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リリィの前に現れた少女マーガレットは、2年前のガドレーザで姉を失った遺族だった。何も覚えていないまま罪悪感を抱えてきたリリィは、真実を確かめるためにもう一度ガドレーザへ向かう決意をする。その傍らには、空気を読まないレインがいた。リリィの告白、マーガレットの隠された殺意、そしてCOOL DRAGONの鎧まで、シリアスとギャグが同居した第3話を振り返る。




第3話は、リリィの過去とマーガレットの憎しみが交わる回
『追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。』第3話は、リリィが2年前に戦えなくなった原因であるガドレーザの記憶と、そこで姉を失った少女マーガレットの憎しみが正面からぶつかる回だった。これまでのギャグ多めの空気から一転、シリアスな因縁が描かれる中で、空気を読まないレインの存在がどう効いてくるのか。重い過去と軽やかな主人公の対比が際立った、印象深い一話だった。
小学生みたいな服と、土色の男
冒頭は相変わらずのにぎやかさで始まる。待ち合わせ場所でリリィを探すレインは、小学生を見つけて声をかけてしまい、自分の待ち合わせ相手も小学生みたいな服を着ているからと謝る始末。一方のリリィも、レインと同じ色だったからと土色の服の男に声をかけていた。お互いの私服のセンスをさりげなく突き合う、なんとも二人らしいアバンだった。この後に続く重い展開を思うと、このくだらないやりとりこそが、二人が積み重ねてきた気楽な日常の象徴だったのだと気づかされる。
久しぶりですね、と現れた少女
そんな二人の前に現れたのが、犬を連れた少女マーガレットだった。「久しぶりですね」と声をかけた彼女は、ずいぶん楽しそうで何よりだと笑い、ガドレーザのことはもうきれいさっぱり忘れることができたのかとリリィに問う。王獣の牙がレインとリリィを探していると告げ、震えているリリィを気にかけたらどうかとレインに言い放つ姿には、明らかなとげがあった。
去り際には、レインさんも肝心なところで裏切られて命を落とすかもしれないと忠告し、次に会う時はもう少し不幸になっていてくれるとうれしいと言い残す。丁寧な口調の裏に隠された暗い感情が、短いやりとりの中でじわりと伝わってきた。
ガドレーザで何があったのか
王獣の牙の混乱と、遺族という言葉
ギルドに戻ってみると、王獣の牙は二人を探すどころではなかった。武器と防具の弱体化に加え、コーネリアスほどの冒険者がD級のレインに撃退されたことで、ギルドの中は大混乱。王獣の牙を抜けて他のギルドへ移る者も続出しているという。マーガレットの話は、半分は嘘だったわけだ。
それでもレインは、マーガレットが口にしたガドレーザのことが気にかかっていた。尋ねられて返ってきたのは、彼女は遺族だという答え。ガドレーザはリリィが最後に戦った場所であり、戦えなくなった原因なのだという。2年前の出来事が、リリィだけでなく、残された者の人生まで大きく変えてしまっていたことが明らかになる。
光竜の遺跡と、伝説級の剣
2年前、リリィたちのパーティが挑んだのは、東の竜王国ガドレーザにある光竜の遺跡だった。最深部に眠るのは、竜の力を秘めた伝説級の剣レファイド。そこまでたどり着いた冒険者はまだいない、相当強いドラゴンがいるという話にも、仲間たちは自分たちなら余裕だと笑っていた。その自信に満ちた姿を思うと、この先に待っていた結末がなおさら重くのしかかる。
帰ってきたのはリリィ一人だった。姉は強いんだよねと信じていた幼いマーガレットは、なぜ自分の姉は帰ってこないのか、なぜリリィしか帰ってこないのかと泣き叫び、姉の代わりにリリィが死ねばよかったのにとまで言ってしまう。ごめんなさいと繰り返すことしかできないリリィの姿に、生き残った者の罪悪感が痛いほど表れていた。
そして、そのレファイドこそが、レインの強化付与に耐えられる剣がある場所としてリリィが心当たりを持っていたものだった。前回の終わりに口にした心当たりが、よりにもよってリリィの心の傷そのものとつながっていたのだ。
何も覚えていない、という告白
やっぱり出かけてくると部屋を出たリリィを、レインはしつこく追いかける。どこへ行くんだと繰り返されて根負けしたリリィは、2年前のことを何も覚えていないと打ち明けた。それまで経験したことのない恐怖と無力感以外、何も覚えていない。気づいた時にはベッドの上で、仲間は死んだと聞かされた。きっと自分は仲間を見捨てて一人だけ逃げ帰ってきたのだと。
それはリリィの想像だろう、違うかもしれないじゃないかと返すレイン。いつかガドレーザに行って真実を確かめなければいけないと思っていた、こんな個人的なことに巻き込んでごめんなさいと謝るリリィに、レインはリリィは確かめに行けばいいし、自分は剣を取りに行くと笑う。俺には強化付与魔術があるから、俺もリリィも死にはしない。深刻さを軽やかに受け止めるレインの言葉が、リリィの背中をそっと押していた。
姉の最期を確かめるために
リリィを不幸にしてくれるなら
一方、マーガレットは王獣の牙のギルドマスター、バリオスのもとを訪れていた。勧誘だと勘違いして歓迎するバリオスに、彼女はなぜリリィとレインを殺さないのかと問う。リリィを不幸にしてくれるなら手伝おうと思ったのに、期待しすぎたようだと冷たく言い放つマーガレット。
リリィは笑っていた。過去のことなど忘れたように。それが許せないのだと彼女は語る。自分の姉は今もあの遺跡のどこかで、亡骸を冷たい風にさらしているというのに、仲間を見捨てて死なせておいて、また笑顔で冒険者をしているなんて。リリィ・フラムベルは冒険なんて一生してはいけない、そうでなければ姉に顔向けできない。その言葉には、2年間積もり続けた悲しみと怒りが詰まっていた。
うさぎりんごと、謝罪
リリィは勇気を出して、遺族であるマーガレットの家を訪ねる。どの面下げてまた会いに来たのかと迎えられ、何のお構いもするつもりはないがお茶くらいなら出すと言われる。マーガレットの気持ちを思えば当然のことだと受け止めるリリィ。出されたお茶と、うさぎの形に切られたりんごが、ぎこちない空気の中でかえって印象に残る。
私はレインとガドレーザに行く、自分の過去に何があったのかを確かめてくる。そう告げるリリィに、マーガレットはあなたは私の姉を見捨てて逃げたのでしょうと返す。そうかもしれない、それでも真実が知りたい。今まで大した説明すらできなくて情けなかった、謝りますと頭を下げたリリィは、あの時の仲間を率いていた者として責任を果たすため、ガドレーザにもう一度行くと宣言する。
それならば私も同行してよいかと申し出るマーガレット。姉のためにリリィへのわだかまりは捨てきれないが、姉の最期を自分の目で確かめたいのだという。歓迎するレインと、B級冒険者の彼女が来てくれれば心強いと応じるリリィ。こうしてガドレーザへ向かうパーティが形になった。
まだ早い、という心の声
けれど、マーガレットの本心は別のところにあった。やっとあなたもガドレーザで死ぬ時が来た、ずっとあなたに死んでほしいと思って力をつけてきた。出発の朝、リリィを家に迎えた彼女の胸の内では、その首を切り落としてやりたいという衝動が渦巻いていた。まだ早い。殺すのは、姉を見捨てて逃げたという事実を現場でリリィに突きつけた時。
表向きは同行を申し出ながら、内心では復讐の機会をうかがっている。同じパーティにいる最も危険な存在がマーガレット自身だという構図は、これからの冒険に強烈な緊張感をもたらしている。リリィが真実を確かめた時、マーガレットは何を知り、どう動くのか。物語は一気に不穏な方向へと進み始めた。
COOL DRAGONと、真剣に生きる決意
今真剣なんだ
そんな張り詰めた空気を、最後の最後で吹き飛ばしたのがレインだった。待たせたなと現れたレインは、今まで冗談ばかり言って適当に生きてきた、人生に向き合うことから逃げてきた、それに気づいた今、真剣に生きようと決めたのだと語る。その体を包んでいたのは、COOL DRAGONと大きく書かれた派手な鎧だった。
今真剣なんだと、思わず声をそろえるリリィとマーガレット。気づいたのはいつかと聞けば昨夜だという答えに、この人頭悪くないですかとマーガレットがあきれる。さらに、その鎧は新人冒険者をカモにした悪徳業者のぼったくり詐欺商品で、見た目が派手なだけで能力はほぼゼロ、動きにくさを考えればむしろマイナスだと容赦なく言い切る。そもそもドラゴンを倒す側がクールドラゴンを着ているのもおかしいという指摘まで飛び出し、笑いが止まらなかった。
真面目になろうとしているのだろうけれど、やっぱりバカなんだなというリリィたちの反応に、張り詰めていた空気がふっとほどける。直前まで殺意を胸に秘めていたマーガレットまで、思わずリリィと意見をそろえてしまう。その一瞬に、このパーティがいつか本当の仲間になれるかもしれないという小さな希望が見えた気がした。
第3話のまとめ考察
重い過去と、空気を読まない主人公
第3話は、リリィのトラウマとマーガレットの憎しみという重いテーマを正面から描きながら、それをレインの空気を読まない明るさで包み込む回だった。何も覚えていないリリィ、姉の死を受け入れられないマーガレット。二人の間にある溝は深く、簡単に埋まるものではない。けれど、レインはその溝を飛び越えるように、二人を同じ冒険へと連れ出していく。
マーガレットが抱える感情も、単純な逆恨みとは言い切れない。幼い頃に姉を失い、残された者として2年間を過ごしてきた彼女にとって、笑顔で冒険をするリリィの姿は耐えがたいものだったのだろう。だからこそ、リリィが真実と向き合う決意をしたことは、マーガレットにとっても一つの区切りになり得る。
ガドレーザで二人を待つのは、伝説級の剣レファイドと、2年前の真実。そこで何が明らかになるにせよ、レインの強化付与と空気を読まない言葉が、きっと二人を支えてくれるはずだ。COOL DRAGONの鎧で真剣に生きると宣言したレインが、次はどんなふうに周りを振り回してくれるのか。シリアスとギャグの絶妙な匙加減に、ますます目が離せない。














































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