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ロメリア率いるカシュー守備隊は、猿鬼に襲われた村の救援へ向かう。怯える新兵たちを奮い立たせたのはアルの檄と、先陣を切るロメリアの的確な指揮だった。初めての勝利の陰で、魔物を殺せなかったレイは己の無力さと向き合うことになる。勝利の喜びと戦場の厳しさが交錯する初陣だった。先陣を切る指揮官、明かされた恩寵の力、そしてアルとレイの友情まで、第3話を振り返る。




第3話「その奇跡の名は」はカシュー守備隊の初陣と恩寵の回
『ロメリア戦記』第3話「その奇跡の名は」は、ロメリア率いるカシュー守備隊が、猿鬼に襲われた村の救援に向かう初陣の回だった。怯える新兵たちを奮い立たせるアルの檄、先陣を切って的確に指揮を執るロメリア、そして魔物を殺せずに立ち尽くすレイ。勝利の喜びと戦場の厳しさを同時に描きながら、ロメリアが持つ恩寵という力の正体まで明かされた、見どころの多い一話だった。
馬の世話と、人を助けるための技術
冒頭、行軍の途中で自ら馬の世話をするロメリア。王子と旅をしていた時に覚えたという手際のよさに、レイが感心する。必要なら馬車も扱えるし、吹雪くような場所では犬ぞりを使ったこともあるという話からは、魔王討伐の旅がどれほど過酷だったのかが垣間見える。アルは家が農場だったので自然と馬に慣れ、レイは教会の孤児で、医療の知識があった神父の足となって村の病人のもとを走り回っていたのだという。
僕は走っただけですからと謙遜するレイに、ロメリアはなぜそんなに謙遜するのかと問いかける。馬に乗れるのも、読み書きができるのも、人を助けるために得た技術であり、その技術で人を救うことができた。それは素晴らしいことですよというロメリアの言葉は、レイにとって何よりの励ましだったはずだ。この穏やかな会話が、後半のレイの苦悩をより切なく見せる伏線になっていた。
猿鬼の群れと、アルの檄
目的地の村にたどり着いた守備隊の前に現れたのは、砦に向かって進む猿鬼の大群だった。そのあまりの数に、新兵たちは完全に怯んでしまう。そこで声を張り上げたのがアルだった。怖気づいてんじゃねえ、お前らが着ているものは何だ、持っているものは何だ。あんな相手にびびって、このまま逃げる気か。アルの檄が、凍りついていた討伐隊の空気を一変させる。
ロメリアは全軍を三隊に分け、アルの隊は左翼から砦の前方へ、レイの隊は右翼から攻撃をかけ、自らは中央から進むと指示を出す。一体も逃してはならない。私に続いて。そう言って馬を駆るロメリアに、お嬢さんにくっつけという声が上がる。誰よりも先に前へ出る隊長の姿に、兵たちが一人、また一人と続いていく流れは、まさに初陣の高揚感そのものだった。
カシュー守備隊の初陣
先陣を切るロメリア
怯えもせずに猿鬼の群れへ突っ込んでいくロメリアの姿に、兵たちはすげえと声を上げる。剣の腕はいまいちでも、馬上から戦場全体を見渡して指示を飛ばす姿は、紛れもなく指揮官のものだった。アルの隊は砦の門を開けさせ、逃げ遅れた村人たちを中へ誘導していく。俺たちが下がったら村は全滅だ、死ぬ気で守れという声が飛び交い、守備隊は必死に持ちこたえる。
一方で、隊長自らが最前線で戦っていることを問う声も上がる。指揮官が倒れれば隊は総崩れになる。その心配はもっともだが、それでも先頭に立つことをやめないロメリアの姿は、兵たちの心を確実につかんでいた。これまでロメリアに不信感を抱いていたアルの見る目も、彼女の背中を見るうちに少しずつ変わり始めていく。
火を操る猿鬼と、崩れかけたレイの隊
ところが、猿鬼はただの魔物ではなかった。村を包む火事は、猿鬼たちが火をつけたものだったのだ。火を怖がるどころか使いこなしている。知能を持ち、火を操る魔物を前に、新兵たちは再び浮き足立つ。落ち着いて、火など怖くない、燃え移ってもすぐに消せばいいだけです。盾を使って陣形を組み、訓練を思い出して互いに援護し合うのです。パニックにならない指揮官の声が、崩れかけた隊を立て直していく。
ここで、右翼を任されていたレイの隊が崩れかけていたことが明らかになる。あなたはこの隊を率いる役割だったはずですと告げられ、申し訳ありませんと頭を下げるレイ。ロメリアはグランとラグンにその場を任せ、一人で戦わない、ばらけずお互いを意識して動きなさいと言い残して中央へ戻る。指揮官としての冷静さと、それぞれの兵の役割を見極める目の確かさが光っていた。
牧羊犬のように追い込む策
中央に戻ったロメリアが打ち出したのは、猿鬼を砦の前に引きつけ、残りを馬の機動力で中央へ追い込むという策だった。牧羊犬のように獲物を追い込めば、敵は自分から槍に刺さりに来る。猿鬼の知能を逆手に取ったこの作戦で、守備隊は一体ずつ確実に魔物を仕留めていく。これがロメリア様の力なのかという兵たちの驚きは、見ているこちらの気持ちでもあった。
恩寵という小さくて絶大な力
そして、ロメリアの独白によって、彼女が持つ力の正体が明かされる。私に戦う力はない。だがもし神が気まぐれのように、勝利への力を自分に与えるとしたら。たとえそれが小石を転がす程度の小さな幸運であったとしても、その力は周囲の仲間に幸運と好調をもたらし、敵対する相手に不運と不調をもたらす。王子との旅立ちの前夜、荘厳な声とともに与えられた力。その力の名は恩寵。魔王ゼルギスでさえ抗えなかった、小さいが絶大な力だった。
第1話で、王子から柱の向こうでただ立ち尽くしていただけと言われたロメリア。けれど実際には、この恩寵こそが魔王討伐の旅を勝利へ導いていたのかもしれない。副題の奇跡とは、この恩寵を指しているのだろう。そう考えると、物語の見え方が大きく変わってくる。一見地味に見えるけれど、軍を率いて戦うにはこれ以上ない力だと思う。
とどめを刺せなかったレイ
魔物を殺せない兵士
戦いが終わりに近づいた頃、ロメリアはレイを連れて、一匹だけ外に逃れていた猿鬼のもとへ向かう。もう戦う力はなさそうな猿鬼を前に、動物は好きですかと尋ねるロメリア。私も好きですと穏やかに返しながらも、彼女はレイにとどめを命じる。そこまでしなくてもと戸惑うレイに、ロメリアは容赦なく告げる。これは魔物です。村に火をつけ、村の人たちを喰らい、恐怖に陥れてきたのです。私は敵を殺せない兵士を連れて行く気はありません。
冒頭で、人を助けるための技術は素晴らしいと優しく語りかけていたロメリアが、ここではまったく別の顔を見せる。戦場で敵を殺せないことは、仲間の命を危険にさらすことになる。その現実の残酷さを、ロメリアはあえて突きつけたのだ。優しさと冷徹さ、その両方を持ち合わせているからこそ、ロメリアは指揮官としてふさわしいのだと感じた。
村の感謝と勝利の宴
戦いの後、ロメリアは村人たちの前で、ロメリア・フォン・グラハムと名乗り、今後は守備隊とともにこのカシューを守ると約束する。収穫物を納めに行ったため男衆が留守で、村は無防備だったという村長の言葉からは、守備隊が間に合ったことの大きさが伝わってくる。怖いのをやっつけたのかと尋ね、お姉ちゃんありがとうと抱きつく少女サーラの姿に、ロメリアの表情もほころんだ。
村人たちが開いてくれた宴の席で、ロメリアはいつもの報酬とは別に全員に銀貨1枚ずつを、そしてみんなの心を奮い立たせたアルには感謝を込めて銀貨2枚を与える。どうせならいい肉が食べたいと、羊を追加で丸焼きにしてくれと頼む声が上がるのも楽しい。今日の戦いが終わっても、また次の村が私たちを待っている。この勢いで、カシューの魔物すべてを討伐していきましょう。あなたたちならそれができる。ロメリアの乾杯の言葉に、守備隊の結束がぐっと強まったのを感じた。その輪の中で、レイだけが食欲がないと肉を仲間に譲り、外へ出ていく。
王都と魔族、それぞれの不穏な動き
物語は王都へ。貴族たちはエリザベートをアンリ王子の婚約者として褒めたたえ、こぞって取り入ろうとしていた。その裏で、父ファーマイン卿はエリザベートに、王専属の癒し手をアンリ王子のもとへ向かわせたと明かす。我々の目的はライオネル王国を掌握することだと語り、王子が留守の間、王を看護する優しき姫となれと命じる父。暗殺など自分はまっぴらだと返すエリザベートに、そんなことをせずともあのお方には直に迎えが来ると告げる言葉が不気味だった。
さらに魔族の側でも動きがあった。ガリオスは、本国からの連絡が途絶え、魔導船も使えなくなったことから、兄が殺されたことを悟っていた。弔い合戦ではなく、ただ兄を倒した者と戦ってみたい。人間にもそんなに強いやつがいるなんて面白いと笑うガリオスに、ギャミは首謀者がライオネルにいるらしいと伝える。ロメリアの知らないところで、王国の内側と外側の両方から、大きな嵐が近づきつつあった。
俺の肉食え
夜の湖畔で、アルは一人でいるレイを見つける。一匹も殺せなかった、ロメリア様にも気づかれていて、役立たずは連れて行けないと言われたと打ち明けるレイ。アルは、初陣で大活躍するなんて自分くらい才能がなければ無理だ、戦場でびびるのも、うまく動けないのも当たり前だと返す。それでも、弱いくせにいつも必死に訓練しているお前なら、いつか必ずものになる。俺がお前を置いて行くわけがない。
だから、俺の肉食え。不器用な励ましとともに差し出された肉に、レイは思わず涙をこぼす。アルとレイの友情が胸に響く、温かいラストだった。宴の席で食欲がないと肉を譲っていたレイに、もう一度肉を差し出す。その意味を思うと、なおさら泣けてくる。
第3話のまとめ考察
優しさと冷徹さを併せ持つ指揮官
第3話は、カシュー守備隊の初陣を通して、ロメリアという指揮官の本当の姿を描いた回だった。兵の過去に寄り添い、その技術を素晴らしいと認める優しさ。先陣を切って戦場に立ち、混乱した隊を冷静に立て直す強さ。そして、敵を殺せない兵士は連れて行かないと突きつける冷徹さ。そのすべてが、人々の暮らしを守るために軍を率いるという彼女の覚悟から生まれているのだと思う。
一方で、魔物を殺せなかったレイの苦しみと、それを受け止めたアルの不器用な優しさも強く印象に残った。誰もが最初から強い兵士になれるわけではない。それでも、仲間がいれば前に進める。新兵たちの成長物語としても、この作品はますます面白くなってきた。王都で進むエリザベートたちの陰謀と、兄の仇を探す魔族ガリオスの存在も気になるところだ。恩寵という力を持つロメリアと、彼女のもとで成長していくカシュー守備隊が、これからどんな戦いに挑んでいくのか、続きが楽しみでならない。




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