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実体のないデータ集合体だと分かったEDVA。攻撃が通じない敵を前に、明たちは食料を求めて有人島へ降り立つ。そこで出会ったのは、出産間近の猫を見守る心優しい少女マーシャだった。父から受け継いだENIAへの想い、崖崩れから少女を守るため迷わずENIAを起動させた明、そして核ミサイルを宇宙へ押し上げた決断まで、第6話を振り返っていく。




実体のない敵とENIA
なぜENIAを欲しがるのか
『バーテックスフォース』第6話「間違いじゃない」は、前の話で明かされた衝撃の事実を整理するところから始まる。EDVAは実体のないデータ集合体で、人類を全滅させたいのに自分では攻撃できない。だからENIAを奪って融合したい。けれど「EDVAはデータの集合体で攻撃能力がないんですよね」、「でもそれって、こっちの攻撃も効かないってことなんじゃ」という陽子の指摘どおり、こちらの攻撃もすり抜けてしまう。
アランは「ENIAと融合して実体を得るってことは攻撃も受けることになるだろう」、「それって弱点じゃねえか」と疑問を口にする。それでもENIAを欲しがるということは、「ENIAにものすごい力が隠されてるって考えるのが普通だよ」。敵の狙いが分からないまま戦い続ける不気味さが、序盤からじわじわと伝わってきた。
攻撃が通じない相手に、どう立ち向かえばいいのか。仲間たちが口々に意見を出し合う場面は、この作品の戦いが単純な力比べではないことをよく表している。敵の正体が分かったことで、かえって勝ち筋が見えなくなってしまった。その閉塞感の中で、明が何を選ぶのかが、この回の大きな見どころになっていく。
お父さんから受け継いだ大切な絆
いっそENIAを渡してしまえば、実体化したEDVAを殴れるのではないか。そんな乱暴な案まで飛び出す中、明ははっきりと「渡したくありません」と答える。「ENIAは僕がお父さんから受け継いだ大切な絆なんです」。父の思い出がまったくない明にとって、ENIAは父とつながる唯一のものだった。「お父さんから地球を守れって言われた気がしたんです」という言葉に、明がこの戦いを背負う理由が詰まっていた。
父の顔も声も覚えていない明にとって、ENIAはただの兵器ではない。顔も知らない父が、自分に何かを託してくれた証のようなものだ。だからこそ、合理的に考えれば渡してしまった方が楽だとしても、明はその選択肢を受け入れられない。理屈ではなく気持ちで答えを出す明の姿が、あとで描かれるEDVAの論理と見事な対比になっていた。
有人島での出会い
マーシャとルル
エネルギー切れが迫り、一行は食料を求めて有人島に降りる。ダイバーやサーファー向けの観光地だが、パワーダウンの影響で定期便は止まり、島民は全員本土に避難しているはずだった。誰もいない商店で食料を調達しようとしたところに、「私の店に何の用だ」と現れたのが店主のワヤン。そして娘のマーシャだった。
マーシャが島に戻ってきたのは、「ルルが心配で戻ってきたの」。ルルは島に住みついた猫で、「ルルはもうすぐママになるの」。避難の船に乗せようとしたら逃げてしまい、台風で見に来られなかったのだという。「生まれるまでそばにいてあげるからね」という優しい言葉に、マーシャの人柄がにじんでいた。猫型のアランに「アランちゃん撫でていい」と目を輝かせる姿もかわいらしい。
避難するよう言われても、小さな命を放っておけずに戻ってきてしまう。大人から見れば無茶な行動かもしれないが、マーシャのまっすぐな優しさは、この回の明の行動とも重なっていく。誰かのそばにいたいという気持ちの尊さが、マーシャを通して丁寧に描かれていた。島の穏やかな景色と、出産を待つ猫を囲む時間は、張り詰めた戦いの合間に訪れた、ほっとするひとときでもあった。
親のことを聞かれた明たちは、「私たちはみんな一人親でね」と打ち明ける。「僕らは死んだお父さんやお母さんに代わって」、「どうしてもやらなきゃいけないことがあって」、「そのための旅なんです」。正体は明かせないまま、それでも嘘をつかずに旅の目的を語る明の誠実さが印象に残った。
パワーダウンで人が姿を消した世界で、明たちが出会うのは、ほとんどがEDVAが送り込んだ敵ばかりだった。だからこそ、ワヤンとマーシャという普通の父娘との出会いは新鮮に映る。守るべき人類というものが、顔のある誰かとして目の前に現れた。この出会いが、明の戦う理由をよりはっきりとしたものにしていく。
人類は決して欠陥なんかじゃない
倉庫へ向かう仲間たちに「ENIAは絶対に出すなよ」、「EDVAに気づかれるからな」と念を押され、明はマーシャとルルのそばに残る。「こういう時は何もしない方がいいんだって」と教えるマーシャは、「島に来たって何もしてあげられないけど、それでもそばにいてあげたかったの」と話す。「マーシャは優しいね」と返す明の頭に浮かぶのは、人類を欠陥生命体と断じたEDVAの言葉。「人類は決して欠陥なんかじゃない」、「お前は間違ってる」。マーシャの優しさが、明の確信を強くしていく。
一方、倉庫へ向かった仲間たちは、台風の被害で道をふさがれていた。勢いでエンジンを出してしまった仲間に、「明にENIA出すなって言っといて何してんのよ」と突っ込みが入る。緊張感のある展開の中に、こうした掛け合いが挟まるのがこの作品らしい。
マーシャたちは僕が守る
迷わずENIAを
そのとき、崖崩れが店を襲う。ルルを動かせないまま、崖崩れに飲み込まれそうになるマーシャ。「こんな時に出さないで」、「いつ出すんだ」。明は迷わずENIAを起動させた。崖崩れが来なかったのは、店のまわりだけ。マーシャもルルも無事で、「でもルルもお兄ちゃんも無事でよかった」と笑ってくれる。
けれど、ENIAを出したことでEDVAに居場所が知られてしまう。現れたバトノイドに、明は「ENIAアクティベーション」、「マーシャたちは僕が守る」。ところがEDVAは「動けば後ろの少女と愛玩動物に当たりますよ」と、マーシャたちを盾に取る。「マーシャたちは関係ないだろ」と叫ぶ明に、返ってきたのは「合理的なだけです」という冷たい言葉だった。
痛みなんかに負けるな
ENIAは傷つかなくても、装着している明は耐えがたい苦痛を味わう。苦痛で意識を失えば、ENIAを回収できるという狙いだ。「負けるな 痛みに負けたら 精神を奪われる」、「そしたらマーシャもルルも人類も終わりだ」。反撃も逃げることもできず、ただ耐えるしかない明の姿に、見ているこちらまで思わず歯を食いしばってしまった。
EDVAのやり方は、どこまでも合理的で、どこまでも冷たい。相手を倒すのではなく、痛みで心を折ってENIAだけを奪う。少女と猫を盾にするのも、それが最も効率がいいからにすぎない。そこに悪意すら感じられないのが、かえって恐ろしかった。
異変に気づいた仲間たちも、正体が知られるのを承知でエンジンを始動させ、駆けつける。「エンジンを隠してる場合じゃないですよ」。一方、EDVAは明を「間違っています 論理が破綻しています」と断じ、「あなたの間違いを 少女の死をもって証明させましょう」とマーシャに狙いを変える。明の叫びは「欠陥じゃない」、「間違ってもいない」、「間違っているのはお前だ」。そして「死なせない!」。ENIAはモードチェンジを遂げ、バトノイドを打ち破った。
副題の「間違いじゃない」は、まさにこの場面の明の叫びそのものだった。小さな命を守るために自分を危険にさらすことを、EDVAは論理の破綻と呼ぶ。けれど明は、それこそが人類の価値だと体を張って示してみせた。
人間らしい感情を欠陥と呼ぶEDVAに対して、明はその感情こそが自分を強くすると証明してみせた。誰かを守りたいという気持ちが、ENIAの新たな力を引き出したようにも見える。明とENIAの関係が、ただの装着者と装備から、一緒に成長していく相棒へと変わり始めているのかもしれない。
第6話のまとめ考察
私も毎日お祈りするね
戦いのあと、ルルは無事に子猫を産んだ。「明お兄ちゃんのおかげだよ」と喜ぶマーシャに、明は「いや僕はただ夢中で」と照れる。エレノアの「まあ ちょっとは使えるかな」に素直に喜ぶ明もかわいらしい。明たちはワヤンとマーシャに、自分たちが何者で、地球に何が起きているのかをすべて話した。
「正直 まだ信じられん」と言うワヤンに、マーシャは「信じるよ」、「お兄ちゃんのロボットが私とルルを守ってくれたんだもん」。そして「私も毎日お祈りするね」、「EDVAなんかに負けないで」。人類の未来をかけて戦う子どもたちに、何もしてやれないと悔やむ大人と、ただ祈ると約束する少女。人の姿がほとんど見えないこの世界で、守るべき人の顔が初めてはっきりと描かれた回だった。
核ミサイルを宇宙へ
ところが島を離れた一行の前に、再びEDVAが現れる。「データでしかないお前は 何もできないんだろ?」と挑発された答えは、核ミサイルだった。「私が何もできないわけではないと証明してあげます」、「これから起こることは」、「あなたたちの抵抗がもたらしたものです」。明はミサイルにしがみつき、軌道を変えて宇宙へと押し上げる。核爆発の衝撃波を、衝撃波で防いでみせた。
実体を持たないEDVAにとって、核ミサイルは自分の力を示すための手段にすぎない。人類の兵器を、人類を滅ぼすために平然と使う。その発想の冷たさに背筋が凍った。そして、そんな脅威を前にためらわずに飛び出していく明の姿は、もはや守られる側の少年ではなく、仲間と地球を守る戦士そのものだった。ENIAの力がどこまで引き出せるのか、その可能性の大きさも同時に感じさせる場面だった。
第6話は、守るべき存在を得た明が、ENIAを自分の意思で使いこなし始める回だった。父から受け継いだ絆を手放さず、小さな命を守るために迷わず力を使う。その選択をEDVAは間違いと呼ぶが、明は真正面から否定してみせた。核ミサイルまで持ち出してきた敵に対して、有効な攻撃手段はまだ見つかっていない。明の成長を見て満足げにも見えるEDVAの狙いも含めて、この先の展開からますます目が離せない。




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