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魔王軍の偵察部隊に追われ、手負いの仲間を抱えて山中を逃げるロメ隊。自分を置いていけと言うアルにも、ロメリアは誰一人見捨てないと言い切る。逃げるだけでは終わらせないと、本隊そのものを囮にした挟み撃ちの策が動き出す。冒頭では、かつてのアンリ王子と聖女エリザベートの出会いも描かれた。王子と聖女、囮の本隊、そしてアルとレイの反撃まで、第5話を振り返る。




第5話 かつての王子と聖女
回想の中の王子
第5話「勇気と無謀の境界線」は、婚約破棄より前の回想から始まる。魔物から村を救ったアンリ王子は、「君が奴らの習性を見抜いたからだ」、「君の聡明さにはいつも頭が下がる」とロメリアをたたえ、「君の支えがあってこそだ」とまで言う。今のアンリからは想像しにくいほど、ロメリアをまっすぐ評価していた王子の姿がそこにあった。
第1話で婚約を破棄されたロメリアを見ているだけに、この穏やかなやり取りはかえって胸が痛む。ロメリアの聡明さを誰よりも認めていたはずの王子が、なぜあれほど変わってしまったのか。冒頭のわずかな回想が、物語の大きな謎をそっと示しているように感じた。
聖女エリザベート
そこへ現れたのが、「エリザベートと申します」と名乗る少女だった。「王子をお守りすべく救世教会から参りました」という申し出を、アンリは「必要ない帰るがいい」と突っぱねる。間に入ったのはロメリアで、「救世教会一の癒し手だとお聞きしたことがあります」とエリザベートの腕を認め、旅の危険を説いて王子を説得した。
「お前がそう言うのなら」と折れたアンリは、エリザベートを聖女として迎え入れる。ロメリアのほうも、部屋を取りに慌てて駆け出していく。その後ろ姿を見送りながら、アンリが「いつもああバタバタしているんだ」とこぼすのも微笑ましい。エリザベートは「聞いていたよりもずっと」、「親しみやすい方で」、「安心しました」と応じる。
自分が招き入れた相手が、のちに自分の居場所を奪うことになる。そう思うと、ロメリアの気配りがあまりにも皮肉だ。穏やかにほほえむエリザベートの表情も、今となっては何を考えていたのか読めない。王子と聖女とロメリア、三人の関係の始まりを見せる重要な回想だった。この短い場面が、本編のどこで再び意味を持ってくるのか、覚えておきたいところだ。
追われるロメ隊
手負いの撤退
現在に戻ると、ロメ隊は魔王軍の追撃から逃れて山中を進んでいた。前回、自分のせいでアルに大怪我を負わせてしまったレイは、「僕のせいだ」、「僕が軽率なことをしなければ」と自分を責め続けている。その後ろからは、「手負いを引き連れたまま逃げるとは」、「甘い指揮官もいたものです」と、魔族たちがロメ隊を獲物のように追い詰めていく。
「ここで小休止をとります」と隊を止めたロメリアは、木に登って様子を見てほしいとカイルに頼む。「あなたが一番目がいいのでお願いします」。追われる状況でも、一人一人の得意を把握して役目を任せていく。疲れ切った兵士たちを落ち着かせ、「ゆっくり休んでください」と声をかけるロメリアの冷静さが頼もしかった。
魔族との力の差は明らかで、兵士たちの顔には焦りと恐怖がにじんでいる。それでも隊が崩れないのは、ロメリアが慌てずに次の手を考え続けているからだろう。追い詰められたときほど指揮官の落ち着きが部隊を支えるのだと、この場面を見て改めて感じた。
置いていけない
傷が開きかけているアルに、ロメリアは「自生していた薬草です」と薬草を差し出す。ところがアルは「俺を置いていけ」、「足手まといだ」、「みんなを死なせたくない」と言い出す。ロメリアの答えは即座だった。「ダメです」、「みんなにはあなたも含まれています」。
苦い薬草を「よく噛んで飲み込んで」と押し込まれ、仲間に押さえつけられながら飲まされるアルの姿には、張り詰めた空気の中で少しだけ笑ってしまった。自分を犠牲にしようとする仲間を、誰も見捨てない。その小さなやり取りが、このあとの作戦の土台になっていく。
アルが自分を置いていけと言ったのは、仲間を思う気持ちからだ。けれどロメリアは、その優しさを受け入れない。一人を切り捨てて生き延びる部隊は、次に誰かが傷ついたときにまた同じ選択を迫られる。全員で帰るという約束を最初に示しておくことが、兵士たちに最後まで戦い抜く理由を与えているのだと思う。
誰一人置いていかないと言い切ったロメリアの言葉は、ただの優しさではない。全員で生き延びるという指揮官としての意思表示でもある。だからこそ兵士たちは、どれほど不利な状況でもロメリアの作戦に命を預けられるのだと思う。
囮の本隊と挟み撃ち
偵察部隊を倒す策
ロメリアは、追ってくる魔族を「偵察部隊と思われる彼らの目的は」、「進軍の経路を決定するための情報収集だと考えられます」と読む。「つまりあの偵察兵を倒せば」、「本隊が来る可能性を減らせる」。逃げるだけでは終わらせない、反撃のための作戦が動き出した。
魔族は一体一体が人間よりはるかに強い。「ですが数はこちらが上」、「私たちが束になれば魔族に一矢報いることができるはずです」。二人一組の小隊を四つ作り、二つはミレトの街へ援軍を呼びに向かわせる。残る二つで、迂回してくる魔族を背後から挟み撃ちにする計画だった。
次に向かうのは「断崖絶壁に挟まれた道です」。「上は切り立った山肌」、「下は崖」、「前と後ろは細い道」。魔族は正面から力押しせず、「必ず二手に分かれ」、「迂回攻撃を仕掛けてくるでしょう」。そこを「先ほど作った小隊2つで逆に魔族たちを挟み撃ちにします」。地形と敵の思考を読み切った作戦説明に引き込まれた。
この作戦の肝は、まず主導権を握ることにある。「先手を取られれば押し負けます」というロメリアの言葉どおり、ただ迎え撃つのではなく、敵が取りそうな動きを先に読んでそこに罠を張る。剣の腕では魔族にかなわないロメリアが、知恵と準備で戦力差を埋めようとする姿は、この作品の主人公らしい戦い方だと感じた。兵士たちの不安げな問いかけに一つずつ答えていく丁寧さも、隊の信頼を集める理由なのだろう。
怪我人としてミレトへ送られるはずだったアルは、「俺は残るぜ」と首を振る。「今の話じゃ、本隊は囮ってことだろ」、「なら怪我人引き連れて、それらしく見せないといけないだろ」。「うちの隊長は、言い出したら聞かないですよ、ロメリア様」と仲間に言われては、ロメリアも受け入れるしかない。
レイへの言葉
本陣前の配置で、ロメリアはレイを呼び寄せる。「あなたには敵の正面を担当してもらいます」。死を覚悟したような返事をするレイに、ロメリアは「違いますよ」と首を振り、「私ってそんな命令をするような人間に思われてるのね」と少しだけ素の顔を見せる。
「私はあなたを信頼するし」、「あなたも周りを信用する」、「それぞれがそれぞれの役割をこなす」、「それでいいんです」。そして「決して一人で戦うわけではない」。前回、一人で飛び出してアルを傷つけてしまったレイにとって、これ以上ない言葉だったと思う。
アルも「俺より目立つな」と軽口を叩き、「俺らはいつも一緒だろ」、「不安そうな顔するなよ」という言葉が続く。勇気と無謀の境界線という副題の意味が、ここで見えてくる。一人で突っ込むのは無謀で、仲間を信じて自分の役割を果たすのが勇気なのだ。作戦前の休憩で、ロメリアがふと口ずさむ鼻歌に隊がなごむ場面も、この回の大切な余白になっていた。
第5話のまとめ考察
アルとレイの反撃
魔族の襲撃は、ロメリアの読みどおり二手から来た。ところが数が合わない。「数が足りない」、「上から来る」。崖の上から現れた魔族の手は、ロメリアにまで迫る。指揮官が危険にさらされたその瞬間、次々と仲間に指示を飛ばして陣形を立て直したのはレイだった。
アルとレイは二人がかりで小隊長に立ち向かう。「小隊長の攻撃を防ぎますか」、「やりますね」と余裕を見せる相手に、深手を負いながらも「それでも倒す」、「当然」と食らいつく。極限の中でアルの剣には炎が、レイの剣には風が宿り、二人は魔法の力を目覚めさせて小隊長を打ち破った。
第4話で魔法の適性が分かったものの、使いこなすには長い特訓が必要だと言われていた二人。その力が、仲間を守りたい一心で土壇場に開花する展開は、まさに燃える場面だった。一人で突っ走って仲間を傷つけたレイが、今回は仲間に指示を出し、アルと並んで戦い抜いた。その姿こそが、副題が示す勇気の答えなのだと思う。魔法の覚醒は都合のいい展開に見えるかもしれないが、そこに至るまでの積み重ねがあるからこそ素直に熱くなれた。
引き返してきた仲間
戦いのあと、倒れていたロメリアは「大丈夫です みんなは」と真っ先に仲間の無事を尋ねる。返ってきたのは「無事です」、「どうやら風向きが変わったようです」という言葉だった。さらに、ミレトへ向かったはずの小隊まで、ロメリアを置いていけないと引き返してきていた。
命令に背いたとも言える行動だが、それはロメリアが示した、誰一人置いていかないという姿勢が隊全体に広がった証でもある。ロメリアを囲んで次々に名前を呼ぶ兵士たちの姿に、ロメ隊が本当の意味で一つになったことを感じた。
振り返れば、この回の勝利は誰か一人の力によるものではなかった。木に登って敵を見張ったカイル、背後から挟み撃ちを仕掛けた小隊、怪我を押して囮役を買って出たアル、陣形を立て直したレイ、そして引き返してきた仲間たち。それぞれがそれぞれの役割を果たした結果として、ようやくつかんだ勝利だった。作戦前にロメリアがレイに伝えた言葉が、そのまま隊全体の姿になっていたのが印象的だ。
第5話は、ロメリアの指揮と兵士一人一人の働き、そしてアルとレイの覚醒がかみ合って勝ち取った辛勝の回だった。チートで敵をなぎ倒すのではなく、地形を読み、数で補い、仲間を信じて生き延びる。その泥くさい戦い方こそがこの作品の魅力だと改めて思う。
一方で、冒頭の回想が示したアンリ王子とエリザベートの出会いは、まだ多くの謎を残している。ロメリアを認めていた王子と、彼女が招き入れた聖女。ロメ隊が強くなっていく裏で、かつての仲間たちとの因縁がどう描かれていくのかも気になるところだ。




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