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第6話のサブタイトルは「魔女ノ侵攻」。ロンドンの女学校の旧校舎に英国じゅうの魔女が集まり、女王の旗の下で能力者を奪い合う裏の世界大戦が宣言される。一方その頃、岩元と原町は物体を複製する能力者がいるという仏像の森に入っていた。そこへ現れたのが、シャボン玉のクリスタル・フレーヴァー、硬貨のイグニィ、茨のローズマリィ。追い詰められた二人のもとへ、岩元が推薦した後輩の一人が駆けつけるのがこの回の締めだった。




この力は我が大英帝国のものだ
あんたも俺も死ぬぜ
第6話はアバンの回想から始まる。刀を持った相手に「抜くんだよ、刀を」と迫り、「あんたも俺も死ぬぜ」と言い放つ場面で、そこに被さるのが「欲しい、欲しいぞ。この力は我が大英帝国のものだ」だった。能力を国のものとして数える発想が、最初の数十秒で提示される。
前回この国に来ていた男が、どういう物差しで人を見ていたのかが分かる作りになっている。強い者を欲しがるのではなく、力を帝国の所有物として勘定している。この視点が、そのまま今回の魔女たちの会合につながっていく。
前回の敵の過去回想から入り、そこから英国の能力者たちへ移る、という整理がその通りだった。ちなみに彼らは魔女と呼ばれているが、男もかなりの数を占めている。性別ではなく、迫害されてきた側という括りで名乗っているらしいことが後で分かる。
夜な夜な魔女たちが集まって
舞台はロンドンの女学校に移る。生徒たちの噂話が入り口だった。「ねえ知ってる? 旧校舎の噂」、「あそこではね、夜な夜な魔女たちが集まって、怪しい怪しいお茶会を開いているそうよ」。「ただの廃屋でしょ」と流されても、「表向きはね。この学園の偉い人が軍部とも繋がっていて、近い人の話じゃ魔女が軍事利用されているかもだって」と続ける。
★この噂の中身が、日本側の設定とそっくりなのが面白い。学校が軍部と繋がっていて、力を持つ生徒が軍事利用されるという構図は、そのまま岩元たちのいる学校の説明でもある。国が変わっても同じ形の器があることを、噂話一つで示してきた。
そしてその会話は成立しなかった。現れた何者かが「気をつけて、こいつはギミックコイン」、「アカデミーに入るのに必要なもの。そして今のことは忘れるんだ」と告げると、少女たちの記憶がその場で処理されてしまう。入口の噂話ですら、こちらの都合で消せる相手だと最初に見せられた形だった。
こういう名前のない役どころにきちんと芝居が入るのが良い。魔女の話をしていた女学生が、そのまま魔女に記憶を消されるという数十秒で、この組織の性質が説明抜きで伝わってくる。
裏の世界大戦はすでに始まっている
英国中の魔女たちを何分待たせる気だ
旧校舎の会合は、思いのほか緩い空気で始まる。遅れて来た者が「よう、お待たせ」と入ってきて、「待たせじゃないわよ。英国中の魔女たちを何分待たせる気だ」と叱られ、「ごめんごめん、ちょっと時差あるとこに住んでてさ」ととぼける。「どこに住んどんだお前は?」という突っ込みまで含めて、完全に会社の会議だった。
そのなかで一人だけ浮いているのがイグニィである。「またイグニィ、魔法液飲んでる」「これ飲むものじゃないでしょ」と呆れられ、ネプチューン・ウォーターガンからは「イグニィ君、一緒に飲もう。はみ出し者同士」と誘われる。返しが「ウォーターガンさん、相変わらず酒好きっすね。あんたいくつなんすか?」で、この二人の距離感だけ他と違っていた。
放送に合わせて主要キャストが並んでいたが、クリスタル・フレーヴァー役が竹達彩奈、イグニィ役が下妻由幸である。会合の場では顔と名前が一気に増えるのに、飲み物一つ、座り方一つで性格が描き分けられているのがうまかった。
女王の旗の下
議題が読み上げられて空気が変わる。「今日の議題は極東の国の能力者調査及び捕獲についてだ」。そして宣言が続く。「我ら魔女は何世紀にもわたって迫害の対象とされてきた。しかし今は違う」、「女王の旗の下、我らの力は大いなる野望の翼を担う」、「裏の世界大戦はすでに始まっている」。
★ここで彼らの立ち位置がはっきりする。迫害されてきた側が、国家の後ろ盾を得て今度は奪う側に回っている。能力者の地位向上という言い分は前回の男と同じなのに、その先にあるのが捕獲と戦争になっているのが厄介だった。
英国じゅうの魔女が旧校舎に集まる、という絵面がまず強い。日本側は学校が一つ、英国側は国じゅうから集められるという規模差が、この一枚で伝わってくる。しかも捕獲する対象として名指しされているのが、こちらの主人公たちである。
僕たちも戦わせてください
これなら水の竜だって倒せますよ
日本側は仏像の森に入っていた。同行を渋る岩元に対し、後輩たちの主張がまっすぐだった。「岩元さんが魔女たちとの戦いに一人で身を投じようとしていること」、「でも、僕たちも戦わせてください」「みんな岩元さんを助けたいんです」、そして「止めても無駄ですから」「前回とは違います」。
根拠も用意されていた。研究棟の先輩に頼んで作ってもらった武器があり、「これなら水の竜だって倒せますよ」と胸を張る。岩元の答えは「頼りにしてるよ」で、その笑い方を突っ込まれていた。★前回、撤退を進言されて「お前に従うよ」と言った関係が、ここで一段進んでいる。
原作を追いかけている人には見慣れた顔ぶれなのだろうが、アニメだけで見ていると後輩が自分から前に出てくるまでの積み上げが効いてくる。第3話から続く「使い方を考える」という主題が、ここでは後輩の側から回収されにきていた。
何らかの魔法液で作られたシャボン玉
目的地の説明も入る。学園長から示された標的は「物体を複製できる能力者」で、「君が今第一に確保すべき人物が、その仏像の森にいる」。原町の評価が「何でも際限なく増やせる能力なんだとしたら、戦時下には垂涎の能力ですよね」で、岩元も「だからこそここに来た」と認める。奴らは必ずここへ重要戦力を投入する、という読みまで一致していた。
その読み通りに襲撃が来る。最初は物量攻撃に見えたが、正体が違った。「くっ、これは魔法液だ」、「何らかの魔法液で作られたシャボン玉」。浮かんできたのはクリスタル・フレーヴァーで、「魔法液ってね、こう使うのよ」、触れたものが溶けると聞かされても「そのほうがいい男になるのよ」と笑っていた。
公園でシャボン玉を飛ばす光景そのものへの雑感まで出ていて笑ってしまった。ただ本編のこれは遊具ではなく、触れれば溶ける液体を、無数の球にして漂わせているという攻撃である。見た目の可愛さと中身の物騒さの落差が、この能力の怖さだった。
美しい能力だな
むやみに大規模な炎は出せない
岩元の火なら焼き切れるはずだった。原町の分析が「岩元さんがこのシャボン玉を燃やすことは可能」、理由が「岩元さんの火は水でも燃やすからね」。前回、液体そのものを焼く炎へ進化した成果がここで前提になっている。
だが使えない。「むやみに大規模な炎は出せない。なぜなら、我々が探す同胞がこの山のどこかにいるはずだから」。★確保すべき相手が近くにいるという条件が、そのまま自分の手足を縛っている。原町の悔しがり方が的確で、「こいつは岩元さんを分かってる。だからこそ身を潜めていやらしく迫る」。クリスタルも「能力者同士の戦い方を知らないなんて田舎者ね」と煽ってきた。
配信で追いかけている人も多い回だった。強い技を持っているのに、状況のせいで振るえないという縛り方は、前回の水と炎の相性の話とはまた別の窮屈さで、この作品はとにかく主人公を素直に勝たせない。
あの炎をたどれば
そこで岩元が出したのが、小さな火だった。「えっ、そんな小さな火で何を」と拍子抜けされるほどの一点。だがそれが効いた。火が小さくても確実に大群へ燃え移り、ある一点に向かって伸びていく。シャボン玉から玉へ移っていく炎が、そのまま術者への道筋を描いてしまう。
原町の理解が早い。「なるほど、あの炎をたどれば能力者への道ができた」。クリスタルの「やられる、この私がこんな簡単に」という悲鳴とともに勝負がつき、岩元がかけたのが「美しい能力だな。うちに来てもらいたいくらいだ。君が良ければな」。★捕らえた相手にまで推薦の言葉をかけるのが、この人の一貫したところだった。
フレーヴァーの攻撃を炎で消して捕獲した流れが痛快だった、という受け止めに同意する。力で押し切るのではなく、条件の中でできる一手を探して当てるのがこの人の戦い方で、しかも捕らえた直後に敵の能力を褒めている。この余裕が、後半の展開でひっくり返されるのだが。
あの世への通行料としてね
拾ってくんない?
次に現れたのは、まるで違うやり方の相手だった。「落としちまったわ、それ。拾ってくんない?」と硬貨を指差してくる。こちらが動くのを待つだけで、自分からは何もしてこない。怪しすぎて「これは罠だ」と身構え、散々迷った末に岩元が出した結論が「拾わない!」だった。捕らえられていたクリスタルの「早く拾いなさいよ、バカ!」が笑える。
そこで原町が種を明かす。「欧州では、死体の目に硬貨を添えるといいといいます。あの世への通行料としてね」、「こいつはきっと、そういう洒落が言いたいんでしょう」。イグニィが「ずいぶん賢そうな仲間がいるようだな」と感心し、原町は「僕はこう見えてエリートですからね」と胸を張る。だが返ってきたのが「じゃあ、これも知ってるか? 2枚目はこっちに帰ってこれるようにってさ」、「目の上に乗せるには2ついるだろ」だった。★知識で読み切ったつもりが、もう一枚分だけ足りていない。
実況が伸びるのも分かる回だった。知識で優位に立った直後に、その知識の続きで殴られるという順番が意地悪すぎる。しかもイグニィ本人は「そいつはあくまでも挨拶代わりだぜ」と言っていて、岩元が「硬貨使いの魔女か、はたまた地獄の渡し守か」と評していた。
一人じゃ戦争はできない
そこへ前回の男が戻ってくる。「日本の炎使い、岩元胡堂」と名前を呼び、「君に魔女と刀を交わすなんて、ロンドンじゃ子供でもやんないぜ」と忠告してみせる。捕らえられていたクリスタルには「正義の味方が助けに来たよ。そちらのお兄さんに悪いことされなかったか?」と軽口を叩き、本人から「いや、されてないでしょ!」と突っ込まれていた。
クリスタルの態度も面白い。「馴れ合わないでよ。こんな地球の端っこにあるど田舎者と」、「田舎臭いのが移っちゃったら嫌よ」と徹底して見下すのに対し、ウォーターガンは「極東の能力者にも敬意を払おうぜ。きっといいファミリーになれる」となだめる。そのうえで山に住む少年を見つけ、「他のものも複製できたりするのかい? おにぎりとか」と手なずけにかかった。岩元の妨害も届かず、返ってきたのが「俺のファミリーは頼りになるだろ。一人じゃ戦争はできない。これも学べたかな?」である。
この集団が何をやりたいのかよく分からない、という声も出ていた。たしかに、戦争を宣言しておきながらやっているのは勧誘である。ただ彼らにとって能力者を集めることと戦争を始めることが同じ作業なのだと思えば、会合の議題が「調査及び捕獲」だったこととも辻褄が合う。
そろそろお見せしたく、参りました
私たちの結束はこの茨よりも強固だ
撤収するウォーターガンを追おうとした岩元の前に、茨が立ちはだかる。三人目の魔女、ローズマリィだった。「ウォーターガンの件でお前の能力は認知している。その上での足止めの魔女だ」。★前回の戦いのデータがすでに共有されているという一言が地味に重い。
そして口上が続く。「ワントップのお前たちとは違う。私たちの結束はこの茨よりも強固だ」、「伸びろ、ローズマリィ」。★岩元一人に頼る日本側と、役割を分担して数で来る英国側という対比が、ここではっきり言葉にされてしまった。実際、炎を封じられ、硬貨に足を止められ、茨で道をふさがれている。
演出を担当した方が、キャラクターが増えてきてこの先が気になると書いていた。まさにその通りで、今回だけで三人の魔女が別々の攻め方をしてくる。溶かす、止める、縛るという役割分担が、そのまま「一人じゃ戦争はできない」という台詞の実演になっていた。
僕らは皆あなたの推薦を受けた力がある
茨が断ち切られる。現れたのが佐々眼だった。第一声が「僕、歩くの苦手なんですよね。すぐぬかるみにハマってしまうから」という調子で、ローズマリィの「俺のローズマリィが」という悲鳴と釣り合っていない。そして名乗りが置かれる。「育つのを待つなんて言っていつまでも変われないなんて、嫌ですからね」、「命に限りはあるのです」、「僕らは皆あなたの推薦を受けた力がある。そろそろお見せしたく、参りました」。
敵側の反応が「そいつは戦力外じゃないのか」「温存してたの?」「育ててたの?」で、岩元は「なんだよ急に質問攻めしやがって。そうだよ」と認める。原町の紹介が「この人は岩元先輩の秘蔵の後輩だ」で、本人が「照れますよ、原町殿」と返すのも良かった。経歴は「まだまだ修行中の身。でももう2年目です」、「あなたと出会って、いつでもお役に立ちたいと思いながら」。
佐々眼を演じているのが佐藤元だと知って驚いた、という声が出ていた。のんびりした喋り方と、茨をまとめて断つ一撃の落差がそのまま芝居に乗っている。登場した瞬間に戦力外扱いされ、その場でひっくり返すという出方も気持ちよかった。
「魔女ノ侵攻」まとめと考察
推薦を受けた力がある
この回の芯は、佐々眼の名乗りの一行に集約されている。「僕らは皆あなたの推薦を受けた力がある」。岩元がこれまでやってきたのは、能力者を戦場に出さずに済ませることだった。だが今回、その推薦を受けた側が「育つのを待つなんて言っていつまでも変われないなんて、嫌ですからね」と、自分の意思で前に出てくる。★守られる立場から、選んで戦う立場へ後輩の側が動いた回だった。
それが効くのは、敵の言い分と正面からぶつかるからだ。ウォーターガンは「一人じゃ戦争はできない」と言い、ローズマリィは「ワントップのお前たちとは違う」と嘲笑した。その指摘に対する答えが、岩元の「俺には優秀な後輩がいる」だったことになる。同じ「一人では戦えない」という認識から、片方は数を集め、もう片方は育てたという差が出た。
ここから日本と英国の戦いが本格的に始まる、という見立てはその通りだと思う。しかも魔女は一人ではなく、今回出てきた三人でも全部ではない。捕らえたクリスタルにまで「うちに来てもらいたい」と声をかける主人公なので、この対立がそのまま殴り合いで終わるとも思えない。
侵攻と勧誘が同じ顔をしている
整理すると、この回は同じ行為を二通りの言い方で見せている。英国側は「極東の国の能力者調査及び捕獲」と呼び、岩元は「うちに来てもらいたいくらいだ」と言う。やっていることはどちらも勧誘なのに、★片方は所有として、もう片方は推薦として差し出されている。副題の「侵攻」が、剣ではなく勧誘の形をしているのがこの回の怖いところだった。
その差がいちばん出たのが、山の少年をめぐる場面である。ウォーターガンは「おにぎりとか」と欲しいものを増やせるかを尋ね、岩元は「お前がこの子を連れてっても、手元に置いておくだけだろ」と食い下がった。能力を何に使うのかという問いは、この作品が第3話からずっと繰り返してきたものである。使い方を考えるのが学び屋だ、という主張が、今回は国家ぐるみの相手に対して試されている。
残された宿題も多い。少年は連れ去られる寸前まで行き、決着はついていない。英国側は「イグニィ、作戦変更だ」と動き方を変え、「君に信念と理想と少々の矛盾があるのなら、俺たちようやく戦争できるよな」と締めていた。★相手はこちらが理想を持っていることを、戦争を始める条件として数えている。岩元の使命そのものが、開戦の口実に使われようとしている。
副題の「魔女ノ侵攻」は、そのまま今回の内容だった。三人の魔女が別々の手口で入り込み、こちらの切り札を一つずつ封じていったのがこの24分である。そして最後に届いたのが、育ててきた後輩の一撃だった。次にどこまで人数が増えるのかを考えると、正直こちらの分が悪い。




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