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第7話のサブタイトルは「残響ノ廃音」で、これは佐々眼流雨が最後に放つ技の名前である。前半は雨使いの後輩がローズマリィを沈めるまで、後半はまるごと学校の中の話になり、岩元が隔離施設で本当にやっていたことが明かされる。後輩を兵器にさせないために、能力開発は進んでいないと報告しているという中身で、締めくくりではその岩元自身もまた、誰かの推薦を受けた後輩だったことが分かる。




公式サブタイトルは「残響ノ廃音」。雨使いの後輩が前に出る
「僕に近づくって、そういうこと」
前回の最後で名乗った後輩が、そのまま戦う。最初に映るのは天気の異常で、「晴れてるのに、あの子の周りだけ雨が降ってる」。見た側の第一声が「あの傘の少年」「雨使い」「いや、雨男か」で、この時点ではただの雨の能力として扱われている。
本人の言い方が上品で怖い。「すいませんね、この雨が」と謝ってから、「適度な湿度は花の美しさを引き立てますが、長く雨が続けばくたくたになってしまうもの」「人も」「茨も」「僕に近づくって、そういうこと」と続ける。茨使いに向かって、花の話で警告している。
この作品の敵味方はどちらも礼儀正しいので、言葉が丁寧なほど場が冷えていく。傘を差したまま謝る相手がいちばん危ない、という絵の作り方が良かった。
雨ではなく、湿度100パーセントの話だった
種明かしが理屈で来る。「さて、雨が降る条件とは何でしょう」「例えば高気圧」「例えば海からの風」「共通点は湿度100パーセント」「それは雲の中と同じ湿度100パーセントなんですよ」「僕の周りはね」。
つまり周囲がまるごと雲の中と同じ状態になっている。そこから霧が出て、最後に蜃気楼まで出てくる。攻撃が当たらない理由がこれで、「先ほどから全く届いてないですよ」と本人に言われてしまう。
雨を出す能力ではなく、空気の状態を書き換える能力だったことになる。雨を水として見れば応用が利くのは当たり前で、言われてみればそのとおりなのに、最初に傘と雨だけ見せておくのがうまい。
ローズマリィを沈めた技の名前
事前のレポートは読んでいたのに、通じない
相手側は準備してきていた。「能力の高さ、それは事前にレポートで読んでいた」「しかし、うまく機能していない」「そのはずだ」。前回、この人は岩元の能力が共有済みであることを自分で口にしていた。つまり情報戦では負けていない。
それでも読み違える。「鋼を錆びさせるほどの湿度」「霧の気圧」「さらに蜃気楼か」と、数え上げながら後手に回っている。能力の強さではなく種類の相性で崩されていて、鋼の茨という素材そのものが弱点として働いてしまった。
ローズマリィの側も引かないのが良かった。「ならこれはどうだ」と手を変え続け、最後まで自分の茨で押そうとする。魔女側は全員こうで、負け方にも芯があるので見ていて嫌な気持ちにならない。
技の名前が、そのまま副題になっている
決着の言い回しが長い。花を腐らせる長雨をたとえに引きながら、「残響ノ廃音に沈みなさい」で終わる。つまりこの回のサブタイトルは、佐々眼が最後に唱えた技の名前である。
帰ってきたときの挨拶も同じ調子で、「本日はお足元の悪い中」「どうも、ただいまです」。戦闘中と戦闘後で口調がまったく変わらない。迎える側の一言は「いい初陣だった」だった。
この作品は技名を大きく叫ばせない回が続いていたので、今回それが副題に上がってきたのは気持ちがいい。しかも意味が音が消えたあとの残りの方向を向いていて、雨と霧の能力にきれいに合っている。
岩元が佐々眼を誘ったときの言葉
「俺は誰も戦わない世界を作る」
戦いの合間に、勧誘の場面が挟まる。「君を縛りつけるものはもうない」「雨の日も晴れの日も、朝霧の夕日も、景色はすぐに変わるぞ」。それに対する返しが「僕に軍で戦えと?」だった。
答えが違う。「そうじゃない」「使い方次第さ」、そして「俺は誰も戦わない世界を作る」「だから、俺の後輩になってくれ」。戦う駒として誘っていない。
前回、英国側は同じことを能力者の調査及び捕獲と呼んでいた。言っていることは近いのに、行き先が正反対になっているのがこの作品の骨で、今回はその差を、一つの勧誘の場面だけで見せてきた。
「家族は一つで十分だ」
引き上げる側のやりとりも良かった。ウォーターガンは「やれやれ、まったく」「うまく育てやがったな」と認めてしまう。言われた本人が「いや、私なんてまだまだ」「岩元さんには優秀な後輩がたくさんいますから」と謙遜し、「僕も戦いますよ」と続けるのがおかしい。
そのうえで撤退の言い方が振るっている。「なあ、今日は勝ちでいいよ、お前らの」「いつかお前らを俺のファミリーにしてやる」。返答は「家族は一つで十分だ」だった。
この相手はずっと引き抜きの言葉しか使わない。負けを認める場面でも勧誘に戻ってくるので、敵役なのに一貫して同じことを言っているという気持ち悪さがある。断り方が短いのも効いていた。
研究棟と、目を覚ました天羽
一ヶ月が一週間になっていた
後半は学校に戻る。天羽が目を覚まし、「一週間は寝てましたけどね」と言うと、「初めて会った時は1ヶ月寝込んでた」と返される。「体が成長してきたんすか」「分かんないけど、まあそれもあるだろう」。
派手な戦闘で強くなったのではなく、寝込む日数が短くなったという形で成長が示される。この作品らしい測り方だと思う。公式のあらすじも、眠り続けていた天羽がついに目を覚ますと書いていた。
ここが栖鳳中学の研究棟だと説明され、「能力由来の怪我だ。分かってる奴に預けた方がいいと思ってな」と理由がつく。戦って倒れたら誰が診るのか、という話をちゃんとやる作品なので、病室の場面が飛ばされないのがありがたい。
花柄の着替えと、質問攻め
見舞いの場面が長い。原町にはりんごが渡され、「別にお前のためだけじゃないのだよ。他にもいるんだよ、最近保護した子がね」と照れ隠しが入る。岩元が持ってきたのは着替えの山で、「失敗した。まだ起きないと思って、多すぎたの」。
中身にも突っ込まれる。「花柄に…なかなかの派手さじゃないですか」「しまったな」「さては岩元さん、仕事しすぎて世間の流行についていけてないですね」。そこへ「岩元さんの私服、結構おしゃれっすよ」「えっ、そうなの。なんで知ってんの」が重なる。
研究棟の人たちの質問攻めも止まらない。「生まれた時からその髪?」「子供の時はどうやって結んでたの」「君の髪を用いて編んだ藁人形だ。手に取ってくれたまえ」。「てか寝てる間に勝手に、俺、研究されてたんすか」で場が締まる。戦闘の直後にこれをやれるのが、この作品の強いところである。
隔離施設で本当にやっていたこと
「むやみに君たちが兵器化されないように」
案内された先が寮の奥で、「貯蔵庫ですかい」「まさか蚕を飼育しているわけでもないでしょ」に対して「育ててはいるな」と返る。最初に会うのが青沼静馬で、「試しに視界を塞いだら、散らす範囲を抑えられたのか」「今なら手のひらまでの調整も可能かと」という報告をする。
目隠しで制御するという工夫に対して、「すごいじゃないか。もう護身として使える段階に来ているぞ」と返す。評価の基準が強さではなく護身である。
そして隔離施設の中身が説明される。「岩元さんは表向き、自分以外の能力開発には時間がかかると報告している」「むやみに君たちが兵器化されないように」「一方で、自分の身は自分で守れるようにと、ここでみんなを育ててるんだ」。つまり上には遅れていると嘘をつき、下では確実に育てている。天羽の反応は「あの言葉、マジだったんすね」「そこまで俺たちのこと考えて」だった。
特訓ではなく「一緒に話そっか」
誘われた天羽は身構える。「悪いっすけど、こう見えても病み上がりで特訓なんざ」。ところが返ってきたのが「ああ、違う違う」「一緒に話そっかって」だった。
理由もはっきりしている。「周り誰かも分からないところで、自分の力を出すなんて難しいじゃない?」「単純に恥ずかしいよね」「だから喋ろうってこと」。能力の訓練の前に、誰といるのかを先に片づけている。「そうだ、西洋のトランプやる?」まで出てくる。名前で呼ばれた天羽総一郎が「たく、ずりいんだな岩元さんは」と折れるところまでが一続きだった。
ここが今回いちばん好きな場面だった。強くするために集めているのではなく、一人で抱えなくていい状態を先に作っている。育成という言葉の中身が、稽古ではなく雑談だったのが良い。
「残響ノ廃音」まとめと考察
捕らえた魔女にも、同じことを言っている
別の場所では、捕らえたクリスタルへの聞き取りが行われている。「コイン使いのイグニィ」「マンドレイク使いのローズマリィ」「君はシャボン玉だっけ?」「他にはどんな魔女がいるの?」。茨の出どころがマンドレイクだったことが、ここで分かる。
やり方が力ずくではない。紅茶の葉で占いをしてみせて、「英国魔女の前で紅茶占いなんて100年早いのよ」と乗せられた相手が知識を披露しはじめる。そのうちに「まさか私が置いてかれたって思ってないでしょうね」「わざとに決まってるでしょ」「敵の本拠地を知るためよ」まで喋ってしまう。
そして声のかけ方が「どうしたの? おしゃべりしようよ」「聞かせてほしいな、世界のいろいろなことを」である。隔離施設で後輩に言った言葉と、捕らえた相手に言う言葉が同じ形をしている。この学校の側は、味方にも敵にもまず喋らせる。
岩元もまた、推薦を受けた後輩だった
締めくくりに橘城が動く。魔女からは何も引き出せなかったと認めつつ、「次の戦いに必要な助っ人は用意できた」「役に立つと思うよ、相当」。ところが呼ばれた当人は上がってこない。「行きません」「自分は本の匂いが苦手です」「隔離施設で待ちます!」。
呼びつけた相手が岩元だった。「後輩ってのはいいよな」「いつでも先輩を慕ってくれる」「お前もそろそろ懐いていいんだぜ」「せっかく俺の推薦を受けた後輩なんだからよ」。返事は「え?」だけだった。
題名がここで裏返る。ずっと推薦する側として見てきた人物が、誰かの推薦を受けて今ここにいる後輩でもあったことになる。後輩を兵器にさせないために嘘の報告を続けている人が、どういう先輩に拾われたのかは、この作品の答え合わせとしてかなり重い。戦いの続きより、そちらのほうが先に気になってしまった。




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