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第7話「もう怖くないよ」は、リジィ・セイランの戦闘実力試験から、彼女が戦場へ送り出されるまでを一気に描く回である。ただし順番をたどると、セイランを戦場へ押し出したのは学校の都合ではなく、カガリ・ミミが手加減したことだった。しかもミミの手加減には、はっきりした理由が本編で語られている。この回は、誰も間違ったことをしていないのに、全部が間に合わないという形で組み立てられている。




結論:セイランを戦場へ押し出したのは、ミミの手加減である
公式あらすじは「一方で、セイランも戦場へ派遣されることが決定して」で終わっている(※1)。決まった、としか書いていない。だが本編を順番に見ていくと、誰が決めたのかがはっきり示される。
ミミが手を抜いたのは、意地悪でも油断でもない
試験が終わったあと、大人の側から「この結果は見えていましたよ」「何が狙いです」と詰められて、ミミはこう答える。「戦争で頭いっぱいの人たちに教えてあげた方がいいでしょ」「ここにいるのはあくまで子供たち」「戦力なんて次々出てくるわけないって」。つまり手加減そのものが主張で、狙いは子供を戦力として数えさせないことだった。優しさで甘くしたのではなく、結果を出させないために全力を出さなかったのである。
その主張は通っていた。無効にしたのは本人の志願だった
実際、招集の会議でミミは同じ材料を使って反対している。「さっきの模擬戦を見ればわかるでしょ」「クラスで一番成績優秀な者でもあの程度なんですよ」。ここまでは筋が通っていた。それを崩したのが学校側の一言で、「志願してきたのです」「リジィ・セイラン自ら、今すぐ戦場に出たいと志願してきたのです」「ですから私たちはその意思を尊重して」。子供を守るために作った証拠が、その子供本人の申し出でひっくり返される。
第6話でセイランが頼んだのは「遠慮しないできてね」だった
ここが効いてくる。第6話でセイランがミミに言った言葉は「お互い、正々堂々全力で戦おう」「遠慮しないできてね」である。試験の最中に置かれるのが「悔しい」「ミミが本気を出していないのが悔しい」で、公式あらすじも「そのことを悟ってしまったセイランは、余計に空回り」と書いている(※1)。頼んだ通りにしてもらえなかったことが、志願の動機になっている。ミミは守ろうとして手を抜き、その手加減がセイランを外へ押し出した。
第7話で確定したこと(要点だけ)
場面がよく切り替わる回なので、先に事実だけ並べておく。
- 試験の条件=「互いを傷つけることがないよう殺傷力のある魔法は禁止とします」で、署名のうえで実施される。開始の合図は「これよりリジィ・セイランの戦闘実力試験を行います」「両者くれぐれも怪我のないように」。
- 観客席にはエスタもいる(「かわいいミミちゃんの戦うところが学校内で見られるんだもん」)。教師の側では「あの試験、ちょっと実力に差がありすぎるわね」「元はといえばあなたの提案だったはずですが」というやり取りがある。試験そのものは、第6話でオミ先生からセイランへ通告されたものだった。
- 結果はセイランの完敗。「全部避けてる」のまま時間切れになり、「叶わなかった」と地の文が置かれる。
- 試験後、ミミが謝ると「私はあなたに勝つつもりで本気で戦ったの」「怪我したのも自分の実力不足のせいだし、謝られる筋合いなんて」と返される。
- ミミの理由=「だって、私は怪我するの嫌だもん」「痛いの嫌いだし」「それに、待っててくれる人が悲しむし」。
- セイランの理由=「学校への恩返しもあるけど、一番は」「アリが戦争で血を流す姿なんて絶対に見たくない」「だから私がアリの分まで頑張るの」「私はアリを守るために戦うんだから」。
- 場面の終わりに「カガリさんって、何のために戦ってるの?」と問い返すが、その答えは出ないまま場面が切り替わる。
- 学校のやり方に対して「そうやって恩を売って、子供を駒のように使っておいて、それで死んだら骨も灰も残らない」「本当に、学校なんてヘドが出る」という言葉が投げられ、教師の側は「この施設が未来のない孤児を救う役目を果たしているのもまた事実です」と返す。
- 招集は番号で読み上げられる(1407/1419/1503/1509/1511)。
- フランからセイランへ=「あんたはミミじゃない」「あんたは不死身じゃない」「まだ14歳のただの人間」「戦場に出ればあっけなく死ぬし、死んだら生き返ることはない」「大切なのは、生きて帰ることよ」。
- エスタからアリへ=「明日とかいつかとかじゃなくて、今を大切にすること」「なんてね」→「無事に帰ってくるといいね」。
- アリの贈り物=魔法で文字だけを詰めたガラス。「お守り代わりにね」「お願い、どうか持っていって」→セイラン「なんだか読むのもったいないな」「綺麗だね」「アリの目みたい」。
- 戦場でセイランは他人の止血に自分の薬を使う。その直後に自分が撃たれ、「止血薬は使っちゃったんだっけ」となる。
- 運ばれながら考えているのは「今日の晩御飯何かな」「シーナはまだ授業中だろうな」で、最後の言葉が「大丈夫、もう痛くなくなってきたから」。
- この回だけエンディングが差し替えられている。公式サイトにもエンディング2として別に立っており、曲は「スターチス」、歌っているのはリジィ・セイランとモード・アリの二人である(※2)。
戦う理由の順位が、第6話から入れ替わっている
この回でいちばん静かに大きい変化が、セイランの動機の並び順である。言っている相手はどちらもミミなので、比べやすい。
第6話では、一番が学校への恩返しだった
第6話でセイランが語った理由は、はっきり学校が先だった。「今の自分があるのは学校のおかげなの」「だから役に立ちたい。恩はきちんと返したいの」「だから、そのためなら、相手が誰だって戦う」。トツキ・シーナも同じ言い方をしていて、「私たちは戦うことで恩返しするしかないんだ。それがここと私たちの約束」と説明していた。
第7話では、一番がアリに入れ替わる
ところが第7話の答えは「学校への恩返しもあるけど、一番は」と前置きしてから、「アリが戦争で血を流す姿なんて絶対に見たくない」「だから私がアリの分まで頑張るの」に移る。締めが「私はアリを守るために戦うんだから」。一週間で、恩返しが二番になっている。そしてこの入れ替わりは、セイランを止まらなくさせる方向に働く。恩返しなら生きて長く返したほうがいいが、アリの分まで背負うなら、「怪我なんかに怯えていられない」ほうが正しくなってしまう。
同じ動機から、ミミは逆の結論を出している
面白いのは、ミミの理由も同じ形をしていることだ。「待っててくれる人が悲しむし」だから怪我をしたくない。大切な人がいるという条件はまったく同じで、ミミは自分が傷つかない方向へ、セイランは自分が傷ついてもいい方向へ進む。だからセイランは「痛いとか傷つけたくないとか、そんな優しいことも言ってられないの」と言い切る。第2話のサブタイトルが「ちゃんと痛いよ」だったことを思い出すと、この作品は痛みを認める側を肯定してきた(※1)。セイランはその線をまたいでいる。
「大切なのは生きて帰ること」と、使い切った止血薬
この回でいちばんきれいに仕込まれているのが、フランの言葉と戦場の描写の対応である。言われた通りにしようとして、言われた通りにできなくなる。
ミミを一番よく知っている大人が、不死身ではないと念を押す
フランはミミの世話をしている保健医で、ミミが死なないことを知っている数少ない大人だ。そのフランがセイランに言うのが「忘れるんじゃないよ。あんたはミミじゃない」で、セイランが実力の話だと受け取ると「不死身じゃないって言ってんの」と言い直す。強い弱いの話ではなく、死ぬか死なないかの話をしている。締めが「大切なのは、生きて帰ることよ」。
その言葉を反芻した直後に撃たれる
戦場でセイランが心の中で繰り返すのが、まさにこの言葉である。「大切なのは生きて帰ることよ」「そう、大切なのは生きて帰ること」、そして「一人でも犠牲を少なく、一人でも」と続く。直後に「なにこれ」「なんで」「なんで空が」「背中が」。教えを守ろうとしている最中に、後ろから撃たれている。直前には大人の兵士から「今日はこの前とは比べ物にならない敵の多さだ」「くれぐれも注意して」と声をかけられてもいる。
薬は、他人を助けるために先に使われていた
そして最も残酷なのが、「止血薬は使っちゃったんだっけ」という一言だ。少し前の場面で、セイランは倒れた誰かに「すごい出血」「動かさないでください」「今、止血の薬を」と駆け寄り、自分の薬を使い切っている。運ばれる側になったときには「止血の薬はもうないの」という声が飛び、「息が弱くなってきたぞ」と続く。一人でも犠牲を少なく、を実行したことが、そのまま自分の致命傷になっている。これは偶然の不運ではなく、この回が最初から用意していた順番である。
「あとで」にしたものが、全部間に合わなくなる
この回には、先延ばしの形をした場面が三つ続けて置かれている。どれも単独では日常の一コマだが、並べると設計がはっきりする。
「今を大切に」と言うのが、失った側の先輩である
アリに声をかけるのはエスタで、「明日とかいつかとかじゃなくて、今を大切にすること」「なんてね」と言って、「無事に帰ってくるといいね」と結ぶ。このエスタは、第5話で「もう一緒に着られないから」と言ってお揃いの服を譲った先輩である。お揃いを着る相手を失った人が、これから相手を失う子に助言している。しかも本人は軽い調子で言って、すぐ引っ込めている。
その直後に置かれるのが「また明日ね」である
そして次の場面でセイランが言うのが「ごめん、ちょっと疲れちゃって」「私はもう部屋戻るね」「みんなで行ってきて」、引き止められて「また明日ね」。今を大切にという言葉のすぐ後ろに、明日へ回す言葉が置かれている。食事の場面をひとつ飛ばしただけの、どこにでもある断り方だ。それが最後の会話になる。
手紙は、読まれないまま持っていかれる
三つ目がアリの贈り物である。ガラスの中に魔法で文字だけを詰めたもので、渡すときの言葉が「お守り代わりにね」「お願い、どうか持っていって」。受け取ったセイランの反応が「なんだか読むのもったいないな」だった。読むのを後回しにしたまま戦場へ持っていくことになる。あとで別の生徒に見せる場面もあり、そこで出るのが「そういえば、口に出して言ったことなかったけど」「アリには何でもお見通しってことなんだろうな」。綺麗なものが好きだと言ったことがないのに、アリはそれを知っていた。言わなくても伝わっていた側の贈り物だけが、最後まで開かれない。
絵コンテと演出が、第3話「ともだち」と同じ人である
公式サイトは各話のスタッフを全部公開しているので、担当者を並べて比べられる(※1)。脚本は第1話から第7話まで全部が花田十輝なので、差が出るのは演出側だ。
榎本直央が一人でまとめたのは、第3話とこの回の二本だけ
榎本直央の名前は第2話・第4話・第5話にも絵コンテとして並ぶが、絵コンテと演出をまとめて一人で担当しているのは、第3話「ともだち」とこの第7話「もう怖くないよ」の二本だけである(※1)。第6話「おかえり」の絵コンテ・演出は本間みなみで、担当者が違う。第3話は、シーナがミミに「良かったら私と友達になってくれない?」と言う回、この作品で友達ができる回だ。そして第7話は、その反対側の回である。
毎週流れているエンディングも、同じ人が作っている
さらに本編のエンディング「エテルネル」の絵コンテ・演出も榎本直央である(※1)。つまり第3話と第7話とエンディングが、同じ人の手で並んでいる。その第7話だけ、そのエンディングが流れない。差し替えられたほうの絵コンテ・演出は友田康で、別の担当者になっている(※2)。
差し替えられたエンディングを歌うのは、当事者二人である
その差し替え版の曲名が「スターチス」で、歌っているのはリジィ・セイランとモード・アリの二人だ(※2)。この回の当事者そのものが歌う曲を、この回のためだけに用意している。公式サイトのあらすじのページにも、各話と同じ並びで独立した項目として置かれている。一話かぎりの演出にここまで枠を取るのは、制作側がこの回を特別扱いしていることの一番わかりやすい形である。
まとめ:誰ひとり間違ったことをしていない
通して見ると、この回に悪意のある人物が一人も出てこないことに気づく。それでいて、全部が間に合わない。
全員が正しいことをして、全部が届かなかった
ミミは子供を戦力に数えさせないために手を抜いた。セイランは恩を返すため、そしてアリを守るために志願した。フランは「大切なのは、生きて帰ることよ」と念を押した。エスタは「今を大切にすること」と伝えた。アリはお守りを持たせた。教師の側でさえ、「子供たちが生きてここを卒業できるよう、教え続けること」が役目だと言っている。全員が正しい方向を向いていて、その全部がすれ違うのがこの回の作りだ。
最後の問いは、答えられないまま残っている
忘れてはいけないのが、セイランがミミに投げた「カガリさんって、何のために戦ってるの?」である。公式あらすじもここで文を切っていて(※1)、本編でも答えが返る前に場面が変わる。ミミが戦う理由は、第1話からまだ一度もはっきり語られていない。訊いた側は、答えを聞かないままいなくなった。
次回の予想
予想としては、次に描かれるのはアリのほうだと見ている。理由は二つある。一つは、読まれなかった手紙が残っていること。中身は本編でまだ一度も明かされていないので、開ける役目が誰かに回ってくる形になっている。もう一つは、差し替えられたエンディングをセイランとアリの二人で歌わせていることだ(※2)。片方だけの曲にしなかった以上、残された側の話がまだ終わっていないと考えるほうが自然である。もっとも、これはあくまで予想である。
出典
※1 TVアニメ公式サイト STORY(各話のサブタイトル・あらすじ・脚本・絵コンテ・演出)/kimishinu-anime.com
※2 TVアニメ公式サイト STORY「Ending 2」(第7話のエンディング「スターチス」)/kimishinu-anime.com/story/ed2




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