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亡き両親に不正経理疑惑がかけられ、身を隠すことになった斎川。君塚たちはノーチェスの隠れ家で、にぎやかな共同生活を始める。けれど明るくふるまう斎川の裏には、一人で抱え込んだ痛みがあった。そして終盤には、吸血鬼スカーレットとコウモリが姿を現す。両親の墓前で斎川が叫んだ本音、きれい事を言い続けるアイドルの覚悟、そして斎川唯という器を狙う影まで、第3話を振り返る。




第3話「アイドルをプロデュースするだけの簡単な推し事」
『探偵はもう、死んでいる。Season2』第3話「アイドルをプロデュースするだけの簡単な推し事」は、亡き両親に不正経理疑惑がかけられた斎川を、君塚たちがノーチェスの隠れ家でかくまう回だった。にぎやかな共同生活の裏で、斎川が一人で抱え込んでいた痛み。そして最後に現れた吸血鬼スカーレットとコウモリ。笑いと涙と不穏さが詰まった一話を、場面ごとに振り返っていく。
その左目だけは手放してはいけない
冒頭は、幼い斎川が手術を終えて包帯を外す場面から始まる。父親は、それは唯のために特別に作ってもらったものなんだよと語り、その瞳は唯にこそ似合う、だから青い宝石のようにキラキラときれいなドレスで着飾って、人前で輝いてほしいと願いを託す。お母さんとお父さんがいればそれでいいと甘える娘に、外に出て友達も作らないとねと優しく諭す姿が印象的だった。
そして父親は言う。その瞳は唯の人生を明るく照らし、きっと大切なものを見つけてくれる。だからその左目だけは絶対に手放してはいけないよ。この言葉が、今回の後半でまったく別の意味を帯びてくることになる。斎川がアイドルを続ける理由の根っこにある、両親との温かい記憶だった。
ノーチェスの隠れ家での共同生活
プロデューサーさんになってほしい
夜更けに君塚の部屋を訪ねてきた斎川は、両親に不正経理疑惑がかけられていて、明日には報道が流れるだろうと打ち明ける。少しの間かくまってもらえる場所を探していた斎川が頼んだのは、君塚にプロデューサーさんになってほしいということだった。しばらく家にも事務所にも行きづらいなら、身の回りのことを君塚にお願いする方がいいという理屈だ。
君塚の家ではセキュリティが低いと心配すると、ノーチェスが自分の家を使ってくださいと申し出る。セキュリティは都心のタワーマンションより厳重。ではそこで同棲生活開始ですねと目を輝かせる斎川に、ただの戦略的同居だと返す君塚。話は聞かせてもらったわと夏凪まで加わり、当面の間はノーチェスの隠れ家を拠点に斎川を保護することが決まった。
異存はないなと確認する君塚に、私の家なのに勝手に話をまとめている点を除いて不満はありませんとノーチェス。私が探偵なのを差し置いて君塚が主人公感を出していることに目をつむれば異存なしと夏凪。君塚さんと一つ屋根の下で暮らすのが怖くないと言えばうそになりますが我慢しますと斎川。全員が一言多い全会一致に、思わず笑ってしまった。
喧嘩ップルと、料理の腕前
翌朝、仲良く寄り添って眠る夏凪と斎川の姿に、君塚は思わず尊いとつぶやいてしまう。朝飯を作ってやるから起きろと声をかけたところで、いつの間にか現れたシャルが枕に顔をうずめていた。マームの匂いがした気がして嗅いでいただけだという弁明は、それはそれで十分問題発言だ。誤解だから、事故だからと慌てるシャルと君塚のやりとりを、これが噂の喧嘩ップルと評する声まで上がる。
料理当番では、夏凪が張り切ってブルターニュ産オマールブルーのソテーという凝った料理に挑み、見事に失敗。いきなり凝ったものを作ろうとするからよと言ったシャルも、普通にチャーハンを作るはずが同じ結果に。結局、作り置きもしておきたいからカレーにしましょうと仕切ったのは斎川だった。なんだかんだ毎回斎川が一番頼りになるという君塚の言葉に、それなりに修羅場をくぐり抜けてきましたからと胸を張る姿が頼もしい。
家事スキルと若さという観点から私が2歩分リードですねと調子に乗った斎川は、年上の二人ににらまれて、お姉さん方が怖いですと君塚の後ろに隠れる。今のはお前が悪いという君塚のツッコミまで含めて、疑惑の渦中にいるとは思えないほどの明るさだった。けれど、その明るさこそが斎川なりの気遣いだったと、後で気づかされる。
斎川唯の本音と絶叫
後方腕組み彼氏面オタク
撮影に向かう斎川に、君塚が付き添うことになる。脱獄したコウモリにはノーチェスが対処しているはずで、君塚の役目はただ斎川の決断を見守ることだという。私を見守るなんて、後方腕組み彼氏面オタクの君塚さんにぴったりじゃないですかと笑う斎川。何を言っても許されると思ってるなと返されると、ええ思ってますよ、だって君塚さんだけは何があっても私の味方をしてくれるって信じてますからと言い切る。君塚への全幅の信頼が、軽口の中にさらりと込められていた。
撮影の前に寄りたいところがあると斎川が連れてきたのは、両親が眠る墓所だった。なんだかまだ夢を見ている気もする、本当は全部壮大などっきりで、そのうち私を驚かせようと飛び出してくるんじゃないか。結局私はいつだって一人じゃ不安で、いつも誰かに見ていてもらいたいんだと思います。アイドルをやっている理由を、斎川は父と母の言葉に重ねて語る。
ふざけんな
けれど斎川は、いつまでもアイドルを続けていくわけにもいかないかもしれない、たまにちょっと疲れたなって感じると漏らす。移動中もずっと携帯を見ていた彼女の画面には、両親を悪く言う言葉が並んでいた。もうやめとけと携帯を取り上げる君塚に、私が悪く言われる分には別にいい、でもお父さんとお母さんの悪口だけはだめなんですと訴える斎川。
そこで君塚が叫んだのは、ふざけんな、勝手にかっこつけて一人でいなくなるな、ばかシエスタという言葉だった。私の代わりに怒ってくれるのはうれしいけれど恥ずかしいと照れていた斎川が、そっちでしたかと拍子抜けするのがおかしい。けれど君塚は、思ってること全部吐き出せと斎川を促す。今はまだアイドルの時間じゃないだろう。
促された斎川は、何も知らないあなたたちが、私の大好きなお父さんとお母さんをばかにするなと、ありったけの声で叫んだ。電波塔にも乗るレベルのいい絶叫だったと笑う君塚に、ファンにまで聞こえちゃいますね、炎上したときは火消しをお願いしますね、プロデューサーさんと返す斎川。大切な人を失った痛みを抱える二人が、並んで叫ぶ。この場面は今回一番胸に響いた。
綺麗事を言い続けます
その後、斎川は、両親のことでお騒がせしてすみません、だけど私は私です、今この瞬間だけは私だけを見てほしいと語る。きれい事かもしれない、それでも私はきれい事を言い続けます。だってアイドルはいつだってきれいなもので着飾っていたいじゃないですか。冒頭で父親が願った、きれいなドレスで着飾って人前で輝く娘の姿が、ここで確かに重なった。
その姿を見届けた君塚は、ノーチェスが言っていた通り、結局自分は見守っただけだと振り返る。けれど、斎川が本音を叫べたのは君塚がそばにいたからだ。見守るだけという役目の中で、一番大事なことをきちんと果たしていたのだと思う。
吸血鬼スカーレットとコウモリの勧誘
すべての夜を束ねる名
斎川を待っていた君塚の前に、いいところに餌が落ちていたなという声とともに現れたのが吸血鬼だった。目を覚ました君塚に名乗った名は、スカーレット。過去現在未来永劫、すべての夜を束ね、愚民を支配する俺の名だという、なんとも大仰な自己紹介だ。
心配せずとも貴様の血はもう吸わん、そもそも俺は美しいものにしか興味はない。ならなぜ血を吸ったのかと問えば、うっかり2週間ほど食事を取り忘れていて、君塚がいなければ飢えて死ぬところだったという。命の恩人に対してずっとこの態度なのかとあきれる君塚とのやりとりは、緊張感の中にもどこか笑いを誘う。スカーレットは調律者の一人で、シエスタとも面識があるらしい。
斎川唯という器
スカーレットの依頼、いや契約は、願いを叶える代わりにそれ相応の代価を支払ってもらうというもの。そして用があるのは君塚ではなく、斎川だった。吸血鬼に付き従う存在として現れたのは、脱獄したコウモリ。斎川を抱えて現れたコウモリにまた会ったなワトソンと声をかけられ、斎川を返せと迫る君塚。重いって言われました、今すぐあの人を撃ち抜いてくださいと怒る斎川の様子に、ひとまず無事でよかったと胸をなで下ろす。
コウモリによれば、もともとはシードが自分を連れ戻すためにスカーレットに依頼を出したのだという。けれどSPESに戻るつもりはなく、とある理由で利害が一致したスカーレットと協力関係になった。そして彼の目的は勧誘だった。共にシードを倒さないか。SPESが存在する限り自分に自由はない。人間でありながら種を宿す自分なら、斎川の左目の能力をもう一段階引き上げてやることもできる。
この一年間目立った動きを見せなかったシードが、なぜ次の手に打って出ることにしたのか。新たな器に目をつけたのさ、斎川唯という器にな。冒頭で父親が絶対に手放してはいけないと言った左目が、世界の敵に狙われる理由になっていた。日常回のように見えて、物語の核心へと大きく踏み込む引きだった。
第3話のまとめ考察
アイドルでいるということ
第3話は、斎川唯というキャラクターの強さと弱さが、まっすぐに描かれた回だった。両親を亡くし、その両親に疑惑がかけられても、斎川はアイドルとしてきれいなもので着飾り続けようとする。けれどその裏では、誰かに見ていてほしい、一人では不安だという本音を抱えていた。君塚の前で叫んだあの一言は、ずっと飲み込んできた思いがようやく外に出た瞬間だったのだと思う。
一方で、共同生活のパートは本作らしい掛け合いの楽しさにあふれていた。料理の腕前を競う夏凪とシャル、枕の誤解で騒ぐシャルと君塚、そしてちゃっかり一番頼りになる斎川。シエスタを失った君塚たちが、こうしてにぎやかに日常を過ごせていること自体が、物語の中で一つの救いになっている。
そして終盤、スカーレットとコウモリの登場で、物語は再びSPESとの戦いへと動き出す。斎川の左目はなぜ狙われるのか。コウモリの勧誘に、君塚たちはどう応えるのか。父親の願いが込められた左目が、斎川の未来をどう照らしていくのかを見届けたい。




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