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『LV999の村人』第11話の副題は「Lv11 王は絶対」。王城の王の間で、鏡は魔族との停戦を提案する。ところが、やめる理由として持ち出したリセットの話が、国王には続ける理由として返ってくる。そして人間の側にも、世界を管理する者がいた。パルナが魔族を憎んだきっかけまで、人間が作ったものだった。副題が敵の側の信条で立つのは、十一話にして初めてだ。




副題「王は絶対」は、主人公たちが一度も口にしない言葉だ
第11話の副題は「Lv11 王は絶対」。テレビ東京の番組情報ページによれば、放送は9月9日の水曜24時からだ。この作品の副題は毎回 Lv と話数がそろう形で並んでいて、そのうち何本かは本編の台詞から取られている。今回は、その取り方が今までと違う。
副題が誰の言葉かで、回の性格が変わる
第5話の「与えられた役割」は、生き方が役割に縛られているという嘆きの側から来ていた。第8話の「相容れない」はパルナの主張そのもので、第10話の「これから壊す」は仕組みを壊すという鏡側の宣言だった。ところが今回の「王は絶対」は、主人公たちが最後まで一度も言わない種類の言葉だ。
この一言は、息子を殺した理由として出てくる
「王は絶対であり、我々には遠く及ばないのです」と言うのはミリタリアだ。しかもその直前に、世界の機能を管理する王の願いと苦しみを理解しているからこそ、自分の子であっても危険な存在であれば殺せる、と続けている。副題になっている一言は、我が子を始末したことの正当化として置かれている。
第8話とまったく同じ作りになっている
第8話の「相容れない」も、パルナが自分の主張として掲げた言葉だった。そしてその回のうちに、掲げた本人の理屈が周囲から崩されていく。今回もミリタリアが「王は絶対」と言い切った直後に、鏡がその世界を丸ごと否定して回が終わる。副題を敵側の信条で立てて、同じ回の中で反証するというやり方が繰り返されている。
「役割」の話が、六話ぶん進んで戻ってきた
第5話の副題が「与えられた役割」で、今回は王が魔王に対して、役割どおり死んでもらう、と言う。役割という語が、生き方を縛るものから、死に方を割り当てるものへ変わっている。同じ言葉が、別の側の口から出ると意味が一段重くなる。
やめる理由として出した話が、そのまま続ける理由で返ってきた
王の間での会話は、この回の中心だ。鏡は交渉に来たと宣言し、王も主張は聞こうと応じる。ところが、そこで出した切り札の使われ方が、まるで逆になる。
停戦の提案は、意外なほど具体的だ
魔族と人間で停戦協定を結んでほしい、もう争いはやめようぜ、と鏡は切り出す。理由づけは、俺たちは何も変わらない、違いはモンスターを生み出すか生み出さないかだけだ、というものだ。そのうえでモンスターが問題なら何とかする方法を一緒に考えればいい、と対処まで提示している。魔王はすでに賛成していて、あとは国王が認めるだけだ、とも言う。
リセットの話は、王には初耳ではなかった
鏡は続けて、魔王を倒せばこの世界はリセットされる、すべての記憶と記録が抹消されてまた新たな魔王が誕生する、争いを繰り返すだけなんだよ、と説く。王が返したのは、その話をどこで聞いた、という問いだけだった。驚いたのではなく、出どころを確かめている。
「そう、まさにそれが重要な点だ」
返答はこうだ。まさにそれが重要な点だ、わしはそのリセットを起こすため、強い者を魔王討伐へ向かわせているのだ。同じ事実が、片方には争いをやめる理由で、もう片方には争いを続ける理由になっている。鏡が最大の説得材料として置いたものが、そのまま相手の動機の説明に使われてしまう。
説得の材料が、相手の正体の証明になる
王はさらに、魔族とモンスターに世界の機能を管理する者がいるのなら、人間側にも同じ役割の存在がいると思わなかったのか、と言う。鏡が知識として持ち込んだ世界の仕組みが、目の前の相手が何者かを言い当てる形に組み替えられている。名乗りではなく、こちらの持ち札から逆算させる出し方になっている。
交渉は、一往復で終わる
会話を打ち切るのは「話は終わりだな」の一言だ。ここまで来て、双方が事実そのものについては一度も争っていない。世界の仕組みの認識は完全に一致していて、そこから何をするかだけが正反対に分かれている。話が通じないのではなく、通じたうえで決裂している。
「誰も殺してねえよ」が、この回の手土産になっている
王城への突入から王の間までが前半だ。ここで一貫しているのが、命を奪わないという縛りで、それが戦い方にも笑いどころにも交渉の材料にもなっている。
突入の手段が、殺さないための工夫になっている
兵の数が多くてきりがなく、強い魔法は連発できない。魔力を込める手間がかかるうえ加減も難しい、という理由まで説明される。そこで採られるのが、味方を投げて先へ送り、先に行った者が受け止めるという方法だ。倒して進むのではなく、飛び越えて進むことで人数の問題を回避している。
蹴り飛ばされた場所が、前の話の意趣返しになっている
一人だけ受け止めそこねる場面があり、手元が狂った、わざとじゃない、という言い訳が入る。ところが直後に、襲撃してきたときに見当違いの場所へ蹴り飛ばされた、という証言が出てくる。命を奪わない縛りの中で、私怨だけがきっちり処理されている。絶対わざとだな、という突っ込みも入る。
守るための壁が、逃がさないための壁になる
王は城を覆うバリアを起動して、外敵から城を守るためのものだと説明する。そのうえで、内側にいる者を外へ出さぬように使うのは初めてだ、と付け加える。守りの道具の向きを裏返しただけで、同じ壁が閉じ込めるための壁になる。準備が万全だという説明が、退路がないという説明にもなっている。
王は最初、ちゃんと話を聞くと言った
城の兵は全員殺したのか、という問いに、誰も殺してねえよ、話し合いに来たんだからな、と鏡は答える。やらなかったことが、そのまま交渉のカードとして差し出されている。王もまずは話し合いだと言い、主張は聞こうと応じる。この回の決裂は、聞く気がなかったから起きたものではない。
「道具ではない。だが戦ってもらわねば困る」
洗脳を施してやろうと言われた鏡が、俺たちは戦いの道具じゃねえ、と返す。王の答えは、確かに道具ではない、だが戦ってもらわねば困るのだ、だった。相手の言い分を否定しないまま、扱いだけは一ミリも変えていない。人格を認めることと、道具として使うことが、この王の中では両立している。
パルナが魔族を憎んだ理由は、人間の側が作ったものだった
後半で明かされるのが、パルナの過去の種明かしだ。しかもそれが、本人に向けた告白としてではなく、王とミリタリアの世間話として始まる。
種明かしは、雑談の形で始まる
王が、魔族と人間が手を取り合う世界か、かつてそれを目指した者がいたな、と口にする。続けて、ミリタリアが報告なしに処理してしまった、お前の息子には価値があった、それだけは惜しく感じるな、と言う。誰かの人生を決めた事件が、上司と部下の思い出話として持ち出されている。
殺したうえで、犯人が分かるようにした
ミリタリアの説明はこうだ。交流を図ろうとした魔族の集落に赴いて、魔族の一人を殺したのですよ、自分の身内の関係者であることが分かるようにしてね。殺したこと自体より、誰の仕業か分かるようにしたことのほうが本体になっている。両者の仲を裂く必要があった、という説明がそのまま動機だ。
「それだけで崩れる関係なのです」
パルナが、師匠を殺すよう仕向けたのはあなただというのか、と問い、先に裏切ったのはどちらだったのか、と気づく。返ってきたのが、それだけで崩れる関係なのです、という一言だった。仕掛けた側が、仕掛けの安さを自分から評価している。手間をかけていないという自慢が、そのまま人間関係への侮辱になっている。
恨みは、人材を作るための手段だった
さらに、おかげで魔族に恨みを持つあなたのような優秀な存在も手に入りました、と続く。誰かの憎しみが、副産物ではなく最初から回収する予定の成果物として語られている。パルナが十年単位で抱えてきたものが、相手の側では在庫の一つとして数えられていた。
第4話と同じ構図が、憎む側に起きた
第4話で明かされたのは、鏡の母を殺したのが人間だったということだった。今回は、魔族を憎み続けてきたパルナのほうに、同じ形の真相が来る。この作品は、憎む理由をつくった者と、憎まれている相手が別人だという話を二度やっている。しかも二度目は、憎しみが意図して仕込まれたものだったところまで踏み込んでいる。
アリスは、動かないことで反論した
鏡が倒れたあとの場面が、この回でいちばん静かで、いちばん強い。アリスは何も言い返さず、ただ治療を続ける。それが結果として、目の前で並べられている理屈への反論になっている。
治療が、そのまま反論になっている
離れなさい、そこだと遺体を傷つけることになる、と言われても、アリスは、やだ、と答える。どうせ死ぬなら鏡さんのそばを離れない、僕たちのために戦ってくれた鏡さんと一緒に僕は行く、と続ける。逃げないことでも戦うことでもなく、治し続けることを選んでいる。
定義を並べながら、その反例を殴っている
パルナが並べるのは、人間のことを思うなんてありえない、いざとなれば泣いて命乞いをするに決まっている、平気で人を裏切り人の死をなんとも思わない、それが魔族でしょう、という一続きだ。魔族とはこういうものだという定義を口にしながら、その定義に一つも当てはまらない魔族を殴っている。後で本人が、アリスをこんなふうにしたのは私なのよ、と認める。
鏡は許していない
生き返った鏡がパルナに言うのは、確かにお前がやったことは最低だよ、だ。そのうえで、すっげえ悩んだんだろ、悩んで悩んで行き着いた行動だったんだろ、と続け、これからの行動で償えばいい、俺はそれを見届けるだけでいいんだ、と締める。行為の評価は一切下げないまま、先に進むことだけを認めている。大事なのは過去じゃなくてこれからの未来だ、という言い方も、過去をなかったことにはしていない。
礼を言う相手が、庇った相手のほうだ
鏡は、あと一発小さな爆発魔法でも喰らえば死ぬくらいだった、でもアリスが傷を癒してくれた、小さな体をボロボロにしてまで、と説明する。そして、ありがとな、よく頑張ってくれた、今度こそ守ってやってくれ、と言う。庇って倒れた側が、庇われた側に礼を言って、そのうえで守る役を頼み直している。
怒りの理由が、自分のことではない
制限を解除した鏡がミリタリアに突きつけるのは、大切な人の死がその後の人生にどれだけ影響を与えるか、どれだけもがき苦しむか、お前は知っているか、という問いだ。パルナの憎しみも、魔族の悲しみも、クルルの苦しみも、全部そこから来ていると並べる。自分が殺されかけたことについては、一言も怒っていない。たった一つの目的のために大勢が苦しむ世界は認めない、というのがこの回の締めになる。




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