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第30話(第3期6話)のサブタイトルは「紅葉ちゃんのもみもみフェスティバル」。女子運動部に現れては去っていく謎の少女の正体が中等部三年二組の茂見紅葉で、彼女は柔らかい感触が好きだからマッサージをしていると最初に公言してしまう。動機は不純なのに、やっていることは徹底して人のためになっているのが今回の面白さだった。そして中盤、恋太郎が原作漫画の作画を手伝いに行くというとんでもない場面が挟まる。




女子運動部に現れては去っていく謎の少女
全員まとめて腰砕けの現場
第30話は恋太郎の噂話から始まる。「突如女子運動部に現れては、尋常じゃないほど気持ちいいマッサージをして去っていくという謎の少女」。本当にいるなら、「アニメの無茶振りに肉体を酷使されているみんなを癒してもらいたい」という動機だった。★開幕からメタ発言なのがこの作品らしい。
駆けつけた先はテニスコートで、「姫、大丈夫ですか」「あの子が私たちにマッサージを」「こんなの初めて」と、部員たちが軒並み倒れている。恋太郎の判定が「全員腰砕けてるだけ」で、★事件性はゼロなのに絵面だけが事件という状況だった。
そして名乗りが入る。「おそらく。中等部三年二組、茂見紅葉と申します」。★姓が「茂見」で名が「紅葉」という、この作品でもかなり潔い名前の作り方だった。本人いわく覚え方は「野比のび太と同じ要領で覚えてください」で、しかも「ちなみに父も同じシステムなのです」と続く。
名乗っているのに誰も覚えていない
恋太郎が「俺は高等部一年四組、愛城恋太郎」と返しつつ、初対面の相手にあっさり名前を教えてくれたことに驚く。紅葉の説明がこうだった。
「モミジは毎回名乗っているのですが、皆さんマッサージが気持ちよすぎて記憶が定かじゃなくなってしまうみたいでして」。恋太郎の「副作用がぶっ飛んでる」が的確すぎる。★「謎の少女」の正体が、本人はずっと名乗っていたというだけの話だった。
正体を隠していたわけでも、伝説になりたかったわけでもない。毎回きちんと名乗って、毎回全員に忘れられている。★この一点だけでこの子は嘘をつかない人だと分かる作りになっていて、後半の展開が全部ここに乗ってくる。
見た目とふわふわした喋り方に対して、やっていることの振り切れ方が大きいのが今回の笑いどころだった。声は古賀葵さんで、この丁寧な口調でとんでもないことを言い続けるのが効いている。
モミジは感触フェチでして
運びながら揉んでいる
紅葉が「それではモミジはこちらの方々を部室に運びますので」と言い出し、恋太郎が「え、全員?」「手伝うよ、俺も」と加勢する。ところが運搬中の彼女の手が明らかに余計な動きをしていた。
恋太郎の「何やってんの」に返ってきたのが「モミジは感触フェチでして」、「特に柔らかい女性の感触が大好きなのです」。★会って数分で全部言う。「他意はなく、ただ純粋に感触を味わっているだけなのです」という弁解に対して、恋太郎の「弁解する前に、まずはそのモミモミ止めよう」がまっとうだった。
そのうえで髪に触れて「なんというふわふわもちもち髪。神が作り給うた奇跡」と感嘆し、恋太郎に「運ぶ気ある?」と突っ込まれる。★ツッコミ役が完全に恋太郎に回っているのが今回の構図で、普段はツッコまれる側の彼が、ずっと常識人として立っていた。
動機は不純、やっていることは利他
部室に運び終えたあと、恋太郎が核心を聞く。「もしかしてモミジさんがマッサージをしてるのって」。答えは「はい、柔らかい女性の体の感触を味わうためなのです」で、「全国のマッサージ師に怒られるよ」と返される。
ところがここから話が変わる。「ですがもちろん、それだけではございません」、「凝りや筋肉の疲労は、女性の体の正しい成長や感触の阻害となりますので、モミジは女性の体の素晴らしい柔らかさを助けるべく、マッサージがしたいのです」、そして「大好きなものの助けになれることは、とても喜びとやりがいのある仕事なのです」。
恋太郎の「だから台無しだよ」で落ちるのだが、★言っていることは筋が通っているのが厄介だ。好きなものを守るために技術を磨いていて、その結果として相手が本当に楽になっている。動機が自分のためであることを一切隠さないまま、行為は完全に人のためになっている。
★不純な動機を隠さない代わりに、腕でごまかしもしない。普通なら「人の役に立ちたくて」と言っておけば済むところを、この子は先に本音を出してから技術の話をする。見ていて気持ちがいいのは、隠し事がひとつもないからだと思う。
セルフスカウター
服の上から凝りが見える
手伝いのお礼として、紅葉が恋太郎にもマッサージを申し出る。理由が「見たところ相当な筋肉の疲労具合のようですので」で、恋太郎は「服の上から見ただけでそんなことが」と驚く。紅葉の答えは「マッサージの経験を積むうちに自然と」。
★ここでの恋太郎の心の声が最高だった。「たぶん、悟空が見ただけで敵の強さを測れるのと同じ原理だ」、そして「セルフスカウター」。★この時点ではただのツッコミなのだが、後半で妙に効いてくることになる。
実際に受けた恋太郎の感想が「信じられないくらい体が軽くなったよ。本当にすごいね」。変な言動と技術の高さが完全に両立していて、★フェチ以外の部分はむしろ常識人という評価が的を射ている。紅葉の側も「一体どんな過酷な日常を送っているのですか」と本気で心配していた。
最高のマッサージ師になりたいのです
褒められた紅葉の返しが「いいえ、まだまだです」だった。そして目標を口にする。「経験を積んで、どんな女性の体も癒やせる最高のマッサージ師になりたいのです」。
★この子には将来の設計図がある。しかも「そして有名になり、たくさんの依頼が」と続けたところで「グラビアアイドルさんなどから…」と本音が漏れ、恋太郎に「余計なとこ揉んだら怒られるよ」と釘を刺されるのがきちんと落ちになっている。
別れ際の「もしまた体が凝ったら、いつでもモミジのところに来てくださると…嬉しいのです」と、そのあとの独白が今回の折り返しだった。「変です。モミジが好きなのは女性の柔らかな感触のはずなのに、こんなこと、初めて…」。
★好意の自覚が、フェチの例外として現れるのがうまい。翌日以降も「また、あの人を揉みたい。けど…」「いくら愛城さんでも、三日連続でなんて…」と悶々とし、会いたい理由を凝りに求めてしまう。この時点で、二人の距離は完全に紅葉の側から縮まっていた。
お前だよ
主人公が自分の出ている原作を手伝いに行く
毎日のように揉まれるようになった恋太郎に、紅葉が尋ねる。「まさか、どこかの地下施設で強制労働でもさせられているのですか?」。返ってきたのが「この二日間、ある人のお仕事を手伝いに行ってたんだ」だった。
その相手というのが、漫画『100カノ』の作画を担当している野澤先生。★主人公が、自分が登場している原作漫画の現場に出向くという、とんでもない場面が真顔で始まる。恋太郎の「見るからにきついお仕事なんですね」に対する「お前だよ」で、この回の笑いは頂点に達した。
★過酷さの原因が本人だと面と向かって言われる。彼女が百人になる作品なのだから、当然そうなる。しかも野澤先生の声が野沢雅子さんで、前半に置かれていた恋太郎の悟空のたとえが、★ここで意図していたのかどうか分からない角度で回収されてしまう。
「みんな、大切な子たちなので」
作業中、恋太郎がページを指して言う。「野澤先生、ここなんですけど、原作のネームだと描かれているのは五人なのに、十四人になってますよ」、「ここは原作なりに、作画負担を少しでも軽減するためのページなんじゃ…」。
野澤先生の答えが今回いちばん良い台詞だった。「ああ、いいえ。みんな、大切な子たちなので」。★原作の側が減らしてくれた人数を、作画の側が自分で増やしている。この一行のために前半の噂話から積み上げてきたのだと思うくらい効いた。
そこからは地獄で、「このモブの服、ベタだっけ? トーンだっけ?」「あれ? こっちは? この人?」「うわっ、こっちにも、こっちにも!」「登場人物! 登場人物!」と恋太郎が飲み込まれていく。★百人の彼女という設定が、そのまま作業量として襲ってくるのが最高だった。
それでも締めは「やりがいや楽しさもあったけど、肉体的には本当に過酷だった」、そして「あっ、あのベタ、俺が塗ったとこだ」。★労いとしての揉みが、原作の現場への感謝に繋がっているという読み方をしている人がいて、たしかにこの回はその形になっていた。
モミジ、愛城さんのことが好きなのです
なぜ自分から体を痛めつけたのか
紅葉の当然の疑問が「ですが、なぜ自ら、そんな真似を?」だった。凝りたくてわざわざ過酷な現場に入る人はいない。恋太郎の答えがこうだった。
「最高のマッサージ師になるため経験を積みたいって言ってたモミさんの力になれればと思って」、「君がしてくれたあんなに気持ちいいマッサージのお礼に、何かせずにはいられなかったんだ」。★揉んでもらうために体を壊しに行ったという、理屈としては完全に本末転倒なのに、動機だけは一直線に相手のためになっている。
紅葉の「モミジのために…」という呟きから、「ああ、モミジ、愛城さんのことが好きなのです」、そして、凝っていなくてもかまわないから「どうか毎日マッサージさせてくださいませんか?」と続く。★会いに行く口実として凝りを必要としなくなった瞬間だった。
恋太郎の返事も揃っている。「俺のほうこそ、人を幸せにできるマッサージも、その夢に向かってひたむきなモミさんのことも好きです。よろしくお願いします」。★技術と人柄を分けずに、両方まとめて好きだと言っているのがこの主人公らしい。
告白の直後に走り出す先
ところが感動の余韻は数秒で終わる。紅葉の「とまぁ、喜びは山々ですが、それとして、モミジには今すぐ揉まなければならない人がいますので、失礼いたします」。★相思相愛が成立した直後に、仕事の話で走り出す。
そして恋太郎が追いかけて言う。「俺も一緒に行くよ」、「俺も今回、身をもって知った。もっと早く、こうすべきだったんだ。さあ、急ごう、手遅れになる前に」。向かった先はもちろん野澤先生のところだった。
★告白回の締めが、原作の作画担当を揉みに行く場面というのは、この作品以外ではまず成立しない。しかも二人とも大真面目で、「手遅れになる前に」という緊迫した言い方まで付いている。
恋の話と労働環境の話が同じ勢いで並んでいて、★ふざけているのに、誰のことも茶化していないのがこの回の良さだと思う。紅葉の「はい、癒しに行きましょう」で走り出すところまで含めて、実に気持ちのいい加入回だった。
凝り方で分かります
凝りを見れば、その人の暮らしが分かる
後半はファミリーへのお披露目から、そのまま全員マッサージ大会になる。羽々里の「モミジちゃんを新しい彼女として迎え入れさせていただいてもよろしいでしょうか」で加入が決まり、紅葉はさっそく「お近づきのしるしにマッサージを」と始めてしまう。
★この場面が全員紹介として機能しているのがうまい。働きすぎの人には「かなりの働きすぎですね」、優敷山女には「毎日畑仕事してるんだぞ」からの「なんという揉みがい、揉み応え。気が遠くなるほど広い背中」、楠莉には「どおりで、あなたはどこも凝っていませんね」。凝りの出方だけで生活が言い当てられていく。
読書家には「ご趣味は読書ですね。凝り方で分かります」、姿勢を崩さない人には「アンドロイドのように一ミリも姿勢を崩さず座っていたようなのです」。★前半の「セルフスカウター」が、ここで全員分に拡張されている。冗談で言っていたことが、そのまま彼女の特技の説明になっていた。
極めつけが唐音で、「別にマッサージなんて興味ないんだからね」に対する診断が「ツンデレ凝りですね」。「聞いたことないんだよ、そんな凝り方」と抗議されても、「ツンデレの方は常に強がって筋肉をこわばらせているので、凝りがひどい」と真顔で解説する。★実際に押されて声が出てしまい、羽香里が「大好きなおもちゃの新しい遊び方を見つけた時のような笑顔」と評しながら「連打してみてください」と焚きつけるのがひどくて良かった。
お礼は、マッサージでは揉めなかったところで
ひととおり終えたあと、全員から「何かお礼をさせてほしい」と言われた紅葉の答えがこれだった。「そういうことでしたら、モミジは感触フェチですので、マッサージでは揉めなかった皆さんの色々なところを揉ませていただけますと」。★ここでようやく副題の「もみもみフェスティバル」が始まる。
以降は感想がひたすら食べ物と手触りの言葉で埋まっていく。「ぷにぷに」「ふにふに」に始まり、頬は「見比べ三種盛りなのです」と評されて「ロリポップみたいに言うなよ」と突っ込まれ、ナディー先生は「オーケー、フリーダムに行くって」と言いながら「いや、めちゃくちゃ照れてんじゃねえか」と見抜かれる。
★感想がいちいち丁寧なレビューの形をしているのが可笑しい。羽々里にいたっては「聞きましたか、恋太郎くん。私のお胸の星五レビューを」と、揉まれた側が営業に使い始める始末だった。ちなみに彼女のマウスパッドを揉む場面もあり、実際に商品化されているものなので、★これは販促ではないかと複数の視聴者に突っ込まれていた。
最後は恋太郎の番になり、「まだ恋太郎さんからはマッサージのお礼をいただいていませんでしたね」から「男性でも、ここはプニプニなのです」と頬を揉まれる。そこへ楠莉の「めちゃくちゃキスしなさい」が飛んで、★「この後めちゃくちゃキスした」で締めるというのが、この作品のいつもの終わり方だった。
「紅葉ちゃんのもみもみフェスティバル」まとめと考察
人間関係ももみほぐしてあげるのです
最後に置かれた紅葉の一言が、この回の答えになっている。「凝り固まっているのです」、「モミジが全員の体の感触を味わうついでに、人間関係ももみほぐしてあげるのです」。
★ここまでの全部が一本に繋がる。彼女は最初から一貫して、自分の欲を叶えることと相手を楽にすることを同時にやってきた。そのやり方を、体から人間関係にまで広げると宣言したわけだ。百人規模の集団に入ってくる新人としては、これ以上ない自己紹介だと思う。
加入の理屈も丁寧だった。紅葉が恋太郎を好きになったのは自分のために体を痛めてまで会いに来た人だったからで、恋太郎が紅葉を好きになったのは夢に向かってひたむきだったから。★フェチの話でひとしきり笑わせておいて、肝心の理由には一切ふざけを入れていない。
動機が不純でも、行為は嘘をつかない
改めて振り返ると、この回はずっと同じことを言っている。紅葉は感触フェチであることを一度も隠さず、そのうえで技術を磨き、相手を本当に楽にしている。★公言してしまうから、誰も裏切られない。変な子として笑われながら、最後には「救世主と呼ばせてください」とまで言われていた。
そして野澤先生の一件が、その裏返しとして置かれている。★紅葉は好きだから揉み、野澤先生は大切だから増やす。どちらも合理的ではないし、どちらも自分を削っている。「みんな、大切な子たちなので」という台詞が百人の彼女という作品そのものへの答えになっているのが良かった。
恋太郎の側も、今回は珍しくずっとツッコミに回っていた。そのぶん彼が動いたのは一箇所だけで、★二日間、体を痛めつけてまで相手の夢を手伝いに行ったという、たったそれだけの行動が告白の決め手になっている。台詞よりも行動で口説くのが、この主人公の一貫したやり方だった。
新しい彼女が増えるたびに人数分の説明が要る作品なのに、毎回きちんと一人を掘って帰ってくるのはすごいと思う。★今回は「揉む」という一つの動作だけで、十四人以上の人となりを描き分けてしまった。凝りの出方でその人の暮らしが分かる、という設定がそのまま群像劇の道具になっているのが見事だった。




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