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第7話の公式サブタイトルは「トイレの花子さん」。ところが公式サイトのオンエア情報を読むと、この作品にはオンエア版・デレギュラ版・完全デレギュラ版の三つがあり、映像も音声も規制の度合いが違う。しかも「音声の規制有無は話数によって異なります」という注記までついていて、音響監督は版ごとに別人がクレジットされている。六校ぶんの花子さんがどう祓われたのかという話が人によって噛み合わないのは、そもそも見ているものが違うからである。




同じ第7話でも、見ている版が三つに分かれている
公式サイトのオンエアのページには「映像差分」という項目があり、三つの版が表で並べてある(※1)。オンエア版は映像も音声も規制あり、デレギュラ版は映像も音声も一部規制解除、完全デレギュラ版は無修正。さらに「音声の規制有無は話数によって異なります」と注記があり、「デレギュラはデレギュレーション(規制解除)を由来とするアニメレーベル名です」とも書いてある。
どれを見るかで手に入るものが違う。完全デレギュラ版は AnimeFesta の独占配信、デレギュラ版は dアニメストアの独占配信で、AT-X の放送もデレギュラ版。オンエア版が TOKYO MX と BS11 ほかで流れている(※1)。つまりこの回の除霊がどんな絵面だったかは、どの版を見たのかを言わないと話が通じない。
音響監督が、版ごとに別人としてクレジットされている
驚いたのはスタッフ表のほうで、音響監督が「阿部秀平(オンエア版)・難解底王(完全デレギュラ版)」と二人並んでいる(※2)。映像に修正を入れるだけでなく、版ごとに音を別の人が作っているということになる。「音声の規制有無は話数によって異なります」という注記も、そう読むと重い。
放送前の祝辞が、そろって「どう放送するのか」の話になっている
公式サイトのニュースには、アニメ化記念のお祝いコメントが何本も載っている。それがそろって規制の話をしているのが面白い。深瀬沙哉監督は「どのくらい光で隠れるのか…!?展開楽しみにしております!!」、漫画家のヒロユキは「関係者の方々の勇気と英断を感じます」「一体どのように様々なアレコレを放送していくのか」、同じく漫画家のきただりょうまは「制作陣様には妥協せずガンガン攻めていって欲しい」(※3)。祝辞の欄が、放送前から出し方の心配で埋まっている作品である。
そのうえ第7話は、本編とミニアニメの二本立てになっている
公式のストーリーは第7話を「トイレの花子さん/ミニアニメ劇場 その7」と表記し、ミニアニメの演目まで載せている。1本目「スナックはざま⑦」、2本目「メン地下アイドル③」で、どちらも第1話から続いている連作だ(※4)。ただし「ミニアニメ劇場は一部の配信サイトで配信中」とあるとおり、テレビだけ見ていると存在に気づかない。感想の中に本編と噛み合わない場所や人物が出てくるのは、たいていこちらの話である。
演目の並びを第1話から追うと、組み方もはっきりしている。1本目は毎回「スナックはざま」の連番で、第1話の①から第7話の⑦まで一度も抜けていない。2本目だけが入れ替わり、「デスゲーム」が第1話・第3話・第4話・第6話、「メン地下アイドル」が第2話・第5話・第7話に入る(※4)。毎週続く一本と、隔週で戻ってくる二本という構成で、本編と同じくらいきっちり管理されている。
第7話「トイレの花子さん」で起きたこと(要点だけ)
公式のあらすじは「全国の小学校に巣くう怪異・トイレの花子さん。彼女たちを一斉除霊する活動に参加するカムイとシヅカ。次々と除霊される仲間たちに焦る全国の花子さんが、山奥の廃校に集う。彼女たちが計った、起死回生の策とは!?」(※4)。本編はその通りに進む。
- 花子狩り=数年に一度、全国の小学校を対象に行われる一斉除霊活動。霊能者にとっては書き入れ時
- カムイは呼び出しの手順をそのまま実行して現れさせる。「さて、ノックは3回だったな」
- お市の解説=花子さんは子供たちの噂が具現化した怪異で、噂の数だけ出現パターンも姿形も異なる
- 狩られる側は山奥の廃校に集合。東京の被害はすでに九校
- 怪異の側にも序列があり、新しく生まれた者ほど弱い。打開策として東京に残る一体の名が挙がる
- 集会に仕掛けが見つかる。「おもちゃに式神をつかせて操作していたのね」→「見つかったか。意外と早かったな」
- 標的が霊能者カムイに定まる
- 起死回生の策=事務所のトイレを侵入用のゲートにする。名乗りは「私は全国花子さん連合、第四の刺客」
- 結果は返り討ち。とばっちりを受けたのはシヅカで、お市の「どんまいやで、小娘」で終わる
筋そのものは一本道で、途中に寄り道がない。そのぶん怪異の側の事情に時間が割かれているのがこの回の特徴で、廃校の報告会だけで一つの職場の会議みたいになっている。祓われる側に会議があって、議事進行があって、報告が下手な者に横槍が入る。退治される側をここまで組織として描くのは、怪異が噂という制度から生まれているという設定と噛み合っていて面白い。
花子さんは噂から生まれ、噂を配る係は公式紹介に書いてある
お市の説明は「連中は子供たちの噂が具現化した怪異やからな」で始まり、「噂の数だけ出現パターンも姿形も異なるトイレの花子さんがいるということだ」と締める。同じ名前で呼ばれていても中身が全部違う、という設定である。
呼び出しの手順が、そのまま除霊の手順になる
第7話は「ねえ、旧校舎の噂知ってる。トイレでね」という子供の声から始まる。そのあとカムイが女子トイレに入り、「さて、ノックは3回だったな」と手順を確認する。怪談として語られている呼び出し方を、そのまま作業手順として実行しているわけで、この作品の乾いた面白さはだいたいここに出ている。
噂を配る係は、公式のキャラクター紹介に最初から書いてある
公式のキャラクター紹介を読むと、イナガワの欄がこうなっている。「オカルトマニアでカムイのことをインチキ霊能力者とバカにしている。怪しい噂話を持ち掛けては周りを事件に巻き込むが、シヅカやキョーコたちの大切な友達の一人」(※5)。噂が怪異になる世界で、噂を持ち込む係が主人公の同級生に置かれている。第7話の花子さんたちと、この紹介文はまっすぐつながっている。
公式の「その話の怪異」欄を並べると、第7話だけ桁が違う
公式サイトは放送の一日か二日前に、その話のゲストキャストを「▼第N話の怪異」という欄で出している(※3)。欄に並ぶ名前は、第1話と第4話が二つ、第2話・第3話・第5話が一つ、第6話が二つと「他」。ところが第7話だけは六つで、犬鳴小学校・山神小学校・飛形山小学校・下砂川小学校・居ヶ坂小学校・栗生小学校の花子さんに、それぞれ別のキャストが立っている。劇中で校名が聞き取れるのは犬鳴だけなので、物量が数字で見えるのはこの欄だけである。
これまで欄に載ったのは、メリーさん、テケテケ、コックリさん、隙間女、口裂け女、ろくろ首、化け猫、峠の霊、ジェットババアと、いずれも別々の名前の怪異だった。同じ名前の怪異を六体まとめて出したのは第7話が初めてで、公式の欄を並べただけでこの回の異常さが分かる。タイトルは「トイレの花子さん」という一つの名前なのに、中身は六人ぶんというのが、そもそもの仕掛けなのだと思う。
狩る側にも「古き者」がいる
廃校での報告会がやたらと世知辛い。報告が長引きそうになると「おい、ひょっとして長くなるか。その、私たちは無能ですアピールは」と横槍が入り、負けた理由も「歴史の浅い同胞たちには荷が勝ちすぎたということだろう」で片づけられる。新しく生まれた者ほど弱く、古い者ほど強いという物差しが、怪異の側にはっきりある。
公式の紹介文によれば、お市も百年以上の側
ここで思い出したいのが、狩る側に混じっているお市の素性である。公式のキャラクター紹介は「市松人形の付喪神。何人もの持ち主の間を100年以上渡り歩き、坊主や神主たちに恐れられてきた」と書いている(※5)。打開策として名が挙がる東京の一体を「あいつもわしらと同じ古き者」と呼ぶのなら、祓う側の輪の中にも、同じ古さを持つ存在が立っていることになる。しかもかつては祓う側に恐れられていたほうだ。今回いちばん引っかかったのはここだった。
勝敗を決めたのは古さではなく、段取りの先回り
実際に勝負を分けたのは古さではない。集会の途中で仕掛けが見つかり、「おもちゃに式神をつかせて操作していたのね」という指摘に対して「見つかったか。意外と早かったな」と返ってくる。集まる場所を読んで、先に道具を置いてあったということである。
花子さん側の策も理屈は同じで、あの夜以来ゲートになっていた事務所のトイレを通路に使う。自分たちの出現条件を侵入経路に転用するという発想は、噂から生まれた存在らしくて悪くない。ただ名乗りが「私は全国花子さん連合、第四の刺客」で、番号がついている時点で後ろに列ができていると分かってしまう。押しかけた花子さんたちはまとめて返り討ちにされ、とばっちりを受けたのは呼び出された側ではなくシヅカのほうだった。
カムイの淡々ぶりを、杉田智和は「欲を捨て去り」と説明している
公式サイトのキャストコメントで、カムイ役の杉田智和はこう書いている。「誠実かつ真剣な雰囲気の現場です。意図的に面白くしよう、奮起させよう、という欲を捨て去り、収録に臨んでいました」(※2)。呼び出しの手順を確認して淡々と実行していくあの調子は、狙って崩さないことで成立しているということだろう。
現場側の言葉は、ほかにもそろっている
キョーコ役の相坂優歌は「毎話、際どいシーンを見事に【エロおもろく】演じ切る皆さんを間近で見させていただける大変に貴重な機会でした」、イナガワ役の井澤詩織は「ホラーとギャグとエロ(?)で盛り盛りな今作」と書き、総作画監督の野口孝行は「久々にやる漫画原作のHな作品なので気合い入ります。エロ可愛くなるよう頑張ります!」とまで言っている(※2)。公式のカムイ紹介が「怪異にしか欲情しない嗜好とド変態過ぎる独特の除霊方法」(※5)なのだから、現場の言葉づかいが揃うのも当然ではある。
各話スタッフは公式のストーリーに載っている
公式のストーリーは各話のスタッフまで出している。第7話は脚本・中條元史/絵コンテ・松尾慎/演出・金元会、作画監督は WUXI HUAXIAN ANIMATION PRODUCTION ほかの共同名義(※4)。注目したいのは、脚本が第1話から第7話まで全部中條元史で、シリーズ構成も同じ人だという点である。さらに絵コンテの松尾慎は第6話に続いて二回連続、作画監督の顔ぶれも第6話と同じ。峠の回とトイレの回は、同じチームが続けて作っている。監督はつくも匠、原作はえろき、作画はコノシロしんこ(※2)。
まとめと次回予想:勝敗を決めたのは古さではなく段取り
今回いちばん面白かったのは、両陣営がまったく同じ理屈で動いていたことだった。人間側は呼び出しの手順を実行して怪異を出現させ、怪異側は出現条件をそのまま侵入経路に使う。どちらも「噂で決まった段取り」の上で戦っている。そのうえで勝敗を分けたのは、集会場所を読んで先に式神を置いた一手だけである。
六校ぶんに別のキャストを立てたことが、この回の骨格
公式が六人ぶんのキャストを並べたのは、単なる豪華さの話ではないと思う。「噂の数だけ姿形も異なる」という設定を、キャスティングでそのまま実行している。同じ名前で呼ばれる六体に別々の声を当てれば、それだけで「全部違う怪異だ」と伝わる。劇中の説明を人手で裏打ちした回ということになる。
次回予想:列はまだ残っていて、東京の一体も動いていない
予想として書けることが二つある。一つは第四の刺客という番号で、番号を振るからには後ろが控えているはずだが、この回では列が尽きていない。もう一つが、東京最古にして最強と紹介された一体で、名前が挙がっただけで、どこまで動いたのかがはっきりしないまま終わっている。次に出てくるならこの二つのどちらかだろう。ちなみに次に何が出るかは、公式サイトのニュースが放送の一日か二日前に「その話の怪異」として先に出すので、待てなければそちらを見ればよい(※3)。
出典
※1 テレビアニメ公式サイト オンエア(映像差分と放送・配信情報)/kamuisan.deregula.com
※2 テレビアニメ公式サイト スタッフ&キャスト(スタッフ表とキャストコメント)/kamuisan.deregula.com
※3 テレビアニメ公式サイト ニュース(各話の怪異とキャスト、アニメ化記念コメント)/kamuisan.deregula.com
※4 テレビアニメ公式サイト ストーリー(各話のあらすじ・各話スタッフ・ミニアニメ劇場の演目)/kamuisan.deregula.com
※5 テレビアニメ公式サイト キャラクター(カムイ/お市/イナガワの紹介)/kamuisan.deregula.com




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