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『無職転生Ⅲ』第11話の副題は「ターニングポイント4」。この名前が付いた回は、公式サイトで数えると第1期に二本、第2期に一本あり、今回が四本目になる。前半は空中城塞での後始末で、ペルギウスもザノバも「借り」と「約束」の話をしている。そして帰宅した夜、ヒトガミが「助言」ではなく「頼み」を持ってくる。ルーデウスが初めて疑わずに従ったのが、この一度だった。




「ターニングポイント」は、シリーズで四本目の副題だ
副題は「ターニングポイント4」。番号が付いているとおり、この名前の回は過去にもある。
公式サイトで四本とも確認できる
数字だけを入れ替えた副題は、公式サイトのストーリー一覧に四本並んでいる。第1期の第8話が「ターニングポイント1」、同じく第21話が「ターニングポイント2」、第2期の第18話が「ターニングポイント3」、そして今回の第3期第11話が「ターニングポイント4」だ。番号だけが増えていく副題は、このシリーズでこれしかない。
原作の話数タイトルをそのまま使うのは四回連続
副題が原作の話数タイトルと同じなのは今回だけではない。第8話「空中城塞」、第9話「慟哭」、第10話「不死魔王との謁見」に続いて、今回の「ターニングポイント4」で四回続いている。この作品は、区切りになる回ほど原作の見出しをそのまま持ってくる。今回の中身は原作でいうと二話ぶんにあたる。
番号が付くということは、まだ続くということでもある
一本目が第1期の序盤、二本目が第1期の終盤、三本目が第2期、四本目が第3期。おおよそ一区切りに一本のペースで置かれている。名前が付いた時点で「ここが折り返しです」と宣言しているようなもので、視聴している側は身構えることになる。
原作を追ってきた側からは、対応する話数がそのまま挙がっていた。
公式あらすじを四本並べると、同じ形をしている
面白いのは副題だけではない。四本の公式あらすじを並べると、書き方まで揃っている。
どれも「穏やかな日常」から始まる
一本目は「そんな穏やかな日々に、ルーデウスは幸せを感じていた」、三本目は「家族との、そして大学での生活も穏やかに進んでいく」。今回も「ルーデウスが久しぶりの我が家に帰宅した夜」から動き出す。ターニングポイントの回は、必ずいちばん平和なところから始まる。
一本目と四本目は、締め方まで同じだ
一本目の締めは「ルーデウスの自室には意外な人物の姿が…!?」で、今回の締めは「ルーデウスがその助言に従おうとすると、謎の人物が現れる――。」。どちらも家のなかで、知らない人物が現れて終わる。四本目にして一本目と同じ形に戻っている。
三本目と四本目は、ヒトガミの助言で揃う
三本目のあらすじには「さらにヒトガミの新たな“助言”とは…!?」とあり、今回は「ヒトガミが現れ助言を行う」だ。ヒトガミが出てくる回に、この副題が付けられている。二本目だけは龍神・オルステッドとの遭遇で、そこにヒトガミの名前はない。
ナナホシの敬語は、恩の返し方が決まるまで続く
前半の見舞いの場面は、口調の変化から始まる。
敬語になった理由を、本人が説明する
ナナホシの言葉は「今回はありがとうございました」「危険なところにわざわざ薬を取りに行っていただけたようで」「その、助かりました」だ。ルーデウスの反応は「なんかやけに殊勝だな」「気にするなよ」。理由は「考えてみれば、ルーデウスさんは年上の方なのに」と続く。助けられたことより、これまでの口の利き方のほうを気にしている。
打ち切ったのはルーデウスのほうだ
返ってきたのは「別にいいよ」「こっちではまだ18歳だしな」で、そこから年齢の話になりかけて「いや、年齢の話はやめよう」と自分で切る。そして「敬語も使わなくていい」「今まで通りで行こう」。元の距離に戻す提案を、助けた側から出している。
病気は治っていない
説明は厳しいままだ。「一時的に体内の魔力を排泄することはできるが、いずれまた体に魔力が溜まってしまうらしい」「この世界で生きる以上、魔力に触れずに過ごすことはできないのだ」。だからルーデウスは「ナナホシ、お前は帰らなきゃいけない」「こんな世界で死ぬことはない」と言う。薬は治療ではなく、帰るまでの時間稼ぎだと確認する場面になっている。
引っかかっていたのは「恩を返しきれない」ほうだった
ナナホシが言うのは「そうじゃなくて、帰るまでに恩を返しきれない」だ。それに対する答えが「恩なんて考えなくていいよ」「あ、でも困った時に相談に乗ってくれたら嬉しいかな」。返せない借りを、いつでも返せる小さな宿題に取り替えている。前回の「家族に会いたい」という慟哭からここまで、この人が抱えているのはずっと帰る話だ。
原作と並べて見ていた人からも、同じ場面が挙がっていた。
クリフの魔眼は、ルーデウスのものとは別物だった
空中城塞に残ったもう一つの結果が、クリフの目だ。
「識別眼」という名前が出る
ルーデウスの「キシリカにもらった魔眼ですか」に対して返ってくるのが「識別眼というものらしいが、目に映るもの全ての情報が浮かんできて、視界が文字だらけなんだ」。同じ相手からもらった魔眼なのに、ルーデウスのものとは別の種類になっている。前回キシリカが褒美を配った順番が、そのまま形になって残っている。
先輩としての申し出が入る
ルーデウスの返しは「俺も魔眼をもらってすぐは同じように苦労しました」で、そこに「今後同じようなことがあったら、頼ってくれていいからな」が付く。魔眼をもらった順番が、そのまま教える側と教わる側の順番になっている。
この回は「頼っていい」を二度言っている
ナナホシには「困った時に相談に乗ってくれたら嬉しいかな」と言い、クリフには「頼ってくれていい」と言う。同じ回のうちに、頼る約束と頼られる約束を一つずつ交わしている。どちらもこの場では使われず、宿題として残る形になる。
ペルギウスの上機嫌は、死んだ親友との約束の話だった
お茶会の場面で、ペルギウスは珍しく機嫌がいい。
理由は復讐だと本人が言う
「聞いたぞルーデウスよ。アトーフェがあれほど弱体化していたのは貴様の魔術のおかげらしいな」「今も奴の間抜けな姿が目に浮かぶ」。理由は「ラプラス戦役では奴に何度も煮え湯を飲まされたからな」で、いずれ意趣返しをするつもりだったが、その機会を自分から捨てていたと明かされる。
捨てた理由が、約束だった
「親友である北神カールマンに、アトーフェとの殺し合いを禁じられていたのだ」「気づけば復讐の機会を失い半ば諦めていた」。ルーデウスが「約束は守らなくてもよかったのですか」と聞くと、返ってくるのは「カールが禁じたのは殺し合いだ」「一方的に殴るのであれば文句はあるまいて」だ。約束は破っていない。抜け道を通っただけだと本人が説明する。
前回、同じ約束が反対側から出ていた
前回アトーフェは「カールとの約束は守るさ。奴とは親友だからな」と言っていた。今回はペルギウスが同じ死者との約束を語る。殺し合いを禁じられた二人が、二人とも約束を守ったままで殴り合っている。死んだ人間の一言が、いまだに両側を縛っている。
求めた褒美と、渡された褒美がずれる
ルーデウスが願ったのは「戦うための術を学ばせていただけないでしょうか」で、理由は「家族を守れるだけの力が欲しいと思っただけで」。ところが渡されたのは連絡用の道具だった。「それを我とゆかりのある場所で使えば、轟雷のクリアナイトが聞き届け、アルマンフィが迎えに行くであろう」。強くなる方法ではなく、呼べば来る相手のほうを渡されている。
ザノバは、好き嫌いを一つも動かさずに交渉を通す
同じ席で、ザノバはルイジェルド人形の販売許可を取りにいく。
まず相手の地雷を確認する
「貴様は我が魔族嫌いだと知っていて申しておるのか」に対して、ザノバは「さすがペルギウス様、一目で言い当てるとは」と返す。相手が嫌いだと知ったうえで持ち込んでいることを、最初に認めてしまっている。当然「どういうつもりだ、こんなものを販売するなど」「やめよ」と拒まれる。
持ち出したのは「借り」だった
次に出てくるのが「この人形のモデルとなった人物には借りがあるはず」で、ペルギウスは「まさかこの人形、ルイジェルド・スペルディアか」と気づく。ザノバは「以前話してくださったラプラスとの最終決戦、そこでペルギウス様方に助太刀をしてくれた」と続ける。嫌いという感情ではなく、貸し借りという勘定のほうへ話をずらしている。
ルーデウスは人形の目的を説明する
そこへルーデウスが「彼はラプラスに操られ、自分の一族の名誉を汚し、家族まで手にかけてしまった」「彼はラプラスを憎悪し、一族の名誉を取り戻すべく世界を回っています」「この人形はその手助けをするためのものです」と補う。売り物ではなく、名誉回復の道具だという説明に切り替えている。
通ったが、好き嫌いは動いていない
ペルギウスの答えは「スペルド族は嫌いだ。奴らは無垢の民を殺し尽くした」から始まり、「がルイジェルドの助太刀なくば、我は生きてはいまい」と続く。締めは「スペルド族の名誉など知ったことではないが、借りは返さねばならんな」「好きにするがいい」。説得されたのではなく、清算しただけだとはっきり言っている。この回で人を動かしたのは、どれも感情ではなく勘定と約束だ。
「王とは何か」が、宿題のまま残る
話の流れで、ペルギウスがザノバに問いを投げる場面がある。
石像の話から始まる
ザノバが「私が王になった際にはペルギウス様の像をご用意いたしましょう」と言うと、返ってくるのは「貴族の見栄だけに作られた石像など何の面白みもない」「王になったのなら先にすることがあるのではないか」だ。そこから「貴様にとって王とは何だ」「真の王とは何を表すと思う」に入る。贈り物の話が、いきなり資格の話に変わる。
模範解答は否定される
ザノバの答えは「知識を持ち、大臣の言葉に耳を貸し、王である自覚を持っていて」で、ペルギウスは「違うな」と切って捨てる。そして「我が朋友ガウニス・フリーアン・アスラは真の王だが、そんな男ではなかったぞ」「奴は臆病で戦いは好まず、酒場の娘に色目を使う、そんな男だった」と続ける。教科書どおりの資質を全部否定したうえで、正解は言わない。
答えを言えたら手を貸す、という条件になる
「だが奴は王として最も重要な要素を持っていた」「だからこそ我は奴が真の王だと思っている」。ザノバが「重要な要素とは」と聞くと、「それを自分の口から言えれば、我は貴様に手を貸してやろう」。ルーデウスが横から「民の立場に立って考えてくれる人が王様になってくれた方が嬉しいですかね」と答えると、ペルギウスは「この男はお前よりもマシな回答を出したぞ」「考えるがいい」で終わらせる。この回に残る宿題は三つとも、答えを先に渡さない形になっている。
帰宅の場面が、いちばん静かに置かれている
城を出たあとは、報告と日常が続く。
分かったことと、分からなかったことを分けて話す
家での報告は「ナナホシのことはひとまず大丈夫だ」「ただ母さんの症状については、呪いらしいということまでしか分からなかった」「すまない」。返ってくるのは「それだけでも大きな進展ですよ」だ。ここでも、成果ではなく分かった範囲のほうを先に言っている。
次に留守にするのはシルフィのほうだ
ルーデウスが「これからは空中城塞に通いながら治療法を探してみようと思う」と言う横で、シルフィは「僕もアリエル様の護衛でしばらくは留守にすると思う」と告げる。「ルーシーのことお願い」に「家のことすべてお任せください」が返る。入れ替わりで家を空ける家が、それでも回るようになっている。
忘れないために日記をつける
独白はこうだ。「ペルギウスに会いに行ってから短い間にずいぶんといろいろあったな」「ナナホシが倒れ、魔大陸に行って、キシリカに会い、アトーフェを怒らせて」「考えることが多すぎて、古い方からどんどん忘れてしまう」「これではまた似たような失敗を繰り返しそうだ」。そこで出るのが「よし、日記をつけるか」だ。この回でいちばん切実な行動が、紙に書いておくことになっている。
書かれている文字は日本語だ
画面に映る日記は、この世界の文字ではなく日本語で書かれている。「今日から日記を付けよう」から始まり、ここ十日ばかりのことが並ぶ。前世の文字で書き始めた、その途中で眠りに落ちる。そして眠った先で、この回の本題が始まる。
ヒトガミは、いちばん重い事実を先に渡してから頼む
夢の中の会話は、雑談から入って、途中で一度だけ深くえぐる。
まずは近況と、魔術の話
「久しぶりだね」「冒険者やってた頃は三年間一度も出てこなかったんだよな」から始まり、「最近の君はずいぶんと調子が良さそうだ」と続く。魔術の話では、闘気について「体の中の魔力を使って身体能力を上げる技術のことだよ」「どれだけ鍛えても闘気をまとえない人間」がいると説明し、「君の魔術はそんな闘気を無視できるんだ」と持ち上げる。ここまでは、いつもの助言役のままだ。
いちばん痛い答えを、聞かれたから返す形で置く
ルーデウスが「俺が行かなかった場合どうなったんだ」と聞くと、返ってくるのは「君の父親は何とかして母親を助けたし、死ぬこともなかった」だ。追い打ちのように「君がいて、君にいいところを見せようと彼が張り切って、それでダメになったじゃないか」が続く。父の死の責任を、本人に向かってはっきり置いている。しかも聞いたのはルーデウスのほうなので、言わされた形になっている。
受け止めたところを褒める
ルーデウスの答えは「過ぎたことさ」「後悔してもしょうがない」「俺は今幸せを感じている」「選択肢は間違えたかもしれないが、それは事実だ」「俺にとってはマイナスだけじゃなかった」。ヒトガミの返しは「前向きだね」の一言だけだ。いちばん重い話を出したあとで、それを受け止めた相手を認めてみせる。
そのうえで「助言」ではなく「頼み」が来る
「また助言でも言いに来たのか」に対する答えが「いや、助言というより頼みに近いかな」。ルーデウス自身「頼み? 珍しいな」と引っかかっている。それでも「たまにはお前の助言をそのまま素直に実行するのもいいだろうとは思ってたんだ」「むしろ今まで疑ってて悪かったよ」と譲る。ヒトガミは「僕はこれでも神様なんだよ」「誰かを陥れて喜ぶ趣味はないつもりさ」と受ける。珍しいと気づいているのに、その回に限って疑うのをやめている。
頼みの中身は、拍子抜けするほど軽い
「大したことじゃないよ」「今からちょっと地下室に行って異常がないか見てきてほしいんだ」「何もなかったらなかったでそれでいいんだけどさ」。ルーデウスは「異常がないか? なんで?」と一度引っかかりながら、「今回は何も疑わずお前の言う通りにしてみるよ」と答える。重い話で信じさせてから、軽い頼みを置く順番になっている。
疑うのをやめた一度に、知らない人物が現れる
言われたとおりに動き出したルーデウスは、しかしこの夜、一度も地下室にたどり着かない。
出かける前の独白は、まだ軽い
「地下室の様子を見てこいだったよな」「よく分からない助言だけど」「まさか我が家のご神体に何かあるのか?」「って、そんなわけないか」と、口調は最後までふざけている。部屋を出ようとしたところで気配に気づき、自室の奥へ振り返って「気のせいか」「と見せかけてそこだ!」「なんてな」と一人でふざけてみせる。この回のいちばん怖い場面は、本人がいちばん油断しているところから始まる。
現れたのは、さっきまで日記を書いていた椅子だった
老人が座っているのは、ルーデウスがついさっきまで日記を書いていた机の椅子だ。入ってくる場面は一度も無く、いつの間にかそこにいる。しかも座り方はぐったりしていて、最初に出るのも名乗りでも警告でもなく独り言だ。「成功したのか?」とつぶやいたあと、腹を押さえて「成功するはずもないか」と自分で否定する。理由は何ひとつ説明されないが、崩れた座り方と腹を押さえる仕草はつながっている。前世の文字を並べていた席が、そのまま知らない人物の席になっている。
名前を尋ねるより先に、出口が閉まる
ルーデウスの口から出るのは「もしかして、人神か?」だ。それに対して老人が「ヒトガミに騙された」と言うのと同時に、出口の扉が勢いよく閉じられる。魔術なのか別の力なのかは画面では分からないが、逃げ道のほうが先に消える。「あんたは誰なんだ?」は、閉じ込められてから出た言葉になる。
呼ばれたのは、この世界にない名前だった
締めのナレーションはこうだ。「この世界で俺だけが知っている名前だった」「俺が死ぬまで、俺しか知らないはずの名前だった」「この世界に存在しないものの名前だった」。日本語で日記を書き始めた夜に、前世の名前を呼ばれて終わる。四本目のターニングポイントは、一本目と同じ「家のなかに知らない人物」で閉じている。




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