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サブタイトルは「初めてのデート」。打ち上げ花火を買いに行く、冬月との初デート回だ。「普通」がわからないと悩んで出発した空野は、ぎこちなく距離を詰めながら、カフェで意を決して目の見え方を尋ねる。返ってきた答えが「白に似た透明なもやの中」という、まさかのタイトル回収だった。歩きスマホに怒った声から、水上バスで授与された優しさライセンス2級まで、爽やかな第4話を振り返る。




出発前、「普通」がわからない
チキンチキンチキン
デート当日の朝。女子に会う前にシャワーを浴びただけで「こんなウブに見えるって、ほんま羨ましいで」と、寮では鳴海がからかい放題だ。「どこが好きなの」「好きとかちげーし」。あげく空野が、冬月に付き添いを頼まれた外出に鳴海も誘おうとすると「うわチキン」と一刀両断。「ソラノって冬月と付き合いたいんちゃう?」と直球を投げられても、「ただ話すってだけで、そんなの考えたことないし」とかわすのが精一杯である。
チキンチキンと連呼されて「食べたくなってしまった」とぼやきながら待ち合わせへ向かう空野だが、内心は笑い事ではない。目が見えない人と付き合うなんて直感的に大変そうだ、と冬月を恋愛対象として見ないことにしてきた自分。それがどれだけ失礼なことかはわかっている、という自覚まで込みで、この主人公は正直だ。
「その普通っていうのがわかんないんだよ」
空野の悩みは具体的だ。未だに目のことをどう扱っていいかわからない。目のことに触れずに会話をすべきなのか。歩きやすい道を選んであげるのがいいのか。手を添えたほうがいいのか。それとも全部質問するのがいいのか。「普通にしたらええんちゃん」と言う鳴海に、「その普通っていうのがわかんないんだよ」。聞けばいいと言われても、微妙な空気になるのが嫌なのだ。
鳴海は自分の経験から、そうやって遠慮して距離を取ると、距離を置かれる方がきついのだと返す。茶化しながらも急所だけは外さないルームメイトで、この会話が最終盤の伏線としてきれいに回収されることになる。
待ち合わせから、透明なもやまで
「もう2時間は待ちました」
待ち合わせでの第一声から、冬月のペースだ。「お待たせ」「待たせた?」「もう2時間は待ちました」「それは冬月が悪くない?」「いえ、カケル君のせいです」「え」「冗談ですよ」。歩き出せば「月島駅はこっちだから」「こっちって?」と早速つまずく。指を指しても冬月には伝わらない。「ごめん、左手に進むよ」と言い直すところから、空野のデートは始まる。上機嫌でスキップする冬月に「え、スキップできるの?」と驚けば、「カケル君だって目をつむってスキップぐらいできるでしょ」と笑われた。
地下鉄では空いている方へ「右の方は人がいないよ」と誘導し、「カケル君って紳士なんだなって思っちゃいました」と言われて「ち、違う」と赤面。混んできた車内でさりげなく壁になれば「守ってくれてありがとうございます」と見抜かれ、「疲れた?」「平気ですよ」「僕は疲れたよ」と本音がこぼれる。そして事件は降車後に起きた。歩きスマホの通行人が冬月にぶつかり、チラ見だけして去ったのだ。思わず声を荒らげる空野を、当の冬月が「いいんです。よくあることですから」「きっと大事な人から連絡が入ったんですよ」「声が尖っていますよ」となだめる。怒る側と受け流す側が逆で、彼女がこの種のことをどれだけ浴びてきたかが透けて見える、静かに刺さる場面だった。
カフェで聞いた、「白に似た透明なもやの中」
一息つきに入ったカフェは、まさかの早瀬優子のバイト先。「ゆうこちゃんだ」「コハルちゃん」と盛り上がる横で、空野は気恥ずかしさから注文を早口で済ませて「そんなに急いでオーダーしなくていいじゃん」と突っ込まれる。「いつからそんなに仲良くなったの?」「カケル君っていつもブスッとしていませんか?」「いや、今はニヤついてるよ」という優子の暴露も小気味いい。メニューが見えない冬月に品を読み上げ、届いたミルクティーは「正面にあるよ」と位置で伝える。「一口、食べる?」「アーンってしてくれるんですか?」「いやだ」「ケチ」の距離感も、もう初対面のそれではない。
そして空野は意を決する。「言いたくなかったら言わなくて大丈夫なんだけど、その、目が見えないってどういう見え方なの? 暗闇だったりするの?」。冬月の答えはこうだ。「真っ黒って思われがちですけど、私の場合逆です」「白に似た透明なもやの中っていうのでしょうか」。タイトルの「透明な夜」がここで像を結ぶ。朝の空野なら飲み込んでいた質問を口にできたこと自体が、この回の一番の前進だと思う。
花火専門店と、水の上の帰り道
予算100万、冬月財閥の買い物
目当ての花火専門店は圧巻の品揃えで、ここでも空野の実況が冴える。打ち上げ花火は右手の棚、一番人気は連発系で10連発から30連発まで。「せっかくだから一番多いのがいいですね。30連発にしましょう」。ピューッと鳴って炸裂する鳴り物系に、手筒にすすきに線香花火。「できる限り、いろんな種類を買いたいんです」と大人買いする冬月の口上は「予算は100万」「冬月財閥をなめないでください」である。荷物は「大学であげられるかもだし、寮に置いていた方が近いから」と空野が引き受けた。
「花火も買ったし、これからどうする?」「え? まだデートしてくれるんですか?」「だからデートじゃん」。第3話では「デート」の一言に飛び上がっていた男が、さらりと言ってのけるのだから成長したものだ。この量の花火を持ってうろつくと危険物所持で警察に止められるかも、「この場合だと冬月が主犯でしょ」と軽口も飛び出し、内心では「だんだん冬月を笑わせるのが楽しくなってきた」と認めている。
「それを普通と言えるのは、優しさライセンス二級レベルですよ」
帰りは冬月の提案で水上バスに。浅草から隅田川を通ってお台場まで走る便に昔乗ったことがあり、月島の辺りまで帰れるからぜひ、という。地元では門司港行きのフェリーが通っていた空野は、東京にもあるのかと調べて、蔵前橋の先の両国に乗り場を見つけた。「調べてくれて優しいなーって」「いやいや、普通でしょ?」「それを普通と言えるのは、優しさライセンス二級レベルですよ」。朝あれほど「普通がわからない」と悩んでいた男が、夕方には「普通でしょ」と言える側にいる。この一往復に、第4話の全部が詰まっている。
狭くて揺れる屋上デッキへの階段では、迷った末に「手、貸して」。朝の「手を添えたほうがいいのか」という問いに、体が先に答えを出した格好だ。「カケル君の手って本当温かいですね」「いいから、足を打ったら痛いよ」。照れ隠しまで含めて満点である。
「初めてのデート」まとめと考察
「その青色が水面に映っていて、すごく綺麗」
デッキで風を受けながら、冬月は「楽しいですよ、こんなことしてもらえるとは思っていなかったので」と笑う。空野は「僕でいいならいつでも付き合うよ」と言いそうになって飲み込んだ。冬月となら、もっと関わってもいいと思ったのか。自分でもよくわからない、という独白がいかにも彼らしい。沈黙に気づいた冬月が「綺麗ですか? しばらく黙ってるから、見とれてるのかなって」と水を向けると、実はまだ目が見えていた頃、たぶん同じ場所で景色を見たことがあり、その景色を思い出していたのだと明かす。その時の空は、曇っていた気がします、と。
空野の返事がいい。「今日はすごく晴れていてさ、空も青いんだよ。その青色が水面に映っていて、すごく綺麗」。「見えない私にそういうことを教えてくれるって、優しいですね」「今日、優しさライセンス2級を与えられたからな」。一人では味わえない経験をくれた相手への、どちらのものともつかない静かな感謝で第4話は幕を閉じる。
「透明な壁」が消えていく
振り返れば、この回は冒頭の悩みが片端から回収されていく構成だった。道の選び方は「左手に進むよ」に、手を添えるべきかは「手、貸して」に、聞いていいのかは「どういう見え方なの?」に。ネットの反応でも、アバンが第1話の「透明な壁」の悩みをリフレインしているという読み解きが出ていた。壁が消える描写はないのに、立ち上がる空野に日が射すという絵の変化でそれを見せてくる回でもある。
一方で、気に留めておきたい台詞もある。花火がしたいと強く思うようになったのは目が見えなくなってからで、理由は「頑張りたいって思うんですよね」という冬月の言葉だ。何を頑張りたいのかは、まだ語られない。買い込んだ30連発をいつ、どこで打ち上げるのか。花火研究会との絡みも含めて、物語はここから本題に入っていくはずだ。




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