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第7話の公式サブタイトルは「忍び里に咲くは、漢魂!」。戦闘がひとつも無い祭りの回だが、六忍の名前の並びには実在が伝わる忍者と、講談で作られた架空の忍者が混ざっている。公式サイトの用語集がそこを書き分けているので、これは深読みではない。そして賑わいの裏では、行方の分からない忍の話だけが三度、少しずつ濃くなっていく。




第7話「忍び里に咲くは、漢魂!」で起きたこと(要点だけ)
公式サブタイトルは第7話「忍び里に咲くは、漢魂!」(※1)。戦闘らしい戦闘がひとつも無い回なので、まず起きたことだけ並べておく。
- 泉の副作用で倒れていたアークが目を覚ますと、刃心一族の新しい里はもう完成していた。
- 里の長・二十二代目ハンゾウが龍王へ礼を述べ、アークとアリアンにも改めて感謝を伝える。
- 里の子どもは一族の子だけではなく、人族に追われて行き場を失った子も含まれている。
- 六忍のひとりツボネと会う。六忍は初代ハンゾウが決めた名を襲名する制度で、チヨメの本当の名は「ミア」だと明かされる。
- ツボネが持っていた本は、アークとアリアンの噂を題材にした読み物だった。もう一冊は「呪いで骸骨になった男と貴婦人の恋の物語」。
- 祭りの奉納行事は綱引き。アークとゴエモンが忍術も魔法も禁じて力だけでぶつかり、引き分けに終わる。
- アークは酒をすすめられて「気持ちだけいただく」と断る。逆にアリアンは飲みすぎて絡み酒になる。
- グレニスから伝令。①今後は「アーク・ララトイア」と名乗ること ②ダンカが南の大陸で双剣使いに襲われ療養中。
- その双剣使いが、里が探しているサスケと特徴が似ている。チヨメも同行することになる。
戦わない回だが、線は一本ずっと通っている
見終わって残るのは祭りの賑わいなのだけれど、サスケの不在だけは、三回に分けて少しずつ濃くなっていく。最初は「サスケも戻っていればよかったのに」という何気ない一言。次に綱引きの前で「任務に出たきり帰ってきてない」と説明され、最後にダンカを襲った双剣使いと重ねられる。その三回のあいだ、画面ではずっと綱引きと酒盛りが続いている。
六忍の名前には、実在した忍者と講談の忍者が混ざっている
公式の用語集が、わざわざ「架空の忍者」と書いている
この回でいちばん面白いのは、六忍の名前の並びだと思う。ツボネの説明では、選ばれた者だけが「初代ハンゾウ様がお決めになった特別な名前を襲名できる」。つまりハンゾウもゴエモンもツボネもサスケも、全部が襲名した名前で、だからチヨメにも「ミア」という本当の名前がある。
その名前の元ネタは、公式サイトの用語集にきちんと立項されている(※2)。服部半蔵は「戦国時代から江戸時代にかけて徳川家などに仕えた服部家の当主が代々受け継いだ通称」、石川五右衛門は「安土桃山時代に活動したとされる盗賊」、望月千代女は「戦国時代に巫女として日本各地を渡り歩いたと伝えられる人物」。ところが猿飛佐助と霧隠才蔵の項目だけは書き出しが違っていて、どちらも「講談などに登場する架空の忍者」と明記されている。真田十勇士の二人で、互いに相棒だったという説明まで付いている。
実在が伝わる人物と、後の世に作られた人物が、同じ六つの席に並んでいる。アークが劇中で「架空の忍者まで」と驚くのは、まさにそこだ。しかも公式が用語集の側で「架空」と断っているので、これは視聴者の深読みではなく、作品が意図的に置いた段差ということになる。
「日本人、いや、忍者好きの外国人」
アークの結論の出し方が良い。名前の並びを聞いた彼は「そのような名前を選ぶということは、日本人」と考えかけて、すぐに「いや、忍者好きの外国人」と言い直す。ここを言い直せるのが、この主人公の面白いところだと思う。実在の忍者だけを選んだなら日本人でいい。けれど講談の創作まで混ぜて選んだのなら、その人が持っていたのは日本の歴史ではなく日本の忍者ものの知識だ。
初代ハンゾウについては、公式の用語集にもう一つ手がかりがある。「時空忍術」の項目が「刃心一族を興した初代ハンゾウが使っていた空間転移の術」と説明されていて、これはアークが使う短距離転移と役割がそっくりだ。そして「刃心」は「ジンシン」と読み、「耐え忍ぶ者」という意味だという(※2)。漢字の当て方まで含めて、日本語を分かっている人間の仕事に見える。
「漫画の中のこと」と言った直後に、それが目の前を飛んでいる
エルフの里はファンタジー、忍者の里は「なんだか普通」
里を歩き出したアークの第一声が「エルフの里はザ・ファンタジーという感じであったが、こちらはなんだか普通のような」。異世界に来た人間が、異世界の里を見て「普通」と言っているのがおかしい。元の世界の記憶で埋まっている景色だから、彼にとっては新奇に見えない。そのあと隠し扉を見つけて「やはり忍者の里!」とはしゃぐので、退屈しているわけでもない。
空に凧が上がっているのを見つけたときの反応も同じ形だ。「誰かが遊んでおるようだな」「我も子供の頃は」と懐かしがったすぐあとで、その凧に人が乗って飛んでいく。アークは「とはいえ凧とか漫画の中のこと」「黒装束も本当は着てなかったと何かで読んだぞ」と否定するのだが、目の前では黒装束の忍が凧で滑空している。
遊び道具が乗り物になっている
凧について、里の側からも説明が入る。「初代ハンゾウ様の時代から代々受け継がれてきたものです」「本来は遊び道具だったと聞いています」。つまりこの里の凧は、初代が持ち込んだ遊びを、あとの世代が実用に振り直した結果ということになる。
そう考えると、この里の作りが全部つながる。初代が持ち込んだのは「日本」ではなく「日本の忍者もの」で、子孫たちはそのフィクションを、二十二代かけて本当に運用できるものにした。だから鳥居があり、行司の衣装があり、奉納があり、凧が飛ぶ。アークが「漫画の中のこと」と否定するたびに、その漫画が実装済みであることが示される。この回のギャグの構造はここだ。
二人の噂は、もう里の外で本になって売られている
「うっかり人族の騎士と魔王を倒しに行く」
ツボネが差し出してきた本の題が「エルフの女戦士さん、うっかり人族の騎士と魔王を倒しに行く」。アリアンの反応が「うっかりなの?」で、そこを気にするのかと笑ってしまう。中身は「互いに主の命で魔王を倒さなければならなくなった二人が、競い合ううちに次第に惹かれ合っていく」「エルフ族と人族、許されぬ禁断の愛」。アリアンは「いや、私たちそういうんじゃないから」と全否定するが、ツボネは第三章の展開まで語り出し、最後は「勝手な妄想しないで」で止められる。
問題は二冊目のほうだ。アリアンが「そもそもアークは骸……」と口を滑らせかけたところで、ツボネが「ご心配なく。アークさんのことなら、チヨメから聞いております」と先回りする。そのうえで出してくるのが「呪いで骸骨になった男と貴婦人の恋の物語」で、「姿形なんてどうでもいいのよね、心が通じ合いさえすれば」と要約してみせる。アリアンの返しは「そっちも違う」。
笑うところではあるのだけれど、置かれているものは軽くない。アークがいちばん隠したい形が、里の外ではすでに恋愛小説の題材として流通している。正体がばれる怖さと、正体がありふれた設定として消費されている状態が、同じ場面に同居している。鎧を脱げない理由が、少し変わって見えてくる。
外への向き方が、チヨメとツボネで違う
ツボネが本を集めている理由は「本というか、外の世界ですかね」。「外での任務が多いので、外への憧れが強いんですよ」と説明され、仲間に頼んで里の外から本を運んでもらっているのだという。祭りでは「人生何があるかわからないんだから、楽しめる時に楽しまないと」と言って飲み食いしている。
同じ六忍でも、チヨメは外へ出て同胞を助けるために潜り、ツボネは外の物語を持ち帰るために出ている。そしてこの里の子どもたちは、「中には人族に追われ、行き場を失った子供たちもいます」と説明される側だ。チヨメ自身も「故郷の里が人族に襲われて」と短く答える。外に憧れる理由と、外から逃げてきた事情が、同じ祭りの中に並んでいる。
綱引きは初代ハンゾウへの奉納で、忍術も魔法も禁止だった
鳥居、行司の衣装、奉納
祭りの目玉は綱引きだ。「一族の祭りでは、初代ハンゾウ様に捧げる奉納の儀式として、毎回綱引きが行われるんです」という説明を聞いて、アークは「鳥居、行司の衣装、奉納。やはり初代ハンゾウ殿は」と確信を深める。第6話で龍王の泉の手前に鳥居を見つけて突進したのと、まったく同じ反応だ。あのときは同郷の証拠を一つ見ただけだったが、今回は里ごと出てきている。
勝負のルールも良い。アークとゴエモンが向かい合ったところで、「互いに忍術や魔法は禁止。純粋に己の力のみでぶつかり合うこと」と取り決められる。アークは規格外の装備と魔法を持っている側で、ゴエモンは忍。その二人が、いちばん差の出ない条件をわざわざ選んでいる。
引き分けという結果の置き方
結果は「この勝負、引き分けです!」。毎回優勝しているというゴエモンと、この作品でほとんど負けたことのないアークが、綱一本で並んで終わる。勝敗をつけないことが、この回のいちばん祭りらしい処理だと思う。
ついでに前々回の優勝者がサスケだったことも、ここで説明される。サスケはゴエモンの同期で、毎回競り合ってきた相手。「力自慢というより駆け引き上手」とも言われる。綱引きの説明のふりをして、いない人物の腕前が先に紹介されている。終盤でその人物が双剣使いの疑いをかけられることを思うと、置き場所が周到だ。
飲めない騎士と、飲みすぎる戦士
「下戸なのですか?」に答えられない
宴席でアークは酒をすすめられ、「気持ちだけいただく」と断る。「騎士殿は下戸なのですか?」と重ねられても、「いや、そういうわけではないのだが」と言葉を濁すしかない。断る理由を説明した瞬間に正体がばれるので、この人はいつも中途半端な断り方になる。
第6話でアリアンが「息、してないみたいだけど」と言い、チヨメが「そもそもアーク殿は息をしていたのでしょうか」と返した場面があった。あのときアリアンは「ため息とかついてたし、食事だってしてたし」と数え上げている。周りが「していたはず」と思っていることと、本人ができることの差が、祭りという飲み食いの場でいちばん見えやすくなる。
アリアンが酔うのは、これで二度目
その隣でアリアンが盛大に酔う。止めに入ったアークの「アリアン殿に、それ以上酒を飲ませてはならぬ!」に対して、「あたしのお酒、返して!」「チヨメちゃん! どうして意地悪するの?」と絡み、しまいには本の話を蒸し返してチヨメに「もう逃がさないから」と抱きつく。アークが引き剥がすと「エルフがやんやの、引き分けなんて情けない」と綱引きの結果まで蒸し返し、炎を出しかけたところを「祭り、祭り」「めでたい祭りの席で周りに迷惑をかけるのはどうかと思うぞ」となだめられる。
この作品でアリアンが酔うのは第3話に続いて二度目だ。あのときは酒ではなく「食べるだけで酔える料理」で泥酔していたので、今回は初めて、ちゃんと酒で酔っていることになる。この二本には制作の側でも共通点があるのだけれど、それは最後にまとめて書く。
「アーク・ララトイア」と名乗りなさい、という答え
理屈は身分の話だが、渡されたのは家名
終盤、グレニスから伝令が届く。用件は二点。一点目が「アーク君、今後あなたはアーク・ララトイアと名乗りなさい」。理由は実務的で、「今アーク君は所属のない傭兵でしょ」「今後旅をする上で、身分のあるなしで動きやすさが段違いになるわ」。アークも「確かに」と納得している。
ただしララトイアは、長老ディランが治めるエルフの里の名であり、アリアンの実家の名でもある(※2)。動きやすさのために貸せる名前ではあるが、貸す相手は選ぶ。アリアンが「なんでそうなるのよ」と食ってかかるのはそこで、グレニスの返しが「これは録音だから何を言っても」。反論できない形にしてから置いていくあたり、第4話で「変な虫がついてないか見に来ただけ」と言っていたイビンの母親らしい。
そしてアークは、最後に自分から使ってみせる。旅立ちの場面での「なんせ我はアーク・ララトイアだからな」で、冗談めかしてはいるが受け取ってはいる。元の体に戻る目的が消えかけていた回のすぐあとに、戻れないままの自分に付ける名前が渡されたという並びになっている。
二点目のダンカと、三度目のサスケ
伝令の二点目が「ダンカ君が南の大陸で、手だれの双剣使いに襲撃されたみたいよ」。アリアンの評価は「ダンカさんはエルフの戦士の中でも屈指の実力者」「私だってダンカさんの不意なんてつけないわ」。第2話から連絡役として出ずっぱりだった人物が、初めて倒される側に回った。
ここで刃心一族の側から声がかかる。「もしダンカ殿を襲った相手を見つけたら、ご一報いただけないでしょうか」「現在里で探している人物と特徴が似ておりまして」。祭りの前に「どこで何やってるのかしらね」と言われ、綱引きの前に「任務に出たきり帰ってきてない」と説明された名前が、三度目でここに着地する。祭りの回の裏側で進んでいたのは、身内が一人行方不明だという話だった。チヨメが同行することになるのも、当然といえば当然になる。
まとめ|同じ二人が、二度ともアリアンを酔わせている
第7話は、第3話と同じ絵コンテ・演出
公式サイトのあらすじページには、各話のスタッフも載っている(※1)。第2期のぶんを並べると、第7話は絵コンテが西澤晋さん、演出がのがみかずおさん。この組み合わせは第3話「悪党散華と兄妹絆の舞」とまったく同じで、第2期では今のところ、この二本しかない。
そして第3話は、アリアンが酔っぱらった回だった。あのときは「食べるだけで酔える料理」による泥酔で、今回は本物の酒。アリアンが酔う回が、二度とも同じ二人の手で作られていることになる。第3話は悪党を成敗して回る世直し回、第7話は戦闘がゼロの祭り回で、話の型はまるで違う。それでも、羽目を外したアリアンを見せる役はこの二人に回ってきている。
総作画監督の欄が無い、唯一の回
もう一つ、第7話のスタッフ欄には目立つ特徴がある。第2期の第1話から第6話までは全部に総作画監督の名前が載っているのに、第7話だけ総作画監督の欄そのものが無い。代わりに作画監督が十一人並んでいて、これは第2期でいちばん多い(他の回は一人から六人)。祭りの群衆と出店と、綱引きの人だかりが延々続く回なので、手が要る場所の質が他の回と違ったのだろうと思う。
脚本は根元歳三さんで、第1話・第4話・第5話に続く四本目。第2期でいちばん多く書いている書き手だ。シリーズ構成の菊池たけしさんは、第2期ではまだ一本も脚本を書いていない(第1期では第11話・第12話を担当)。その根元さんが担当した第4話・第5話は、ヤコフの正体が割れてアンデッドの実験場が出てくる、この第2期でいちばん暗い二本だった。その同じ人が、凧と綱引きと絡み酒の回を書いている。
戦闘も事件も無い回だが、六忍の名前の由来が明かされ、アークに家名が渡り、行方不明の忍が次の敵と重ねられて終わる。「忍び里に咲くは、漢魂!」は、綱引きの真っ向勝負のことでもあり、その裏で誰も口にしなかった心配ごとのことでもある回だった。
出典
※1 TVアニメ『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中Ⅱ』公式サイト STORY(第7話「忍び里に咲くは、漢魂!」あらすじ・各話スタッフ)skeleton-knight.com
※2 同 公式サイト MAP & KEYWORD(服部半蔵/石川五右衛門/望月千代女/猿飛佐助/霧隠才蔵/刃心一族/時空忍術/ララトイア)skeleton-knight.com




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