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第18話はまるごと夜の国の視点で進む。自白ゲームで昼の国の策が筒抜けになったヨコヤが、まず「秋山が嘘を語っている可能性もある」と疑い、策に乗ったふりをして夜の国にマネーを隠すという手を打った。狙いはアキヤマの反応で真偽を見極めることだったが、返ってきたのは「何の動きもありませんでした」という報告だけである。




「昼の国の策」が、全部読まれていた
19億1000万をめぐる二重の嘘
第18話は、ヨコヤによる状況の整理から始まる。まず前提として、彼は昼の国の3人に夜の国のマネー全額19億1000万を運ばせる作戦を成功させていた。「間抜け3人は僕が精査して選りすぐった自信の3人」という言い方に、この男の性格が出ている。
ところがアキヤマは、運ばせたマネーを昼の国ATMに入れず、どこかに隠したと宣言した。マネーの出入りはコンピューターで完全管理されているので、隠したのが本当なら19億1000万は昼の国ATMの夜の国口座に入っていることになる。
そのうえでアキヤマが3人に持ちかけたのが、逆向きの裏切りだった。今度は夜の国ATMにあるマネー全額を昼の国ATMに運ばせるという策である。「俺たちと同じことを」という声が上がった。
手順まで筒抜けになっている。昼の国側があらかじめ全額を集めた口座を作り、そのカードをどこかに隠す。密輸人がガラス越しにカードを提示したら、アキヤマが隠し場所を教える。見つけて引き出し、昼の国ATMに入金してカードを返す。「柴山さんの供述とも一致するので、この策をやってくるのは間違いありません」。前回の自白ゲームが、ここで完全に効いている。
「僕はね、秋山が嘘を語っている可能性もあると思うんですよ」
普通ならここで対策を打って終わりだが、ヨコヤは一段深く疑った。「僕はね、秋山が嘘を語っている可能性もあると思うんですよ」。つまり19億1000万は隠されておらず、本当に夜の国ATMに入っているのではないか、ということである。
「実際は俺たちの作戦通りってことですか」と聞かれても断定はしない。「あくまで可能性があるという話。我々は両方の可能性を睨んで作戦を立てる必要があります」。
ここがこの回のいちばん重要なところだった。相手の策が全部わかっている状態で、なお「その情報自体が嘘かもしれない」と疑う。自白ゲームという非人道的な手段で得た情報を、ヨコヤ自身が信用しきっていない。
サブタイトルの「警戒」は、まさにこの姿勢を指している。前回まで支配の話をしていた男が、今回は一貫して自分が握った情報を疑うことに時間を使っている。
乗ったふりをして、夜に隠す
廊下の突き当たりに隠す、という手順
打ち出した方針が「まずは向こうの申し出に乗りましょう」だった。ただし本当に運ぶわけではない。「運ぶふりして、今度は私たちがマネーを夜の国に隠します」。
手順はこうである。夜の国ATMからマネーを下ろして運ぶところまでは同じ。しかし昼の国ATMには入れず、検査ルームを通り過ぎて廊下の夜側の突き当たりに隠す。検査ルームでは作戦を実行した顔をしてカードを返し、検査終了後に隠した大金を夜へ運び入れる。
要するに、アキヤマがやったと主張していることを、そっくりそのまま夜の国側がやるという構図になる。「できますかそんなこと」という疑問に対して、これができなければアキヤマの発言はハッタリだった、という判定にもなるのが上手い。
画面には残高の表が出るが、実際の残高と相手が思っている残高の二重帳簿を追うことになるので、ネットの反応でも「一時停止しては戻して見返してを繰り返す」という声が並んでいた。
「その言葉を吐いたらこっちのもの」
嘘か本当かをどう見分けるのか。「分かりますよ」と即答したヨコヤの理屈が見事だった。
もしアキヤマがハッタリを言っていたなら、彼は自分から事実を告白せざるを得ない。一度運ばせただけではまだ拮抗にしかならないので、もう一度19億1000万を運ばせなければゲームを制することができないからである。「だから必ず、もう一度運んでくれと頼むはずです」。
そして「その言葉を吐いたらこっちのもの」。マネー所有額で夜の国が圧勝していると確定するので、あとは第三国口座でわざと負けて負け抜けすればいい。しかも「秋山にはもう一度運ぶと嘘をついておきます。しかし3人には二度と密輸人を担当させません」という念の入れようだった。
逆に何も言ってこなければ、昼の国は本当に隠していたことになる。その場合も夜の国はほぼ同額を隠しているので拮抗で、しかも昼の国は自分たちが圧勝していると勘違いしている。相手が負け抜けを狙って第三国口座を動かすのに便乗すればいい。
どちらに転んでも勝ち筋がある。情報が確定していないことを前提に、両方の枝を同時に用意するという設計になっていて、ここだけ切り出しても十分に面白かった。
アカギの密輸ターンと、来なかった指示
「昼の国が隠し場所を提示してきません」
重要な役目を任されたのがアカギだった。「次の密輸にあなたが行ってください。そして秋山が運ばせようとするマネーを、夜の国に持ち帰ってきてください」。報酬として提示されたのが忠誠ポイント100点という破格の条件である。
ところが密輸ターンで想定外のことが起きる。カードをかざしても、アキヤマが隠し場所を指示してこない。「どうすればいいですか」と焦るアカギに、ヨコヤの指示は冷静だった。「こっちを向くな。他人と話している素振りは一切しなくていい」。
そのうえで読みを口にする。「それでも指示がないなら、探りを入れている可能性が高い」。アキヤマはアカギが再び夜の国側に戻っている危険を警戒し、わざと想定外の行為をして反応を見ているのではないか、と。
だから「そのまま検査ルームに進みなさい」。動揺して話しかけたり密輸人を変更したりすれば、それこそ寝返りが露見してしまう。疑われている前提で、何もしないことを選ばせる指示になっている。
この場面の前に、事務局のネアルコが席を外していたことが挟まっている。理由は「昼の国のスピーカーが一個鳴らなくなっている」という連絡で、本人は「さすが取り壊される予定の施設」と流していた。不在の時間が明示されたことだけは記憶しておきたい。
カードの再発行は行われない
戻ってきたアカギの報告によれば、アキヤマは「はっきり見破っている感じではなくて、漠然といくつか疑問が持ち上がっているというような」状態で、根掘り葉掘り聞いてきたという。
その質問がこの回の設定説明を兼ねていた。「ヨコヤは密輸人にカードを持たせるのが怖くないのか」。このゲームは相手にカードが渡ったら終わりで、昼夜両方のカードがあればマネーを片方に集約して総取りできてしまう。
アカギの回答が二段構えになっている。まず持たせる理由は「検査ルームで相手検査官にカードを見せろと言われたら困るから」。そして核心が、ヨコヤが渡すのは必ず他人のカードであるという点だった。
裏切って自分のカードを失った場合どうなるか。「現物がなければカードの再発行は行われない。カードがないものはゲーム後の払い戻しが受けられない」。つまり「俺たちはヨコヤさんに命を握られているも同じ。裏切りなど絶対できないのだ」。
ヨコヤの評価は「完璧な回答です」だった。ところが次の役目を願い出たアカギに返ってきたのが「次? 次はありませんよ」である。理由は「あなたのような人間にもう一度チャンスを与えたら、秋山の説得に負けて再び昼に寝返りかねません」。完璧に働いた直後に信用されない、という扱いが徹底している。
ハセガワの報告と、ヨコヤの結論
「あいつ、何も言ってこなかったんですけど」
代わって密輸人を務めたのがハセガワだった。作戦自体は成功したが、問題はそこではない。アキヤマの発言がハッタリだったなら、検査ルームで「もう一度運んでくれ」と言ってくるはずだからである。
戻ったハセガワの報告が「それが、あいつ何も言ってこなかったんですけど」だった。「俺もそう来ると思ったんですが、何もなかったんですよね」「下手に突っ込むと、俺が夜の国に味方しているとバレてしまいそうなんで、こちらから聞くこともしませんでした」。
ヨコヤは念のため次の検査官もハセガワに任せる。そのターンの昼の国の密輸人がナオだったので「何か言ってくるかもしれませんね」と期待されたが、結果は「何の動きもありませんでした」。
「なぜ秋山はハッタリだったと告白しなかったのですかね」という疑問だけが残る。何もしないことが、この回いちばんの手として機能しているのが不気味で良かった。
「向こうは負けに動く。こちらは勝ちに動く」
ヨコヤの結論は「昼の国は例の19億1000万、本当に隠し持っているようです」だった。用意していた二本目の枝に切り替える形になる。
方針は「夜の国の第三国口座、これを増やしに行きます」。理屈は単純で、昼の国は夜の国が大金を隠していることを知らないため、自分たちが圧勝していると思って負け抜けを狙ってくる。「向こうは負けに動く。こちらは勝ちに動く。双方の利害が一致するんだ」。
見込みも強気だった。「マネー獲得額で圧勝、負け抜け、という理想の形にはなりませんでしたが、プラス収支になるのは間違いないでしょう。この分だと5億か6億、いや10億だってもぎ取れるでしょう」。
そのための条件が「とにかくこちらの動きを読まれないこと」。2日目終了時点でも差はつかず、「明日まだあと16ゲームある。そこでがっつり差が開くさ」という手応えのまま最終日へ入る。
最後にヨコヤ自身が漏らした読みが伏線になっている。「もし気づいたとしても、この状況からどうひっくり返す。辛うじて手があるとすれば、再び夜の国の誰かを昼の国に引き込む」。
最終日、すべて一人で
「密輸人と検査官、すべて僕がやります」
最終日、35ゲーム目からの開始にあたってヨコヤが告げたのが「今日のゲームについてですが、密輸人と検査官、すべて僕がやります」だった。
理由は明快である。「今日の最終日に秋山が何か策を用意しているかもしれません。だが僕がすべての密輸人・検査官をやれば、彼はどうすることもできない」。仲間を介した寝返りという唯一の穴を、自分で塞いだ形になる。
事務局側の見立てが辛辣で面白かった。「彼はプライドの高い男です。その彼がなりふり構っていられない。つまり、相当秋山を恐れているということです」。
そして昼の国側も同じ手を返す。「昼の国は残りすべて神崎直で来るようですよ」。最終日は事実上、ヨコヤとナオの一対一になった。
全50ゲーム終了、そして最終スコアへ
その最終日が、驚くほどあっさり流される。具体的なやり取りはほとんど描かれないまま、「これで密輸ゲーム全50ゲームすべてが終了いたしました」というアナウンスに飛ぶ。
そして「それではこれより最終スコアの発表」というところで第18話は終わった。結果は次回である。
ネットの反応でも「ここまで長々と密輸ゲームを描いてきたが今週の回で急にダイジェストになって次週決着まできた」という指摘が出ていた。実際、尺の配分は明らかに前半に寄っている。
ただ、これは意図的な省略に見える。ヨコヤの視点で描いている以上、彼にとって何も起きなかった時間は描きようがない。何も起きなかったという事実そのものが、次回の答え合わせの材料になっている。
「警戒」まとめと考察
タイトルどおりの回だった
今回のサブタイトルは「警戒」。第16話が「撹乱」、第17話が「密告」と来て、今回はヨコヤが一貫して疑い続ける回になっている。
特徴的なのは、18話が最初から最後まで夜の国の視点だけで進むことだ。昼の国側が何を考えているかは一切映らない。ネットの反応でも「昼の国側何考えてたか全く分からん」という声が並んでいた。
しかもヨコヤの推理は、この回の中では一つも外れていない。3人が裏切ったことも、策の手順も、アキヤマが探りを入れている可能性も、全部当てている。それでも「なぜ運んでくれと言ってこないのか」という一点だけが説明できていない。
正しい情報を全部持っていて、正しく警戒して、それでも取りこぼす。ヨコヤが用意した二本の枝のどちらでもない三本目があるとしたら、それがアキヤマの答えということになる。
次に見るところ
まず、アキヤマが何も言わなかった理由である。ヨコヤの理屈では、ハッタリなら告白せざるを得ないはずだった。言わなかったのに勝ち筋があるとすれば、19億1000万は本当に隠されているか、あるいはこの前提そのものが崩されている。
次に、事務局のネアルコが席を外していた時間だ。「昼の国のスピーカーが一個鳴らなくなっている」という理由で呼び出され、戻ってきたときには「ゲームが面白いことになっている」と言われている。わざわざ描かれた不在である以上、意味がないとは考えにくい。
三つめが、ヨコヤ自身が言った「辛うじて手があるとすれば、再び夜の国の誰かを昼の国に引き込む」という読みだ。そのうえで彼はアカギを「次はありませんよ」と切り、ハセガワには続けて役目を与えている。切られた側がどう動くかが焦点になる。
最終日はヨコヤとナオの一対一で、しかも中身が描かれなかった。ナオが16ゲームのあいだ何をしていたのかが、そのまま次回の答えになるはずだ。




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