この記事の作品:
『転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す』第4話「第四魔物騎士団」は、第四魔物騎士団で働くことになったフィーアが、4か月も放置していた従魔ザビリアと星降りの森で再会し、青い鳥に化けさせて連れ帰る回だった。不機嫌な副団長ギディオン、青い鳥に化けた黒竜、そして透明になった現代の回復薬まで、笑いの多い第4話を場面ごとに振り返っていく。




第4話 第四魔物騎士団へ
『転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す』第4話「第四魔物騎士団」は、フィーアが第一騎士団に籍を置いたまま第四魔物騎士団で働くことになり、4か月も放置していた従魔ザビリアと再会する回だった。不機嫌な副団長、青い鳥に化けた黒竜、そして透明になってしまった現代の回復薬。笑いと小さな違和感が詰まった第4話を、場面ごとに振り返っていく。
覚えていない夜
宴の翌朝、フィーアには昨夜の記憶がない。シリル団長は宴の席で仕事の話をしたことを詫びつつ、改めて告げる。今日からしばらくの間、第四魔物騎士団で仕事をしてもらう、と。仕事の内容は、魔物騎士団に所属する従魔の生命力を把握すること。前回の肉祭りで見せた力が、さっそく新しい役目につながった形だ。
黒竜という伝説級の従魔がいることを言ってもいいのか迷うフィーアに、シリルは魔物の種類は言わなくていいと助言する。どんな魔物か尋ねられても、「にやりと笑って黙っているのがいいかもしれませんね」。従魔が弱いと分かれば、途端にばかにしてくるだろうから、と。
その理由は、従魔契約の証の幅にあった。一般的に従魔が強いほど証の幅は太くなり、「最弱の魔物でも証の幅は1センチくらいはあるのですよ」。ところがフィーアの証は極端に細い。正確には、魔物を従わせるのにかかった時間が証の幅になるのだという。ザビリアのほうから契約を申し出てくれたから細いのだと気づくフィーアの表情がおかしい。最強の従魔なのに、証だけ見れば最弱というちぐはぐさが、この先の騒動の種になっていく。
昨夜のことを覚えていないようなので、とシリルは念を押す。自分が総長よりも強いことは他言無用で。「わかりました 秘密を守ります」、「絶対に団長にご迷惑はおかけしません」と胸を張るフィーアに、シリルはため息まじりに返す。「あなたの迷惑と私の迷惑にズレがあることが最大の問題なのでしょうね」。二人の掛け合いの温度差が、すでに今回の展開を暗示しているようで笑ってしまった。
ギディオン副団長
第四魔物騎士団に着いたフィーアを迎えたのは、副団長のギディオンだった。「朝一番に来るって話だったが」と遅刻をとがめられ、団長は長期不在のため自分が実質的な責任者だと告げられる。シリル団長の推薦というからどんな者かと思えば、と値踏みするような視線も冷たい。
ギディオンが不機嫌なのは、第一騎士団への反感からだった。第一騎士団に籍を置いたまましばらく預かるとは何のつもりだ、「てめえらの都合しか考えていないよな」。生命力を測れるそうだな、「ああありがてえ助かるわ」、「なんて言うと思ったか」。そして「お前に頼むことはねえ 好きに過ごしとけ」と突き放す。
もっとも、フィーアの心の声は意外と冷静だ。昨日の夜に決まったことが今朝には実行されるなんて強引な話よね、と相手の言い分にも一理あると認めている。理不尽な扱いを受けても、相手の立場を想像できるのがフィーアのいいところだと感じた。
従魔には継続したケアが必要
ギディオンの非礼を詫びたのは、副団長補佐だった。副団長は常々、魔物騎士団が冷遇されていると感じていて、「筆頭騎士団である第一騎士団が 特にお嫌いなのですよ」。それでも「根は真面目だし そこまでバカではありませんので」、正気に戻るまで待ってほしいという。部下からの評価が妙に辛口なのが面白い。
ここでフィーアは、従魔について大切なことを教わる。従魔は契約主以外に名前を呼ばれるのを嫌うので、みんなアルファベットで呼んでいる。そして、契約したあとも継続したケアが必要で、そのケアが従順さを左右するのだという。放っておかれた従魔は、「すねて体当たりをしたり尻尾を振り回してきたりするので」けがをすることもある。
体当たり、尻尾攻撃。相手は黒竜である。「これ完全に死ぬパターンだわ」と青ざめるフィーアの心の声には、思わず吹き出した。契約したあとずっと放置していたと打ち明けると、迎えに行ってあげたらどうかと勧められ、フィーアは大慌てで星降りの森へ向かう。伝説級の黒竜を4か月も放置していたという事実の重さを、本人だけが今さら実感しているのがおかしい。
ザビリアとの再会
4か月ぶりの再会
初めて会ったとき、ザビリアは大けがをしていた。もっと強いいじめっ子がいるかもしれない。また傷ついていたらどうしよう。そんな心配を胸に名前を呼ぶと、ザビリアは「呼んでくれてありがとう」と駆けつけてくれた。ところが、その姿は見違えるほど大きくなっていた。
戸惑うフィーアに、ザビリアは「僕 もう忘れられちゃったの」としょんぼり。「4ヶ月前とは 全然違うんだけど」と驚くフィーアに、「成長期だからね 大きくもなるよ」。年を尋ねれば「0歳」、しかもまだ「今の倍くらいにはなるだろうね」。巨大な黒竜が、中身はまだ0歳の甘えん坊だったというギャップがたまらない。
何か困ったことでも起きたのか、自分が手助けできるのか、と真っ先にフィーアを気遣うザビリア。4か月も放っておかれたのに恨み言ひとつ言わないその健気さに、竜族が命を救われた相手に命を捧げるという第1話の言葉が思い出された。
黒い色への誇り
一緒に帰りたいけれど、体は大きすぎるし、黒い翼を持つ生き物は黒竜しかいない。縮小化はできるけれど、色は変えられないとザビリアは言う。黒い色に誇りを持っていて、「その気持ちが 邪魔をして 色は変えられないんだ」。謝るザビリアの姿が、少しいじらしかった。
そこでフィーアが思いついたのは、鳥型の魔物を狩ってもらうことだった。耳を塞いでいる間に、ザビリアは咆哮ひとつで魔物を仕留めてしまう。思ったよりずっと強い、このままでは紹介なんてできない。嫌な予感がビンビンすると頭を抱えるフィーアの心の声が、今回の騒動のすべてを物語っていた。
ぽっこりお腹
縮小化したザビリアを、フィーアは服の中に入れて連れ帰る。苦しくないかと尋ねると、大丈夫、暖かいよ、と返ってくる。小さくなって主の懐で眠る黒竜の姿は、ただただかわいらしい。前回の肉祭りでぽっこり救世主と呼ばれたお腹が、今度は従魔で膨らんでいるのも笑いを誘う。
翌朝、そのお腹を見た副団長補佐は「食べ過ぎにしては少々出過ぎていると思うのですが」と困惑する。今日は従魔を連れてきた、今は服の中で眠っている、と答えるフィーアの堂々とした態度がまたおかしい。周囲の困惑と本人の平然ぶりの落差が、この作品の笑いの基本形なのだと改めて感じた。
ブルーダブの変身グッズ
フィーアが用意したのは、ザビリア専用の変身グッズ。2羽分の羽を使って黒い色を隠し、「どこからどう見てもブルーダブそのものだわ」、「もこもこで豪華」、「完璧よ」とご満悦だ。他の騎士の従魔がどれほど強いか分かるまでは、黒竜であることを隠しておこうというわけである。
ところがザビリアにとって、最弱の魔物に擬態するのは「魂を削られるほどの苦痛だよ」。それでもフィーアのそばにいられるのはうれしいという。そんなザビリアに、フィーアは「あなたは私が守ってあげる」、「もう、誰からもいじめさせないからね」と約束する。伝説級の黒竜を本気で守ろうとするフィーアの真っすぐさが、このコンビの魅力だ。
第4話のまとめ考察
バーカバーカ
お腹を膨らませて現れたフィーアに、ギディオンはついに仕事を与える。従魔舎にいるけがをした従魔たちに、「離宮にいる聖女様から回復薬をもらってきて」朝夕2回飲ませろ、と。副団長補佐が止めようとするのを押し切っての、明らかな嫌がらせだった。
肩にとまった青い鳥を見たギディオンは、「いやブルーダブは鳩型だろ」、「なんでこいつはこんなに首が長いんだ」と鋭く突っ込む。契約の際の苦しい戦いで「この子の首が伸びたんですよ」と言い張り、「こんなに可愛いんだから 強くて役に立つに決まってるじゃないですか」と胸を張るフィーアの強気がすごい。
そして青い鳥から聞こえてきたのは、「バーカ バーカ」。さらにマヌケ、マヌケとたたみかける。フィーアは「首が伸びたせいで鳴き声が変化したものと思われます」とすました顔で謝るが、ギディオンは「完全に俺の悪口を言っているよな」と怒り心頭。上官に逆らえない主の仇を、従魔が代わりに討ってくれたのだ。0歳の黒竜の子どもっぽい仕返しが、今回いちばんの笑いどころだった。
その直後、「かの黒き王が現れたとの情報が入りました」という報告がギディオンのもとに届く。昨日、星降りの森に。フィーアがザビリアを呼んだのと同じ日、同じ場所だ。かの黒き王とは何者なのか。この報告が、これからどう転がっていくのか楽しみになる。
透明になった回復薬
離宮で回復薬を受け取ったフィーアは、聖女たちの作業を見て複雑な思いを抱く。聖女は数が少なく、効率化は大事。「これが今の当たり前なんだわ」と自分に言い聞かせながらも、300年前を思い出さずにはいられない。かつての聖女は薬草を摘み、湧き水をくみ、けが人が元気になる姿を思い浮かべながら魔力を注いだ。そうして作られた回復薬は、薬草の葉の色を受け継いだ深い緑色だった。
「どうして現代の回復薬は透明なのかしら」。工程を変えてしまったせいで、「緑色とともに痛み消しの効果も消えてしまったんだ」。前回、聖女たちが騎士の治療を渋った場面に続いて、聖女の形がゆがんでしまったことを示す新たな証拠が描かれた。「怪我をしても回復薬は使わないようにしよう」と心に決めるフィーアの一言は笑えるようでいて、現代の聖女への静かな失望がにじんでいた。
従魔舎の係によれば、「回復薬はまずいし痛みも伴うから」、従魔たちはおとなしく飲んでくれない。案の定、フィーアはさっそく手にけがを負ってしまう。本人いわく、全治1秒のけがである。自分で治せば一瞬だけれど、それをすれば聖女だとばれてしまう。聖女であることを隠すという作品の題名そのものの葛藤が、こんな小さなけがひとつにも表れているのが面白い。
王様にならなくてもいい
困ったフィーアを助けたのは、ザビリアの威嚇音だった。「僕が出す音は特殊だから 大概の魔物には効くと思うよ」。「ザビリアって 魔物の王様みたいね」と感心するフィーアに、ザビリアは「僕はまだ王にはなれてないんだ」と申し訳なさそうに答える。
王になってほしいかと問われたフィーアは、かわいくて強くて優しい今のままのザビリアで十分だと答える。「王様はなりたいと思って なれるものでもないし」、王になるべきならその機会は必ず訪れるから、そのときに「どうするかを決めればいいわ」。「ありがとう フィーア」と返すザビリアの声は、どこかほっとしたように聞こえた。
第4話は、黒い色に誇りを持つザビリアが青い鳥に擬態し、王になれていない自分を気にするザビリアをフィーアがそのまま受け入れる回だった。今のままで十分という言葉は、聖女であることを隠して騎士として生きるフィーア自身にも重なって聞こえる。本当の姿を隠しながらも、互いを認め合う主従。かの黒き王の噂と、透明になった回復薬の謎を抱えながら、第四魔物騎士団での日々がどう動いていくのか見届けたい。




関連作品:







































コメント