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第19話のサブタイトルは「連帯」。密輸ゲーム全50ゲームが終わり、アキヤマが「あの19億1000万、実は隠してないんだ」と自分から明かすところから、本当の答え合わせが始まる回だった。夜の国が圧勝したはずの盤面で、ゼロになっていたのは夜の国のATM残金のほう。支配の道具だったボイスレコーダーと、スピーカーの永久磁石で壊したカードが、そのからくりだった。




パスしか出ない盤面と、ヨコヤの秘策
「これじゃちっとも儲からねえじゃねえか」
第19話はまず、最終日の盤面がどうなっていたかの説明から始まる。両国ともATMにマネーを残していないので、密輸のトランクは常に空。検査側は損をしないために毎回パスと言うしかなく、★パスの応酬のまま50ゲームが終わってしまうという膠着だった。
第三国口座の差は約1億で、夜の国が僅かに上。この状態はヨコヤにとって勝ちではあるのだが、配下からすれば「皆さん5億6億稼げるって言ったよな」「全然そんなことねえぞ」★「これじゃちっとも儲からねえじゃねえか」という話になる。★恐怖と報酬で縛った支配は、報酬が出ないと途端に不満に変わるのだと分かる。
ヨコヤの返しは「嘘は言ってません」から始まり、「昼の国は抜けを狙いに来ています」と現状を整理したうえで★「あなたたち本当にバカですね」。★膠着を作ったのは自分なのに、打開できない配下のほうを責めるのがこの男らしくて、見ているぶんには最高に気持ちのいい悪役だった。
属性を書き換えるだけの1億
そこで出てくる秘策が、理屈だけ聞くと何の得にもならない手だった。密輸ターンに1億をトランクに入れて運ぶ。当然「あれ夜の国ATMに属してるマネーでしょ」「あの金を密輸したらエラーになるはずです」と反論が出る。
ヨコヤの答えが★「密輸の時はあの1億をまず昼の国ATMに入れて、そのまま引き出します」。こうすれば「1億の属性は昼の国ATMのマネーに切り替わります」。★金額は一切動かさず、その金の所属だけを書き換えて持ち込むという手だった。だから「それじゃプラスマイナスゼロだ」「1円の利益にもならない」という指摘は正しい。
正しいのだが、狙いはそこではない。★「狙いは敵を混乱させることです」。空のはずのトランクに中身がある、という一点だけで昼の国の読みは崩れ、ダウト8000万を宣言したところにトランクの1億、次に6000万を宣言したら今度は空、と続けて失敗させられていく。★儲からない手を一発だけ通して、相手の判断基準そのものを壊しているのが見事で、★配下が「俺がバカでした」と折れるところまで含めて完璧な引き回しだった。
「実は隠してないんだ」
敵ながら素晴らしい戦いっぷりでした
全50ゲームが終わり、両国がロビーで初めて自由に言葉を交わせるようになる。最初に口を開いたのがヨコヤで、「敵ながら素晴らしい戦いっぷりでした」★「我々が運ばせた19億をとっさに隠した機転、正直、肝が冷えましたよ」と持ち上げる。勝った側が敗者を称える、という綺麗な絵になるはずの場面だった。
ところがアキヤマの返事が★「悪いな、あの19億1000万、実は隠してないんだ」。「実はまんまとあんたらの罠にはまっていた」「そちらこそお見事お見事」まで自分から言ってしまう。★敗北の告白として、これ以上ないくらい完全な形になっている。
フクナガが「ってことは何? ATMの残金全額を夜の国が持ってるってこと!?」と青ざめ、夜の国側は「とんだ間抜け集団じゃねえか」「その程度か?」と一気に見下しに回る。★この時点の勝敗判定を、全員が声に出して確定させているのが後で効いてくる。★負けを認める台詞をここまで丁寧に言わせるのは、だいたいひっくり返すためだと分かっていても、それでも騙されるのがこの作品だった。
ゼロになっていたのは夜の国のほうだった
そして最終集計が読み上げられる。夜の国側は「俺たちが全額独占」「圧勝、圧勝」と沸き、直後に★「間違ってるだろ! なんで俺らがゼロになってるんだよ」と凍りつく。ネアルコの返答は「間違ってなどおりません」「紛れもなくこれが最終結果です」だった。
ここでアキヤマが★「ヨコヤ、お前の負けだ」と告げる。昼の国は大金を手にして抜け、夜の国は負債を増やしたまま4回戦へ進む。そして「お前はな、重大なミスを犯したんだよ」と続くのだが、★ヨコヤ本人がまだ何のミスか分かっていないのがこの回の出発点だ。
★構成として上手いのは、ここまでで一度ヨコヤ側の完勝という結論を出し切っていることだと思う。第18話が丸ごと夜の国の視点だけで進んだのも、★視聴者にヨコヤの読みを信じ込ませるための準備だったことになる。★2話かけて仕込んだ勘違いを、1行の集計結果で壊すのが気持ちよかった。
裏切り者は二人ではなかった
「自白ゲームの前にすでに俺は寝返っていた」
アキヤマが説明を始めると、ヨコヤは「違うぞ」と遮る。「ハセガワはお前の作戦に乗るそぶりをしていたかもしれないが、あれは演技だ」★「裏切り者は二人に食い止めたんだ」「アカギとシバヤマも自白ゲームによって繋がりを断ち切られたのさ」。第17話と第18話で見せられた通りの読みで、こちらもそう思っていた。
そこに割って入るのが当のハセガワで、★★「それも違う。自白ゲームの前にすでに俺は昼の国に寝返っていたんだ」。★ヨコヤが「二人に食い止めた」と数えていた時点で、すでに三人だったことになる。「ヨコヤ、遅かったんだよ」「お前が切り崩しに気づいた時には、すでに俺たち三人、共同戦線を張ることで一致していた」。
★この一言で、第18話の中身がまるごと裏返る。ハセガワの「あいつ何も言ってこなかったんですけど」という報告も、ヨコヤが「本当に隠し持っているようです」と結論した根拠も、★全部こちら側の人間が渡していた情報だったことになるからだ。★前話で一番信用できる材料に見えたものが一番の毒だった、という作りが好きだった。
疑念を晴らすのに、裏切り者を使ってしまった
自白ゲームの解釈も丸ごと入れ替わる。シバヤマが1分で自白したのは裏切りではなく★「裏切ったふりをしていたのさ」で、考え方は「白を切ったところで追及から逃れるのは不可能だ」★「だったらいっそ仲間割れのフリをした方がいい」だった。喋ることは喋るが、作戦の核心だけは喋らない、という線引きになっている。
怖いのは、この芝居が★味方すら騙していることだ。「あの時点でアカギは本気で俺が裏切ったと思っていた」ため、★アカギの本物の反応がそのままヨコヤの油断を生んだ。嘘を成立させるために、味方に本当のことを言わないという選択をしている。
そして決定打が、ヨコヤ自身の慎重さだった。「シバヤマの自白を100%は信じず、まだ疑念を残していたのはさすがだった」。ところが★★その疑念を晴らすために呼び出した相手が、すでに寝返っていたハセガワで、「あの瞬間、勝負は決まった」。★用心深さが、そのまま騙される導線になっているのがこの回で一番残酷な部分だった。★疑う相手を間違えたのではなく、疑い方が正しすぎたのが敗因なのがたまらない。
ボイスレコーダーという抜け穴
密告のための道具が、連絡の道具になる
それでもヨコヤには納得できない一点が残る。★密告制度によってメンバーは疑心暗鬼になり、会話がほとんど消えていたはずなのだ。「俺らずっとお互いを監視し合ってたんだぜ」「接触していないハセガワをどうやって味方にしたんだ」という問いは当然だった。
答えが★★ボイスレコーダーだった。★「ヨコヤ、こんな便利なものメンバーに持たせちゃダメでしょ」という一言が全部で、「メンバー同士を疑心暗鬼にするのに威力は十分だ」「だがメンバー間で連絡を取り合うのにも威力十分なんだぜ」と続く。
利点の並べ方も丁寧で、「ひそひそ話にメモを回すのすら困難な状況」でも「伝えたいことがあればこうやって吹き込むだけ」、「手に隠れる小型サイズのおかげで受け渡しも目立たない」、そして★「圧倒的な情報量を確実に伝えられる」。★説得という時間のかかる行為を、その場にいなくても実行できるのが決定的で、だからこそ一度も会っていないハセガワまで引き入れられた。★監視の道具を配ったことが、そのまま通信網を配ったことになっていた。
「策に溺れたな」
レコーダーの用途はもう一つあって、三人はそのまま連携の維持に使い続けていた。だから自白ゲームで揺さぶられても崩れず、★「次に三人の誰かが密輸人となった時、作戦決行」という取り決めまで共有できていた。内容は「夜の国ATMのマネー全額を昼の国ATMに突っ込む」。
そして突きつけられるのが★★「ヨコヤ、策に溺れたな」という一言だ。続けてハセガワが引くのが、アキヤマの言葉だった。★★★「繋がりこそが支配を打ち砕く」。★第17話で方針として語られていた言葉が、ここで結果として回収される。
★サブタイトルが「連帯」なのは、このためだと思う。支配する側は一人で全部を握れるが、握った分だけ道具を配らなければならない。★疑心暗鬼を作るために配ったものが、疑心暗鬼を解く道具になったという一点で、この回の勝敗は決まっていた。★力ではなく、支配の構造そのものを裏返して勝つ話になっているのが良かった。
スピーカーの永久磁石と、カードの複製
ネアルコが席を外していた理由
ここからが今回いちばんの仕掛けだった。そもそも金を移すには昼夜両方のカードが必要で、しかも三人のカードは終了後にヨコヤへ返さなければならない。そこでアキヤマが出した答えが★「そのカードの偽物を作る。そして偽物の方をヨコヤに渡すんだ」だった。
手順は、カードを破損させて再発行させ、新しいほうを自分たちが持つ。問題は不自然に壊さないことで、使ったのが★★昼の国から壊して持ってきたスピーカーの永久磁石だった。「擦り付ければ強力な磁気の影響でカードのデータが破損するのさ」。★物理的に壊れていないのに中身だけ死ぬので、事務局の目にも事故にしか見えない。
そして★★★第18話でわざわざ描かれたネアルコの不在が、ここで回収される。「昼の国のスピーカーが一個鳴らなくなっている」という連絡で席を外していたあの時間に、★「ネアルコさんが気を取られている間に、こういうやりとりがあったのですよ」。★前話を見たときに「なぜこの不在をわざわざ映すのか」と思っていたので、答えが出た瞬間は素直に唸ってしまった。★スピーカーを壊した犯人が、それを報告させた張本人だったという構図が綺麗すぎる。
アカギの芝居と、運ばれた昼の国の金
第18話でもう一つ引っかかっていたのが、アカギの密輸ターンにアキヤマが隠し場所の指示を出さなかった件だった。ヨコヤはこれを「探りを入れている可能性が高い」と読み、アカギに一切反応するなと指示した。実際は★アカギが「指示が出ない」と言い張っていただけで、★ヨコヤの警戒心が、そのまま芝居の裏付けに使われていた。
極めつけが最後の密輸だ。ヨコヤはハセガワに「アキヤマの策に乗るふりをして、金はそのまま夜の国に持ってこい」と指示する。ハセガワはその通りに運び込むのだが、★★その時に使ったのが、複製した昼の国ATMにアクセスするカードだった。「つまり俺が運び込んだマネーは昼の国ATMから引き出されたもの」★「当然、夜の国ATMの残高はゼロのまま」。
★ヨコヤの命令を100%忠実に実行して、結果だけが正反対になるという形になっている。裏切りが露見しないのは当たり前で、★命令通りに動いているのだから裏切っていないのだ。★支配された側が、支配の形を保ったまま中身だけ入れ替える。この回の三人が「有能だ」と言われていたのがよく分かる働きぶりだった。
「救えないんですよ」ヨコヤの最後の計算
12億3051万では足りない
完敗を認めたあと、ヨコヤは矛先を三人に変える。「あなたたち、いくらで寝返ったんですか」に対する答えが★「俺たち3人が負債チャラでライアーゲームから抜けるのに必要な額全額を昼の国が払う」。それを聞いたヨコヤは笑い出す。
ここからの計算がえげつない。昼の国の獲得賞金総額は48億3051万円、36億の貸付金を除くと★12億3051万。対してヨコヤが並べるのが、「あなたとナオ以外は1億ずつ負債を背負っているんでしょう。救済するだけで7億」「その上、夜の国の3人にも計6億の借金がある」★「救えないんですよ」。
アキヤマが「俺とナオはこれまでに合計1億3000万稼いでいる。これを全額救済に充てる」と返しても、「3人は密輸ゲームでも新たな負債を作っているのです」「ざっと見積もっても6、いや7億以上。到底足りませんね」と潰される。★勝負に負けた直後に、勝った側の勝ち分が足りないことを計算で示すのがこの男で、★負けても場の主導権だけは渡さない粘りがすごい。
4億の返却を辞退する
それでもアキヤマは「足りるんだよ」と言い切る。根拠が★「実はこの3回戦の後、敗者復活戦が用意されている」で、そのうえで出てくるのが★★「このゲーム終了後、俺とナオは4億返却を辞退する。それによって得た8億を3人の借金返済に充てる」。
つまり二人は★自分たちが4億ずつの負債を背負い直して、そのまま敗者復活戦に進む。抜けられる立場にいながら、抜けないほうを選んでいることになる。★勝った分をそのまま他人の借金に流し込んで、自分は最初より深く沈むという決着で、ヨコヤの「バカな人たちだ」「何を好き好んでそんな馬鹿げたことを」は計算としては完全に正しい。
★ここで面白いのは、三人が寝返った理由がその「馬鹿げたこと」そのものだったことだ。★「なぜ俺たち3人が昼の国に寝返ったと思う」という問いの答えが、報酬額ではなく、「この2人が自ら身を切ってまでプレイヤーを助けたいと思っているから」だった。★恐怖と報酬で人を動かしてきた側に、★報酬ではないもので人が動いた事実を突きつけているのがこの回の構図だと思う。
「連帯」まとめと考察
本当に戦うべき敵
この回の到達点は、勝敗でも金額でもなく、最後に置かれた一行だと思う。★★★「本当に戦うべき敵はプレイヤーではなく、ライアーゲーム事務局だ」。三人が寝返った本当の理由がこれで、★敵の定義そのものを書き換える言葉だった。
第16話から積み上げてきたものが、ここで一本につながる。同じ敗者復活戦で同じように全マネーを独占しておきながら、★片方はそれを支配に使い、もう片方は全員に返した。その差が、支配の側では絶対に作れない三人の連携になって返ってきたのが今回だ。★力の差ではなく、動機の差がそのまま結果になっているのが気持ちいい。
★「連帯」という題名が、勝ち方の説明になっているのも上手い。個人としての強さでは、ヨコヤはアキヤマに一度も負けていないと思う。★読みも用心深さも、この回で負けた原因がむしろ精度の高さだったほどだ。★それでも勝てなかったのは、支配は一人分の頭しか使えないのに、連帯は三人分の頭が使えるからだった。
「やっぱりバカですね」
そしてヨコヤの締めが★「やっぱりバカですね」。負けを認めたあとも一切態度を変えないのが、この男のいいところだった。★悔しがらないので、まだ何も終わっていないように見える。しかも4回戦に進むのは夜の国のほうなので、退場したわけでもない。
考察として気になるのは二点ある。一つは★アキヤマとナオが4億ずつの負債を抱えて敗者復活戦から出直すという条件で、これは今までで一番不利な位置からの再開になる。もう一つは、★フクナガをはじめ昼の国の面々がここで抜けることだ。第3回戦をここまで支えた顔ぶれが減るのは寂しいが、★手駒が減った状態でどう戦うのかを見せるための整理でもあるのだろう。
そして最大の引きは、敵の定義が変わったことそのものだと思う。プレイヤー同士で騙し合う話として19話やってきたところに、★本当の相手は運営側だと宣言してしまったのだから、この先は勝ち抜ける話ではなく、★ゲームそのものを終わらせる話になるはずだ。★次からいよいよ最終章に入るという告知も出ていて、ヨコヤと組む未来があるのかどうかも含めて、続きが待ち遠しい回だった。




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