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第6話のサブタイトルは「擬態、どうしたんだよ!?」。教室に二階堂春希を訪ねてきた海童一輝を、霧島隼人がなぜか追いかけていくところから始まる回だった。そのまま園芸部への入部を宣言し、サッカー部の相手に土いじりの素晴らしさを力説するという展開になり、春希は擬態を忘れて大笑いしてしまう。そして今回は、春希のほうから「もう必要ないとも思う」と言い出す回でもあった。




「園芸部」と言い切った霧島隼人
追いかけた理由が、自分でも分かっていない
第6話は、前回の終わりで教室に現れたサッカー部の海童一輝が、二階堂春希を呼び出すところから続いている。女子の間で噂が回っているという話の途中だったので、教室の空気は完全に「そういうこと」になっていた。そこへ霧島隼人が「待ってくれ」と割り込むのが、この回の始まりだった。
面白いのは、隼人自身が理由を説明できていないところだ。口から出てきたのが「部活関係でどこか行くんだろ」「俺もその、入部したいところがあってさ」「だからついでにって思って」で、★取ってつけた言い訳だと自分でも分かっている喋り方になっている。止める理由も、止める資格も、本人の中にはまだない。
そのうえで「どこに入るつもりなんだい。うちなら歓迎するよ」と聞かれて、返した答えが★「園芸部」。相手の「は?」がそのまま視聴者の反応でもあった。★勢いで追いかけた人間が、勢いのまま一番かっこよくない答えを出してしまうのが可笑しくて、しかもこの答えが結果的に今回いちばん効くことになる。
「土いじりはな、最高に楽しいんだよ!」
そこから隼人は、なぜか正面から張り合いに行く。「あんたはサッカー部なんだろ。サッカーは何が楽しいんだ?」と聞き、返ってきたのが「一点の価値の重さ、自由度の高さ」「そしてやっぱりチームのみんなとの一体感というか」「いっぱいあって挙げきれないよ」という、非の打ちどころのない答えだった。
受けて立った隼人の言い分がこうだ。「園芸だって畑だって同じだ。毎日水やりや剪定、追肥に雑草や虫の処理」「そりゃ手間かかるし重労働だ」「けどな、手塩にかけただけ野菜は応えてくれるし」「それぞれがいろんな個性を持ってるし」★「変な形の実がなると得した気分になる」。そして変わった形の野菜の写真まで突きつけて★「土いじりはな、最高に楽しいんだよ!」と言い切る。
★相手の土俵に乗らず、自分の好きなものだけで殴り返しているのがいい。見た目でも人気でも勝てない相手に、変な形の野菜という一点だけで対抗しに行くのだから勝ち目はないのだが、★熱量そのものは本物なので、聞かされた側が「そんなに園芸が好きなのか」と引きながら感心してしまう。★この回でいちばん笑ったのがここだった。
「擬態、どうしたんだよ!」笑ってしまった春希
背中を叩かれながら喋る羽目になる
この熱弁の隣で、春希が耐えきれずに噴き出す。★清楚な優等生の擬態が、他人の目の前で丸ごと外れたのは初めてに近い。しかも笑いながら隼人の背中を叩き続けるので、★隼人の台詞に「痛いから背中叩くのやめろ」が挟まるのがおかしかった。
面白いのは、この崩れ方が誰かに暴かれたものではないことだ。海童が仕掛けたわけでも、隼人が引き出そうとしたわけでもなく、★ただ楽しくて笑ってしまっただけで外れている。そのあと春希が「先へ進みましょう」と何事もなかったように戻すのだが、もう手遅れなのは本人がいちばん分かっているはずだ。
隼人が小声で「擬態バレたらダメなんじゃねえのかよ」と言うのが、そのまま★この回のサブタイトル「擬態、どうしたんだよ!?」につながっている。★題名がそのまま台詞になっている回は、だいたいその台詞が主題そのものだ。今回もまさにそうで、以降ずっとこの一点だけを見せられることになる。
「僕は海童一輝。君は」
海童の反応が、想定と違う方向に転がるのがこの回の妙味だった。「知らなかったな」「さっきの彼女が本当の二階堂春希なのかな」と漏らしたあと、彼が名乗る相手は春希ではなく隼人のほうで、★「僕は海童一輝。君は」と手を差し出す。
そのあとも教室までついてきて、「さっきみたいな画像とかさ、他にないの」と★野菜の写真をねだり出す。恋のライバルとして出てきたはずの相手が、★春希ではなく隼人に興味を持ってしまったわけで、視聴者の反応でも「すっかり懐いてる」「春希より隼人が気になる様子」と面白がられていた。
★噂の内容がどうであれ、実際に会ってみたら想像と違った、という描き方が丁寧だと思う。モテる男というだけの記号で終わらせず、★好きなものを全力で語る人間に素直に反応するタイプとして置いたことで、海童という人物がいきなり信用できる存在になった。ここで隼人の話に乗った写真の中に、前回に届いていた巫女装束の一枚まで持ち出されてしまうのが余計だった。
花壇で始まった、二人目の友達
「今、嫌なやつになってた」
場面が変わって、春希が花壇にいる三岳みなもに声をかける。「何をしているのかなって思いまして」に返ってきたのが「剪定と草むしりを」で、春希は「ですよね」と笑う。★ここまでは完全に優等生の口調のままだ。
ところが春希は途中で自分の考えごとに沈み、呼びかけられて我に返ると★「今、嫌なやつになってた」と謝る。何を考えていたかは言葉にされないが、★隼人と三岳の距離を測っていたのは間違いないだろう。そして自分でそれを嫌なことだと認識できている。
★この作品の春希は、嫉妬を隠すのが下手なのではなく、嫉妬している自分を許せないほうが強いのだと思う。だから相手を避けるのではなく、わざわざ話しかけに行ってしまう。★見ていていちばんしんどく、いちばん好きになれる部分だった。
「好きなことができて救われた」
そこから春希が持ち出すのが、隼人の受け売りである土いじりだった。「土いじりしましょう!」「心が落ち着きます」と誘われ、並んで作業しながら「この花が野菜になっちゃうって思うと不思議だね」と話す。★さっき笑い飛ばしたばかりの熱弁を、その日のうちに使っているのがいい。
そして三岳のほうから、なぜ園芸を始めたのかが語られる。★ここに来るまでにショックなことがあって、悲しくて泣いてしまった。「だけどお腹は減っちゃって、それがなんだかおかしくて」。そのときに「野菜は花が咲いてからが本番で、そこから実になる」と聞いたのが始まりで、「最初はそんな興味本位からでした」と続く。
喋りながら「さっきから私、何言ってるんだろう」と自分で照れて、最後に出てくるのが★「好きなことができて救われたと言いますか」。★泣くほど嫌なことがあった日に、腹が減った自分をおかしいと思えたことがきっかけになっているのがとても良かった。春希の「またここに来ていいかな」に「はい、喜んで」と返るところまで含めて、★この回でいちばん静かに効いた場面だと思う。
「私たちだけの秘密だね」
お兄さんの話をもっと詳しく
一方その頃、姫子が春希のクラスメイトたちに囲まれて質問攻めにあっている。きっかけは弁当で、「私トマト苦手なんだよね」「これはきっとお兄の報復だね」「こないだ作ってくれた夕飯をさ、ひどい絵面だっていじったからさ」という愚痴から、★その弁当を作ったのが兄だと発覚してしまう。
姫子としては「料理ができるって言っても飲み会のつまみみたいなやつだよ」「朝起こすときは乱暴だし、勝手に私の部屋も掃除するしさ」と落としているつもりが、聞いている側には★料理も掃除も世話も焼く兄としてしか届かない。「そのお兄さんの話、もっと詳しく」と食いつかれるのが可笑しかった。カラオケに誘われて「集会場とかバスで歌うやつじゃなくて、カラオケ屋さん?」という確認が入るのも、★月野瀬から出てきた側の感覚がまだ抜けていなくていい。
そこに割って入るのが春希で、「姫ちゃんはこっちに引っ越してきて、いろいろまだ不慣れなんです」「お手柔らかにお願いしますよ」と★優等生の口調のまま姫子をかばう。★守り方が完全に擬態の側のやり方なのに、守っている中身は昔からの幼馴染としてのものなのが良かった。残されたクラスメイトの「あんな二階堂さん初めて見た」という反応で、この一件もまた擬態のほころびとして数えられていく。
犬のレンと、背負われる帰り道
帰り道、姫子が「学校じゃあんな感じなのに」と切り出す。春希の答えは「外での僕はだいたいあんな感じ」で、それを受けた姫子の一言が★★「じゃあ、いつもの春ちゃんの姿は、私たちだけの秘密だね」。★秘密という言葉を、暴くためではなく囲うために使っているのがこの子らしい。
そのうえで姫子は「あそこで出会ったのがお兄じゃなくて春ちゃんでよかったよ」と言う。理由が「ああいう時ってさ、お兄は頼りにならないというか」★「私、春ちゃんによく守ってもらった覚えがあるんだよね」で、★兄より先に幼馴染を頼っていた過去が、さらっと差し込まれる。
その直後に起きるのが、近所の犬のレンに飛びかかられる騒ぎだった。三岳が「レンとはご近所さんの子で、私を見つけて喜んであのような」と説明するあたりで、★春希は足を痛めてしまっている。合流した隼人が「でもその足じゃ歩くの大変だろう」と背負い、★「さすがに子供の頃と比べると重くなったな」と言って怒られる。★おんぶという手段が真っ先に出てくる関係と、体重の話が地雷になる年齢とが、同じ場面の中で噛み合っていないのが良かった。
「友達?」「うん、友達だね」
年下だと思っていました
この騒ぎの副産物が、姫子と三岳の顔合わせだった。春希が「その子は三岳さん、僕の同級生」と紹介した瞬間の姫子の反応が★「もしかして三岳さんのこと、年下だと思っちゃってた?」と突っ込まれる流れで、慌てて「三岳さん、ごめんなさい」と謝るところまでが一続きになっている。
そして三岳のほうも動じない。「二階堂さん、やっぱり学校の外じゃそんな感じなんですね」と言い、春希の「変かな?」に対して★「いえ、そんなことないです」「こっちの方が親しみやすいと言いますか」と返す。★擬態が外れた春希を、外れたまま受け入れた二人目がここで確定した。
極めつけが、姫子の「三岳さんは春ちゃんの学校の友達なんだ」という言葉への反応だ。三岳が「え? 私が二階堂さんの、そんな、友達?」と慌て、春希が「違うのですか?」と聞き返し、最後に★★「うん、友達だね」で確定する。★友達という言葉を、確認してから成立させているのがこの作品らしくて、★春希にとって学校で初めてできた対等な関係だと思うと、ここは相当大きい場面だった。
日焼けを確かめる手つき
翌日の花壇では、隼人がすっかり戦力になっている。トマトの茎に生えたつぶつぶを見て三岳が★「それは気根という根っこなんですよ」と説明し、隼人が「最近雨も降ってなかったし水不足だろうね」「大丈夫、病気じゃないし実とかへの影響はないよ」と答える。★入部届も出していないのに、知識で先に居場所を作ってしまっている。
そのあとが今回いちばん際どい場面で、春希が隼人の日焼けを確かめると言って★上着をめくって腹を触りにいく。「なるほどなるほど、お腹は見事に白いね」「ねえねえ、ちょっと触っていい」に対して隼人は「やめろって」と抵抗するだけで、★横で真っ赤になっている三岳のほうがまともな反応をしているのがおかしかった。
★春希が擬態を外し始めると、いちばん困るのが周りだというのが分かる場面でもある。隼人が「おい、入部届け渡してないのに」とぼやき、春希が「僕からも後で誤解解いとく」と請け合うのだが、★解くべき誤解が増えているのは完全に春希のせいだった。この距離感の壊れ方は、見ていて楽しいけれど確実に何かの前触れだと思う。
森伊織と伊佐美恵麻、幼馴染の答え合わせ
図書準備室で受け止める
昼になると海童がまた隣に来る。「なんで海童は俺にかまってくるんだ」とぼやく隼人に、春希が「私と約束があるんですよね」と割り込み、★優等生の口調のまま強引に連れ出す。海童は「振られちゃったか」と笑い、★春希がいつもかぶっているものをどうやって剥がしたのか気になる、という言い方で隼人への興味を隠さなかった。
連れ込まれた図書準備室で、隼人が「今朝といいさっきといい」「擬態解けるとやばいんじゃないのか」と聞くと、返ってきたのが★★「少し思うところとかもありまして」「あと、多分もう必要ないとも思うんだよね」。そして★★★「僕ね、いろいろと頑張って」「頑張りたい、変わりたい」と続く。★擬態を外すのが事故ではなく本人の選択になったのが、この回のいちばん大きな一歩だ。
その直後に春希が脚立から落ちかけ、隼人が受け止める。「すまん、ちょっとしびれて動けそうにない」「しばらくこのままでいいか」でそのまま固まっているところに、★別のカップルが人目を避けて入ってくるという最悪の間の悪さが重なった。★隠れる羽目になった二人が、隠れているせいでずっと密着したままなのが可笑しくて、しかも直前の告白めいた台詞が完全に流されてしまうのが、この作品の意地悪なところだった。
「一緒に遊ぶとお互いいろんなことがわかる」
続いて登場するのが、同級生の森伊織と、その彼女の伊佐美恵麻だ。隼人の「森?」「って、彼女?」という驚き方が全部を語っていて、森のほうは★「伊佐美恵麻とは付き合ってまだ3ヶ月ちょっとだけどな」と平然としている。
ここからが今回の答え合わせだった。森が言うには、二人は★幼稚園の頃から顔を突き合わせてきた仲で、「何でも知ってると思ってたんだけど、思い違いだったっていうかさ」。「ゲーセンでぬいぐるみを集めるのが趣味だったり」「似合わないと言ってるくせにフリフリの服が好きだったり」★「付き合ってから、そんな知らなかったことばかり発見するんだわ」。
隼人の「のろけか?」に「のろけだ」と即答したうえで、森が置いていくのが★★「一緒に遊ぶとお互いいろんなことがわかるぞって話だ」。★幼馴染だから何でも知っている、という前提を真正面から否定する台詞で、これは今の隼人と春希にそのまま刺さる。★受け取った隼人の独白が「今の春希と出かけるって、一体どこに行けばいいんだ?」で、★助言が半分だけ届いているのがこの人らしくて笑ってしまった。
「擬態、どうしたんだよ!?」まとめと考察
エプロンと、「悔しいじゃん」
帰宅した隼人を迎えたのは、★買ってきたエプロンを着けた春希だった。「どう? 似合ってる?」から始まって、「最近の僕さ、隼人の世話になりすぎてると思ったわけなのですよ」「まずはできることからしていこうってね」「なのでこれから、ご飯の準備や他の家事のお手伝いさせてください」と頭を下げる。
隼人が「そうか? せいぜい夕飯くらいだろ」といなすと、本音が出てくる。★★「世話になりっぱなしってさ、悔しいじゃん」。★好きだからでも、申し訳ないからでもなく、悔しいからという理由なのがいい。図書準備室の「変わりたい」が、その日のうちに具体的な行動になっている。
★今回は「話が進まない」と受け取られやすい構成なのは確かだと思う。告白があるわけでも、関係に名前がつくわけでもない。ただ★擬態を外す側の理由が、外から暴かれるものから本人の意思に変わったのが今回で、これは事件よりよほど後戻りできない変化だ。★何も起きなかったのではなく、起きたことが全部内側だった回だと思う。
768座席と、三人の休日
最後は次の休みの相談になる。隼人が「暇ならどこかへ遊びに出かけようと思ったんだが」と切り出し、行き先が決まらないところで春希が出してくるのが★「768座席」という謎の単語だった。「つまり最大768人が一気に見られるという巨大スクリーンがある映画館があるというのです」。
これを聞いた姫子の反応が★「バカな、一度に月野瀬の住人の半数以上が見られるじゃないか!」で、★都会の規模を故郷の人口で換算する癖がまだ抜けていない。この作品はこういう一言で、三人がどこから来たのかを毎回思い出させてくる。
そして引きが効いていた。春希が「その、もちろん姫ちゃんも一緒に行くんだよね」と確認すると、隼人の答えは★「当然だろ。それがどうかしたか?」。★★直前に「一緒に遊ぶとお互いいろんなことがわかる」と教わったばかりなのに、その相手を二人きりにするという発想が最初から無いのが隼人だった。★姫子の「3人で出かけるのって久しぶりだよね」で締められるのだが、春希の「うん、そうだね」の温度だけが明らかに違う。★擬態は自分の意思で外せても、望みのほうは相変わらず言えていない。変わりたいと言った春希が、次に何を変えるのかを見せるのが第7話になるはずだ。


























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