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第23話の副題は「続・わたしの仏様」。諏訪に戻った時行は、鎌倉へ攻め上る道として遠回りの北を選び、「足利の子にできたことは」「北条の子にもできることだと思うのです」と語る。時行に託されたのは、信濃守護・小笠原貞宗の鬼札、瘴奸の討伐だった。その瘴奸は、今や領民に慕われる地頭になっていた。女の子に語る言葉は「仏様を殺さなきゃいけないんだ」だった。




副題「続・わたしの仏様」と、公式のあらすじ
あらすじが書く「秘策」
第23話(第二期第11話)の副題は「続・わたしの仏様」。公式サイトのあらすじは、「尊氏暗殺は失敗に終わったが、京での経験で武士として大きな成長を遂げた時行」から始まり、「諏訪に戻った時行に、頼重は時が満ちたことを告げる」と続く。締めは「瘴奸討伐を担った時行は、吹雪とともに秘策を用意する」「今ここに、天下を取り戻す戦が始まろうとしていた」だ。あらすじは時行の側から書かれているが、副題の「わたしの仏様」が指しているのは、討たれる側の瘴奸から見た時行である。
時が満ちた
冒頭のナレーションは、この二年間で兵力も士気も心構えもすべて揃ったと振り返る。時が満ちたという頼重の言葉で、物語は一気に挙兵へと動き出す。第二期の終盤に来て、ようやく鎌倉奪還の本番が始まるという高揚感がこの一言に込められている。
遠回りの北を選ぶ
京では、帝の暗殺未遂で混乱が続いていた。
京の混乱
「帝はご無事なのか」「一体何者の仕業だ」と騒ぎが広がり、関東の武士を呼び寄せて京を守らせようという話になる。一方、諏訪では、時行が京で何をしてきたかを聞いた仲間たちが「まさかそんな 全部乗せな体験してたとは」とあきれている。頼重の評価は「いいえ結果的に想定以上です」で、「大戦を始めるのは今を置いてありません」と続く。暗殺の失敗すら、京を混乱させたという意味では成功に数えてしまう頼重の読みが頼もしい。
「私は遠回りの北を選ぶべきだと思います」
鎌倉へ攻め上がる道は二つあった。家臣たちが推すのは南の最短距離で、甲斐を最速で突破する道である。しかし総大将の時行は「私は遠回りの北を選ぶべきだと思います」と言う。北は「平坦ですが」、足利と新田の本拠地を突っ切る必要がある茨の道だった。逃げの名手である時行が、最短を捨てて遠回りを選ぶという判断に、この回の意外性がある。
「足利の子にできたことは」
時行の理由は、京で聞いた武士たちの声だった。「多くの武士は帝から心が離れていました」と言い、かつて鎌倉を攻めた軍勢が、足利の幼子を担いだ途端に数万に膨れ上がった例を挙げる。そして「足利の子にできたことは」「北条の子にもできることだと思うのです」と言い切る。さらに「力攻めをしてシナノの兵に無駄な血を流してほしくない」とも言う。敵がかつて自分たちにしたことを、そのまま自分の側でやり直すという発想が、京で天下全体を見てきた時行の成長を示している。周りからは「目の前のことだけでなく」「天下全体を見渡して考えることを覚えられた」と評される。
瘴奸という「鬼札」
鎌倉へ向かう前に、信濃で倒しておくべき相手がいた。
小笠原貞宗と、読めない武将
頼重は、信濃守護の小笠原貞宗を最大の障壁に挙げる。貞宗の相手は自分が務めるとしたうえで、貞宗には「私にも読めない不安要素たる武将がいます」と言う。その武将こそ瘴奸で、頼重は時行に「あの瘴奸を討ち取っていただきまする」と託す。理由は「諏訪陣営の中で最も奴を知るのは誰あろう」「あなた様です」だった。未来を見通す頼重にも読めない相手を、かつてその男と向き合った時行に任せるという采配が理にかなっている。
貞宗の読み
貞宗の側も、諏訪の動きを警戒している。天狗の報告を退けて、頼重は必ず挙兵すると言い切り、「付き合いの長いわしが誰より分かるわ」と自信を見せて、瘴奸に頼重の首を取れと命じる。瘴奸の返事は「お任せあれ」だった。敵同士でありながら、互いを誰よりも理解している貞宗と頼重の関係が、短い場面から伝わってくる。
鎌倉党の結成
時行のもとには、直属の兵が集まっていた。
「我らは牙を研ぎ続けてきた」
山奥で待っていたのは、北条に最後まで忠義を尽くした者たちだった。「誰にも知られぬ山奥の地で」「我らは牙を研ぎ続けてきた」と語り、「この二年間は地獄だった」と振り返る。裏切り者たちに罪人として処刑され、一族からは追放されても、「それでも信じた忠誠を曲げなかった」。北条の滅亡のあとを、名もなく耐えてきた人たちの二年間が、一言ずつ積み上げられていく。
「私です」
彼らは、自分たちがどの名将の軍に入れるのかを楽しみにしている。ところが指揮するのは、目の前の少年だった。時行の「私です」に、「この世の終わりかってぐらい失望してたぞ」とあきれる声が上がる。感動的な結成の場面を、正体を明かせない総大将の気まずさで笑いに落とすのが、この作品のテンポである。
「名前に頼って従わせるようでは」
頼重は、まだ北条の名前を使ってはいけないと釘を刺す。「名前に頼って従わせるようでは真の信頼は得られません」と言い、瘴奸を倒すことで忠誠を勝ち取るよう促す。時行は、皆に「ふさわしい大将に」なってやると決意する。名門の名前ではなく、実際の勝利で信頼を得るという条件が、瘴奸戦を単なる因縁の決着以上のものにしている。
兵力不足と、楠木正成の下書き
瘴奸への対策は進むが、一つだけ問題が残っていた。
新技と、足りない兵
吹雪は、瘴奸の喉元を貫くための新技を用意し、雫は信濃を知り尽くした戦略を立てる。しかし雫の策には「敵軍の脅威を完全に除くなら300騎は欲しく」、鎌倉党の100騎では破壊力が足りないという問題があった。仲間たちもそれぞれ案を出すが、決め手にはならない。準備が整っていくほど、最後に足りない一つが目立つという構成が、次の場面への引きになっている。
「軍略とは」
時行が頼ったのは、楠木正成から託された下書きだった。字が読みにくく、一晩かけてようやく序文を読めた程度だったが、そこには「拙者にとって 軍略とは」「自分が生きた経験の中にしか ないものでござる」と書かれていた。「人生の中で 誰と出会い 何を見 何を感じたか」を忘れずにいれば、「思わぬ時に 思わぬ記憶が」「敵を破る道具になるのでござる」という。前回の正成との出会いが、ここで軍略の教えとして生きてくる。
「変態の思い出ばっか!」
そこで時行は、信濃で過ごした二年間の記憶を必死にたどる。ところが浮かんでくるのは「変態の思い出ばっか!」だった。「世話になってるシナノのみんなが変態だなんて」と打ち消し、「普通の人もきっといる」と記憶を探り直す。軍略の真面目な教えから、出てくる記憶が全部ろくでもないという落差が、この回最大の笑いどころである。それでも最後には「雫の策を少し直せば ピタリはまる」と答えを見つけ、「援軍が見つかった」と言う。
「父上 兄上」
決意を固めた時行は、「父上 兄上」「時行の真の初陣を お見守りください」と祈る。逃げて生き延びてきた少年が、ここで初めて自分から仕掛ける戦を初陣と呼んでいるのが印象的である。
仏のような地頭
一方、瘴奸の側の日常が描かれる。
「今賊に戻ったが最後」
瘴奸の部下たちは、鍛錬ばかりの毎日に退屈し、かつてのように強盗に出ようと言い出す。そこへ瘴奸が現れ、「今賊に戻ったが最後」「もう永久に武士としては死ねんぞ」と一喝する。かつて最も非道だった男が、今は部下を武士の側に引き留める役に回っている。
「まるで仏のごとき言い草」
瘴奸の働きぶりは、貞宗にも評価されている。褒美を渡されても「褒美には及びませぬ」「民のために働くまで」と答え、「まるで仏のごとき言い草ではないか」と言われる。第一期で悪の極みとして描かれた男が、仏にたとえられるまでになっている。この変化そのものが、副題の仏様につながっている。
「今度の地頭様は 仕事もできて 領民思いだって」
地頭となった瘴奸のもとに、女の子が瓜漬けを届けに来る。瘴奸は「おお〜 うまそうな瓜漬けだ」と受け取り、女の子は「今度の地頭様は 仕事もできて 領民思いだって」と村の評判を伝える。子どもに懐かれ、領民に慕われる瘴奸の姿は、この作品が描いてきた改心の一つの到達点である。
「仏様を殺さなきゃいけないんだ」
しかし、穏やかな日常はそこで崩れる。
よみがえる過去
戦に行くのかと聞かれ、死んでほしくないと言われた瞬間、瘴奸の目の前の光景が歪む。女の子の顔が変わり、かつて自分が不幸にした人々の姿が現れる。心の中には「親と過ごした平和と自由は 永遠に戻らない!」という声が響き、亡霊たちは「死ね… 死ね… 死ね…」と迫る。改心しても過去の罪は消えないという事実を、ホラーのような演出で真正面から突きつける場面である。
「結局 どこに行こうがこの世は地獄よ」
我に返った瘴奸は、「闇にいれば迷い苦しみ」「光が射せば過去の罪が照らし出される」「結局 どこに行こうがこの世は地獄よ」とつぶやく。悪人のままなら迷い、改心すれば罪が見えてしまう。どちらに進んでも逃げ場がないという独白が、瘴奸という人物の重さを決定づけている。
「大殿への ご恩を返すために」
そして瘴奸は、女の子に語りかける。「おじさんはね お嬢ちゃん」「仏様に 心を洗われ」「今の大殿に 命を救われた」。続く言葉は「大殿への ご恩を返すために 仏様を殺さなきゃいけないんだ」だった。瘴奸の心を洗った仏様は時行であり、その仏様を、今の主君への恩のために討たなければならない。副題の「続・わたしの仏様」は、この矛盾をそのまま名前にしている。
「必ず 生きて帰ってきてね」
女の子は「う〜ん なんか よくわかんないけど」と言いながら、「優しくて賢い地頭様が決めたのならきっと正しいよ」と信じ、「必ず 生きて帰ってきてね」「約束だよ」と頼む。瘴奸は「もちろんだとも」「おじさんは 恐ろしく強いんだ」と答える。約束をする笑顔の裏に、次の戦で時行とぶつかる運命が見えているので、この場面は温かいほど苦しい。
まとめと考察
第23話は、時行が総大将として戦略を示し、鎌倉党を率いて初陣に臨む準備の回であると同時に、討たれる側の瘴奸の内面を深く掘り下げた回だった。
二人の「仏様」
時行は、敵がかつてしたことを自分の側でやり直すという、逃げの名手らしい柔軟な発想で戦略を立てた。一方の瘴奸は、その時行に救われた恩と、今の主君への恩の間で引き裂かれている。瘴奸にとって時行は、心を洗ってくれた仏様であり、同時に討たなければならない敵でもある。この二重の意味が、次の戦をただの勝ち負けでは終わらせない。
改心した悪人をどう描くか
この回は、改心した悪人を許すのでも罰するのでもなく、過去の罪に苦しみながら善く生きようとする姿として描いた。ホラーのような幻の演出は、瘴奸が自分の罪から一瞬も目をそらせないことを示していた。改心したからこそ過去が見えてしまうという描き方が、この作品の悪役の扱いの深さを物語っている。




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