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第11話の副題は「無垢」。ミミは招集のたびに元気な顔で帰ってきていたが、実際は戦場で誰よりも傷を負い、それを洗い流してから部屋に戻っていた。ミミが守ろうとしていたのは、何も知らずに待っているシーナの日常だった。真実を知ったシーナは「どうして黙ってたの」と問い詰め、二人は正面からぶつかる。最後にシーナは「弱いから何もしなくていいなんて思えない」と言い切る。




副題「無垢」は、汚れのない帰り道のこと
公式のあらすじは、腕を切られた記憶から始まる
第11話の副題は「無垢」。公式サイトのあらすじは、実技試験を前にしたシーナが「かつて敵に腕を切られたこと」を忘れられずにいるところから始まり、ミミが「実際は戦場で誰よりも奮闘し、ずたぼろになって帰ってきていた」ことを明かす。あらすじの時点で、この回が、見えていたものと「実際」との食い違いの話だと示されている。
汚れていないように見える帰り道
この回のミミは、招集のたびに元気な顔で部屋へ戻ってくる。けれど本当は、戦場の傷と汚れを落としてから帰ってきていた。シーナが見ていた汚れのない姿は、ミミが手間をかけて作った姿だった。副題の「無垢」は、まずこの帰り道に重なる。
無垢でいてほしいと願う側
もう一つ、ミミはシーナに戦ってほしくないと思っている。練習もやめて、部屋で待っていてほしい。ミミが守ろうとしているのは、何も知らないまま待っているシーナの日常だ。汚れを見せない側と、汚れる場所へ行こうとする側が、この回の最後で正面からぶつかる。
実技試験、「怖いよ」と言うのはミミのほう
仮想敵を時間内に倒せれば合格
回は実技試験から始まる。「ではこれより実技試験を行います」「こちらで用意した仮想敵を時間内に倒せれば合格です」。腕を切られた記憶を抱えたシーナにとって、いちばん向き合いたくない種類の試験だ。
ミミは代わりに受けたがる
震えているのはシーナより先にミミのほうだ。「怖いよ」「もうミミが代わりに受けられればいいのに」と言い、「そうだ先生にお腹痛いって言えば見学にしてもらえるかも」とまで考えるが、仮病だとたしなめられる。ミミの心配は、シーナを試験から外す方向にしか働かない。
シーナは「前より頑張れるはず」と言う
名前を呼ばれたシーナは「大丈夫前より頑張れるはずだから行ってくるね」とコートへ向かう。胸の内では「それだけじゃダメなんだ」「自分にできることをするためには」「誰かの力になるためには」と自分に言い聞かせている。シーナは怖さを消せないまま、それでも前に出る理由を探している。
よみがえる「シーナちゃんはいいよね」
試験の最中、シーナの頭に「シーナちゃんはいいよね」「弱くて」「戦争なんて人ごとだもんね」という言葉がよみがえる。かつて投げられた「弱くて」という一言が、シーナが試験から逃げない理由の根にある。「みんなみたいに戦えるわけじゃない」という引け目も、同じ場所から出ている。
結果は時間切れで不合格
夜になって、結果が分かる。「時間切れで不合格だったからね」「前よりはうまくできると思ったんだけどな」。頑張れるはずだった試験は、合格には届かなかった。それでも「合格したいの」と聞かれて、答えは「まあね」だ。
「シーナは弱いんだよ」というミミの言い分
見学のミミとハル
試験のあいだ、ミミは見学に回っている。「先生がミミは受けなくていいから見学してなさいって」。隣のハルは「まあ君には必要ないもんな実技試験なんて」と返す。戦える側のミミは試験を免除され、戦えない側のシーナが試験を受けている。
「腕飛ばしたりしちゃうかもしれないじゃん」
ミミの心配は具体的だ。「だってミミが見てない間に怪我したり腕飛ばしたりしちゃうかもしれないじゃん」。ハルが「でもあれは本物の敵が紛れ込んでいたから」と以前の模擬戦の件をなだめても、ミミは「また紛れ込んでるかもしれないし」「もしすごい怪我とかしたら」と引かない。ミミの頭の中では、腕を切られた日がまだ終わっていない。
「本当は嫌いなんだよ」
ハルは「トツキさんって前からあんな感じだったっけ」「実技試験とかイヤイヤ受けてた気が」と首をかしげる。ミミの答えは「本当は嫌いなんだよ」「痛いのもトゲトゲの魔法も」「なのになんでシーナが頑張らないといけないの」。シーナの変化を、ミミはいちばん近くで見ていて、いちばん受け入れられずにいる。
「ミミと違ってシーナは弱いんだよ」
ハルが「僕たちだっていずれ上級生になるんだし」「やんなきゃいいなんて言ってられないよ」「どんどん人も減ってるって言うし」と現実を挙げると、ミミは「でもシーナは戦わなくていい」と言い切る。理由は「ミミと違ってシーナは弱いんだよ」「もし戦場に出て怪我したら」「死んじゃうかもしれない」。ミミの「弱い」は見下しではなく、守る理由として使われている。
歯磨きのあとの招集令
クッキーと歯磨き
夜の部屋はいつもどおりだ。クッキーを食べたあとに「歯磨きできたー」、「今日も一緒に寝る」、「クッキーおいしかった」と聞けば「また焼いておくね」「ミミもやる」「じゃあ一緒に作ろう」。二人の日常は、クッキーを一緒に焼く約束の形で続いている。
「一緒に受けられる授業がいい」
合格したい理由として出てくるのが「一緒に受けられる授業がいい」だ。シーナが試験を受け直す理由の中に、ミミと同じ場所にいたいという気持ちが入っている。戦いたいからではなく、隣にいたいから前に出ようとしている。
セイランがいなくなって以来の呼び出し
そこへ「招集令 招集令」の放送が入る。「セイランがいなくなって以来の呼び出し」で、「平気なわけないよね」。招集の放送は、クラスメイトを失った記憶と切り離せないものになっている。
危ない練習はしないこと
出かける前のミミは、自分がいないあいだに危ない練習をしないようシーナに念を押す。「行っちゃった」「大丈夫だよね」。戦場へ行く側が、残る側の安全のほうを気にかけている。この順番が、後半の言い争いの芯になる。
汚れのない姿で帰ってくる
「ミミが元気に帰ってきて嬉しい」
戻ってきたミミは、シーナに「ミミが元気に帰ってきて嬉しい」と尋ねる。シーナは「もちろん嬉しいよ」「ちょっと心配してたから」と答え、ミミは「大丈夫だよ」「ミミ強いもん」「だからシーナは部屋で待っててね」と続ける。ミミが確かめているのは、自分の無事よりシーナが嬉しいかどうかだ。
招集は続き、ミミは毎回元気に帰る
語りが時間を進める。「それからも招集は続いたけどミミは元気に帰ってきた」。元気に帰ってくることが、何度も繰り返されるうちに当たり前になっていく。
シーナは「いい方向に向かっている」と思う
保健室の手伝いをしながら、シーナは「最近落ち着いてきたんでしょうか」とフラン先生に話しかける。「招集された先輩たちはみんな無事に戻っているって聞きますし」「下級生の参加もなくなってますし」「前みたいに怪我して帰ってくることもないし」「いい方向に向かっているのかなって」。シーナの見立ては、目に見える事実だけを並べると筋が通っている。フラン先生の返事は、手が止まっていると注意するだけだ。
知っている大人は黙っている
シーナが離れたあと、フラン先生に「トツキさんには話したんですか」と尋ねる声がある。フラン先生の答えは「ミミが必死に隠してるのよ」「私に話す権利はない」。「いずれバレますよ」「隠しておけるはずがありません」と言われても、「けど二人に任せるしかない」。本当のことを知っている大人は、あえて二人のあいだに入らないことを選んでいる。
戦場のミミと、「怪我人も少なく済んでいた」理由
「攻撃がかすっても怯みもしない」
戦場の場面では、上級生たちがミミの戦い方を話している。「最近また強くなったんじゃないか」「攻撃がかすっても怯みもしない」「毎回こんなに無茶をして」「今日はなんとか前線で食い止められたが」。強さとして語られているのは、傷を気にせず前に出続けるやり方のことだ。
シーナが見た本当の姿
帰りの遅いミミを待っていたシーナは、「まだ戻ってきてないのかな」と様子を見に行き、傷ついたミミの姿を目にする。そこで聞かされるのが「最近ずっとだったみたい」「おかげで怪我人も少なく済んでいたんだけど」だ。シーナが「いい方向」と呼んだ変化は、ミミ一人が傷を引き受けることで保たれていた。
先輩たちが無事だった理由
保健室でシーナが挙げた「先輩たちはみんな無事」「下級生の参加もなくなってますし」は、どれも本当だった。ただ、その理由が抜けていた。先輩が無事で、怪我人が減り、下級生が呼ばれなくなった分の傷は、全部ミミの体に集まっていた。
「どうして黙ってたの」
「シャワー浴びて」「服も綺麗にして」
シーナは「どうして黙ってたの」と問い詰める。「ミミが今でもこんな姿で帰ってきてるなんて」「全然知らなかった」「シャワー浴びて」「服も綺麗にして」「私にバレないようにして帰ってきていたんだよね」「隠していたんだよね」。汚れのない帰り道は、偶然ではなく、ミミが毎回用意していたものだった。ミミは「そんなつもりじゃ」と言いかけ、汚れたままだと「泣いちゃうかもしれないし」と理由を明かす。
「死んでも蘇れない誰かがこうなるよ」
シーナが「ひどい戦い方させられてるのがずっと嫌で」と言うと、ミミは「ミミがやんなきゃ他の人がこうなるよ」「死んでも蘇れない誰かがこうなるよ」と返す。「ミミがみんなの代わりになれば」「もう誰も死なないじゃん」。ミミの理屈は、自分だけは死んでも戻れるという前提の上に立っている。シーナも「それはそうかもしれないけど」としか言えない。
シーナの対案は、痛みを和らげる魔法
シーナは「聞いて」と切り出し、自分が「人の痛みや不安を和らげることができる魔法」を少しだけ使えると打ち明ける。「私もっと練習して」「ミミやみんなを助けられるように強くなるよ」「ミミ一人に助けられてばかりじゃなくなるように」。シーナの答えは、ミミを止めることではなく、ミミの隣に立てるようになることだ。
「弱いなら何もやんなきゃいいだけじゃ」
ミミの返事は厳しい。「弱いなら何もやんなきゃいいだけじゃ」「ミミはただ待っててほしいだけ」「今までみたいに二人でクッキー焼いたり」「裏庭でお花集めたり」「お掃除したりお風呂入ったり」「そうやってただ楽しいこと一緒にしたいだけなのに」「練習なんてやめなよ」「一人も怪我しないくらいミミが戦うから」「ミミ強いから不死身だから」。ミミが望む日常には、戦場のことを何も知らないシーナが必要になっている。
「どうすれば間違いじゃないの」
シーナは「そんなの喜べない」と言う。元気に帰ってきたミミに「もちろん嬉しいよ」と答えたのは、ついこのあいだのことだ。ミミは「どうすれば間違いじゃないの」と問い返し、「なんでミミのお願い聞いてくれなかったの」と責め、もうシーナのお願いは聞かないと言い放つ。第10話の終わりに「お願い」の数え方でつまずいた二人が、この回でその言葉を互いに投げ合っている。
フラン先生の「伝え続けるしかない」
割れた鉢植え
ミミが去ったあと、残されたのはシーナと割れた鉢植えだ。シーナが謝ると、フラン先生は「普段ならむちゃくちゃ言ってるのは大抵あの子の方だけどさ」「今の話は残念ながら」と切り出す。フラン先生は、今回に限っては理屈の上でミミのほうが「筋が通っている」と認める。
「その理屈は揺らがない」
シーナが「そう思うんですか」と聞き返すと、フラン先生は「私だけじゃない」「学校もミミと同じように考えているから」「ミミに頼ろうとする」と続ける。「その理屈は揺らがない」「しかもミミ本人がそれでいいと思っている」。ミミの自己犠牲は、ミミ一人の考えではなく、学校の仕組みそのものに組み込まれている。
「伝え続けるしかない」
シーナの「諦めるってことですか」に、フラン先生は「それで納得できるなら万事解決だけど」「そうじゃないんでしょ」と返す。そして「あんたはとにかく嫌だと思っている」「間違っていると思っている」「だったらその気持ちを伝え続けるしかない」「今のままじゃ嫌だって」。理屈で勝てないなら、気持ちを言い続けることしか残っていない、という大人の答えだ。
「弱いから何もしなくていいなんて思えない」
夜、シーナの頭にもう一度「シーナちゃんはいいよね」「弱くて」がよみがえる。シーナの答えは「弱いから何もしなくていいなんて思えない」「そうやって自分に言い訳して逃げ続けるの」「もう嫌なの」「今のままは嫌なの」。ミミの「弱いなら何もやんなきゃいい」を、シーナは自分の言葉で打ち返している。
まとめと考察
「無垢」は、ミミが自分にかぶせた姿
ミミは戦場の傷と汚れを洗い流し、何事もなかった顔で帰ってきていた。副題の「無垢」は、まずミミが毎回つくり直していた、汚れのない自分の姿のことだと読める。汚れて帰れば「泣いちゃうかもしれない」から、ミミは嘘の無垢を選んだ。
「無垢」は、ミミがシーナに求めた条件
同時にミミは、シーナに練習をやめて部屋で待っていてほしいと願う。ミミにとってのシーナは、戦場を知らないままでいてくれる相手でなければならなかった。守りたい気持ちが、相手の成長を止める形になっている。
「弱い」という言葉の行き先
この回には「弱い」が何度も出てくる。かつての「シーナちゃんはいいよね」「弱くて」、ハルに向けたミミの「シーナは弱いんだよ」、言い争いの「弱いなら何もやんなきゃいいだけじゃ」。最後にシーナがそれを「弱いから何もしなくていいなんて思えない」と打ち返したことで、この言葉の意味が初めて逆向きになった。
お願いの数え方の先
第10話でミミは「お願い、シーナは聞いてくれないの」と言い、シーナは「ミミ、だめだよ」と返していた。第11話では、ミミのほうが、もうシーナのお願いは聞かないと言う側に回る。互いのお願いを聞けなくなった二人に、フラン先生が渡したのは「伝え続けるしかない」という、答えではなく続け方だった。




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