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『正反対な君と僕 第2期』第23話の副題は「居場所」。平は「東が俺のことを好きかもしれない」と考えた自分を、「思い上がりにも程がある」と打ち消すところから始まる。けれど卒業後の予定に自分が数えられているのを前にして、自分の居場所が用意されていることを信じていなかったと気づく。後半は放課後の菓子パ。ナレーションは、その時間を「くだらない無駄な時間」と呼んだうえで肯定する。




副題「居場所」は、平の独白の中にある
第23話の副題は「居場所」。公式サイトのあらすじは二文で、一文目が東、二文目が鈴木の話になっている。「東は、自身の平への恋心に気付きながらも、関係を壊さないよう距離を保っていた」「そのころ鈴木は、受験勉強に打ち込む谷が無理をしているように見えて心配だったが」。平の名前は出てくるが、平が何を考えていたかは書かれていない。
あらすじに書かれていない側に、副題の語がある
本編で「居場所」という語は、平の心の声の中で二度続けて出てくる。一度目は「俺は誰といても自分の居場所が用意されてることを心のどこかで信じてなかった」、二度目は「誰よりも自分の居場所が欲しくて欲しくて仕方ないくせに」。あらすじが東と鈴木を書き、副題は平の独白から取られている。一話の中で、紹介文と題名が別々の人物を向いている。
副題を並べ直すと、もう一つ見えてくることがある。
季節と行事の副題が、第19話から消えている
第13話「クリスマスイヴ」、第14話「冬の夜のジレンマ」、第15話「行く年来る年」、第16話「新学期」、第17話「バレンタイン」、第18話「春の手前」。この六本は、どれも季節か行事の言葉を含んでいた。ところが第19話「グラデーション」から先は、第20話「この先」、第21話「過去と今」、第22話「想いと選択」、そして第23話「居場所」と、五話続けて暦から離れた言葉になっている。
本編の中には暦がある。後半のナレーションは「12月初旬」から始まる。それでも副題は、行事の名前ではなく、平が心の中で使った語のほうを選んでいる。
二人とも、相手の気持ちを「ない」ほうに片づけている
前半は、平と東がそれぞれ、相手に好かれている可能性を自分で打ち消すところから組まれている。
平は、自分の考えを「思い上がり」と呼ぶ
冒頭の平の心の声は「東が俺のことを好きかもしれない」から始まり、すぐに「結局それは誤解で」と自分で結論を出す。続くのは「普通にちょっと考えればありえないって分かることなのに」「思い上がりにも程がある」。好かれている可能性を、平は「ありえない」の一語で閉じている。
平は、その原因にも自分で名前をつける。「勝手に想像しすぎる癖をやめんと」「思い込みの激しさと劣等感が掛け合わさると」「ろくなことにならない」。そのあと「俺の劣等感って」「何に?」「誰に?」と、劣等感の向き先を探しかけたところで場面が切り替わる。
東も、勝算を聞かれて「それはマジでなさそう」と答える
次の場面では、東が友人に恋の話をしている。「今はとにかく一緒にいたくて」「スキバレを避けつつ粘ってる状態で」。友人の「今は告白しても勝算ない感じ?」に、東は「それはマジでなさそう」と返す。平は「ありえない」、東は「なさそう」。二人とも、相手の気持ちを「ない」ほうに置いている。
ただ、東の見立ては平のそれより揺れている。「こっちが近づきすぎると避けられるのに」「最近前よりも懐かれてる気がして」「ガンガン情緒振り回される」。友人の返しは「なんかめんどくさそうな男だな」だった。
「縁を切った方がいい」への答えが、自習室だった
東が意見を求めた相手は佐藤だった。「こういう時」「サトならどうする?」と聞かれた佐藤は、自分の意見が参考になるかは分からないと前置きしてから話し始める。
相談相手は、恋愛から始まる感覚が分からない
佐藤の言葉は率直だ。「人の恋愛話聞くのは好きだけど」「別に共感してるわけではないしな」「そもそも人間関係が恋愛から始まる感覚が分からん」。そのうえで出す案が「人として好きかどうか改めて考え直すとか」「脈がないならゴール地点は恋愛じゃなくするしか」。
ところが佐藤は「いや待てよ」と自分の案を引っ込め、「単純に縁を切った方がいいのでは」まで一気に進む。理由は「少しでも悪影響がありそうなら縁を切った方がいいと思う」。恋の相談が、人付き合いの整理の話に変わっていく。
東は、悪影響ではない証拠を勉強で出す
東の返事は、反論というより報告に近い。「言うて勉強に関してはむしろ頑張れてるみたいなとこあるしな」「多分いるって思ってなかったら」「こんなに自習室利用せずに家でだらだら勉強してたと思う」。悪影響どころか、相手がいると思うから自習室に通えている、という答えだ。
あらすじは東が「距離を保っていた」と書く。けれど東自身の言葉は、距離を置いた先の話ではなく、同じ部屋にいることで続いている毎日の話になっている。
帰り道も菓子パも、声をかけたのは平のほうだった
東が「避けられる」と言っていた相手は、この回では自分から近づいてくる。
「じゃあ俺もそっち方面から帰るわ」
帰り際、東の「じゃあ私今日こっちだから」に、平は「歩き?」と聞き、「じゃあ俺もそっち方面から帰るわ」と続ける。東の「平めっちゃ紳士じゃん」は「はいはい」で流され、「うわ適当に流すじゃん」と返される。
そのあとに置かれた心の声が「この時間が好き」「自分と同じぐらいこいつが同じことを思ってたらいいのにって正直思ってる」「この時点でもうダメなんだよ」。一緒に帰れて嬉しい、の直後に「もうダメ」が来る。東の中では、喜ぶことと諦めることがひと続きになっている。
音楽を聞いたのは東で、差し出したのは平の古い曲
「平って音楽何聴くん?」の理由は「山田とかとカラオケ行くとき何歌うんかなーって」。平は「多分知らんと思う古いし」と先に断っておき、実際に聞かせると「あっ知らん」。それでも東は「今から知ればいいんよ」「プレイリスト入れとくわ」と受け取る。知らないことを、東は距離の理由にしない。平の断り方は、このあと本人が語る予防線とよく似ている。
菓子パの誘いは、説明の足りない一通だった
後半、東のもとに平から連絡が来る。「なんか平から連絡来たんだけど」。受け取った東は「意味わからんよね」とこぼし、友人に「普通に呼んでんじゃない」と言われても、「手ぶらでただお菓子食べに行くのは厚かましいって思うからねー」と迷う。友人の「こんなに心配性だったっけ」のあとに出た案が「差し入れあればいいんじゃん」だった。
菓子パの場に着くと、東は「あれじゃわからんて」と言い、「ま、来たけど」と付け足す。分かりにくい誘いでも、来るほうを選んでいる。平から動いて、東がそれに応じる形が、この回では何度も繰り返される。
平は、居場所を信じていなかったと自分で言い当てる
帰り道のあと、平の心の声は東の話から、自分自身の話へ移っていく。
「あっち側の人間」と置いていた東
「東のことを」「俺はずっと自分とは関わりようのないエリアにいる人間と思っていて」「あっち側の人間なのに」「俺といるところを見られるとまずいとか」「ごちゃごちゃ考えて」。そのうち「いつの間にか自分が内側にいるようになってたけどうまく飲み込めなかった」。内側に入れてもらったことを、平はまだ飲み込めていなかった。
卒業後の予定に、平が最初から数えられている
次の場面は、卒業後に遊びに行く相談だ。「受験終わった頃行きたいなー」という話が出て、受験の結果を気にする声には「日程も後ろの方に調整してさー」と返ってくる。そして平は「じゃあさ平男子声かけてよ」と頼まれ、「平めっちゃみんなのことわかってんじゃん」と言われる。平は、人を集める役として当てにされている。
予防線は、がっかりされたときの逃げ道だった
そこで平の独白が一気に続く。「今俺がここにいるのは本当の自分がバレてないから」「がっかりされることがあってもそうなることは最初からわかってたって逃げられるように予防線を張っていた」「誰よりも自分の居場所が欲しくて欲しくて仕方ないくせに」「ひねくれたものの見方をして複雑に考えてるフリをしながらごまかして」。
独白を割るように「楽しいじゃん」の一言が入り、平は「蓋を開けてみれば本当の自分の望みはシンプルで」と受け止めて、「手放すだけでよかったんだ」と結ぶ。冒頭の「癖をやめんと」は義務の言い方だったが、ここでは「手放すだけでよかった」と軽くなっている。
「くだらない」「無駄な時間」「勲章」を、ナレーションが言い直す
後半は「12月初旬」のナレーションで始まる。「3年生たちは放課後みんながなんとなくまだいるわずかな時間をおのおのほんのり楽しみに過ごしていた」。
チキン食べ会から一年、勲章はない
「そういえば去年のチキン食べ会からもう1年経とうとしてんのか」「この会そんな名称だったんだ」。卒業の話になると「なんか青春らしい青春無かったなぁ」「部活3年間頑張っただけ良くね?」「いや言うて弱小校だし何の勲章も無し」と続く。
それでも一人が「私かなり好きだよ」と言う。好きなのは、「こうやってみんなと放課後に」くだらない話をしたり、「好きなショート動画のネタこすったり」する時間だ。返ってくるのは「くだらんことしかしてねえ」「なんか言葉にすると無駄な時間感増すな」。「くだらない」も「無駄な時間」も「勲章」も、最初は本人たちの自虐として出てくる。
ナレーションは、同じ語で肯定し直す
菓子パのあとのナレーションはこうだ。「名前のある行事でもなければ」「勲章のように残ることもない」「くだらない無駄な時間が心を彩ることがある」「それは小さな幸せを拾い上げられるような」「心の余裕が本人にあれば」。教室で出た自虐の語が、ほぼそのまま肯定の文に入れ替わっている。
「名前のある行事でもなければ」は、「チキン食べ会」という名前のついた会を思い出していた前半と対になる。副題が第19話から行事の名前を離れたことも、この一文に重なって見える。
菓子パの場には、もともと帰るつもりだった顔ぶれも残っていた。「今は急いで帰ろうとしてなかったか」「まあ大丈夫」。名前のない時間に、予定を少しずらして付き合う人がいる。
まとめと考察
最後に、平がコンビニに誘う場面と、鈴木の心配を並べておく。
同級生が来るコンビニに、平のほうから誘う
帰り道の終わりに、平が「なぁ東」と呼び止めて「コンビニ寄らん?小腹すいた」と誘う。東は「あそこ結構同級生来るけど大丈夫?」と確かめ、平は「いやもう別にいい俺は大丈夫」と答え、「あっけど東が気まずいならやめと」と付け足す。
前半の平は、東と「いるところを見られるとまずい」と考えていた。その心配が、ここでは平の口から「俺は大丈夫」に置き換わる。気にする先が、自分の見られ方から東の気まずさへ移っている。この回の平の変化が、いちばん短く出ている一言だ。
鈴木の「谷君のがやっぱ強いよ」と、心配の中身
最後の場面では、谷の進学先の話が出る。「じゃあやっぱ大学から遠距離になるんだ」「そうなんだよ」。鈴木は「まあけど乗り越えるしかないよね」「行きたいとこ行けるように頑張ってほしい」と言い、「強いな」と言われると「言うて谷君のがやっぱ強いよ」と返す。
第22話で、別れを選べることを「強さ」と呼んだのは谷のほうだった。今回は、その語が鈴木の側から谷へ返されている。ただし鈴木の言葉の続きは「今まで以上に頑張ってて」「ストイックすぎて心配なぐらい」。「強い」と言った相手を、同じ口で心配している。あらすじの「無理をしているように見えて」は、この一言に重なる。
居場所は、見つけるものではなく、信じるものだった
平は、居場所がなかったのではなく、用意されていたものを信じていなかったと自分で言い直した。東は「なさそう」と言いながら、相手がいると思える自習室に通い続ける。放課後の教室では、「無駄な時間」と呼ばれたものがナレーションで肯定される。どれも、すでにあるものを、あると認められるかどうかの話だった。ナレーションの言う「心の余裕」は、平がコンビニに誘った一言にもそのまま当てはまる。




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