃げられなくなる回だったと思う。今のままがちょうどいいと言い訳してきた心の城壁は、湊の何気ない優しさと、桃香という名前の重みによって崩れていった。一方で、秋音にかけた言葉や月子への打ち明けからは、小雪が人と関わる中で確かに変わってきたことも伝わってくる。誰かに弱さを見せられるようになったことは、彼女にとって大きな一歩だ。
それぞれの本心
タイトルの「本心」は、小雪だけのものではない。湊の言葉に納得できない美姫、優希への憧れを恋ではないと言い張る秋音、そして桃香との関係を育てようとする湊。それぞれが自分の本心と向き合いきれないまま、少しずつすれ違っている。最後には五十嵐も姿を見せ、関係はさらに複雑になっていきそうだ。
月子という、これまで少し外側にいた存在が小雪の本心を知ったことで、物語はまた新しい局面に入っていく。誰かに打ち明けたことで、小雪の苦しさが少しでも軽くなることを願いたい。




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