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『オールワークスメイド』第10話の副題は「嫉妬の魔女事件」。この回は、誰が何に気づいて何に気づかなかったか、だけでできている。新しい見習いは一目でヒロインを見抜き、お嬢様は自分の魔力に気づく。屋敷の側も、隠されていた不調にちゃんと気づいている。ところが事件の原因については、気づいた者はいなかったとはっきり言われる。そしていちばん丁寧に調べた推理が、いちばん見当違いのところへ着地する。




副題は「嫉妬の魔女事件」、そして原因は始まってすぐ一行で流れる
副題も担当者も、公式サイトに全部載っている
第10話の副題は「嫉妬の魔女事件」。公式サイトのエピソード欄、公式アカウントの放送御礼が二本、放送枠の番組告知、視聴者の投稿と、同じ表記が四か所以上で揃っている。
担当者も同じページに出ていて、脚本は根元歳三、絵コンテは石平信司、演出は清田健、総作画監督は劉剣と罗凌。第1話から第10話まで、絵コンテは総監督か監督のどちらかが担当していて、外部の人が一人も入っていない。演出のほうは回ごとに替わり、清田健はこれが三度目になる。
新キャラクターの声優は、プレゼント企画の告知で分かる
マイカ役は諸星すみれ。ただし名前が出るのはキャラクター紹介ではなく、公式サイトのニュース欄にある、サイン入り台本のプレゼント企画の告知である。日付は放送当日だった。
同じことが第9話のときにも起きている。あのとき新しく出てきたルーナの声優も、キャンペーンの告知だけで分かった。この公式サイトでは、新顔の配役はいつも企画のほうから先に出てくる。
事件の原因は、最初に一行だけ置かれる
学園へ送り出す朝の場面に、私の手駒にふさわしい、という一言が置かれる。誰に向けた言葉なのかは、この時点では説明されない。
続けて語り手が原因のほうを先に出す。その日の深夜、王立学園に邪悪な魔力を宿した雨が降った、と。そこに、だがそのことに気づいた者はいなかった、と付く。犯人当ての回でありながら、原因だけは最初から画面の外に置かれている。
マイカは、起きなかった災難を防ぐために働きに出ていた
気づいた場所は、井戸端の噂話だった
マイカの回想が良い。気がついたら子供の姿で知らない街にいて、男の子に助けられて教会へ。そこで耳に入ったのが、王城の舞踏会で襲撃事件が起きたという噂話だった。
王太子クリストファー、ヴィクティリウム公爵家、そして自分がいる孤児院。固有名詞が三つ揃ったところで、ここが銀の聖女と五つの誓いの世界だと分かる。第3話で名簿をめくって確かめた二人とは、入口がまるで違っている。
五月に来るはずのものが、六月になっても来ない
気づいた時点は四月。五月にはこの孤児院を舞台にしたサブストーリーが展開され、王太子とヒロインがお忍びで立ち寄る。その時ここはとっても困窮していて、という筋書きだった。
だから、お世話になった孤児院がひどい目に遭うなんて絶対嫌、と決めて働き口を探した。ところが現在は六月で、それっぽい事件は昨日まで一つも起きていない。そもそもあの孤児院、全然困窮していなかったような、と本人が言い直している。
空回りだと、本人が先に認める
年齢では雇ってもらえず、紹介状なしで本当によろしいのですか、と念を押されながら貴族の屋敷に入れた。理由は、とにかく希望者が現れませんとどうにもなりませんから、である。
災難を防ぐために来た人が、防ぐものの無い場所に着いている。しかも空回っているのではないか、と気づいたのは本人が先だった。そのうえで、屋敷にいたのが探していたヒロインだった、という順番になる。
ヒロインだと確信した決め手は、ゲームの知識ではなかった
同じ質問をした人が、以前にもいた
マイカの探りは直球で、銀の聖女と五つの誓いって知ってます、である。返ってきたのは、それは何かの物語、という本気の聞き返しだった。
面白いのはその続きで、そういえば以前、アンネマリー様が同じ質問をしていたような、とメロディ自身が思い出す。質問の中身は分からないまま、二度目だということにだけ気づいている。
反応がないので転生者ではない、と切って捨てる
マイカの判定は速い。ゲームに反応がないってことは転生者ではない、じゃあなんでメイド、と次の疑問へ移る。
転生者が二人いても、片方が自分の立場を何も知らなければ話は噛み合わない。メロディの側は、知っておいた方がいいのかしら、と気にし始めていて、探られていることには最後まで気づかない。
決め手になったのは、言葉ではなく実演だった
どうしてメイドになったのか、という質問への答えは、それはもちろん、メイドが大好きだからよ。内心の突っ込みが、どうして今のセリフで告白シーンみたいな笑顔を浮かべちゃうわけ、である。
亡くなった母に世界一素敵なメイドになると誓って、それからメイド魔法が使えるようになった。説明するわね、実践で、と続く。間違いない、この子がヒロインだ、が出るのは、話を聞いた後ではなく魔法を見せられた後だった。
なくし物が二回続き、片方が事件現場から出てくる
一週間で二回は、多すぎる
教室にペンキがまかれた翌日、ルシアナのハンカチが見当たらない。スカートにも鞄にも無く、一週間で二回もなくし物をするなんて、と本人がこぼす。
この一言だけで、あとで起きることが全部言われてしまっている。ただし言っている当人は、二回目の紛失を自分の不注意としてしか数えていない。
鉛筆は、荒らされた教室から返ってくる
一回目の紛失物は鉛筆で、先生が荒らされた教室を検分していたら教卓のそばに落ちていたという。ルシアナ本人は、見つかってよかった、という受け取り方をしている。
持ち主が喜んでいる場所が、そのまま犯人に仕立てるための仕掛けだった。この鉛筆がどういう手口なのかは、少し後の密会の場面で説明され直す。
授業は止めない、という判断
狙われたのは王太子が通う教室なのに、明日以降の授業は別室で通常どおり行われることになる。すでに授業が遅れている状況で、これ以上遅らせるのは良くない、という理由である。
級友の評価は、勇敢な方なのよ。被害者側がまったく動じないので、一つ目の事件は嫌がらせとしてほとんど不発に終わっている。それでも次が来る、という形で回が進む。
密会で、これから起きる三つの事件が読み上げられる
防音魔法と隠し通路から始まる
アンネマリーとクリストファーの密会は、防音魔法をかけたからもういいわよ、から始まる。まさかこの隠し通路を使う羽目になるとは、という言い方に、二人の付き合いの長さが出ている。
本題は確認だった。銀の聖女と五つの誓いにおける最初のイベント、嫉妬の魔女事件が始まった。魔王に魅入られた嫉妬の魔女が、ヒロインを犯人に仕立て上げて陥れようと画策する、という筋書きである。
三つの事件は、どれも規模が小さい
内訳まで出てくる。一つ目が教室ペンキ事件、二つ目が成績優秀な平民生徒をねらった机荒らし事件、三つ目がとある女子生徒に水をかける水浸し事件。
感想が、なんか、全体的にしょぼいな。返しが、実際に被害に遭ったらそうも言ってられないわよ。世界が滅ぶ話の最初の一手が、この規模であるという落差を、作品のほうから先に指摘している。
疑いたい相手が、被害者でもある
話が詰まるのは配役のところだった。ゲームでの嫉妬の魔女はルシアナ。ところが今回の代役ヒロインも彼女でほぼ確定している、というねじれがある。
そのうえ第三の事件で水をかけられるのはオリヴィア・ランクドール公爵令嬢。確かに彼女はルシアナを敵視している、でもこの事件では被害者でもあるはず。心当たりはあるのに確証が持てない、という止まり方をする。
正しい手順で調べると、正しくない結論に着いてしまう
被害者の共通点は、その場で三つまで絞られる
二つ目の事件の現場で調べているのはアンネマリーとオリヴィアである。被害に遭った生徒は五名、一年生百人中三十位以内に入った成績優秀者ばかり、というところまで出る。
そこにルシアナが、机を荒らされたのは全員平民だ、と足す。平民で、成績優秀で、裕福な家の者。三つ目まで絞り込んだのは、このあと疑われる当人だった。
動機の見立ても、どこも間違っていない
犯人の動機は妬みかしら、と話は進む。平民であるにもかかわらず成績が良く経済力もある生徒なら、平民にとっても貴族にとっても妬みの対象になる、という筋である。
条件から外れている生徒がいることも指摘され、犯人が気に入らないのは経済力の方かしら、と絞り込みはさらに進む。推理としては、ここまで一つも外していない。
そこへ、二回目の紛失物が出てくる
現場から出てきたのはルシアナのハンカチだった。先日なくして探していたんです、でもどうしてこんなところに、という反応まで含めて、全部が仕掛けの内側にある。
締めるのが、数日前にも同じようなことがありましたわね、の一言である。意地悪の形をしていない発言だけで、疑いが一人に集まっていく。誤解するよう誘導されている、と読んだのはアンネマリーだった。
ルシアナは、一人になった時に魔法を使えるようになる
借りなかった本が、別の道で届く
図書館のメロディは、お嬢様に良さそうな本を見つける。子供のための初めての魔法基礎。借りたいけれど、あくまでレクトの用事で来ているのだからだめだ、と自分で線を引いてしまう。
その本の題名は、後になって別の人の口からルシアナに伝わる。遠慮して手を出さなかったものが、遠慮したままきちんと届いている。ここは語り手が、好きな子に対する完全なる忖度である、と茶々を入れる場面でもある。
諦めちゃダメです、は本人がいない場所で効く
明かりの魔法は何度やっても出ない。私って魔法の才能ないのかな、というところで休憩になり、ポットが空だったのでメロディは席を外す。
一人になって呟くのが、魔法が使えれば、こうやってメロディみたいに、である。真似をしてみたところで、水が出る。第9話で魔力があることだけ確かめてもらった人が、次の回では自分の手で出している。
練習は、外でも続いていた
二学期から二人で応用魔法学の授業を受けましょうね、という約束まで一息だった。私も頑張らなくっちゃ、と返した相手は、その言葉をそのまま実行している。
後日、中庭で眠っているところを見つかる。朝早く起きて魔法の練習をしていたら眠ってしまった、外にしたのは気分転換のため。言ったでしょ、私も頑張るって、で説明が終わる。
信じてくれる人は数人でいい、そして隠し事は全員に見抜かれている
温度の話が、そのまま人数の話になっている
噂は教職員にまで広がり、ルシアナは前の晩も朝も食事が取れていない。それでも本人の報告は、何人かのクラスメイトが私のことを信じるって言ってくれたのよ、だった。
不思議ね、ほんの数人、私を信じてくれる人がいるってわかっただけで、とても心が温まったの。疑っている人数ではなく、信じてくれた人数のほうを数えている。
メイドの答えは、順位のつけ方が独特
メロディの返しは、私だってお嬢様を信じていますからね、お嬢様にお仕えするメイドとして、それだけは誰にも負けませんよ。
信じる度合いまで仕事の勝負にしてしまうのが、この人の癖である。いくらでも温まってください、と続けてしまい、そういう意味で言ったんじゃありません、と自分で慌てるところまでが一続きになっている。
隠すと決めた側が、その場で全員に気づかれる
旦那様と奥様には黙っておくわ、余計な心配かけたくないから。そう決めた直後に、後で聞かせてもらおうじゃないか、と背中から声がかかる。
屋敷の側の言い分は、そんな顔して私たちが気づかないとでも思ったの、である。心配をかけまいとして黙った時間だけが、まるまる無駄になっている。メロディも、お仕事が一段落ついたら教えてくださいね、と待つ側に回っている。
気づいた側に、生まれて二か月の人形もいる
セレーナの一言が効く。まだ生まれて2ヶ月ですが、お姉様のことは私が一番理解しているつもりですよ。マイカが、生まれて2ヶ月、と聞き返すので、人形メイドの説明もここで済む。
第8話で人格を与えた本人が、どうして母そっくりになったのか分からないと戸惑っていた相手である。第9話では頼まれていない励ましを先に言い、今回は隠している不調を先に見つけている。
幕を動かすのは、いちばん空回っていた人だった
締めはマイカの申し出だった。私も学園に行かせてください、私のゲーム知識でこのイベントを乗り越えてみせる。
起きなかった災難を防ぎに来た人が、いま起きている事件のほうへ自分から歩き出す。公式サイトの案内では、映像商品に収録されるのは本編1話から12話までなので、この事件に使える尺は多くない。






















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