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第6話のサブタイトルは「機械仕掛けのアリアドネ」。前回の引きで転移した先から地続きで始まり、リターンスクロールが使えないと分かったところで「ってことは進むしかないな」と腹をくくる。待っていたのは名前付きの魔物、鷲頭の巨人兵で、この戦いでアリヒト自身が大きなダメージを負う。そして倒したあとの隠し部屋で目を覚ましたのが、創造主に「ハズレ」と定義され、迷宮に廃棄された神の模造品だった。




ってことは進むしかないな
帰る手段が先に潰されている
第6話は前回の引きから地続きで始まる。「これは別の階層に転移する石板ね」と分かったところで、続けて告げられるのが「どうやらリターンスクロールは使えないようね」だった。
★逃げ道を先に潰してから話を始めるのがうまい。アリヒトの返事は「ってことは進むしかないな」、そして「この先どんな敵がいるかわからない。でも何があろうと関係ない。仲間として、後衛として、俺がパーティーを守ればいいだけだ」。
この作品の主人公は、強さで安心させるのではなく役割で安心させる人だ。「守れる」ではなく「守ればいいだけだ」という言い方に、★やることが決まっているから怖くないという理屈が出ている。元社畜という設定がこういう形で効いてくるのが面白い。
「ここで何かと戦って、命を落とした方がいる」
先へ進む前に、スズナが立ち止まる。「この辺りで何かあった気配を感じていて」、技能は霊能感知だという。「ぼんやりとですが感じます。ここで何かと戦って、命を落とした方がいるのだと」。
★戦闘前に、前にここへ来た誰かが死んでいると分かるという情報の出し方が良かった。アリヒトの読みは「ゴーレムの予感がするな」で、スズナも「戦った何かが他に見当たらないなら、あの像は見るからに怪しいですよ」と乗る。五十嵐の「嫌な迫力はあるわね」も的確だった。
そして戦術の確認に入る。「斬撃が通りにくそうね。でも、アリヒトの支援があればダメージが与えられるはず」。これは物理が効きにくい相手にも支援分は乗るという、この職業の性質の再確認になっている。「手数の多い攻撃で頼む」「はいはい、私も隙あらば攻撃しちゃいますよ」というミサキの軽さもいつも通りだった。
★戦う前に全部説明しておくのがこの作品の型で、今回もその通りに進む。怪しい像を「怪しい」と言い、弱点の探し方まで共有してから殴りに行く。この段取りの良さが、後半の窮地でそのまま効いてくることになる。
あいつの弱点は頭だ
動き出した像と「みんな、支援する」
像は予感通り動き出す。これが公式あらすじの言う名前付きの魔物、鷲頭の巨人兵だった。指揮を執るアリヒトの号令として公式が引いていたのが「みんな、『支援する』っ!」で、★技名がそのまま仲間への呼びかけになっているのがこの職業の面白いところだ。
戦闘は情報戦の形で進む。「反撃が来ます」という警告、「エリーティア、今だ」という差し込み、そして「あいつの弱点は頭だ」。五十嵐の「そうと分かれば集中攻撃ね」で、方針が一言で切り替わる。
★後衛の見せ場が「見つけること」に置かれているのが良かった。彼は前に出て殴らないし、必殺技で解決もしない。代わりに敵の弱点を先に見つけて全員に配る。地味だが、これがいちばん勝率を上げる仕事だというのがきちんと描かれている。
誰の士気解放を、いつ使うか
今回は戦闘の前に士気解放の点検が入る。五十嵐の「私とテレジアさんも士気解放が使えるみたい」、エリーティアの「もう少しで使えるようになるわ」。使える人と使えない人が、その場で仕分けされていく。
★ここでいちばん重かったのがエリーティアの申告だった。「私の士気解放は計算に入れないでおいて。ベルセルクの発動中しか使えないの」。強力な技能ほど、自分が自分でいられなくなる状態でしか使えないという設計になっている。
これに対するアリヒトの返しが良かった。「エリーティアが剣の呪いを解くことができた時に、士気解放を頼らせてもらうよ」。★今は使わせない、と言い切ったうえで、使える日を予定に入れている。エリーティアの「ありがとう」は短いが、これ以上ない返事だと思う。
戦力の話をしているようで、実は彼女の呪いを解く約束の確認になっている場面だった。★戦闘前の相談が、そのまま人物の掘り下げになっているのがこの回の作りだと思う。
テレジアのおかげです
後衛が真正面から殴られる
そして公式あらすじが予告していた通り、アリヒト自身が鷲頭の巨人兵の攻撃をまともに受ける。飛んだ指示が「テレジア、アリヒトお願い」と「あいつは私が」で、隊列が一瞬で組み替わった。
★この作品でこれが起きるのは相当に重い。アリヒトの職業は前に立つ味方を強くするもので、彼自身が矢面に立つことは想定されていない。支える人が倒れると、支えられていた全員の出力が同時に落ちる。
それでも彼は喋ろうとして、「今は喋らないですぐ治療を」と止められる。「切り札はまだあります」と続けたところで、「五十嵐さん、士気解放お願いします」「テレジアと一緒に」と指示を出した。★倒れながら手札を数えているのがこの人だった。
「危険すぎる」という声に対して、五十嵐の「大丈夫よ、アトベくん」。元上司と元部下という関係が、こういう場面でいちばん効いてくる。指示を出す側と受ける側が、状況次第で入れ替わるのがこのパーティーの強さだと思う。
与えたダメージが、全員の回復になる
窮地の抜け方が今回の白眉だった。アリヒトが「実はもう大丈夫なんだ」と言い出し、「どういうこと?」と驚かれて、こう明かす。「テレジアのおかげです」。
「テレジアの士気解放には、与えたダメージに応じて体力を吸収する効果があったんです」、五十嵐の「パーティー全体に付与される効果だったのね」。★味方が殴るたびに、殴っていない本人まで回復していく。これが「絶体絶命からふたたび立ち上がる」の中身だった。
★都合よく気合で復活したのではなく、種明かしがきちんと用意されているのが良かった。しかも回復の出どころがテレジアであることに意味がある。彼女は言葉を持たないので、自分の技能が何をしたのかを本人の口から説明できない。代わりにアリヒトが「テレジアのおかげです」と言う形になっている。
倒れた側が、助けてくれた相手の手柄を先に言う。「ありがとう、テレジア」という一言までが一続きで、★この回でいちばん静かに効く場面だったと思う。戦闘の解決と関係の描写が同じ動作で済んでいる。
この石、あそこの穴にぴったりはまりそう
目玉の宝石と、自己申告するアイキャッチ
撃破後の戦利品確認も丁寧だった。「テレジア、それは宝石か?」「さっきの敵からドロップしたみたいね」、エリーティアの「黒い方はルーンよ。武具の強化に使えるわ」。前回導入されたばかりの要素が、さっそく回収されている。
問題は赤い方で、「赤いのは何かしら」に対してミサキが「あれじゃないですか。あいつの目玉、片っぽ取れてるみたいですし」と指差す。★敵の体から取れたものが、そのまま次の鍵になる。この時点ではまだ誰も気づいていない。
ちなみに今回はアイキャッチが自分で「ここまでがAパート」と宣言してくるという、妙に気の抜けた演出も話題になっていた。★シリアスな戦闘の直後にこれが挟まるので、落差で笑ってしまった人が多かったようだ。この作品、時々こういう緩さが顔を出す。
前回の鍵が、今回の扉を開ける
奥の扉は開かない。「テレジア、開きそうか?」「ダメか」で手詰まりかと思われたところで、ミサキが言い出す。「この石、あそこの穴にぴったりはまりそうな気がするんですよね」。
五十嵐の「確かに同じくらいの大きさね」、アリヒトの「試してみる価値はあるか」。★ギャンブラーの勘が、はっきり探索の役に立った回でもある。はまった先に現れたのが、眠っている人物だった。
「なんでこんなところに?」「耳についてるのはアンテナか?」「生きてる」「眠っているようです」。そして体には「なんだか鍵穴みたいにも見えるけど」という穴があった。ここでスズナが言う。「ファルマさんに箱を開けてもらった時、確か鍵みたいな形のものがありましたね」。
★前回もらったものが、今回の扉を開ける。話をまたいだ伏線がこんなに素直に回収されるのは気持ちがいい。五十嵐の「リーダーだけに責任は負わせないわよ」、スズナの「この方から敵意は感じません」、ミサキの「何かあったらまた私のサイコロでドッカーンとやっちゃいますから」まで揃って、全員で鍵を回すことになった。
我は創造主により、ハズレと定義された
加護を与える存在が、加護を持っていない
目を覚ました人物の名乗りがこうだった。「彼方の世界よりやってきた、揺るぎなき後衛よ」、「我は鉄の車輪アリアドネ」。迷宮の謎を解いて自分を呼び起こしたことへの感謝が述べられる。
ところが続くのが「そして、徒労となってしまったことを謝罪したい」だった。「我は本来、ここまでたどり着いた者に加護を与える存在。しかし、我は権能の大半を失っている」、「廃棄されてから時間が経過し、多くのパーツは失われた」。★最深部の報酬が、自分は報酬になれないと詫びてくる。ちなみにアリアドネ役は坂本真綾さんで、この声でこの台詞を言われると強い。
理由の説明がきつい。「我は創造主により、ハズレと定義された」、「神の模造品としての完成度が低い我を、創造主は迷宮に廃棄し、封じ込めたのだ」。★捨てられたのではなく、失敗作として処分されたという言い方をしている。スズナの「ひどい、長い間こんなところに閉じ込めて放っておくなんて」が、そのまま視聴者の声だった。
しかも彼女は自分を助けることも勧めない。外に出るためにはパーツを集めればいいが「推奨はしない」、理由は「信仰できる神は一柱だけ」で、「我は外れ。パーツがない今の状態では、他の神と遭遇したとき勝つことは難しい」。★自分を選ぶと損をすると、本人が先に説明してくる。
「俺たちは君のことを外れだなんて思わない」
アリヒトの返事は「なるほど、確かにリスクではある」だった。リスクを否定しない。そのうえで「だけど、みんな、いいか?」と全員に聞く。★自分で決めてから聞くのではなく、聞いてから決める順番になっている。
返ってきた答えが良かった。五十嵐の「リーダーの選択を支持するわ」、スズナの「私もアリアドネさんを助けたいです」、エリーティアの「彼女の加護を得られるなら、大きな戦力になると思う」、そしてミサキの「アリヒトお兄ちゃんとアリアドネさんで、ありありコンビですね」。★重い場面にミサキが一発ふざけた球を入れてくるのが、この作品のバランスだった。
そしてアリヒトの言葉がこの回の答えになる。「俺たちは君のことを外れだなんて思わない。こうして会話もできているしな」。★能力でも価値でもなく、会話ができるという一点を理由にしている。創造主が完成度で切り捨てたものを、この人はやり取りができるかどうかで拾い直した。
アリアドネの「我を選んでくれたこと、感謝する」に対する返事も「俺たちはしたいようにしただけだから、礼には及ばないよ」で、最後まで恩に着せない。以降は札に連絡機能が追加され、危険なときは加護という形で手を貸してくれるという。スズナの「また、ここに来ることはできますか?」への「力を取り戻せば、ここへの入り口を作ることもできる」が、次の目標になった。
「機械仕掛けのアリアドネ」まとめと考察
帰還と、テレジアなりのねぎらい
地上に戻ったあとの短い場面が、今回いちばん好きだった。五十嵐の「アトベ君、お疲れ様。私たちが生き延びられたのは、あなたのおかげよ」に対して、アリヒトは気が抜けてしまったと詫びる。「ずっと気を張っていましたしね」と労われても、「いや、そういうわけには」と休もうとしない。
そこへテレジアが動く。アリヒトの「あ、ありがとう。でも、急にどうした?」に対して、五十嵐が「テレジアさんなりに、アトベ君をねぎらっているのかもね」と通訳した。★喋れない仲間の行動を、別の誰かが言葉にしてやる。
アリヒトの目標はテレジアを人の姿に戻すことで、つまり彼女に言葉を返すことでもある。★今回、彼女は戦闘では回復手段として、戦闘後はねぎらいとして、二度とも言葉なしでアリヒトを支えている。この積み重ねがあるから、目標が題目に見えない。
「機械仕掛けのアリアドネ」が指していたもの
改めて並べ直すと、この回の構造はかなりはっきりしている。アリヒトの職業は前例がなく、既存の枠から外れている。そしてアリアドネは規格を満たさず、外れとして処分された。★どちらも「型に合わなかった存在」で、しかも二人とも自分では戦わず、他人を強くする役割を持っている。
だから名乗りの言葉が効いてくる。彼女はアリヒトを「揺るぎなき後衛」と呼んだ。★加護を失った支援役が、支援を職業にした人間を最初にそう呼ぶ。出会いの一言としては、これ以上のものはないと思う。
戦闘そのものは、正直あっさり片付いた印象もある。弱点が頭だと分かってから決着までが早く、アリヒトが受けたダメージも種明かしが早めに来る。ただ★この回の本題は勝ち方ではなく、勝った先に何がいたかなので、配分としてはこれで正しいのだろうと思う。
捨てられた側が「自分を選ぶと損をする」と説明し、拾う側が「会話ができるから外れじゃない」と答える。★今回は敵を倒した回ではなく、捨てられた存在を拾って帰った回だった。次に彼女の力を取り戻しに行くとき、この日の「したいようにしただけ」がどう返ってくるのかを見たい。




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