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『攻殻機動隊』第9話の副題は「BRAIN DRAIN ii」。第8話の幕で流れた報道は、国会の質疑にまで届いていた。そして九課に持ち込まれるのは、捜査の依頼ではなく取引である。特殊部隊規制法案を持ち出されたくなければ、彼女の業務上過失致死罪を受け入れろ。一人を差し出せば部隊は助かる、という条件だった。そして九課はその取引を、受け入れたように見せて裏切る。




副題は「BRAIN DRAIN ii」、開幕は国会中継
副題は公式の二か所で確認できる
第9話の副題は「BRAIN DRAIN ii」。公式サイトのSTORYページと、放送前日に出た公式のニュース記事の両方に同じ表記がある。原作の章題を英語のまま使うという法則も続いている。
第8話が「INTERMISSION + BRAIN DRAIN i」だったので、同じ章題の二回目という扱いになる。前回の幕で流れた報道が、そのまま今回の入口になっている。
総理は、答えないという形で答える
開幕は国会中継である。野党側が映像を示し、あれが合法的な警察活動に見えるか否かを答えていただきたい、と総理を追い込む。
返ってきたのは、その件については一切お答えいたしません、という答弁だった。存在を認めも否定もしないという扱いが、そのまま公の場に持ち込まれている。野党は調査委員会を設置して追及する構えだと報じられる。
手を引け、という勧告が先に来る
続く場面では、あの映像だが、という切り出しから話が始まる。監視中の対象へ九課が突入したことを、面倒な九課の動きを封じる好機でした、と評価する声がある。
そのうえで、ここらで君たちは手を引くというのはどうかな、と勧められる。事件の説明よりも先に、退場の勧告が来る。第8話の終わりに片づいたのは事件で、片づいていないのは部隊のほうだという構図が、そのまま続いている。
映像には、いちばん必要なものが映っていない
撃たれた側だけが映っている
法務省を通じて示される情報が、この回の前提になる。問題の映像には、撃たれた子供が銃に手をかけた点と、銃そのものが映っていない。
正当性を証明する側の材料だけが、都合よく欠けている。それでも他の面から作戦の正当性を証明して調査委員会を納得させるのは困難ではない、と言われるので、法的には勝てる見込みがある話として置かれる。
でっち上げと言われるほうが受ける
ところが、勝てることと収まることは別だという説明が続く。マスコミはでっち上げだと騒ぎ立てるだろう、なぜならそのほうが受けるからだ、と。
証拠の強さではなく、話の面白さのほうで決着がつくと最初から見切られている。この見立ては、そのあとの展開で一つも外れない。
訴えるのは、テレビを見た側から
九課の側にも別の報告が届く。テレビの映像を見た子供の親が、殺人罪で訴えるという知らせである。
被害の届け出よりも先に、報道のほうが訴えの起点になっている。事件そのものではなく、事件の映り方が動かしている回だということが、ここで確定する。
一人差し出せば、部隊は助かる
取引の言い方が丁寧すぎる
本題は取引だった。特殊部隊規制法案を持ち出されたくなければ、彼女の業務上過失致死罪を受け入れろ、という条件が示される。
効能の説明まで付く。マスコミに花を持たせ、国民は通念を再確認して納得する、それで九課は助かる、と。誰も損をしないという形に整えたうえで、一人だけを差し出せと言っている。
断り方が、数の話になる
荒巻の返しが良い。あきらめろと言われたものを、エスパーより数の少ない貴重な才能を諦めろだと、と言い直す。
情に訴えるのではなく、代替が効かないという一点で拒んでいる。彼女の情報も失われることになる、という理屈も添えられるので、感情の話は最後まで出てこない。
質問には答えられん、と先に言われる
場を締めるのは、何か聞きたいって顔だな、という一言だった。だがその通り、質問には答えられんよ、悪く思わんでくれ、と続く。
問われる前に、答えない範囲だけが確定する。開幕の国会答弁と同じ形が、今度は身内に近い相手の口から出てくる。
少年の電脳に、無かったもの
番号の最後の一つ
死んだ少年の電脳の防御がようやく解ける。出てきたのは電話番号がいくつかで、武器を扱う相手や行方不明の運び屋が並ぶ。
そして最後の一つが、ある国の大使館だった。暗殺計画がその国のものだと公開すれば、世論は一気にゴラントル寄りに傾く。困難な通商協定も追い風になり、外務省は九課への意趣返しまで果たせる、という筋書きが立つ。
武装組織なら当然あるはずの機能が無い
より重い報告は、そのあとに来る。少年の電脳は武器弾薬の操作には習熟していたものの、武装組織に標準的な、機密性の高い情報のやり取りに特化した機能が見当たらないという。
戦う訓練は受けているのに、組織として動く仕組みだけが入っていない。テロリストという肩書きが後から貼られたものではないか、という疑いが、ここで初めて技術的な形をとる。
動機を並べると、外務省より強い側がいる
草薙の読みは別のところを向いている。何兆円にもなるプラントの誘致は、ゴラントルにとって扱いに困る話だという整理である。
だから、外相暗殺をでっち上げて世論を操作する動機は、外務省より強い。犯人を探すのではなく、誰がいちばん得をするかで並べ替えるという手つきが、この作品らしい。
材料はすでに揃っていた。一週間後にゴラントルとの通商会談が控えていること、外務省は人形使いの一件以来ずっと閉鎖的で、その会談を六課だけで警護するつもりだったこと。日程と警護の割り振りだけで、誰がこの件を身内で処理したがっているかが読めてしまう。
会う前に、相手ごと吹き飛ばされる
表向きは謹慎中
動きだす前のやり取りが短くて良い。派手にやるな、お前は表向きは謹慎中だ、という指示に対して、了解、表向きはね、と返す。
釘を刺した言葉のほうを、そのまま抜け道の宣言に使っている。向かう先は、ゴラントル諜報部の根城になっているレストランだった。
先手を取られる
ところが店に着く前に、そのレストランが爆破される。ゴラントルを名指しする組織が犯行声明を出し、ゴラントル人の店員を狙った犯行だと報じられる。
会うつもりだった相手も巻き込まれている。取引の材料を握った側が、材料を使う前に潰されている。あと数歩進んでいたら、という言い方まで付く。
標的が外にいるのに爆破する
それをでっち上げだと言い切る根拠が、この回でいちばん切れ味がある。標的が外にいるのに爆破するのはあんたぐらいよ、という指摘である。
つまり店ごと吹き飛ばす必要はどこにも無かった。一般人が狙われたように見せることのほうが目的だった、という読みになる。ゴラントルへの同情が高まれば、それだけで筋書きは進む。
トグサに向けた一言と、熱力学の法則
二か月ほど投げやりだ、と言われる
見張り役として付けられたトグサが、遠回しに切り出す。部長が自分をつけた意味を考えたか、みんな心配している、ここ二か月ほど投げやりではないか、と。
第7話と第8話で積み上がった違和感が、ここで初めて言葉になる。本人ではなく、いちばん人間くさい隊員から指摘されるのが効いている。
熱力学の法則に従う
返事は、自分の心配をなさい、奥さんを悲しませたくないならね、だった。そのうえで、どうするのかと聞かれて返すのが、熱力学の法則に従うのよ、である。
行き先を決めているのではなく、成り行きに任せると言っている。第8話で報告書に書いたと言った異常が、この短い一言のなかにそのまま残っている。
その日が早いほど、やり直しもできる
もう一つ、後味の悪い一言がある。庇われて骨を折ったトグサに対して、いつかは奥さんが泣く日が来る、その日が早いほどやり直しもできる、と告げる場面である。
冗談として置かれてはいるが、内容は身も蓋もない。この回の草薙は、自分の側も含めて、人を代替可能な部品として数えている。取引の場で荒巻が使った代替が効かないという理屈と、正面から食い違っている。
裁判と、うっかりを装った脱出
公開の場に引き出される
公式のあらすじが書くとおり、草薙は独自の捜査を進めながら、最後には裁判にかけられる。技術的な争点ではなく、公開の司法の場で決着させるという形が選ばれる。
取引を断った結果として、いちばん見えるところへ引き出されている。箱に届いた反応も、司法劇として面白かったという評価と、孤立無援に見えるという評価に分かれていた。
恥を晒して退職するのは、みっともいいもんじゃない
現場が動き出す直前のやり取りに、賭け金がはっきり出てくる。マスコミの前で恥を晒して退職するのは、みっともいいもんじゃないぞ、という言葉に対して、その時は九課だって解散ものですよ、と返る。
一人の進退と部隊の存廃が、同じ天秤に載ったままになっている。取引の条件が断られても、条件そのものは消えていない。
人質と、七分の指定時間
事態は籠城になる。人質の足元には爆発物らしきものと無線装置が置かれ、指定時間まで七分、狙撃班の到着まで五分と報告される。
二分しか余裕がない、という数字だけが現場を動かしている。箱の側では、この一連が荒巻たちの打った芝居だという読みが複数並んでいた。
「元部下だ」と言い切る
残っていたのはブーツだけ
突入は空振りに終わる。押さえたと思った場所に残っていたのはブーツだけで、声だけが別のところから届く。
種明かしの一言も短い。声を出して驚くほどの手じゃないでしょ。仕掛けの規模ではなく、驚いた側の反応のほうを笑っている。
二分だけ上回った、という説明
現場の指揮も一見すると的確だった。我々の行動が彼女の予想を二分上回ったということだ、という説明があり、逃走経路の先回りまで指示される。
ただし結果として、その読みは一つも当たらない。正しく見える指示ほど、実際には相手を逃がす方向にだけ働いている。
説得すべきだ、という要求への答え
幕は短いやり取りで下りる。あなたの部下でしょう、説得すべきです、と迫られた荒巻が返すのは、元部下だ、の一言だった。
そのうえで、時間稼ぎの説得など通用せん、逃亡させて人質と離れた時点で捉えるのが上策だ、と続ける。取引の条件どおりに一人を切り離してみせながら、実際には差し出していない。差し出したように見せることが、この回の答えになっている。

































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