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第11話の副題は「そんなのどうだっていい!」。魔装に呑まれたバンデルをリオンが食い止める間、オリヴィアたちは魔笛を持つヘルトルーデのもとへ向かう。「どっちの味方だ」と問われたマリエは、「そんなのどうだっていい」と正しさの議論を切り捨てる。仇討ちを止める代わりに、マリエは「大事な人が死んだことあるの」とヘルトルーデの側に立つ。戦いを終えたリオンは、「俺は正しかったのかな」と自分に問い直す。




副題「そんなのどうだっていい!」と、この回を作った人たち
公式あらすじは、二つの戦場を並べている
第11話の副題は「そんなのどうだっていい!」。公式サイトのあらすじは「リオンは新たな形態となったアロガンツを駆り、魔装に取り込まれたバンデルと激突する。」と「一方、オリヴィアたちは魔笛を持つヘルトルーデを追って、公国母艦を目指していた。」の二文だけだ。あらすじはリオンの戦いとオリヴィアたちの追跡を並べるだけで、副題の台詞を誰が言うのかは伏せている。
第10話と同じ二人ずつで作られた回
公式サイトによると、第11話は脚本が猪原健太、絵コンテが増田敏彦と三浦和也、演出が呉瑜玹、総作画監督が鈴木政彦と熊谷夏美。絵コンテの二人も総作画監督の二人も、第10話「痛いところを突きやがる」とまったく同じ組み合わせだ。監督の三浦和也が絵コンテに入るのは第8話から四話続けてで、演出の呉瑜玹は第9話「リビア……」で絵コンテと演出を担当している。終盤の二話が、同じ顔ぶれで一続きの戦いとして作られている。
学園の面々の避難と、魔装に呑まれたバンデル
「もう十分勇気を見せてもらったわ」
冒頭は避難の場面から始まる。「全員降りたな」「我々は戦場に戻るぞ」の声に、学園の面々が「リオンのお父さん」「俺たちも行きます」と申し出るが、「学生は学生らしく避難していてくれ」と止められる。「もう十分勇気を見せてもらったわ」「リオン君ならきっと大丈夫」「彼を信じましょう」。これまで逃げずに踏みとどまってきた学生たちが、ここでは戦わないことを任されている。
「全身を魔装に乗っ取られています」
リオンの前のバンデルは、もう人の形の戦い方をしていない。「すでに正気ではありませんね」「全身を魔装に乗っ取られています」とルクシオンが告げ、リオンは「そこまでして戦いたいのかよ」と吐き捨てる。第10話でバンデルは「死んでいった者たちのためにも」戦い続けると言っていた。死者のために戦うと決めた男が、鎧に自分の命ごと差し出している。
「魔笛っていうアイテムで呼び出されてるの」
「兄貴がクリアしたデータで」
化け物の止め方を言い出したのはマリエだった。「兄貴がクリアしたデータで」「ムービーしか見てないけど」「あの化け物は」「魔笛っていうアイテムで呼び出されてるの」「笛の音色の発信源はあの船よ」。「私も修学旅行の時」「モンスターが呼び出されるのを目にしたな」と裏づける声も続く。前世で兄がクリアした画面の記憶が、この世界の戦争を止める手がかりになっている。
「あのひねくれ者が護衛してくれるみたい」
母艦へ向かう船には「あのひねくれ者が護衛してくれるみたい」と守りがつき、「エネルギー充填」「ボソン粒子砲発射」の一撃に、周りは「あんな魔法見たことないぞ」「魔王の怒りだ」と騒ぐ。リオン本人は別の戦場にいても、母艦へ向かう船の守りは手厚い。
「どうして私たちは幸せになれなかったのよ」
「私を殺したいのなら殺しなさい」
母艦にいたヘルトルーデは「私を殺したいのなら殺しなさい」「それでも大地の守護神様は止まらないわよ」「いくら倒しても蘇る」と言い放つ。「もうやめてください」「このままだとみんな死んでしまいます」「もう終わりにしましょう」と止める声にも、「私たちが憎いのは分かるが」「これ以上戦って何になる」「大勢が無駄に死に続けるだけだろう」という説得にも応じない。止める側の言葉がどれも、戦いの損得から組み立てられている。
「公国なんてもうどうなったって構わないわ」
「公国も元をたどればホルファート王家の一族じゃないか」と言われたヘルトルーデは、「公国なんてもうどうなったって構わないわ」「私と妹を利用するだけ利用していた公国なんか」「どうにでもなるがいい」と返す。第10話で明かされたのは、両親が戦争に反対したために「だから死んでいただいたのです」と始末されていた事実だった。王国と戦う理由だった公国そのものが、彼女にとっては家族を奪った側に変わっている。
「妹のラウダだって」
「両親を殺されたことも知らずに」「いいように使われていたなんて」「私の大切なものは全て奪われた」「妹のラウダだって」「もう誰も信じない」「みんな消えてしまえばいい」「私はこのどうしようもない世界を壊したくて仕方ない」「私は妹と両親の仇を討ちたいのよ」「どうして私たちは幸せになれなかったのよ」。第10話では「ラウダが死んだのに、心が温まる」「悲しむこともできないのよ」と、悲しみまで奪われていた。ようやく取り戻した悲しみが、そのまま世界への怒りになって噴き出している。
「そんなのどうだっていい!」
「どっちの味方だ」
仇討ちを止めようとする流れに割り込んだのがマリエだ。「お前何を言ってる」「どっちの味方だ」と問われ、マリエは「知らないわよ」「そんなのどうだっていい」と返し、「綺麗事ばっかり」「仇討ちが間違ってる」「知るかよそんなの」「何様よ」とたたみかける。副題はこの一言から取られている。敵か味方か、正しいか間違いかという問いを、マリエは最初に捨てている。
「勝手に他人の気持ちを代弁するんじゃないわよ」
「きっと妹さんだって喜ばない」という言葉には、「勝手に他人の気持ちを代弁するんじゃないわよ」。続けて「仇も討たせずにただ不幸になれっていうの」「幸せになる権利はないの」「この子の気持ちはどうなるのよ」。死んだ妹の気持ちを持ち出す説得を、マリエは生きている「この子」の気持ちで押し返している。
「もう会えなくなっちゃうのよ」
マリエの矛先は説得する側に向く。「偉そうに説教してるけど」「あんたは大事な人が殺されたら黙ってられるわけ」「どうしようもなく後悔したことは」「大事な人が死んだことあるの」「もう会えなくなっちゃうのよ」。第7話で明かされたマリエの前世は、「そのせいで兄貴が死んだことも知らず、お葬式にも出られなくて」と語られていた。「もう会えなくなっちゃう」は、兄の死に間に合わなかった人間だけが言える重さを持っている。
「かばってなんかない」と、契約の破棄
「守銭奴の聖女様にかばわれるとは思わなかったわ」
ヘルトルーデは「お金のことしか考えてない」「守銭奴の聖女様にかばわれるとは思わなかったわ」と言い、マリエは「かばってなんかない」「私はそこの二人が」「主人公面した女たちが」「嫌いなだけよ」と突っぱねる。かばう理由を、正義ではなく好き嫌いに置き換えているのがマリエらしい。
「あなたがいなければ」「こんな気持ちにならなかったのに」
ヘルトルーデは「あなたがいなければ」「こんな気持ちにならなかったのに」とこぼす。マリエの「でもあんた本当にそれでいいの」に、「良くないわよ」「全然良くないわ」「でもね」と答える。正論では動かなかった心が、自分の怒りを認めてもらったところで初めて揺らいでいる。
「そして公国は」「降伏します」
「早く私から離れなさい」と言ったヘルトルーデが明かすのは、「守護神様を呼び出す代価は」「使用者の命」ということだった。「契約の破棄をした今」「私はもう二度と魔笛を使えず」「守護神様が私を殺そうとするわ」。そして「そして公国は」「降伏します」。仇討ちをやめるという決断が、自分の命と引き換えの降伏として差し出されている。
「姫様たちのために戦いましょう」と、バンデルの最期
「これが正しい道だったのか」
「戦いの終了を宣言しました」「違うの」「もう終わりなのよ」と呼びかけられても、バンデルは止まらない。回想では「これが正しい道だったのか」と迷う彼に、「王国との戦いを望んでいるのです」「よって王と王妃には消えてもらわねばなりませんでした」「あなたも家族の仇が討てるではありませんか」「公国の騎士なら無意味な後悔など捨てることです」と言い聞かせる声がある。バンデルもまた、迷いを捨てるように言われて戦い続けてきた一人だった。
「このバンデルが父上と母上の代わりとなって」
回想の中でバンデルは「このバンデルが父上と母上の代わりとなって」「姫様たちのために戦いましょう」と誓っていた。やがて力尽き、「ここまでのようです」と告げる。ヘルトルーデは「お願い私を置いて」とすがる。両親の代わりを誓った男が、姫の前から去っていく。
「この子を一人にさせる気なの」
倒れたバンデルを助けようとする声に、「こいつは黒騎士だぞ」と止めが入る。返ってくるのは「分かってるわよ」「私がこいつに何回やられたと思ってんの」「それでもよ」「この子を一人にさせる気なの」。さんざん痛めつけられた相手でも、残される姫の孤独のほうが優先されている。
「オリヴィアの波長を攻撃に乗せます」
「いくら倒しても復活する相手では」
残るのは守護神だ。ルクシオンは「いくら倒しても復活する相手では」「オリヴィアの衰弱が激しく」と言い、手段を切り替える。「本体までは届かないので」「アロガンツにエネルギーを集めます」「オリヴィアの力です」「オリヴィアの波長を攻撃に乗せます」。最後の一撃は、リオン一人の力ではなく、オリヴィアの力を乗せて放たれている。
「この際だ」「派手に行くぞ」
リオンは「この際だ」「派手に行くぞ」と応じ、「ようやくラスボス撃破だ」と一息つく。ただし「アロガンツも限界のようです」。第1話の副題「愛こそ、世界を救うんだよなぁ」が、ここでは皮肉ではなく戦い方そのものとして使われている。
「俺は正しかったのかな」
「結局は大勢死んだ」「大勢殺した」
戦いのあと、リオンはルクシオンに「俺は正しかったのかな」と漏らす。「平穏な暮らしを望んでるとか」「ただのモブでいたいとか言いながら」「結局は大勢死んだ」「大勢殺した」「これが物語の主人公なら」「もっと上手くやれたはずだ」。勝った直後に口をついて出るのが、勝利ではなく死者の数になっている。
「誰もマスターにそこまで期待していませんよ」
ルクシオンの答えは「自意識過剰ですね」「どのみち戦争は起きていましたし」「誰もマスターにそこまで期待していませんよ」。リオンは「嫌なやつ」「やっぱり俺はモブってわけだ」と笑う。突き放す言い方で、リオン一人が背負い込むことを止めている。
「好きだからこそ」「大事にしたいんだよ」
ルクシオンは続けて「愛こそがこの世界を救うんだとよ」というリオンの口癖を持ち出し、「たとえマスターがモブでも」「あの二人の愛は本物でしょう」「愛が戦いを終わらせたのは事実ですから」「お二人のことが好きなのでしょう」と迫る。リオンは「お前はバカだな」「好きだからこそ」「大事にしたいんだよ」と返し、迎えに来た二人に「とりあえず」「ただいま」と言う。「正しかったのか」への答えは出ないまま、帰る場所だけははっきりしている。
まとめと考察
正しさを捨てた説得が、戦いを止めた
この回で戦いを止めたのは、正しさを並べる説得ではなかった。「そんなのどうだっていい」と正誤の議論を切り捨てたマリエが、「大事な人が死んだことあるの」「もう会えなくなっちゃうのよ」と、仇を討ちたい気持ちの側に立ったとき、ヘルトルーデは契約を破棄した。否定されなかった怒りだけが、自分で手放すことのできる怒りになっている。
「正しかったのか」と問うのは、勝った側だけ
ヘルトルーデの側でも、バンデルの側でも、正しさは誰かから押しつけられるものだった。公国の騎士は「無意味な後悔など捨てることです」と言われ、ヘルトルーデは姉妹そろって利用された。最後に「俺は正しかったのかな」と自分で問えたのは、誰にも正しさを押しつけられていないリオンだけだった。
副題の台詞を言ったのは、元の偽主人公
副題の「そんなのどうだっていい!」を口にしたのは、かつて主人公の座に居座っていたマリエだった。そのマリエが「主人公面した女たちが」「嫌いなだけよ」と言いながら、いちばん主人公らしい場面を担っている。リオンが「物語の主人公なら」と悔やんだ同じ回に、主人公でない者たちがそれぞれの役目を果たしている。




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