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皇重護を殺したというアッシュの告白から、ロゼは大きく動揺する。父の仇だと信じていた彼に、一体何があったのか。彼女はアッシュが育ったラベンダーホームを訪れ、シスターから彼の過去を聞くことになるのだ。




前回の副題が、今回訪ねる場所の名前になっている
副題は「朧月 -Hazy Moon-」
第7話の公式副題は「朧月 -Hazy Moon-」。公式のあらすじは、アッシュが「俺が皇重護を殺した」と告白したことでロゼが思い込みを覆され、アッシュが育った「ラベンダーホーム」を訪ねてシスターから過去を聞かされる、という組み立てになっている(※1)。
「薫衣 -Lavender-」と「ラベンダーホーム」
ここで前回を思い出してほしい。第6話の副題は「薫衣 -Lavender-」だった(※1)。薫衣草はラベンダーの漢名で、その語が今回、アッシュの育った施設の名前として画面に出てくる。副題が一話ぶん先に場所を名乗っていたことになる。
この作品の副題は「漢語+英語」で揃えられていて、第1話から順に雪解、氷壁、紅霞、蛍火、光芒、薫衣、朧月。英語のほうを見ると、-Raspberry-、-Alliance-、-Damocles-、-Lavender- と、その回の鍵になる固有名詞がそのまま置かれている回がある。今回の -Hazy Moon- だけは固有名詞ではなく状態で、はっきり見ようとするほど輪郭がぼやける、という回の中身にきれいに合っている。
「殺した」と言う本人と、「殺していない」と言う敵
入口は前回の否定
今回の出発点は、アッシュ本人の告白ではなくその反対側にある。前回、戦闘のあとの街でアッシュの前に現れた相手が告げたのは、皇重護を殺したのはお前ではないという否定だった。告白と否定、両方を突きつけられたロゼは、アッシュの素性はすでに調べ上げたと思っていた自分の認識を、もう一度点検しなければならなくなる。
ギアスで、真実を取りに行く
そこでロゼが選んだ手段がギアスだった。「スメラギ・サクヤが命じる。あなたが知り得るアッシュ・フェニックスの情報を、余すことなく全て話しなさい」。視聴者の反応にも「ギアスのかけ方がオサレ」「ギアス特有の赤目」という声が出ていた。見せ方は初代からの様式そのままである。
ただ、この作品でのギアスはいつも代償とセットになっている。今回はその請求が、同じ回のうちに来る。
前回ヴァルターが自分から明かしていたことが、ここで効く
「私はシェリー様の騎士だ」
ギアスをかけられる前に、ヴァルターのほうから協力を申し出てしまうのが面白い。「私はシェリー様の騎士だ。主なき今もこの胸に忠誠の誓いはある。それはサクヤ様に対しても同様」。だから「君の行動がサクヤ様を守るためならば、喜んで協力しよう」と続く。
これは前回すでに仕込まれていた。第6話でヴァルターは、リントシュテット家とルクセンブルグ家はシェリーの成婚と同時に側近としてこの地へ移住してきた、と自分の口で説明している。あのとき語られた出自が、今回そのまま影武者を守る理由になっているわけだ。
「重護様のようになってもらわねば困る」
ヴァルターが影武者に向ける言葉も一貫している。「君にはサクヤ様のお父上である重護様のようになってもらわねば困る。お飾りではない皇帝として振る舞い続けることだ。それがサクヤ様を守ることにつながる」。前回、重護の命日に墓参りを勧めていたのも同じ人物である。この作品でいちばん筋を通しているのが、敵側の騎士だという配置は変わらない。
ノーランド家での訓練は、心を殺す教育だった
「兄は残れ。弟は捨ててこい」
シスターの語りで開く回想が、この回の本体になる。アッシュと弟のニコルは戦災孤児で、施設では「いつも年下の子を引っ張っていくお兄ちゃん」だったという。三年後に制度によって二人はリューネベルク家へ引き取られるのだが、そこで最初に下される命令が「使えない奴は必要ない。兄は残れ。弟は捨ててこい」だった。
アッシュの返事は「俺がニコルの分まで役に立ちます」。弟を残す条件として、自分の働きを差し出すところから全部が始まっている。
「返すべき言の葉は、ただ一つ」
訓練の言葉が容赦ない。「戦場ではわずかな時間のロスが命取りになる」「人間の体は急所に切り傷一つ入れるだけで死ぬ。最低限の動きで敵を仕留めろ」。もう無理だと漏らしたときの返しが、「お前に選択肢はない。返すべき言の葉はただ一つ、了解のみだ」。
そしてとどめが「辛いと感じていることがあるのなら、自らの心を殺せ。そうすれば何も感じなくなる」である。ノーランドの側からアッシュへの評価は「人を殺す機械として、私の役に立てばいい」だった。視聴者が「えげつねぇ」とだけ書いていたのも分かる。
回想にはもう一つ、いま見ると効く配置がある。訓練の場でアッシュを見下す先輩の騎士が、「お前がノーランド様のお気に入りかは知らんが、戦場で武勲を上げるのはこの私、アーノルド・レンクだ」と名乗るのだ。アッシュの戦い方には「騎士にあるまじき戦い方だ」「品位が足りないぞ、あれでは」と評を下す。
この人物は第2話でアッシュに敗れている。つまり視聴者は、勝敗を先に見せられたうえで、その勝者が昔どう扱われていたかを後から見せられていることになる。品位が足りないと言われた戦い方は、そのように育てられた結果でしかない、という順番で置かれている。
「約束の証」が、二度出てくる
「俺たちはみんな家族だから、また会えるよ」
施設を出る日、幼いアッシュは泣く子にこう言っている。「いいや、お別れじゃないよ。俺たちはみんな家族だから、また会えるよ」。そして「約束の証にこれあげる」「約束だ」と品を渡す。この短いやりとりが、この回の設計図になっている。
再会は、標的として起きる
暗殺の仕事を重ねるうちに、その相手と再会してしまうのが残酷なところだ。「再会……したくなかった」という一言だけで処理される。そのあと弟のニコルが庇いだてをして、ノーランドの一言「望みを叶えてやろう。ここから消えるがいい」で失われる。周囲の「少しやりすぎじゃねえか」に対する答えが「元からいらぬ子だ。残しておいても役に立たぬ」。
「俺は約束を破ったことは一度もない」
だからこそ、後半で牢の中から出てくる一言が効く。娘を守ってくれるのかと念を押されたアッシュが返すのが、「俺は約束を破ったことは一度もない」なのだ。子供のころの「約束だ」を、失ったあとにもう一度使う。約束という言葉が、この人物にとって最後に残った持ち物になっている。
「嫌いなものはない。好きなものの順位があるだけ」
関係は、牢の中から始まる
皇重護との出会いは牢だった。「話し相手が来た来た」「よぉ若いの。ここに収監ってことは、大金でもくすねとったか」という軽口から始まり、「私の名は皇重護。よろしくお願いいたします」と名乗る。領主が、暗殺者の少年に敬語で自己紹介するところから関係が始まっている。
この回でいちばんいい言い方
嫌いなものは何かと聞かれた重護の返事が白眉だ。「嫌いなものか。ない。ただ、好きなものの順位はある。今の1位は娘のサクヤだ。最下位は……ノーランドかな」。そのうえで「おっと、下手なことを言うと(処刑が)早まるかもしれん」と付け足す。
憎むのではなく順位をつける。心を殺せと教えられてきた少年の隣に、嫌いという感情そのものを持たない大人が座っているという対比になっている。娘の話になれば「私の娘と結婚したら君は私の息子になる」と言い出し、すぐ「待て待て待て、前言撤回だ。サクヤは嫁には行かさん」と取り消す。死刑囚の会話とは思えない軽さが、そのまま人柄になっている。
生かされていた理由と、当たっていた読み
重護が処刑されずに置かれていた理由も、この回で明かされる。重護奪還を掲げてテロリストが蜂起したところを、そこに重護がいるという読みで抵抗勢力の炙り出しに使った——聞かされた本人の返しが「私が用済みというわけか」だった。生かされていたのは温情ではなく、餌としての価値があったからである。
そして重護の見立てが恐ろしく正確だ。「私が消えれば、まだ幼いカリスが(皇位を)継ぐことになる。ノーランドのことだ、そのまま後ろについて傀儡国家にでもする腹積もりなんだろう」。これは第3話までにそのとおりに進んでいる。数年前に牢の中で言われていたことが、いま画面で起きている構図になっていて、回想を挟むだけで現在の説明まで済ませてしまっている。
「また好きなものを見つければいい」
自分のことを話し終えたアッシュに、重護はこう言う。「君は今、心の支えを失っているんだな。また好きなものを見つければいい」。それは力を与えてくれるものだ、見つかるさ、きっとだ、と。心を殺せと言われて育った側に、好きなものを持てと言う。この一言が今のアッシュの行動原理になっているのは間違いない。
アッシュは重護を殺していない。それでも、そう言い続けている
引き金を引いたのは誰か
処刑が翌日に早まったと知らされたとき、アッシュは脱獄を持ちかける。重護は日本人への弾圧が加速すると渋るが、「娘はどうするんだ。あんたが死ねば、今度は娘を餌に奴は動くぞ」「とにかく、俺があんたも娘も助ける」で折れ、「ならば君に預けよう、この命」と託す。
ところが逃走は読まれていた。待ち構えていた側の台詞が「処刑が決行となればアクションがあると読んでいらした」。重護は「いや、私は逃げられない身だ。だが君には生き延びてもらわないとな」と言い、「約束を破ったことがないと言ったよな。ならその約束、果たしてくれ。行けアッシュ。行って娘を守ってくれ」と送り出す。撃ったのはノーランド側の兵で、命令は「ガキの方は捨ておけ」だった。
だから両方とも、嘘ではない
シスターの結論は「重護様はアッシュを救うために犠牲になられたのです」。ずぶ濡れで戻ったアッシュが漏らすのは「全て(俺が)悪いんだ。俺が死ねばよかった」である。
つまり、「殺した」と言うアッシュも、「殺していない」と言う相手も、どちらも事実を言っている。引き金を引いていないことと、自分のせいで死なせたことは両立する。ロゼがギアスまで使って取りに行った真実は、仇の所在をはっきりさせるどころか、余計に朧にする答えだった。副題が -Hazy Moon- である理由は、たぶんここにある。
次回への予想と、代償の払い方
そして代償が同じ回のうちに戻ってくる。ロゼは待ち伏せに遭い、「ギアスは対策済みだ」「あんた、不用意に街中でギアスを使っただろう。おかげでお嬢ちゃんに繋がるいろんなことが明らかになった」と告げられる。協力者も国家反逆罪の容疑で拘束される。真実を取りに行った手段そのものが、足跡として使われたわけだ。
ここからは予想になるが、次回はこの拘束をどう外すかの回になるはずだ。ギアスが通じない相手が出てきた以上、これまでのように命令一つで場を動かす解き方はできない。父の仇だと信じてきた相手が仇ではなかったと分かった直後に、その相手を頼るしかない状況へ追い込まれる——という順番の作り方が、この作品はいつも意地が悪い。なお各話のスタッフは公式サイトに掲載がないため、この記事では触れていない。
出典
※1 TVアニメ『コードギアス 奪還のロゼ』公式サイト STORY(第7話「朧月 -Hazy Moon-」あらすじ/各話サブタイトル一覧)公式 STORY
※2 同 CHARACTER(皇重護/ヴァルター・リントシュテット/ナタリア・ルクセンブルグの人物紹介とキャスト)公式 CHARACTER
※3 同 ON AIR(放送・配信情報)公式 ON AIR




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