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ドルフィンに日本のテレビ取材が入った。ところがイケメンアイドルの池越勇一が顔に怪我をしてしまい、白羽の矢が立ったのがそっくりな耕平だった。「引き受けたからには服は脱がない」という宣言はその日のうちに崩れ、食レポは「貝の味がする」で終わる。伊織のインカム作戦でどうにか撮影は回り出すが、いちばん効いたのは耕平が最後にこぼした一言だった。




テレビ取材と、雑用係にされたオーナー
「コネで呼んだんだよ」
第5話は、前回のラストの直後から始まる。「お前、北原のことを…」と踏み込んだ耕平に対して、愛菜の答えは「そんなわけないでしょ」「ないないないから」だった。耕平も「だから勘違いだったら悪いと言ったろうが」と引き下がる。
翌日の朝礼で告げられたのが、テレビの取材が入るという話だった。「プレオープンで取材と、よっぽど注目されてる店舗なんだね」と感心されたところで、オーナーの紗耶華が一言。「そんなわけあるかい。コネで呼んだんだよ」。
班分けも行われる。「雑用とテレビ対応の2班に分けるよ。いいかい、雑用係は絶対にカメラに映るんじゃないよ」。そして雑用係に入れられたのが、当のオーナー本人だった。
抗議に対する返しが「オーナーの意向通りに選定した結果です」「オーナーは緊張すると、特に不愛想になりますから」。前回あれだけ場を支配していた紗耶華が、開始5分で処理されているのが可笑しい。
「俺か」
取材待ちのあいだ、話題は唐突に異性の好みへ流れる。「北原、お前は異性に何を求めるんだ」に対する伊織の答えが「言いにくいが体だ」で、すかさず「言いにくいなら一瞬でも言葉に詰まれ」と突っ込まれた。
性欲以外を聞かれても「やはり乳房だろうか」と言い張り、「表現変えても性欲だからなそれ」と却下される。ようやく出てきたのが「居心地の良さかな」「好きなものがあるとか、新しい世界を教えてくれるとか」だった。
それを聞いた耕平の要約が良かった。「要は四六時中一緒にいて、自分の趣味があって、新世界を見せてくれるやつだな」からの「俺か」。伊織の「異性の話って言っただろうが」までが一続きのボケになっている。
さらに池越が現れたときには、「お前、ああいうのが好みだったよな」と振られた愛菜が「それは昔の話だから」と返す場面もあった。何気ない一言だが、この回の締めにまっすぐつながっている。
池越勇一の負傷と、替え玉作戦
「デビュー以来キャラが立ってないと言われ続けて7年」
撮影は序盤でつまずく。潜っていた池越がサンゴで顔を引っかいてしまったのだ。「残りは池越くん抜きで行くか」という判断に、本人が食い下がる。「そんな、これくらいの傷、平気ですから」に対する返しが「傷は平気でも顔だからね」。
熱意の理由は「これが初めての冠番組らしくて」だった。ここで代役の話が持ち上がり、プロデューサーが耕平を見て「これで髪を黒くしたら」「いけますよね」と乗り気になる。
池越自身の動機がまた切実だった。「デビュー以来キャラが立ってないと言われ続けて7年。やっと、やっと巡ってきたチャンスなんです」。売り出したい方向は「ダイバーアイドルとして」で、「そこまでキャラ立たないような」と即座に疑われている。
被害者側にちゃんと動機がある。この先どれだけ滅茶苦茶にされても、本人がそれを望んだ形になっているので、後半の惨状が笑っていいものとして成立していた。
「俺たちは止めたからな」
肝心の耕平は「絶対にノー」で即答する。そこで伊織が出した条件が「あいつを動かしたければ、声優のサインぐらいないと」だった。
差し出されたのが村中ゆりかのサインである。「ドーム級声優」という肩書きを噛みしめた耕平は、そのまま「失敗しても責任は取らぬ」と言って出演を承諾してしまった。
伊織と千紗はここで一度止めに入っている。「それでも考え直した方がいい」「あいつかなりの変人なんです」。ところが池越の返事が「それはちょっと望むところです」で、「その日本語おかしくない」と言われても「大丈夫です、むしろ少しおかしい方が」と譲らない。
そこで二人が残した念押しが「最後に一つだけ。俺たちは止めたからな」である。直後に「頼む、引き取ってくれ」と泣きが入るので、「後悔早いなおい」と突っ込まれることになった。
何をやったのかというと、「ウェットをはだけた絵が欲しい」と言われて下まで全開にしたらしい。「それ胸元軽く開けてって意味だからね」に対して、耕平は「引き受けたからには服は脱がない」「難しいが善処しよう」と、微妙に信用ならない返事をしている。
服を着たまま、が守れない男
「それは、このシャツに言ってくれ」
翌朝の時点で、すでに脱いでいる。「また、カメラの前で脱いで捕まるなよ!」と釘を刺されての返しが「それは、このシャツに言ってくれ」で、「服のせいなの?」と即座に否定された。
前が開かない服を借りてきてまで対策されるが、耕平は「分かっているとも。俺を誰だと思っている?」と言った直後に別方向でおかしくなる。「俺なりに考えた結果だ」に対して「そんなキャラ付けいらないからな!」が飛んだ。
「大丈夫ですよ、食事のときはナプキンをつけます」という提案には「いっそう絵面が危なくなるだろ!」。「気をつけてはいたんだが」には「気をつけたら回避できることだよな」と、突っ込みのほうが理詰めになっている。
極めつけが、周囲が慌てて弁解しているのに本人たちが「俺たちにはこれが幸せだよ」「自然な姿だろうが」と胸を張ってしまう場面だった。取り繕う側と開き直る側が同じ画面にいるので、収拾がつかない。
「貝の味がする」
食レポは、想像しうる限り最悪の形で進行した。愛菜が「大きな身に反して繊細な味がしますね」と振っても、返ってくるのは「うん。貝の味がする」。
「軽い苦味のある味が癖になりそうですね」には「うん、苦いな」。トロイモには「芋の味だな」。ついに「コメントが下手すぎる」と言われてしまう。
素材への私見も辛辣だった。「シャコ貝はデカすぎて結構グロい」「マングローブガニは日本でも食える」「ナポレオンフィッシュはブサイクで可愛げがない」。「いいところをあげろよ」という悲鳴が上がる。
愛菜が魔法少女に喩えてまで持ち上げても、返ってきたのは「エビを焼いた匂いだな」と「エビの味だ」だった。打開策として出てきたのがコウモリのスープと強い酒で、「絵面と酔いで撮れ高を作る」という発想がすでに番組として終わっている。
水木カヤの声と、インカム作戦
「それがやつの特殊能力なのだ」
見かねた伊織が助け舟を出す。「俺ほど奴の扱いに長けた者はいないぞ」と言い切り、千紗に「一応嘘じゃないけど」と微妙な保証をされながら借りたのがインカムだった。
ところが指示を出しても耕平は反応しない。理由は伊織が「普通では聞こえない、ごく小さい音量だからな」と説明したとおりで、「それじゃ意味ないでしょ」と怒られる。
そこで切り札が出てくる。反応した耕平を見て「この声って、まさか」と気づかれ、伊織が明かしたのが「そう、水木カヤさんの声だ」だった。「水木カヤの声なら、どんな小さい音でも聞き取れる。それがやつの特殊能力なのだ」。
しかも音声はあらかじめ編集して用意してあった。「こうなることは予想できていたからな」に対する「普通予想できないと思うけど」が正論すぎる。
効果は劇的で、食レポは「こんな至福の料理食べたことがない」「天がもたらす麻薬」「下界に舞い降りた天女を彷彿とさせる艶やかな味わい」へ一変した。言葉の質が上がったのではなく、動かす燃料が変わっただけというのが、この作戦のいちばん良いところだと思う。
「伊織がいてよかったって初めて思った」
順調に見えた撮影は、酒が入ったところで再び崩れる。「てっきり酒恨みで何かするのかと」という警戒どおり、耕平が「死ねー!」と叫び出した。
そこから場は一気に危険になり、「愛菜逃げて」「危険です」という声が飛ぶ。体を張ってその場を収めたのが伊織で、愛菜への「大丈夫ですか?」までがワンセットだった。
千紗の感想が「伊織がいてよかったって初めて思った」で、伊織の返しは「もうちょい素直に褒められないのか?」。池越からも「お友達の方、頼りになりますね」と言われている。
ふざけ倒した回の途中に、こういう一瞬だけまともな評価が挟まる。この作品が単なる下品なギャグで終わらない理由が、だいたいこの数十秒に詰まっている。
「なんで今日、伊織の邪魔をしたの?」
二度潰れたデート
撤収後、愛菜の報告は「散々でした」だった。ただし「一応池越くんは喜んでくれましたけど」とのことで、「ワイルドでギャップのある絵が撮れたらしいじゃないか」という評価も出ている。放送を見たら卒倒するかもしれないが。
そこで明かされたのが、この日もう一つ起きていたことだった。テレビ側の女性から伊織が「オフのとき、どこかへ連れていってもらえませんか?」と誘われていたのだ。伊織は「もちろん、俺でよければ喜んで」と受けている。
それが「一度ならず二度までも」潰された。原因は耕平が脱いだことで、千紗の説明も「今村君のせいでダメになったみたいだけどね」である。
ここで愛菜に「ほっとしてる?」と聞かれた千紗が「いや、別に」と返すのが小さな見どころだった。この回、恋愛の話をしている人間が全員はぐらかしている。
「本気で好きなことくらい、俺でもわかるっての」
その夜、愛菜が耕平を訪ねる。「ちょっとあんたに聞きたいことがあって」と切り出しての質問が「なんで今日、伊織の邪魔をしたの?」だった。「いくらなんでも不自然すぎでしょ」「あれだけ言ったのに何度も脱ぐなんて」。
耕平は認めない。「俺が奴のデートを阻止するために脱いだと?」「違う」と言い、理由として並べたのが「北原の幸せは見ていて虫唾が走るからな」である。
愛菜のほうも認めない。「昨日あんたが聞いたことは本当に勘違いだから」「そう思っちゃうような行動を取った私にも非があるけど」「私も南国テンションでおかしくなっただけで」。耕平の「テンションだけでずいぶん奇行に走ったもんだな」に「今更でしょ」と返して、その場を去った。
そして一人になった耕平が言う。「もう無理か。バカな奴だ」「本気で好きなことくらい、俺でもわかるっての」。この一言で、今日一日の奇行が全部つながる。
最初と最後を、耕平と愛菜の二人きりの会話で挟む構成になっている。本人が一度も「お前のためにやった」と言わないのが、この回のいちばん誠実なところだった。
「TV取材」まとめと考察
変人99パーセントの中の1パーセント
今回のサブタイトルは「TV取材」。内容はそのままで、テレビが来て、壊れて、終わる。ところが締めだけが完全に別の話になっている。
ネットの反応でも「なんだ、耕平って良い奴じゃん」で終わらせるな、という警戒が出ていた。実際、股間を晒す必然性はどこにも無かったわけで、良い奴度は加点方式で見ても大したことはない。
それでも効くのは、耕平が最後まで動機を口にしないからだと思う。愛菜に問い詰められても「北原の幸せは虫唾が走る」で通し、独り言でだけ本当のことを言う。言い訳のほうが本音より下品になっているのが上手い。
そして愛菜のほうも、朝の「それは昔の話だから」から夜の「本当に勘違いだから」まで、一貫して否定し続けている。二人とも嘘をつき通した回で、そのぶん耕平の最後の一言だけが本当のこととして残った。
次に見るところ
まず、放送された番組がどうなるかである。「ワイルドでギャップのある絵が撮れた」という評価が出ている以上、池越の狙った売り出し方は成功しかねない。「放送見たら卒倒するかも」という予告も回収されるはずだ。
次に、伊織の鈍さである。今回も異性の好みを聞かれて堂々と「体だ」と答えていたが、その居心地の良さの条件を並べたら耕平に「俺か」と言われて終わっている。本人が自分の答えに気づいていない状態が続いている。
そして愛菜と千紗の位置だ。愛菜は否定を重ね、千紗は「ほっとしてる?」に「いや、別に」と返した。気づいているのは耕平だけという構図が、どこまで持つのか。
最後に、耕平の「もう無理か」が何に対する諦めなのかが残っている。愛菜を焚きつけるのを諦めたのか、伊織に期待するのを諦めたのか。いちばん変なやつが、いちばんまともに人を見ているという構図は、しばらく続きそうだ。




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