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第11話の副題は「完璧令嬢の決意」。聖女試験のさなかに倒れたフローラを、カロリーナは全力の神聖力で救い、初代聖女に選ばれる。告発しなかった理由を、カロリーナは「大嫌いな私に助けられたこと」がいちばんの屈辱だからだと言う。一方でテオドールは、フローラの力が妹の神聖力に支えられていた可能性を指摘する。回想では、泣けなかった日にかぶった完璧令嬢の仮面が明かされる。




副題「完璧令嬢の決意」の完璧令嬢は、フローラのこと
副題は、第7話の呼び名をもう一度使っている
第11話の副題は「完璧令嬢の決意」。公式アカウントの告知には、カロリーナの「私、結構、黒いでしょ」という台詞も添えられている。「完璧令嬢」は第7話の副題「完璧令嬢の揺らぎ」で使われた呼び名で、第10話ではフローラ自身が「完璧令嬢と呼ばれた私の」と口にしていた。副題の主語は、聖女に選ばれるカロリーナではなく、姉のフローラのほうだ。
公式のあらすじは、秘薬に頼るところで止まる
公式のあらすじは「厳しい試験のさなか、カロリーナの神聖力を目の当たりにし、焦りを隠せずにいるフローラ」から始まり、フローラも「モニカと同様に、ジョナサンからマナの秘薬を受け取っていた」と明かす。あらすじが書くのは秘薬に頼るところまでで、その先でフローラが倒れることは伏せられている。本編はその続きから始まる。
アバンの「予期せぬ出来事」
アバンでカロリーナは、「かつてのトラウマから不安な気持ちになる私を」「エドは励ましてくれる」と振り返り、「今の私はマルコシアス帝国の第二王子の妻で」「神聖力の持ち主なのだから」と自分を立て直す。そこへ「しかし予期せぬ出来事が起こった」と続く。自分を支える言葉を並べ終えたところで、姉のほうが先に崩れる。
決意する人は二人いる
この回には、腹を決める人物が二人いる。フローラは回の終わりに妹と決着をつけると心に決め、カロリーナは聖女としての務めに向けて動き出す。副題の「決意」は姉のものだが、同じ回の中で妹も別の方向へ腹を決めている。二人の決意が向かう先は、最後に同じ場所で重なる。
「いなくなってくれたら」と思ったことのある妹が、姉を助ける
カロリーナは、自分の本音を先に認める
倒れた姉を前にして、カロリーナの胸の内に出てくるのは「確かにお姉さまがいなくなってくれたらと思ったこと」があるという告白だ。助ける前に、助けたくない気持ちがあったことをまず認めている。そのうえで「私の願いを叶えて」と祈りに入る。きれいごとだけで姉を救うわけではないところに、この作品の正直さがある。
全力の神聖力と、背中の羽
カロリーナが力を注ぐ場面では、周りから「神の愛し子たるカロリーナ妃殿下に」「最大限の敬意を」という声が上がる。視聴者の感想でも、全力を出したカロリーナに羽が生えた場面が複数の投稿で取り上げられている。試験の点のために解いた手加減を、ここでは姉を救うために使い切っている。
「治りが遅い」
ところが力は思うように届かない。「お姉さまの傷を癒し」と祈っても、カロリーナの口から出るのは「治りが遅い」だ。第10話で30人の聖騎士を治した神聖力が、姉にだけは効きにくい。この違和感が、後半の謎解きの入口になっている。
「本当に大丈夫よ」
治療を終えたカロリーナに、エドは「大丈夫か」「無理をしていないか」と声をかける。返事は「本当に大丈夫よ」で、エドの心配性を笑ってみせる。第10話で姉が拒み続けた「大丈夫か」を、カロリーナはそのまま受け取っている。心配をどう受け取るかで、姉妹の違いがもう一度浮かぶ。
エドがいなければ、助けなかったかもしれない
カロリーナは続けて、エドと出会っていなければ「お姉さまを助けなかったかもしれない」と打ち明ける。姉を助けた理由は姉への情ではなく、エドと出会ってから変わった自分のほうにある。姉を許したわけではないことを、本人がいちばんよく分かっている。
初代聖女は747ポイント、第三試験は4位
試験は、そのまま続けられる
騒ぎのあと、司会は「少々トラブルもありましたが」「試験はこのまま実行いたします」と告げ、候補者たちに「速やかに持ち場に戻り」と促す。候補者の一人が命を落としかけても、試験は止まらない。第10話で主催者が短期間での開催だったと認めていたことを思うと、この続行は少し冷たく見える。
「初代聖女に選ばれたのは」
結果発表で読み上げられるのはカロリーナの名前だ。「初代聖女に選ばれたのは」マルコシアス帝国の聖女候補であるカロリーナで、「総合得点は747ポイントでした」。「初代」とあるとおり、カロリーナはこの試験で選ばれる最初の聖女になる。
第三試験は4位
内訳も読み上げられる。「また1次・2次試験ともに堂々の1位」「3次ではトラブルに見舞われましたが」「4位の成績を収めています」。第三試験の4位は、姉を助けるために宝探しを止めた結果の順位だ。第10話で姉が狙った「第三試験の1位だけでも」という望みは、皮肉にも妹から1位を遠ざける形で叶っている。
教皇は、試験の外の働きを称える
聖女の証の杖を贈る場で、教皇は「フローラ嬢の治療にあたるあなたの活躍は」「実に素晴らしかった」「さすがは神の愛し子だ」と称え、「改めてここに宣言する」と続けて、カロリーナが神聖力の持ち主であることを宣言する。称賛の決め手に挙げられたのは試験の点ではなく、試験の外で姉を救ったことだ。
力が公に認められる
視聴者の感想には、神聖力の持ち主であることを無事に発表できてよかったという声もある。試験は世界中に中継されているので、この宣言は一つの会場の中だけでは終わらない。これまで表立って語られなかったカロリーナの力が、この回で公のものになった。
神聖力が効きにくかった理由
「何かに邪魔されている感じ」
控え室では、まず「私の考えを話す前に」とカロリーナに確認が入る。姉を治療したとき「神聖力が効きづらくはありませんでしたか」。カロリーナの答えは「ええ確かにそうだったわ」「あれは治りが遅いというより」「何かに邪魔されている感じだったと思うわ」。治療した本人の手応えが、そのまま推理の材料になっている。
「マナを改良した秘術」
テオドールの見立ては「マナを改良した秘術によるものではないかと睨んでいます」。「秘術を使えば魔力の質は向上しますが」「その分体に負荷がかかり」、フローラは「それに耐えきれなかった」のだという。公式のあらすじが「秘薬」と書いたものの中身が、体を削って力を上げる秘術として説明される。
「どうしても聖女になりたかったんじゃないのか」
そんな秘術をなぜ使ったのか、というカロリーナの問いには、「どうしても聖女になりたかったんじゃないのか」という推測が返る。いちばん素直に見えるこの答えは、第10話のフローラの本心と食い違っている。第10話のフローラは「今さらどう足掻いても、私や他の候補者が聖女になることはありえない」と、自分で聖女の座をあきらめていた。
テオドールの答えは、プライド
テオドールは「僭越ながら」と前置きして、別の理由を挙げる。「フローラ嬢の実力が」「聖女候補の肩書と釣り合わないためではないかと思います」。「自分の実力を知られるのは」「プライドが許さなかったのでしょう」「彼女は常に完璧で完全な」「サンチェス公爵家のフローラでいなければならなかった」。秘術は聖女になるためではなく、完璧でいるために使われたという読みだ。
「完璧」の中身は、妹の神聖力だった
「まだお気づきではないのですか」
テオドールはさらに踏み込む。「妃殿下はまだお気づきではないのですか」。「セレスティア王国に魔物が出現したり」「不作が続いたり」、「そのせいでジョナサン大司教は」「あなたを連れ戻そうとした」。これまでの回で語られてきた祖国の不調が、ここで一本の線につながり始める。
いつも隣にいたのは妹だった
「では伺います」「今までフローラ嬢が」「魔法を行使する際」「いつもと言っていいほど」「あなたも一緒にいたのではないですか」。そして「あなたの神聖力で力を増幅させていたのではないでしょうか」。次期聖女とうたわれた姉の力は、出来損ないと呼ばれた妹の神聖力に支えられていた可能性がある。
妹が嫁いでから、姉の不調が始まった
この見立てに立つと、フローラの不調の時期にも説明がつく。妹がマルコシアス帝国へ嫁いで隣からいなくなった時期と、フローラの力が落ち始めた時期が重なっているからだ。完璧令嬢の「完璧」は、本人も知らないうちに妹から借りていたものだった、という話になる。テオドール自身が「まだ確証がありませんが」と断っているので、ここではまだ仮説にとどまる。
研究資料は大司教の私室から
テオドールが秘術に行き着いたのは、「ジョナサン大司教の私室から」「マナの秘術に関する研究資料を」「発見していたから」だ。「おそらく彼は」「モニカ・アーレントにも関わっていたと思われます」。第9話のモニカ、第10話で薬を受け取ったフローラと、大司教の手が二人の聖女候補に伸びていたことになる。
告発はしない
テオドールは最後に「告発なさいますか」とカロリーナに尋ねる。カロリーナは表沙汰にしない道を選び、エドも「それでリーナがいいのなら」と引き下がる。姉の不正を暴く材料を手にしながら、カロリーナはそれを使わない。その理由は、姉が目を覚ましたあとの場面で本人の口から語られる。
助けることが、いちばん重い罰になる
「私はお母様じゃないわ」
目を覚ましたフローラの第一声は「やっと会えましたね」だった。カロリーナは「ごめんなさい」「私はお母様じゃないわ」と返す。死の淵で姉が会いたかったのは母で、目の前にいたのは、その母の死を背負わせてきた妹だった。
「あなたに助けられるくらいなら」
「カロリーナ妃殿下の神聖力で」「あなたは一命を取り留めたんですよ」と告げられても、フローラは「あなたに助けられるくらいなら」と言い返す。命が助かったことより、誰に助けられたかのほうが、フローラには重い。この一言が、あとでカロリーナが語る罰の中身を先に言い当てている。
父は公爵として謝る
そこへ父のレイモンド公爵が入ってくる。「娘の不始末」「申し開きのしようもございません」「妃殿下に向けた無礼の数々」「到底許されることではないでしょう」「いかなる処罰も受ける所存です」。カロリーナは内心で「お父様は私の父親としてではなく」、公爵家の当主として接してきたと振り返る。父が頭を下げている相手は娘ではなく、帝国の妃殿下だ。
「娘の再教育を命じます」
内心の「それなら私も」に続けて、カロリーナは「娘の再教育を命じます」とだけ告げる。父は「それだけですか」と聞き返し、「寛大なお心を」「感謝申し上げます」と下がる。父が当主として接してきたのなら、自分も妃殿下として応じる、という返し方になっている。
「出来損ないではありません」
部屋を出る前に、カロリーナは姉に向き直る。「私はもう」「サンチェス公爵家の出来損ないではありません」「聖女の才能においては」「お姉さまより上です」「これだけはしっかり覚えておいてください」。ずっと言われ続けてきた「出来損ない」を、本人の前で自分から打ち消している。
「私、結構、黒いでしょ」
廊下でエドに「あれでよかったのか」と聞かれたカロリーナは、「フローラお姉さまにとっては」「ある意味一番応える罰でしょうから」と答える。「一番屈辱的だったのは」「大嫌いな私に助けられたことよ」「今回私のおかげで」「お姉さまは死を免れ」「名誉を守れたのだから」。そして「私、結構、黒いでしょ」。告発しなかったのは情けではなく、助けたこと自体をいちばん重い罰として残すためだった。エドの返しは「リーナの腹黒は可愛いから全然ありだが」だ。
父にだけは知られたくなかった
ただ、カロリーナは最後に「私とお姉さまの本当の仲だけは」「知られたくなかったな」とこぼす。姉への罰は迷わず言えても、父に姉妹の関係を知られることだけは避けたかった。その願いは、次の場面の父の言葉で崩れている。
泣いてもいいと言ってくれる人を失った日
父の問いに、フローラは理由を言い切る
父は「なぜあんなことをしたのか教えてくれないか」と尋ねる。フローラは「カロリーナが気に入らなかったからですわ」「だから言ってやったんです」「お前は存在する価値のない人間だって」「それのどこが間違っているというのですか」と返し、「あいつさえ生まれてこなければ」「お母様だって生きていたんです」「あいつは不幸になるべき人間なんです」と続ける。フローラの憎しみの根は、母の死を妹のせいにしたところにある。
父が伝えたのは、母の気持ち
父は「否定するつもりはない」と前置きしたうえで、「カレンは誰も憎まなかったこと」「そしてお前の将来を死ぬ直前まで案じていたことを」と伝える。「カレンは誰よりお前のことを理解していた」「だからこそ心配していたんだ」。父は自分の言葉ではなく、亡くなった母の気持ちを借りて娘に届けようとしている。
「私は父親失格だ」
父は自分の非も認める。「お前なら大丈夫だろうと気にかけずに」「お前とカロリーナの仲も気づけなかった」「私は父親失格だ」。カロリーナが「知られたくなかった」と言った姉妹の仲を、父はもう知っている。それでもフローラの答えは「カロリーナは不幸になるべき人間です」で、「いいからもう出て行ってください」「一人になりたいんです」と父を遠ざける。
「泣きたいときは泣いてもいいのよ」
ここでフローラの回想が入る。母はフローラに「泣きたいときは泣いてもいいのよ」と言う人だった。けれど母の葬儀では、周りの大人が「あの年で涙一つ流さず毅然とした態度で葬儀を進めるなんて」「普通の子供じゃできないからな」と感心し、「伊達じゃないってわけか」と完璧令嬢の名を持ち出す。泣けなかった子どもが、そのまま「完璧」と褒められてしまった。
完璧令嬢の仮面と、優しい姉の仮面
フローラの語りは「お母様がいなくなって」「泣いてもいいと言ってくれる人を失った」と続く。「完璧令嬢の仮面をかぶり続けるのは息苦しいし」「無理がある」「せめて感情の吐け口があれば」。そこへ聞こえてきたのが、周りの「カロリーナ様まだ小さいのに本当に可哀想だわ」という声だった。みんなが妹を憐れむのを見て、フローラは泣く代わりに妹を憎むことを選んだ。「私はその時から優しい姉の仮面もかぶった」。
まだ負けたわけじゃない
回想から戻ったフローラは、「長年の因縁と私たちの関係」に決着をつけると心に決める。侍女には「戻るわよセレスティアへ」と告げ、胸の内で「まだ負けたわけじゃない」とつぶやく。聖女の座を失っても、フローラの戦いは終わっていない。副題の「決意」は、この場面を指している。
まとめと考察
一生残したかった傷を、逆に負わされる
第10話の終わりでフローラは、妹にとって「一生のトラウマになればいい」と思っていた。第11話で残ったのは逆で、フローラのほうが「大嫌いな私に助けられたこと」という屈辱を背負う。妹に傷を残そうとした姉が、妹の優しさで傷を負わされている。カロリーナの「黒い」は、この反転を自覚した一言だ。
完璧の中身は、借り物と仮面だった
この回は、フローラの「完璧」を二つの方向から分解している。一つはテオドールの見立てで、力の一部は妹の神聖力に支えられていた可能性があること。もう一つは回想で、完璧令嬢の振る舞いは、泣けなかった日にかぶった仮面だったこと。姉が妹を見下す根拠にしてきた「完璧」は、中身を開けると妹と母に行き着く。
父の言葉は、少し遅すぎた
父は「私は父親失格だ」と認め、母が「誰も憎まなかった」ことを伝えたが、フローラは「一人になりたいんです」と拒んだ。泣いてもいいと言ってくれる人を失った少女に、今度こそその役を引き受けようとした父の言葉は、少し遅すぎた。それでも、母の気持ちを伝える人が現れたこと自体は、この姉妹の話の中で初めての出来事だ。
決着の舞台はセレスティアへ
回の最後、カロリーナは聖女として動き出す準備を始め、最初に訪れる国は祖国のセレスティア王国に決まる。フローラも「戻るわよセレスティアへ」と同じ国を目指している。姉妹の決着は、二人が育った国で付けられることになりそうだ。




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