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第43話は席に人が着く場面から始まって、席を降りた日で終わる。冒頭で岸和田が土の星に任命され、回想の終盤でキョウが「五行星をやめる!」と言う。そして降りたのはキョウだけではない。ヘリオスボアモンも、自分の力が邪魔になると言って眠りにつく。並べてみると降りた側には全員、ほかの誰かのためという理由がついているのに対し、新しく席に着いた一人だけは理由が語られないままだった。副題の「白きデジモン」も、その降り方のことを指している。




結論:席に人が着く場面から始まって、席を降りた日で終わる
第43話は情報量の多い回だが、出入りのところだけ抜き出すと形がはっきりする。冒頭で岸和田が土の星に任命され、回想の終わりでキョウが「五行星をやめる!」と言う。一話のなかで、五行星の席に着く人と、席を降りる人が対になって置かれている。しかも降りたのはキョウひとりではなく、ヘリオスボアモンも同じことをしている。そして降りた側だけが理由を語られ、着いた側は何も語られない。
冒頭で埋まる席と、回想の終わりで空く席
アプラクサス側の場面で、新しい五行星として岸和田が紹介される。側近の報告は「やはり、天馬アスカを使えばヘリオスボアモンを制御できるようです」「このまま黒く染めた状態で進化させれば究極体の制御も可能かと」で、人事と兵器の話が同じ机の上で並んでいる。一方、回想の締めに置かれるのがキョウの離脱である。着席と離席が同じ回に入っているのは、たぶん偶然ではない。
キョウが降りた理由は、会ったばかりの他人ひとり
暴走を止めに来たキョウの前にカイトが立ちはだかる。「俺の島でこすい真似してるバカがいるってんで来てみたが」「こんな雑魚よりよっぽど見逃せねえのがいるじゃねえか」。そこでキョウが出したのが「こいつを見逃してくれないか」で、続けて「俺のことはここで殺してくれても構わない。でも、こいつだけは見逃してくれないか」。当時のアスカは、流れ着いた先で再会しただけの相手である。その一人のために、五行星の席と自分の命を同時に差し出している。
ヘリオスボアモンも、自分から降りている
回想の締めが副題の答えになっている。「私の力は皆に迷惑をかけてしまうようですね」「ですが私がいると、あなたは彼を守ることができない」と言って、このデジモンは自分の意思で眠りにつく。アスカの「待ってくれ! 君はトモロウを助けてくれたじゃないか!」も届かない。封じられたのでも倒されたのでもなく、友人が弟を守れるようにするために降りた。敵として出てきた相手の正体が、ここで完全に裏返る。
着いた側だけ、理由が語られない
三人の降り方には全部理由がついているのに、岸和田がなぜ土の星の席を欲しがったのかは、この回で一言も説明されない。前回この人物は王会長に願い出て、五行星の席を欲しがっていた。つまり片方は他人ひとりのために席を捨て、もう片方は差し出して席を買っている。同じ席なのに、出入りの仕方がここまで違う。語られないことが、そのまま扱いの差になっている。
第43話「白きデジモン」で起きたこと(要点だけ)
公式のあらすじが書いているのは冒頭だけで、本編の大半はキョウが語る四年前の回想に使われている(※1)。
- 前回の続きから。アスカの「よこせ。お前のe-パルスが必要だ」に、横から「そいつに触れるな! e-パルスを持っていかれるぞ!」が入る
- アプラクサスでは岸和田が土の星に任命され、「究極の進化をもたらす、最後のピースのもとへは、天馬アスカ自ら案内してくれました」と報告が上がる
- 引き上げたあと、レーナの「もう隠し事はなしでしょ」を受けてキョウが「場所を移そうか」と回想を始める
- 回想の時期はキョウがカリナやミノルたちを失った少し後。流れ着いた閉鎖済みの施設でアスカと再会している
- 天馬家の事情=祖父はサポタマの危険性を訴えて行方不明になり、捜索を訴えた両親は国民保護省に連行された
- ヘリオスボアモンはアスカのサポタマから出現。「お前を守りたいというアスカの思いが、ヘリオスボアモンを産んだんだ」
- その力が暴走してトモロウを襲う。襲った側の言い分が「あいつのe-パルス、他と違う」「うまそうな匂い」
- 回想の終盤でキョウとカイトの因縁が始まり、キョウが五行星を降りる。最後に現在のカイトが「あの日の続きをしようじゃないか?」と現れる
降りた側には理由がつき、着いた側にはつかない
この回で語られる過去は、事件の説明としてではなく「誰がどこから抜けたか」の連なりとして組まれている。祖父は反対運動をして消え、両親は連行され、アスカは弟のそばを離れ、キョウ自身も当時「五行星の仕事からも二輪草からも抜け出して、ただあてもなくさまよっていた」状態だった。そして最後にヘリオスボアモンが眠りにつく。抜けた穴のところに毎回トモロウが残されているのが、この一家の四年間だった。
祖父が消えたのは、危ないと言い出したから
天馬家の話は「園長が行方不明」から始まる。祖父は「e-パルスの研究者としてサポタマの開発に関わっていた」人物で、「e-パルスの作用で現れるデジモンの力を目の当たりにして、サポタマの危険性を訴えるようになった」。開発から外されたあとも園長をしながら反対運動を続け、ある日いなくなった。さらに捜索を訴えた両親まで国民保護省に連行されている。作った本人が危ないと言い出したら消されるという筋書きが、先に置かれている。
「兄さんなんか嫌いだ」と、渡せなかった手紙
残された弟の話になる。アスカの説明は「6年生になったんだ」「はねっかえりだけど、まっすぐでかわいいやつだよ」。そして小六の春、兄が帰らなかった日にトモロウは「兄さんなんか嫌いだ」と言ってしまった。渡せなかった手紙の文面が「兄さんへ 嫌いだなんて言ってごめん 兄さんのハンバーグ、また食べたい」。謝罪と好きな料理の名前しか書いていない。小学六年生が書くものとして、これ以上正しい文面はないと思う。
守りたい気持ちから生まれた力が、守りたい相手を襲う
再会した夜に事件が起きる。「ヘリオスボアモンが突然飛び出したんだ」「お前まだリンクしたままなのか」。襲った側の言い分が「あいつのe-パルス、他と違う」「うまそうな匂い」で、トモロウのe-パルスが特別だという情報は四年前にもう漏れていたことになる。生まれた理由が「守りたい」なのに、その力が守りたい相手からいちばん多く吸ってしまう。設定の作り方として、ここがいちばん残酷だった。
公式サイトは、この回の答えをずっと前から書いていた
ここからは本編の外の話になる。公式サイトのキャラクターページを見ると、ヘリオスボアモンは敵の枠ではなく、天馬アスカと同じページに並べられている(※2)。アスカの紹介が「トモロウの兄。弟思いで、面倒見がいい。元バンドマン」、演者は中井和哉。その下にパートナーとして載っているという形である。つまり公式の扱いは最初から敵ではなく、アスカの相棒だった。
紹介文が、キョウの説明と同じことを言っている
そのヘリオスボアモンの紹介文が「アスカの弟を想う温かい気持ちから生まれた、奥ゆかしい性格の爬虫類型デジモン」である(※2)。第43話でキョウが語る「お前を守りたいというアスカの思いが、ヘリオスボアモンを産んだんだ」と、言っていることが完全に同じだ。この回は新事実を出す回ではなく、公式が先に書いていたことを本編が回収する回だった。「奥ゆかしい」も、初対面の挨拶と最後の引き際にそのまま出ている。演者がゆかなだというのも、あの落ち着いた話し方を思うと腑に落ちる。
属性がウィルスではなくデータになっている
同じページの数値欄も効いている。タイプは爬虫類型、そして属性はデータ(※2)。五行星の側を見ると、カイトのフレアモンはワクチン、金の星の相棒はウィルスといった具合に分かれていて(※3)、白い姿で襲ってきた相手が、データ属性で登録されていることになる。見た目と立ち位置の割に、公式の分類はずっと穏当なところに置いてあった。
アスカの居場所は、公式サイトでも「その他」
公式のキャラクターページは所属ごとに分かれていて、グローイングドーン、五行星、タクティクスといった枠が並んでいる。ところがアスカとヘリオスボアモンはどの枠にも入らず、「その他」の側に置かれている(※2)。さらにスタッフ&キャスト欄のキャスト一覧に載っているのは、グローイングドーンの四人とパートナー四体の計八組だけで、アスカもカイトも名前が無い。この回の中心にいる人物ほど、公式の一覧では外側に置かれたままである。
登録がいまも完全体のままだという事実
もうひとつ、ヘリオスボアモンの成長段階は完全体と書かれている(※2)。作中では「黒く染めた状態で進化させれば究極体の制御も可能かと」と計画が語られているが、公式ページの登録はまだ動いていない。キョウのムラサメモンには究極体の姿まで載っているので(※4)、載せる欄が無いわけではない。進化後の姿が公式に並ぶかどうかは、そのまま今後の答え合わせになると思う。
三人が同い年だと分かると、回想の景色が変わる
公式プロフィールで年齢を突き合わせると、キョウ22歳、カイト22歳、アスカ22歳で三人とも同じだった(※2※3※4)。この回の回想が四年前なので、あの場にいたのは全員18歳ということになる。倒した数を毎月競い、五行星をやめると言い出し、弟を守るために家を出る。全部18歳の判断だと思って見ると、重さがかなり変わる。
「今月何体倒した」「13」が18歳の会話だという事実
回想の若いカイトは「俺は烈火のカイト。五行星最強になる男だ」「だから、俺たちと勝負しろ」と名乗り、負けて「次は絶対、俺がてめえを倒す」と言い残す。日常の会話も「おい、キョウ。今月何体倒した」「13」「くそ、また負けかよ」だった。公式の登録名は忽那カイト、演者は中村悠一で、紹介文は「短気で凶暴。力任せに相手をねじ伏せる」(※3)。四年経っても人物像がまったく変わっていないことが分かる。
手紙の一行が、公式プロフィールの「好き」欄と同じ
トモロウの公式プロフィールは、好きなものがハンバーグ、ドラムと書かれている(※5)。アスカのほうは好きなものがポテトサラダとドラムで、紹介文は「元バンドマン」(※2)。そしてトモロウの紹介文が「兄の影響で、よくドラムスティックを手にリズムを刻んでいる」だ。手紙に書いてあった「兄さんのハンバーグ、また食べたい」も、スティックを持つ癖も、公式の欄にそのまま登録されている。四年前の一通が、いまの人物設定になっている形である。
空いた金の星に、いま誰が座っているか
キョウは回想で「黄金のキョウ」と呼ばれている。では現在の金の星は誰かというと、公式の五行星ページには金田ゲンジョウ、二つ名は金剛のゲンジョウ、紹介文は「王会長に忠誠を誓う」と載っている(※3)。キョウが人ひとりのために捨てた席には、会長に忠誠を誓う人物が座っている。ついでに言うと同じページの土の星はいまもクレイ・アルスランのままで、岸和田の任命はまだ反映されていない。
まとめ:白きデジモンは、封じられたのではなく自分で降りた
副題の答えは回想の最後にある。ヘリオスボアモンは「あなたの弟を守りたいという温かい心に触れて、その温もりの源に、人間の感情に興味を持ちました」と言ってから眠りにつく。副題の白は、姿の色ではなく引き際のことを指している。敵の切り札として出てきた白い相手が、回想を一本見せられたあとではまったく違う顔に見える。
「いつか私のようなデジモンでも」という条件つきの眠り
眠る前の台詞が「優しき人、いつか私のようなデジモンでも、あなたたちと共にいられる日が来るまで、私は眠りにつきましょう」だった。永久に消えるのではなく、条件が満ちたら起きるという言い方をしている。ところがキョウの締めは「誰が何のためにヘリオスボアモンの眠りを覚ましたのか、それは分からない」で、条件が満ちる前に、外から叩き起こされたことになる。
次回の予想:公式に究極体を持っているのは一人だけ
ここからは予想である。ラストでカイトが「この場所、懐かしいと思わないか?」「あの日の続きをしようじゃないか?」と現れるので、次はこの二人になるはずだ。公式のパートナー欄を見ると、カイトのフレアモンは完全体までしか載っておらず、ムラサメモンだけが究極体まで登録されている(※3※4)。四年前に「また負けかよ」と言っていた側の差は、公式の欄の上でもまだ埋まっていない。
降りた人が戻る話になるかどうか
聞き終わったトモロウの反応は「兄さんが何か隠してるのは分かってた」「全部、俺のためだったのか?」で、ゲッコーモンが「今度は俺っちたちがアスカを助ける番だってな!」と続ける。この回で描かれたのが全員の降り方だったのだから、次に見せてほしいのは、降りた人がどう戻ってくるかのほうだ。アスカも、眠りを覚まされた相手も、まだ誰にも迎えに行かれていない。
出典
※1 テレビアニメ公式サイト エピソード 第43話「白きデジモン」(公式あらすじ)/toei-anim.co.jp
※2 テレビアニメ公式サイト キャラクター 天馬アスカ/ヘリオスボアモン(紹介文・年齢・タイプ・属性・成長段階)/toei-anim.co.jp
※3 テレビアニメ公式サイト キャラクター 五行星(火の星・金の星・土の星ほか)/toei-anim.co.jp
※4 テレビアニメ公式サイト キャラクター 沢城キョウ/ムラサメモン/toei-anim.co.jp
※5 テレビアニメ公式サイト キャラクター 天馬トモロウ/ゲッコーモン/toei-anim.co.jp




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