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サブタイトルは「騎士狩猟祭、前夜の町で」。開幕前夜のキールを舞台に、アルノルトとフィーネのお忍び露店デートが描かれる第4話だ。皇帝から賜った蒼いカモメの髪飾りがモンスターに盗まれる事件の一部始終に加え、冒頭では本に封印された老魔術師の正体、亡き皇太子ヴィルヘルムをめぐる不穏な推理、そしてハーメルの笛と、後半戦の爆弾が一気に顔を出す。ほのぼの回の皮をかぶった情報回を振り返る。




封印された老魔術師と、忍び寄る影
「よく飽きないな、爺さん」タブーの元凶
冒頭は、第3話ラストに現れた謎の老人との会話から。彼の正体は、魔道研究の果てに悪魔に体を奪われ、本に魂を封印された老魔術師だった。体を乗っ取った悪魔が帝都を荒らしまくったせいで、皇族が古代魔法を使うことはタブーになった。つまりアルが力を隠さねばならない元凶がこの爺さんである。当人は「わしが封印されていたからお主は古代魔法を学べたのじゃぞ」と開き直り、シルバーの銀仮面も自分の秘蔵品だと恩を着せる始末だ。
相談は、弟が帝位争いに巻き込まれた件。爺さんは「優秀ならばいずれ巻き込まれる。それが帝位争いじゃ」と切り捨てた上で、戦死した長兄、皇太子ヴィルヘルムに話を移す。帝位争いを独走していた皇太子が戦死するなどおかしな話。暗殺の痕跡がなかったのなら、よほど巧妙か「もしくは皇帝自身が関わっているか」。お前ならレオナルトが戦場に出れば命を賭してでも守るだろう、そう思う者は多かったはずなのに守れなかったのなら、陰謀の影が見えてくるという理屈である。
ほのぼの前夜祭かと思いきや、冒頭からとんでもない爆弾だ。「わしも幾度も暗殺の危機にさらされた」という口ぶりも、この爺さん自身がかつて皇族だったことを匂わせていて気になる。
ハーメルの笛と、ザンドラの刺客
もうひとつの相談は、帝国で増え続けるモンスターについて。誰かが操っているのではというアルの読みに、爺さんは広範囲でモンスターを操る魔法は存在しないが、道具ならあると答える。古代の魔道具ハーメルの笛。使用者の魔力次第でかなり広範囲のモンスターを誘い出せる代物で、防ぐには壊すしかない。これが敵の手にあるなら騎士狩猟祭に勝ち目はなく、しかもモンスターの増加は狩猟祭の発表より前から。つまり黒幕は狩猟祭とは関係なく、モンスターで何かする気だったことになる。
一方、キール入りを前にしたアルのもとには刺客が現れる。「安心しろ、殺しはしない。だが残念ながら騎士狩猟祭には参加できなくなる」。エルナのおかげで図らずも優勝候補になったアルを、開幕前に潰す算段だ。だが刺客の体はすでに動かない。「どうした、動かないのか。それとも動けないか」「無能な出涸らしじゃなかったのか」。仲間の3人はセバスが捕縛済みで、刺客の台詞をそっくり返す「安心しろ、殺しはしない。だが質問には答えてもらおう」が実に痛快だった。
追い詰められた刺客は「喋ってはいないのです」とうわ言のように繰り返しながら、ザンドラの名を漏らす。「恐怖で縛りつけるあたり、あのお方らしいですな」とセバス。ただ、このタイミングで仕掛けてきた以上、ザンドラはモンスターの件については白。となると笛の主はゴードンかエリクか、はたまた。刺客たちを「後で使えるかもしれない」と監禁したところへ、セバスから「エルナ様にいじめられ、失礼、しごかれている間に」開催地が発表されたとの報せが届く。予想通り、モンスター被害が甚大な帝国東部最大の都市キールだった。
キールの街で、お忍び露店デート
「私は平凡な少女ですよ」眼鏡の魔術
舞台はキールへ。前日には皇帝ヨハネスが到着し、皇子や皇女も続々と街入りして、狩猟祭前夜の街は大賑わいだ。根を詰めすぎのアルに羽を伸ばしてほしいと、フィーネが露店巡りに誘う。アルが用意したのはちょっとした魔術がかかった眼鏡。よく知らない者からは、かけたフィーネが平凡なただの少女に見える。帝国一の美女と名高い蒼鴎姫がそのまま歩けば騒ぎになるからだが、当人は「私は平凡な少女ですよ」とすまし顔である。
「全店制覇しましょうね」と意気込んだフィーネは、案の定すぐ満腹に。「残すのは作ってくれた方に悪いじゃないですか」「公爵家の令嬢とは思えないセリフだな」。実は子供の頃、同い年の子たちが楽しげに露店を巡るのを遠くから眺めるだけだったという。「無理するな。露店を見て回るだけでも結構楽しいぞ」と、さりげなく歩調を合わせるアルがいい。2度目のデートで2人の距離がぐっと縮まる、と原作ファンも太鼓判の場面が続く。
勤勉な弟と「出涸らしの兄貴」
街では仕事中のレオナルトと遭遇する。昨日までキール近辺の村や町を視察していたといい、「さすがレオ。俺と違って勤勉だ」とアル。街の人々は「もしやレオナルト様では」と色めき立ち、「では一緒にいるのが噂の双子の、出涸らしの兄貴か」「し、声がでかい」というやり取りに笑わされる。「そっちはデート?」「そう見えるか」「微妙かな」という兄弟の応酬も軽妙だ。
レオによれば、街では窃盗が多発しており、各騎士隊が捜査と警備に駆り出されているという。狩猟祭で騎士が街に溢れるこの時期に、皇帝に喧嘩を売るような犯行だ。エルナもどこかで警備に当たっているはず、という情報が終盤のオチに効いてくる。
蒼いカモメの髪飾り、盗難事件
けしからん犯人、ブレッド
そんな最中、一行は小動物型のモンスターブレッドを見かける。生息域は大陸西部のはずが、なぜ東部のこの街に。首をかしげる間もなく、ブレッドはフィーネの服の中に潜り込み(「手を突っ込むわけにもいかないだろ」)、皇帝から賜った蒼いカモメの髪飾りを奪って逃げてしまった。「やられたね」「やられちゃいました」とレオはのんきだが、アルはすぐに見抜く。ブレッドを使うのが窃盗犯の手口で、狙いは貴金属ばかりだと。
陛下に事情を話せば、フィーネを責めるどころか自ら犯人捜しに乗り出しかねない。余計な騒ぎを避けて自分たちだけで探すと決めたアルに、フィーネは「アル様に息抜きをしてほしくて誘ったのに、また迷惑をかけて。私なんて…」と沈む。返した言葉が「君がいてくれた方が気が楽だ。だからすぐに見つけてやる。安心しろ」。この回のベストシーンだと思う。もっともネットの反応は、服の中を這い回る「けしからん動物」への羨望一色だったが。
蓄音石のトリックと、手柄はレオへ
アルの捜索は理詰めだ。探すのは「ブレッドじゃない。ブレッドを呼んだもの」。服に潜り込ませ、貴金属を狙わせるまでは訓練でどうにかなっても、離れた場所へ持ってこさせるのはハードルが跳ね上がる。かといって犯人が現場近くに潜むなら、最初からブレッドなど使わない。ならばトリックがある。答えは蓄音石。溜め込んだ音を定期的に発する石にメスの声を溜め、一定間隔で置いておけば、オスを目的地まで誘導できるという寸法だ。「つまりあの子は、お相手へのプレゼントとして髪飾りを取ったんですね」。求愛の習性を悪用した窃盗に、フィーネは「いたいけな子たちを利用してるのか。ひどいです。許せません」と憤る。
石をたどって本拠地を突き止めると、騎士の招集はレオの役目。見つけたのはアル様なのに、と悔しがるフィーネに、アルは「俺じゃ騎士が動かない。逃がしたら困るだろ」「別にいいじゃないか。レオが持ち上げられるなら帝位争いには有利だ」と涼しい顔だ。街はさっそく「レオナルト様が見つけたそうだ」「さすが」の大合唱である。髪飾りの回収では「窃盗品には触れてはいけない決まり」を、レオが、父上の贈り物が盗まれたと知れれば警備の騎士の首も無事では済まない、話が漏れて困るのは君たちだ、と搦め手で黙らせた。フィーネの「この子たちは森に返してあげてもらえますか」というお願いに騎士が競って手を挙げる幕切れまで、兄弟それぞれの人の動かし方が見える良い場面だった。
「騎士狩猟祭、前夜の町で」まとめと考察
「私がちゃんと記憶しておきます」
事件解決後のフィーネの台詞が、この回の白眉だろう。「私、アル様の活躍が世間に知られなくても平気です。だって私が知っていますから。アル様が優秀でかっこいいことは、私がちゃんと記憶しておきます。これからもずっとです」。世間の評価と無縁の場所でアルを見ていてくれる存在の重みは、手柄をレオに譲った直後だからこそ際立つ。直後に「いつか本を出します。アル様の活躍を帝国中の人々に余すことなく伝えます」「それはしなくていい」「します」「だからしなくていいって」と漫才に落とすバランスも見事だ。
ラストは、喧嘩の仲裁に入って絡まれたエルナが「謝って済むなら騎士隊はいらないのよ」とお灸を据える一幕。アルは「関わり合いになりたくない。それに明日からの騎士狩猟祭で嫌でも一緒にいることになるからな」とそっと迂回し、「露店完全制覇といきましょう」と2人の露店巡りに戻って幕となる。
前夜に仕込まれた伏線
本編に影響のない前日譚、という辛口の声もあったが、情報量はむしろ今期随一だ。皇太子ヴィルヘルムの戦死には陰謀の疑いがあり、皇帝の関与すら否定できないこと。ハーメルの笛が敵の手にあれば、狩猟祭は真面目にやるだけ無駄になること。モンスターの増加は狩猟祭の発表前からで、黒幕の狙いは祭の外にあること。刺客の一件でザンドラは白と判明し、容疑がゴードンとエリクに絞られつつあること。後半戦の火種はこの30分でほぼ出揃ったと言っていい。
モンスターを道具のように操って盗みを働く窃盗団の手口が、ハーメルの笛の脅威とどこか重なって見えるのも意味深なところ。西部の生き物であるブレッドが東部にいた違和感も含め、キールの街は開幕前からきな臭い。次回はいよいよ騎士狩猟祭が開幕。眼鏡のフィーネと露店の平和が、どうか長続きしてほしいものだ。




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