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第29話は、いま画面にいるくれあが誰から何をもらって出来ているかの一覧になっている。公式のキャラクター紹介にある「自分のきらめきを大切にしている」のきらめきはまふる所長の言葉で、変身に使うトップオブリリーフレグランスは、るるかがくれた香水だった。名乗りの「内なる真実の香り」まで、るるかが認めた着眼点そのものである。そのうえで、この回でひとつだけ手に入らなかったものがある。まふる所長が見せた、どの名探偵にも抜けなかったリングである。




結論:くれあを作っているものは、ほとんどこの回でもらったもの
第29話は設定開示の多い回だが、開示された大きいものを並べ直すと、ほとんどが帆羽くれあの持ち物の出どころだった。きらめきという言葉も、いつも持っている香水も、名探偵プリキュアという名前そのものも、全部この回のなかで誰かから手渡されている。いま画面にいるくれあが、誰から何をもらって出来ているかの一覧になっていて、そのうえでひとつだけ手に入らなかったものが最後まで残る。
公式紹介の「きらめき」は、まふる所長の言葉だった
公式のキャラクター紹介でくれあは「自分の『きらめき』を大切にしている」と書かれている(演者は長谷川育美・※2)。この回で分かるのは、その言葉が本人の口癖ではなかったことである。探偵テストのあと、根拠を聞かれたまふる所長が「きらめきさ。私のきらめきがそう言ってる」「あんたも自分のきらめきを信じてやんな」と返す。毎回くれあが言う「私の中のきらめきに従うの」は、ここでもらったものだった。
変身に使う香水は、るるかからの贈り物だった
同じことが変身アイテムでも起きている。公式の欄でくれあの変身アイテムはトップオブリリーフレグランスで、名乗りは「解き放て!内なる真実の香り」(※2)。この回で、その香水がるるかからの贈り物だと分かる。「妖精と人間の友情の証。トップオブリリーから作ってもらった香水」「妖精が心を許すあなたにぴったり」。変身の道具も、名乗りの一節も、友達がくれたものである。
番組の題名そのものも、この場で渡されている
もうひとつ大きいのが名前である。まふる所長は二人に「人々を助ける、みんなの憧れ、希望」「誰も頼る者がいない子たち、困っている人、助けを必要とする人」「みんなの笑顔を取り戻すのさ」と説明したうえで、「なってみないかい、名探偵プリキュアに」と呼びかける。返事はくれあの「私、みんなを笑顔にします」とるるかの「私も」だけで、番組の題名が、この二言で受け取られている。
第29話「二人の過去」で起きたこと(要点だけ)
公式のあらすじが今回はかなり細かい。時期の書き分けまでしてあるので、それに沿って並べる(※1)。
- ゴウエモンの能力にデッチ・アゲインが自分の能力を重ねて、くれあの記憶を再演するからくり迷路が発動する
- 舞台は三年前のロンドン、キュアット探偵事務所。まふる所長が二人に「なってみないかい、名探偵プリキュアに」と呼びかける
- マコトジュエルの成り立ちが語られる。人間が妖精を信じなくなり、行き場を失ったマコトの心が寄り集まってできたのがあの宝石で、「信じる力ってのは相当なものでね。嘘を真実にすることだってできる」
- 探偵テストは壺が消えた事件。るるかは合格し、くれあは真相に気づきながら言い出せず不合格になる
- 場面が一年前のまことみらい市に移り、助手になったくれあにるるかが香水を贈る
- あんなたちは「記憶の世界では何も触れない」という前提のほころびから緑のチョウを見つけ、それを捕まえて脱出する
- 迷路の外ではゴウエモンがチョウ型のハンニンダーを出し、まふるとるるかの言葉に背中を押されたエクレールが浄化する
- 事務所に戻り、なぜパティスリーで働くのかと聞かれたくれあが「るるか、アイスが好きだから」と答えて終わる
落ちた理由は「分からなかった」ではなく「言わなかった」
探偵テストの結果は、るるか合格・くれあ不合格である。ここで大事なのは落ちた理由のほうで、くれあは犯人が誰かを分かっていた。割れた壺を暖炉に隠したのが幼い女の子だと見抜いたうえで、その子のことを思って言えなかった。推理力ではなく、言うか言わないかで落ちている。第27話の「私、探偵じゃなかったんだ」の中身が、ここでようやく分かる。
「あんたは真相に気づいていた」と言ったのは、落とした側
くれあ本人は「力不足です」とうつむく。それに対してまふる所長が「あんたは真相に気づいていた」「でもあの子のことを思って言えなかった」と言い当てる。落とした本人が、落ちた理由を本人より正確に説明している。しかも咎めるためではなく、そこから話を進めるために言っている。不合格を言い渡す場面なのに、突き放す感じがまったくない。
「依頼人に寄り添うのもまた探偵さ」で、落ち方が肯定される
続けて所長が見せるのが、ブローチにはめ込まれたリングである。公式のあらすじによると名前はスターキラリングブローチで、「未だかつてどの名探偵にも抜けなかった」「もし抜くことができればまことの名探偵として認められたことになる」(※1)。そのうえでの一言が「真実を明らかにするのが探偵。依頼人に寄り添うのもまた探偵さ」。落ちた理由が、そのまま探偵の条件の半分だと言い直されている。
所長には、本編で一度も呼ばれない異名がある
この所長、公式のキャラクターページを見ると花崎まふるという姓名まで載っている(演者は長沢美樹・※3)。「イギリス中を揺るがした『王冠紛失事件』を解決した過去がある」に続けて、「またの名を『暁の証明』と呼ばれている」とある。この異名は本編に一度も出てこない。リングを「まことの名探偵として認められた証」と説明する人が、自分では証明と呼ばれているのは、あとから効いてきそうな置き方だ。
記憶の世界のほころびと、デッチ・アゲインが謝った相手
脱出の手がかりは、デッチ・アゲインが自分で置いた前提だった。「ここは記憶の世界。君たちは何も触れることはできない」と説明したのに、緑のチョウだけがポチタンの頭に止まる。嘘に真実を混ぜるのが手口の相手が、真実の説明のほうに穴を作っている。あんなたちはそこを突いてチョウを捕まえ、外へ出る。
迷路を出たあと、怒っていたのはアルカナ・シャドウのほう
迷路が破られたあと、デッチ・アゲインに向き直るのはるるかである。「俺たち仲間じゃないか。なあ、アルカナ・シャドウ」に対して「何のつもり」と詰め、返ってきたのが「君が答えを聞きたがるなんてね」「ああ、もしかして、知られたくないことでもあったかい」だった。戦闘のあとにデッチが「君を不快にしてしまったことは謝るよ」と頭を下げる相手が、味方であるはずの側だというのが効いている。
デッチ・アゲインが使う「アメイジング」は、所長の口癖
チョウに気づいたあんなたちに、デッチ・アゲインは「アメイジング」「よく気づいたね」と言う。ところが公式のキャラクター紹介を見ると、まふる所長の口癖が「アメイジング!」と書かれている(※3)。前回この人物はロンドンの事務所について「厄介なご婦人がいるけど、落ちるのは時間の問題かな」と話していた。本編では結び付けていないので断定はできないが、同じ言葉が二人から出ているのは確かである。
この回だけ、脚本にシリーズ構成の名前が並んでいる
公式の各話スタッフを並べると、第29話の脚本は佐多賢人と村山 功の連名である(※1)。第24話から第28話までは千葉美鈴、村山 功、佐藤 大がそれぞれ単独名で、連名になっているのはこの回だけだった。村山 功は公式のスタッフ欄でシリーズ構成を務めている人物である(※6)。作画監督も三名、絵コンテは今 千秋。設定を大量に置く回に、構成の担当が直接入っている形になる。
新エンディングの白いキュアアルカナと、同じ日に出た指輪
本編が終わったあと、新しいエンディングにキュアアルカナ・シャドウの白い姿が出る。公式も同じ日にニュースを出していて、「これまでの黒を基調としたデザインから、白を基調としたデザインに大きくフォームチェンジ」「変身前の姿、森亜るるかのペンダントにも変化が」と書いている(※5)。名前はキュアアルカナで、シャドウが取れる。
公式が「第29話時点ではまだ敵対している」と釘を刺している
同じニュースで公式が添えているのが「8月16日(日)放送の第29話時点では、いまだ名探偵プリキュアの3人と敵対し、怪盗団ファントムに所属しているキュアアルカナ・シャドウ」という一文である(※5)。姿は出すが、そこへ至る過程は「このあとどのようにして」と伏せたまま。キャラクターページのキュアアルカナの欄も、説明文が「放送をお楽しみに!」だけで空けてある(※4)。
同じニュースに「おそろいの指輪」が載っている
そしてこのニュースの後半が本題だと思う。四人の新しい姿スターキラリングフォームが同時に発表されていて、衣装の説明に「さらによ~く観察すると、おそろいの指輪も…!」とある(※5)。三年前に「どの名探偵にも抜けなかった」と見せられたリングと、名前が同じである。考案はキャラクターデザインの矢野 茜。抜けなかったリングが、四人ぶんの指輪になって戻ってくるように見える。
公式の紹介文は、いまも「何故か」で止まっている
キュアアルカナ・シャドウの紹介文は「『プリキュア』であるにも関わらず、何故か『怪盗団ファントム』として活動しているミステリアスな少女」という書き出しである(※4)。続くのは「口数は少ないが、実は熱い想いを内に秘めている」。理由は放送開始からずっと「何故か」のまま伏せられている。第29話が見せたのは、その手前までだった。三年前のるるかは、笑顔を取り戻す側で手を挙げている。
次回予告に出てきた「エクリプス・シャドウ」
さらに次回予告である。第30話のサブタイトルが「エクリプス・シャドウ」で、予告にはキュアアルカナ・シャドウとも白いキュアアルカナとも違う姿が映る。白を見せた直後に、逆方向へ振り切った姿を出してくる。同じ日のうちに、白の側と闇の側が一つずつ増えたことになる。
順番が意地悪で、そのぶんよく効いている
先に着地点らしきものを見せておいて、実際の次回はそこから遠ざかる、という順番になっている。白い姿を知ってしまったあとで闇の側の新形態を見せられると、来週の一時間はずっと落差の話になる。エンディングという場所を選んだのも大きい。番組の情報として告知されるのではなく、毎週見ている流れのなかで不意に出てくる形になっている。
一日で、るるかの姿が二つ増えた
数え直すと、この日までるるかの姿は一つだけだった。それが一日で三つになる。キュアアルカナ・シャドウしか無かったところに、白いキュアアルカナとエクリプス・シャドウが同じ日に足された。エンディングで先に見せたぶん、本編のほうが後退して見えるという指摘も出ていた。物語の進行と情報の解禁が逆走している回である。
三年前に笑顔を取り戻すと言った子の、いまの位置
ここで効いてくるのが今回の過去編だ。まふる所長の「みんなの笑顔を取り戻すのさ」という呼びかけに、るるかは「私も」と手を挙げている。その子がいま闇の側で二つ目の姿をもらうところまで来た。白い姿が用意されていると分かったうえでこの順番を見せられるので、その工程を最後まで見せられる覚悟が要る。
まとめ:抜けないリングは、まだ誰の手にもない
この回でくれあの持ち物はほぼ全部説明がついた。きらめきはまふる所長から、香水はるるかから、名探偵プリキュアという名前も所長からである。公式のキャラクター紹介に並んでいる要素が、そのまま贈り物の一覧になっている(※2)。そのなかでスターキラリングブローチのリングだけが、まだ誰にも抜かれていない。渡されなかったものが一つだけ残っているのが、この回の形だと思う。
最後の一言だけが、くれあ自身のもの
締めくくりは現在の事務所で、なぜパティスリーで働こうと決めたのかと聞かれる場面である。三年前の本人は「情報を集めるため」と説明していた。同じ問いに現在の本人が出した答えが「るるか、アイスが好きだから」。もらった言葉が並ぶ回の最後に、自分で決めた理由がひとつだけ置かれる。説明を一切つけないのが良かった。
公式の欄にも「アイスが大好物」と書いてある
ちなみにキュアアルカナ・シャドウの公式紹介には、性格の説明のあとに「アイスが大好物」と一行ある(演者は東山奈央・※4)。最後の台詞は、この一行を理由にパティスリーで働き続けているという話になる。公式の欄に一行だけ置かれていることが、この人の働く理由そのものになっている。タイトルの「二人の過去」は思い出話という意味ではなく、探偵と助手がなぜその位置にいるのかの説明書だった。
出典
※1 テレビアニメ公式サイト ストーリー 第29話「二人の過去」(公式あらすじと各話スタッフ)/toei-anim.co.jp
※2 テレビアニメ公式サイト キャラクター キュアエクレール(帆羽くれあ)/toei-anim.co.jp
※3 テレビアニメ公式サイト キャラクター まふる所長(花崎まふる)/toei-anim.co.jp
※4 テレビアニメ公式サイト キャラクター キュアアルカナ・シャドウ(森亜るるか)/toei-anim.co.jp
※5 テレビアニメ公式サイト ニュース 2026.08.16「キュアアルカナのビジュアル&スターキラリングフォームがお披露目!」/toei-anim.co.jp
※6 テレビアニメ公式サイト 作品情報(スタッフ一覧)/toei-anim.co.jp




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